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規制改革の犯罪性を暴露  山口県漁協合併  漁業潰しにかかる政府 

 二井県政が県一漁協合併をゴリ押しして、信漁連欠損金の尻拭いを押しつけた結果、山口県内沿岸は常識では考えられないような漁業破壊が進行し、漁業者激減状況に直面してきた。これにたいして山口県では、漁民の抵抗運動が燃え広がり、漁民の力を証明するところとなった。この漁協合併は、たんに信漁連の欠損金を末端漁民に押しつけるだけではなく、それを利用して漁協をつぶし、とりわけ漁業権を奪って、漁業者の首をはね、沿岸漁業をつぶすというものであり、アメリカが指図する規制緩和に根があることが浮き彫りとなってきた。国家的な強権で漁業をつぶすという亡国政治にたいする漁民のたたかいは、共通した攻撃を受ける全国の漁民はもちろん、農民、市町村合併を強要される各自治体などすべての人人を励まし共感を得た。騒乱のような状況をへて合併漁協が誕生し、行政や農林中央金庫、信漁連・県漁連の上層部はノー天気な万歳を連呼したが、その後1年が経過して浜はどうなっただろうか。

 浜には無惨な荒廃もたらす
 この9月1日に信漁連、県漁連の事業・財務はすべて山口県漁協に譲渡され、3者が一体化する。「譲渡」というと響きはいいが、その実態は信漁連の100億円超もの負債を県漁協・県下の漁民に「譲渡」するというのである。合併に参加しなかった漁協にも、億単位で負債(出資金毀損)をかぶせることになる。各浜の厳しい視線には恨みがこもる。
 監督官庁や農林中央金庫が意図した信漁連雲隠れ作戦は、これでとりあえず完結という算段。自民党林派の悪事の足跡を隠蔽したのである。この間、デタラメ信漁連のために漁民や各漁協はさんざんな目にあってきたが、別目的の協同組合解体まで強いられたのが、県一漁協合併計画だった。
 「経営基盤強化」といって誕生した山口県漁協では、発表された8カ月間の決算は各統括支店とも赤字続出で、漁業どころでない状況がつくりだされた。80万~100万円もの増資を強要され、途方に暮れる組合員がたくさんいる。借金させた金を集めて「増資達成!」と叫んでいる。
 138万円の出資金を1銭も返してもらえない脱退組合員(下関)がいたり、融資の取り立てが厳しくなって辞めざるをえなくなった人がいたりで、浜のじいちゃんばあちゃんの生活の糧が奪われようが、おかゆ暮らしの年金生活に叩きこまれようが、旧漁協の組合員が6割辞めて(豊北町)いこうが、行政も上部団体も心を寄せることなく強行。林派や信漁連の側が“基盤強化”した分、漁業者の側は“基盤崩壊”であった。
 怒濤の逃散劇(脱退騒動)は、漁協運営にマイナス効果として跳ね返るなど、経営基盤はまぎれもなく衰弱化。罪深い漁業破壊政策の姿そのものであった。有明海をつぶし、瀬戸内海をつぶし、沿岸を開発し尽くして、漁業者が悲鳴を上げるまで輸入魚介類を溢れさせた挙げ句に、意図的に廃業に追いこむ政策となった。

 紙切れ1枚で全て決定
 下関市の漁業者Aさんは、盆明けに支店(旧漁協)から配布されたペラ紙をつまみ上げて苦笑いを浮かべた。1部定款変更云々とあり、総会議決のために県下の組合員に賛否を問うたものだ。「紙切れ1枚ですべて決めていく。毎回、書面議決。これで4~5回目ぐらいだ。説明を文書で下ろして、○×しろといってくる。漁師をバカにしている」といった。2日後に提出しろといわれて、考える猶予さえないのかと怒りを感じた。
 「合併総会が大荒れになって否決が続出しただろ。今度は山口県中をひっくるめた“多数決”でやりたいようにする仕組みだ。本店の連中は漁師と直接顔を合わせないように、すべて間接的にやり抜けようとしている。本心はビビッているんだ」といった。
 仲間漁師のBさんも「あんまり小汚いやり方してると、もっと大きい反乱が起こるよ! みんな我慢に我慢を重ねて今があるんだから。合併して漁師の口を封じたと思うかもしれんが、わしらは直接乗りこんで行動するしか手段がなくなったということ。結局は実力行使しかないというのがよくわかった」といった。水協法や監督官庁など頼りになると思っていたら、ごり押しの道具・機関でしかなかったことを痛感したからだ。県漁協傘下の浜では「何か事あればみんなで直接行動する」という動きが強まった。
 「出資金の強制的な増資には応じない」として100人規模で組合員らが拒否し続けている周防大島町・東和では、山口県漁協には見切りをつけて別組合を立ち上げようと、漁業者らが模索をはじめた。“分離独立運動”に飛び上がったのは県漁協本店で、動きを察知するや否や、すかさず地元漁業者らに「お話がしたい」と談判を求める動きになった。同地域の正組合員のうち、半数以上が「さようならをいいたい」といい出したからだ。本店幹部職員が足を運んで話し合いが持たれたが、監督官庁・県は出席せずに逃げた。
 東和町では合併反対が根強く、可決になるまで合併総会を3回もおこなった(極めて不透明な開票によって可決となった)経緯がある。渦中で小田貞利元組合長を告訴するなどしたものの、革新系インチキ弁護士が敗北に導くなど権力寄り司法テクニックのデタラメさにも遭遇した。しかし漁業者らはムチャをごり押しした合併には従わないとして、最後まで引かない姿勢を貫いている。力ずくの権力には力ずくの抵抗をしなければ無力だという実感があるからだ。同海域の県漁協役員たちは集団化した抵抗になす術なく、県漁協本店も、機嫌を損ねたくないといった対応が続く。

 反映されぬ漁師の意見
 響灘で操業する老漁師Cさんは、浜の漁協がなくなって以後、航路の浚渫(しゅんせつ)が好き勝手におこなわれるようになり、砂取りの補償金も漁協の赤字経営にいつの間にか取りこまれ、漁師の意見は反映されなくなったと指摘する。「上のものだけで決めて、意見をいう場(総会)も持たれない。海は荒れるばかりで、われわれ漁業者から奪われる。これが合併の1番の狙いだったんですよ」と実感をこめた。
 信漁連の赤字を引き継ぐ山口県漁協は、単年度の赤字と引き継がれた累積赤字を消すために「雑収入(補償金)を手に入れるためならなんでもする」構図が強いられた。各支店(旧漁協)は剰余金まで出資に振り替えられ、貯蓄は空っぽになった。そこから利益を本店に上げろといわれるのである。困窮した経営につけこんで海や支店財産を売り飛ばさせる。しかも浜の発言権は抑えこまれ、紙切れ1枚で漁業権放棄などの案件が容易に決められていく体制ができた。
 沿岸開発をする側からすれば、そこで漁民が操業し、結束して抵抗してくる協同組合の存在が煩わしくてたまらない。上関原発計画や米軍岩国基地などはその典型例だ。合併が単純に信漁連の尻拭いというだけでなく、最大の狙いは、漁業権開放論者の側(大企業が歴史的に主張してきた)から漁業法を外国並みに規制緩和、構造改革することを国策として実行してきたのである。その先陣を切った山口県で大抵抗にあい、水産庁も巨大金融機関である農中も常識外れのテコ入れをして加勢した。

 不参加漁協地道な経営
 1県1漁協はならず、結果的に不参加漁協も複数残った。単独運営を掲げて合併を拒否した漁協の困難さも増したが、「負けるものか」の奮斗がつづく。
 新宇部漁協は、7月末までに信用事業を精算した。信漁連への出資金は約1億2000万円のうち約5300万円が毀損する。今後その5300万円を返済していくことになる。「絶対に迷惑はかけません!」と泣きつかれ、信漁連救済のために援助してやった金があぶく銭になって借金に化け、漁協経営の足を引っ張る存在へと変貌した。
 同漁協役員の1人は「単独を選択した意地がある。なんとしてもこの漁協を、自分たちの力で守っていきたい」と決意を語る。いまのところ順調な滑り出しで、単独経営を維持する自信が語られている。役員は1人100万円を運営費に拠出するなど、苦労を乗り越えながらの経営でもある。
 その他の不参加漁協でも、法外な借金をかぶせられながらも地道な経営がされている。

 漁業潰す政治との対決
 県一漁協合併は、全国まれに見る信漁連問題を抱える山口県だけではなく、その後、日本全国で動きはじめた。宮城県では山口県とそっくりな状況になっており、山口県の漁協関係者に教えを請うていた現地の人人も必死に抵抗している。信漁連の欠損金問題は合併させるための道具にすぎず、目的は別のところにあったわけである。そして漁業をより困難にさせたというのが、山口県の実態である。
 合併をすすめた力は、ヤクザも顔負けの権力の力であったが、それは漁業の外側から、つぶしてしまえという圧力にほかならず、水産国としての歴史をともなってつくられた漁業権制度を、外国並みになくしてしまえという外資、大資本が要求する規制緩和・自由化の政治であることを教えている。
 小泉政府は、農業とともに漁業もつぶしてしまう政治を意図的に実行しているが、輸入物を溢れさせて商社や外資を儲けさせるのと共通の問題である。市町村合併で地方を捨て、医療・福祉など社会保障を切り捨て、ハチャメチャな労働法改悪で若年労働者だけでなく、人が人として生きていけない社会をつくりだしていることも、大企業のほとんどが株式を外資に握られていたりすることも、構造改革・規制緩和と根を同じくしている。しまいには、アメリカの戦争の盾になってしまえという亡国政治に負けるわけにはいかないのである。
 山口県漁民の身体をはったたたかいは、全県民的な支持と共感を集めてきたが、県漁協の発足で一応の収まりがついたというものではなく、今から矛盾は噴出しようとしており、たたかいははじまったばかりといえる。漁民のたたかいが、農業とともに日本の食糧自給を守り、民族主権を守るたたかいとして、より全国民的な問題として広がりを持って強まることは疑いない。

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