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お友だちで溢れかえる下関市立大 市長&学長界隈が大賑わい 疑惑の子育て施設めぐり議会に動き【記者座談会】

(2026年4月20日付掲載)

下関市立大学

 下関市の前田市政が進めている「交流型子育て総合支援施設」の整備事業とかかわって、下関市立大学を中心とした「お友だち」優遇の利権構造に対し注目が集まっている。子育て施設の発端となった2019年の市立大学での教員採用から7年ものあいだに、市長&学長の二人三脚のもとで好き放題の市政運営がおこなわれ、大学では学長の「お友だち」が教員として多数入ってきているなど、看過できない状況が生まれてきた。今下関市でなにが起きているのか、大学でなにが起きているのか、なぜ現在のような状況になったのか、記者座談会で論議してみた。

 

  交流型子育て総合支援施設整備事業は、貴船町の旧第一幼稚園跡地に認定こども園を含む複合施設を建設するものだ。そして、この事業が「市長案件」「お友だち案件」といわれている理由だが、3月16日の文教厚生委員会でその異様さが浮き彫りになっている。

 

 簡単に振り返ると、この日の委員会では新施設の「構想(案)」が報告されている。しかしその内容や執行部の答弁は、特定の事業者が存在しているという疑念を、見ていた市民や幼児教育・保育にかかわる関係者に強く印象付けるものとなった本紙既報

 

 まず、新施設の基本構想・基本計画の策定業務を297万円で受託したのは保育コンサルの「株式会社紬(つむぎ)」であることが明らかになったのだが、構想(案)の中身は、「紬」が運営する保育園の写真や事業の写真が何枚も使われていた。新施設に入れる具体的なとりくみは「紬」が現在おこなっていることと似通ったものや、掲げている理念も重なる部分が端々にあり、前記の写真もその資料として載っていた。つまり、構想&計画策定受託者が自社でやっている事業内容を詰め込んだような内容になっていて、公平性の面からもちょっと信じられない状態になっていた。

 

 ほかにも、令和8年度におこなう事業者公募資料作成支援業務の予算額1400万円を「紬」に見積りを依頼して計上したことも明らかになったり、基本構想→基本計画という手順を踏むべきものが、同時進行で進み、その位置づけも不明確であったことから、どのような進め方になっているのかと市議会ですらかなりの意見が出された。そして、議員の質問に対する執行部答弁がなんとも頼りなく、余計に不信感を抱かせるものであった。その状況は3月議会閉会日の文教厚生委員会の委員長報告でも確認できる。

 

  「基本構想(案)」に対し委員会からそれほど意見が出たにもかかわらず、市は4月3日から「基本計画(案)」のパブリックコメント(以下、パブコメ)を始めた。議会から多くの指摘が出た基本構想をすっとばし、基本計画に進んだということになる。市議会がなにをいおうと関係ないと前田市長が思っているかいないかは知らないが、議会に構想の修正なり説明もないまま計画案のパブコメを始めたということはそういうことなのだろう。ただ、これに対し議会も黙っていなかった。3日にパブコメが始まったことを受け、17日に急きょ文教厚生委員会が開催された。執行部側からではなく、議会側からの要請で開催されたということになる。

 

質問噴出した文教厚生委 特定業者ありきの疑念

 

下関市が交流型子育て総合支援施設の整備を計画している市立第一幼稚園跡地(下関市貴船町)

  文教厚生委員会の前日、委員には「基本構想」が配布されている。委員には配布されたが、計画案のパブコメがおこなわれている最中であるのにこの構想がどこにも公表されていない。基本構想と基本計画が同一の受託業者のもとで同時に進むこと自体聞いたことがないが、少なくとも事業の指針となる構想は公表されているべきだ。位置づけが支離滅裂だ。完成しているはずの基本構想を保育園や幼稚園の関係者すら見ることができないまま「計画案に対し意見を出してくれ」といっているという関係だ。ちなみに、この「構想」だが、構想(案)で問題になった受託業者「紬」の写真を「誤解を与えかねない」として無難なものに差し替え、「民設民営を前提とし」という文言を追記した程度の修正をしただけで構想案の中身が変わったわけではない。

 

  今回の委員会では、議員からこれまでの経緯を確認する質問や、市が新施設に入れる機能の必要性やどのように決定したのか、構想の説明もないまま突然計画案のパブコメを始めた理由など多くの質問が出た。

 

 中継を見ていた市民もびっくりだったのは、新施設のメインとなる幼児教育・保育施設を「幼保連携型認定こども園」から「認定こども園」へと昨年度中に変更したさいの説明について、執行部が「3月の委員会における答弁は、関係者との協議状況において正確さを欠く内容となっていた。保育連盟及び幼稚園協会とは協議をおこなえていなかった」とし謝罪する場面があったことだ。3月議会では、執行部がこうした団体への対応として、サウンディング型市場調査とは別に「協議する場はこれまであった」とのべている。つまり、実際は説明をしていないにもかかわらず説明してきたかのようにのべたということだ。これは間違えたレベルの話ではなく虚偽答弁に値する。

 

 答弁の「上書き」はそれだけにとどまらない。2月に市と「紬」がサウンディング型市場調査をおこなっているが、3月議会のさいには「基本構想(案)に示している機能について調査をおこなった」とのべていた。ところがこれも間違いで、正しくは「こども未来部が作成した基本構想(素案)をサウンディング型調査にかけた」「これが正確な答弁」だという。

 

 さらに、令和8年度におこなう公募資料作成支援業務の費用「1400万円」という金額について、3月議会では「紬」に見積り依頼をして出した金額であるとのべていた。受託業者にここまでやらせるのかと物議を醸した一つだが、これも間違いであり、実際は「紬」を含め三者であったという。なぜ一者から見積もったかのような答弁がされたのかという問いに対しこども未来部長は、「担当の準備不足・認識不足だった」とのべた。

 

  細かな内容になってくると、関係者や関心のある市民以外は意味不明かもしれない。ただ、事実とは真逆の答弁なり、「認識不足」によって事実ではない答弁があったのであればそれは大問題だ。こども未来部長は委員会の途中で「3月の議会において、不適切な発言や正確さを欠く発言をしたことについては私の責任として大変申し訳なかったと改めてお詫びを申し上げる」とのべているが、その直後に「担当者の認識不足」だと片づけた。3月議会で答弁した担当者はみな異動しており、今はいない当時の担当者の責任だと明言したことについて、市役所内外で「あれは部長としてやっていいことなのか」と話題になっている。そもそも3月議会では議会からさまざまな質問が出されて担当職員が困っているのに一言も言葉を発しなかったのは部長や理事だった。「あのような場面でなにもいわないのが逆に違和感だった」という声もある。

 

子ども園にパソナの影 下関市の事業に参入か

 

  今回の議会では、「幼保連携型認定こども園」から「認定こども園」に変わった【表】経緯が明らかになった。「幼保連携型」は民間であれば社会福祉法人か学校法人でなければ運営できない。それに対して「認定こども園(保育所型)」は株式会社でも運営できる。サウンディング型市場調査の実施要領の段階では「幼保連携型認定こども園」になっているが、2月のサウンディング型市場調査に参加した6事業者の意向に従って変更したということだった。

 

 市はこの6事業者を公表しないといっているが、市の方針転換までさせたのがいったいだれなのかは、今後明らかにすべきではないか。市は「門戸を広げるため」という説明をくり返しているが、基本構想や基本計画案を見るとあれもこれも機能を盛り込み、各分野の専門性や人脈なりを持っていなければ実行するのは難しい。門戸を広げるといいながら、むしろ門戸を狭めているのが実際なのだ。だからこそ「特定の業者ありきではないか」という疑念が生じている。

 

  市は今後の進め方について、公募資料作成の事業者選定を一般競争入札でおこない、運営事業者の選定はプロポーザルでおこなうという。公募資料の作成を担う業者は運営事業者としてプロポーザルには参加できない規定を盛り込むようだが、基本構想・基本計画策定に携わった業者、市の方針まで変えさせたサウンディング型市場調査に参加した「6者」が入れないということではない。今回の場合、公募要綱作成以前の段階からものごとが動いているのだから、公募要項作成業者を排除したところで痛くも痒くもないだろう。

 

 A 真実かどうかは別として部分的には明らかになったり、事実関係が整理されたり、逆にますます疑念を深めたりする質疑応答が続き、文教厚生委員会は閉会した。次回は27日に予定されている。傍聴席には保育関係者がたくさん来ており、また、中継で見ていた関係者も少なくなかったようだ。そうした関係者からは執行部答弁のデタラメさが驚かれていたし、そうした態度に議会が毅然としてチェック機能を果たしたことへの評価も聞かれる。あの議会が…と驚く声もあるが、事態はそれほど深刻だし露骨ということだ。

 

 このたび文教厚生委員会は市側の説明を認めたようには見えないし、見方によっては突き返したような状態だ。現在の保育関係者、教育関係者をはじめ市民の不信感と憤りを受けた「市民の代表」としては当然だ。今後、議会に対して切り崩しもあるだろうが、議員としては、議会無視すなわち市民無視で進める市政を認めるかどうかがかかっているし、チェック機能を果たすかどうかを市民は見ている。

 

  そして、そこまでしてこの事業にかかわろうとしている「特定の業者」とは誰なのかだが、「紬」と「HAN研究財団」(市立大学の韓昌完教授が設立した財団)の研究プロジェクトを通じてつながっているパソナフォスター(本社・東京)ではないか? といわれている。2011、12年ごろにパソナがこども課(当時)に接触したという話もあり、かなり早い時期から下関市の保育事業への参入を考えていたことがうかがえる。ここの関係については前回の記事でもだいぶ取り扱ったので割愛するが、そうした関係者を紬ぐ「HUB(ハブ)」となってきたのが下関市立大学だ。

 

「とうとうご夫婦で…」 市立大の異様な教授陣

 

前田市長㊨と韓学長㊧〔下関市大HPより〕

 C 前回の座談会でふれたように、「紬」のO代表は2019年に市立大学の経営審議会委員として、韓昌完(ハン・チャンワン)教授(現学長)の招聘(へい)を前提にした特別支援教育特別専攻科の設置を推進した経緯がある。つまり、韓学長を招き入れた張本人だ。その後、下関市立大学の大学院(経済・経営専攻)で修士号を取得し、現在は下関市立大学附属リカレントセンター非常勤講師の肩書きを持っている。ついでに「紬」が運営する紬木保育園の保育士は、このリカレントセンターで「子ども才能マネジメント」(26年度は40コマ・60時間、受講料6万円)や「パーソナルマネジメント」(同14コマ・21時間、受講料7000円)を受講してスキルアップするそうだ。ここだけ見ても、市立大学とはかなり深いかかわりがあることがわかる。

 

  この4月にはO代表の夫(歯科医)が下関市立大学の教授に就任した。「とうとうご夫婦で…」と学内で話題だ。これまで市内で営んでいた歯科医院をやめてのことだという。市立大学のHPでは、1年生の必修科目「アカデミックリテラシー」のほか、大学院(経済学研究科)の授業を受け持つことになっている。経済学の修士号を取得しているものの、博士号は臨床歯学だ。授業で「全国で唯一の歯科医の経済学部教授だ」という自己紹介をしたとの話もあり、「たしかに歯科医が経済学部で何を教えるのだろうか?」「ご本人の経歴にとってもどうなのだろうか?」と素朴な疑問が語られている。

 

 A 部外者としてはO代表の夫が教授になっただけでもびっくりなのだが、学内では「またか」という雰囲気があるのも特徴だ。というのもここ数年、こんな話ばかりで、珍しくなくなっているからだ。

 

 そもそもその始まりは2019年の定款変更に始まる。前田市長が公約で「総合大学化」を掲げて「大学間競争にうち勝つための大学改革が必要だ」といい、市長が任命する理事で構成される理事会が、人事や教育内容などについて決定できるようにした。このとき採用されたのが現在の韓学長だ。教員採用は教授たちの審査が必要で、本来なら学内での厳密なる論議が求められるところだが、定款変更によって民主的な手続きの基礎となる教授会は事実上骨抜きとなり、たがが外れたように大学運営は暴走が始まった。そうした暴走に嫌気がさしてそれ以降の4、5年で櫛の歯が抜けるように経済学部の七割の教員がやめていった。

 

 C この状況を「彼らはエンピツなめてルールをつくるじゃないか」と指摘する声があるが、「下関市立大学教員採用選考規程」(2020年5月改定)に加えられた「雑則」などはその典型だ。「学長は、教員採用に関し、全学的な観点及び総合的な判断により必要があると認めた場合は、この規程によらない取り扱いをすることができる」とある。つまり誰を教員として採用するかは学長の一存で決められるようになった。その結果、特命教授とか特別招聘教授とかで市職員が教授になったりしてきて、真面目な教員ほど嫌気がさしてやめていき、経済学部でありながら経済を専門とする教員は補充されず、蓋を開けてみれば「韓学長やその周辺との私的な関係を持つ“お友だち”ばっかりじゃないか」といわれるような状況になった。

 

 A この体制を実現するために暗躍したのが韓学長の右腕ともいわれた市役所OBで前事務局長(初代副学長)の砂原氏であることを忘れてはならない。途中から韓学長や前田市長との間に隙間風が吹いているといわれるようになったが、事務局長をやめた後も特命教授として残っていたところを見ると、それも本当かどうかわからない。だがこの3月でとうとう大学を去ったようだ。砂原氏が教員たちの反対や疑問の声を押し切って前田市長が採用したい韓教授を無理矢理に採用させたのがすべての発端だ。今では韓学長が権限を持ち、とくに2024年度ごろからお友だち人事があからさまになってきたし、「ブレーキがきかなくなった」といわれている。責任は重大だ。

 

 B 「お友だちばっかり」という内容だが、たとえば昨年度から教授となった曻地崇明氏は4月から副学長(国際交流担当)になった。市立大学に来た経緯について「市役所が他県の地域おこしの行事で出会い、招いたらしい」という話はあるが、どのような経緯で来たのかは明らかではない。ただ、昨年度から国際交流担当として韓学長と頻繁に海外出張に行っていたという話が囁かれていたところ、就任2年目にして副学長に就任した。学内に「顔も見たことがない」という教員もいるような状態で副学長になっている。

 

 C そのほか、先ほど話題になった「紬」代表の夫のO氏もだし、韓学長の会社に出資しているS社の取締役2人も教授になった。また「紬」と一緒にクレヨンブックの開発をしたパソナフォスターの代表取締役社長、「紬」と一緒にインクルーシブ保育をしているヤクルトの本社役員、パソナ出身でパソナフォスターの代表取締役と関係が深いとされる旅館経営者も客員教授に名前を連ねている。こうして見ると、「お友だち」といわれるのもうなずける。

 

 A 一方で博士号を持っていても講師だったり、経済学を専門とする教員が准教授であったりして、「説明がつかない人事があまりにも多い」と指摘されている。しかも経済学部の看板を掲げながら、経済学専門の教員が足りない。そのせいなのか今年度は、大学院経済学研究科の修士課程の科目が大幅に削減された。修士課程の上に博士課程が接続されるから、修士課程のスリム化が教員間では「なぜ?」となっているようだ。経済学研究科と名乗っているのに、金融すら学べない科目群となっている。

 

 そのなかで一番心配されているのは学生たちへの影響だ。大学1年生が学ぶ「アカデミックリテラシー」は、高等教育機関で学ぶための学術的な読み書き、思考、コミュニケーション能力を学ぶ基礎だ。その基礎を大学の授業経験が乏しい人たちが教える体制を危惧する声がある。

 

何のための大学院無償化? 市財政2億円注ぎ込み

 

下関市立大学看護学部棟の竣工式での前田市長(左から3人目)〔2025年3月〕

 A 「風船を膨らませるようにどんどん教員を増やしている」と表現する人もいるが、実際に学生数に対して基準をこえる余剰人員が出るほど教員数が膨れ上がっているようだ。2020年度に学内で必要性も議論されていない「教養教職機構」なるものが設置されたのだが、その機構が余剰人員の受け皿になっているようだ。現在さらに文科省に教員定数15人増を申請中だ。データサイエンスの大学院設置のための人員確保と見られるが、なんだかお金に糸目をつけない感じなのだ。

 

 北九州市立大学は、学生数が下関市立大の3倍いるが、教員は2倍程度だ。教員数が多いのは手厚い教育の土台ではあるが、下関市立大学の場合、先ほどいったように大学教員の経験が乏しい人たちが多いため、手厚いわけではないといわれている。

 

  そして、市立大学の焼け太りを前田市長が市財政で支える関係だ。市の財政支出は、昨年度から基準財政需要額を上回るようになった。かつて学費だけで成り立っている(市がお金を出さない)大学として有名だったが、今では潤沢にお金が流れてくる大学になっている。市がまともな財政支出をすることは必要だが、それがだれのためなのか? というのは重要な点だと思う。

 

  今年度から下関市が予算をつけて大学院の無償化事業が始まった。これまた「市長案件」だったようで、交流型子育て総合支援施設のケースと同じく、担当課の説明がいくら聞いても要領を得ないものだったのが特徴だ。

 

 今ある経済学研究科(修士2年。入学定員10人)に加え、2027~29年度に設置予定の地域サスティナビリティ学研究科(博士3年。入学定員5人)、データサイエンス学研究科(修士2年…入学定員15人、博士3年…入学定員5人)、看護学研究科(修士2年。入学定員5人)を対象にして、年間授業料53万5800円、入学金14万1000円(市内)、28万2000円(市外)の全額を無料にするものだ。期間は26~31年の6年間。今年度の当初予算は1353万6000円で、最終的に合計約2億5000万円を下関市が運営費交付金で全額補填するという。

 

  これは昨年3月の市長選で前田市長が公約に掲げていたものだが、大学院の無償化に2億円超の市財政を注ぐことが妥当なのか、熟議された形跡はない。25年度の大学院(経済学研究科)の入学者は13人で、うち市立大学からの進学者は1人。海外大学からの留学者2人、市内・市外の社会人10人となっていて、オンライン等で学ぶ社会人に対して市税を投入する理由がどこにあるのだろうか? という疑問の声が出てくるのは当然な状況だった。

 

 C オンライン等で学ぶ社会人もさることながら、今まで市立大学の経済学研究科に入ったとか、卒業したという人たちを見ると、学内の教員や客員教授、職員だったり、市内企業の社長だったりも少なくない。大手企業の偉い人が学生になっているみたいな話もあるし、聞く限り、そもそもお金を持ってる人たちではないかと思われる。学部生は保護者の所得によっては減免されないし、学生たちは日々アルバイトをして必死に学生生活を送っている。そのなかでなぜ院生なのかという議論はされず、学長&市長の二存で決まっている。前田市長は、「世界トップ大学のオックスフォード大学やケンブリッジ大学は田舎にあるが、優秀であるがために企業が集まり、優秀な学生が集まり、町が形成されていく」とその意義を強調していたが、市長界隈が多く大学院に入学しているだけで、とくに新たに集まってきている風はない。

 

 D なぜこのタイミングで院生を対象にしたのかということだが、韓学長が立ち上げているHAN研究財団が25年度まで「大学院奨学金事業」をやっていた。それが終了したタイミングと下関市が開始したタイミングが同じことから、韓学長に頼まれて下関市がひき継いだという見方をする人もいる。

 

「終身教授」制度を創設 大学関係者は驚き

 

  その韓学長自身も永遠に下関市立大学にいれる体制がこの4月にできたことが学内で驚きとともに語られている。新たに創設されたのは「終身教授」制度で、「論文の引用回数1000回以上(Google Scholar基準)」とか「学長または副学長を4年以上歴任するなど、本学の運営および発展に顕著な実績がある者」など3項目の要件を2つ以上満たした者は、年齢制限もなく、本人さえ希望すれば死ぬまで教授でいられるという驚きの制度だ。市立大学自身も「公立大学では極めて先駆的な取り組み」といっているが、国内の少なくとも公立大学で終身教授制度は稀で、この条件を満たすのが韓学長と川波前学長の2人だけだともっぱらの話題だ。アメリカなどで同じような制度がある大学もあるが、例えばノーベル賞受賞者など、優秀な人を手放さないようにするための制度のようだ。大学関係者に聞いても、国内でそんな話は聞いたことがないという声が多い。

 

  もう一つの動きとしてあるのがベンチャー企業の立ち上げだ。昨年6月に市立大学発ベンチャー企業の1社目となる「株式会社先端地域科学研究所」が設立された。社長は韓学長で、2人の取締役はIT系ベンチャー企業S社の社長と取締役だ。資本金2000万円のうち約1300万円をS社が出資しているようだ。両社ともに市が3億円の補助金を出したエストラストビル5階に本店を置いている。

 

 「市立大学が持つノウハウや先端技術・学術研究を大学発の起業につなげ、大学への収益還流、優秀な若い人材の地元下関での活躍の場の提供、活動を通じての地域の課題解決による『知と人材の循環』を目指す」ことを掲げているのだが、設立前後から、S社と市立大学の関係が非常に深まっている印象を受ける。

 

  同年9月に市立大学がキルギス国立農業大学と共同で「キルギス・日本学術研究センター」を開所した。もともとは経済学部だし、新設したのも看護学部、データサイエンス学部だ。「なんでキルギス?」「なんで農業?」という感じだったのだが、後にわかってきたのが、キルギスで農業をしたいといっていたのがS社だったことだ。そして、同年11月には年度途中にもかかわらず、S社の2人の取締役が市立大学の「教授」として就任した。先述の通り、博士号を持っていながら教授ではない人もいるなかで、大学教員でもなかった民間出身者がポンと教授の席に収まることなどあるのだろうか?うち一人は大学HPを見ても「現在の研究テーマ」や「研究実績・活動」も、担当科目も空欄だ。そしてS社の社長は市立大学の「アソシエイトフェロー」の肩書きがついている。

 

  それで、先端地域科学研究所のこれまでの活動で公表されているのは、下関市立大学のロゴ入りネクタイを制作し、昨年7月に前田市長に贈呈したことだけだ。このネクタイは、今後、先端地域科学研究所のグループ会社になる予定の「Kimono atelier Akan」の曻地あさこ氏が制作したもので、今後、大学の国際交流の場で贈答品として使用するそうだ。曻地あさこ氏は、前述の曻地崇明副学長の配偶者。ロゴ入りネクタイは「市立大学がサジェスチョンをしたうえで提案をしてもらい、制作したもの」とのことで、とくに公募なり入札をしたわけでもないそうだ。市立大学が副学長の配偶者という非常に個人的な関係で贈答品の制作を発注したということなのだろうか? そして、そのネクタイを先端地域科学研究所が購入しており、市立大学は先端地域科学研究所から、その都度ネクタイを購入する形になっているという。必要なら直接買えばいいのに、一枚挟むことでマージンが発生するのだろうか? とも思ってしまう。

 

 B その先端地域科学研究所が出資・支援する形でデータサイエンス学部の教員たちが3社のベンチャーを立ち上げることが、昨年11月に発表された。社員はおらず、学生がアルバイトする形のようだ。韓学長は昨年の講演で「大学院に入れば修士号もとれて、ベンチャー企業の経営に携わったというすごい経歴がつくれるものを用意した。そうでないと北九州市立大学とたたかって勝てるわけがない」といっていた。これが大学の価値を高めるかのように宣伝しているが、一方で実態がともなっていないという指摘もあって、市役所では今までの韓学長と前田市長との関係性から、市役所が仕事をつくってベンチャー企業に発注していくようなことになりはしないか、ネクタイのようにならないかと懸念する声がある。

 

市長はスペイン視察 フードビジネス学科

 

 A ただ、それが妄想ではなく、前半でふれた子育て施設に関しても、「紬」とパソナフォスターをつなぐのが市立大学であるし、それが市の事業に入り込んでいる具体的な事例といえるのではないか。このような関係について「一つの経済サイクルをつくっているようだ」と表現する人もいる。俯瞰(ふかん)してみると本当にそうだなと思う。

 

  そして、今までのべてきた教員なり、登場する人たちの軸にあるのが、韓学長が設立したHAN研究財団とアジアヒューマンサービス学会であることが、少しずつ見えてきた。近年採用された人を中心に10人以上の教員がこの学会に所属していて、「学会員が採用されているのかな?」とも思うほどだ。学会が先なのか、市大が先なのかわからないが、とにかく学会員が多い。同学会の機関誌は国際誌扱いで、そこに論文(もどきという評価もある)を発表すると、市立大学の教員評価では高得点になるそうだ。大学関係者たちも「特定の学会員がこれほど多いのは異常なこと」といっている。そしてアジアヒューマンサービス学会の役員や事務局もまた市立大学の関係者がかなりの部分を担っている。なんだか一体的に動いている感じだ。「お友だちばっかり」と感じるのも、そういうことなのかもしれない。

 

 A これからの方向性として浮上しているのがフードビジネス学科の設置だ。前田市長の思いつきなのか、韓学長の発案なのかわからないが、前田市長が昨年から突然「食」といい始めたことが市役所内でも話題になっていた。それを裏付けるかのように、前田市長がこのたびスペイン・サンセバスチャンの料理の4年制大学「バスク・キュリナリー・センター」に視察に行った。

 

  この出張は4月12日からの11日間だ。前半はアメリカ・マイアミで開催される「シートレード・クルーズ・グローバル2026」に参加するためで、港湾局長以下、市職員計3人が同行している。その後、港湾局の職員と現地時間の15日午後7時10分にマイアミ国際空港で別れ、単身スペインへ向かったそうだ。スペインには市職員は同行していない。かわりに現地で落ちあったのは、市立大学の韓学長、曻地副学長、加藤国際交流センター担当教員。マドリードあたりで市長を迎えたのだろう。そしてフードビジネス学科ができれば教員になるだろうと話題になっている山口県飲食業生活衛生同業組合のA理事長が同行している。市立大学の説明では「町づくりをしていくうえで大学にも協力してほしい。いいところがあるので一緒に行きませんか」と市長から声がかかったということだった。

 

  帰ってきて何をいい出すのか、みな戦々恐々だ。これ以上市立大学にお金をかける前に、小中学校の建て替えをはじめ、やるべきことは山積しているのだ。

 

 C 韓学長について、「歯止めがきかない」「手綱がとれない」といわれるほど目に余る状況になっていて、さすがに自民党界隈からも問題視する声が上がり始めている。でも前田市長が韓学長に依存しているため、だれも何もいえず、板挟みになる職員が苦しむ。独法化以降、利権の舞台になってきた市立大学だが、かつてのトイレ工事をめぐる利権などがかわいらしく思えるほどだ。前田市長も前田市長で市政全般において開き直って「だれが何といおうと関係ない」という感じになっている。

 

 吉鹿事務局長(市役所OB)や三木理事長(市役所OB、元副市長)についても「もっとしっかりしてくれ」「花に水をやっている場合じゃない」という声は強い。三木元副市長が理事長になったとき、「三木さんがいれば何とかなるのではないか」と期待した市役所関係者が多かっただけに、それが機能しないことについて、ショックはあまりにも大きい。三木理事長は副市長を退任するとき、第二次中曽根内閣の後藤田正晴官房長官の次のような訓を残して去って行った。

 

 一、出身がどの省庁であれ、省益を忘れ、国益を思え

 一、悪い本当の事実を報告せよ

 一、勇気を持って意見具申せよ

 一、自分の仕事ではないというなかれ

 一、決定が下ったら従い命令は実行せよ

 

 今まさに、そのときではないだろうか…と思うのは本紙記者だけではないはずだ。

 

  これまでの歴代市長もよろしくないことをやってはきただろうが、少なくとも行政手続きなど説明できる手順を踏んできた。しかし前田市長&韓学長の二人三脚が始まってからは、ある意味、利権を覆い隠すうえで必要な行政手続きとか建前とかもすっ飛ばして、思いつくまま動き始め、さまざまな場所で憤激を買っているのが現段階ではないか。ここ数年の暴走が著しいが、安倍事務所がなくなって歯止めをかけるところがなくなったからだという指摘も多々なされている。

 

  今回の子育て施設にしても、今まで地域のために、みんなのためにという思いで長年支えてきた人たちがいる。その関係者を抜きにして、一部の人たちのために市民の財産である下関市なり市立大学なりを利用していくようなことを放置すれば下関市は崩壊する。「好き放題やらせてもらう」という前田市長の下で、すでに市役所の疲弊は頂点に達しているようにも感じる。三木元副市長がいったように黙っていないで勇気を持って意見を具申すること、まずは実態を明らかにすることが大事ではないか。

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