いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

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国主導で下関を軍事都市化   人工島に続く巨大道路群   

 下関市内では、不気味な都市改造と軍港化への懸念が高まっている。「いったい何に使うのか?」とみなが首を傾げているのが垢田沖の沖合人工島で、開発が人知れず進行。周囲にはふんだんに税金を注ぎ込んだ巨大な4車線の道路群も完成した。下関港には、やたら自衛艦が寄港するようになり、行政・議会は自衛隊ヘリポートや物資備蓄庫を兼ね備えた「防災公園」をつくるのだと、張り切って視察に出かけている。近年、「彦島に核シェルターをつくれ」などと真顔で主張する自民党議員まで出てくる始末で、軍事オタクの江島前市長は、当時の安倍首相・官邸と直結して「北朝鮮が潜水艦で攻めてくる」と大規模な戦時訓練までやった。海上交通の要衝で、かつて軍事要塞都市だった下関をどうしようとしているのか。奥座敷に位置する岩国、瀬戸内海の広島湾岸一帯は米軍が極東最大の出撃基地にしようと企んでおり、“日本列島戦場化”の最前線ポイントとなる下関もこれらの動向と決して無関係ではない。

 入院患者移送に陸自が出動
 最近、市民を驚かせたのが国立病院機構「関門医療センター」の移転にともなう入院患者の移送だった。同市後田町から長府外浦町へと入院患者63人を一斉移送するために、数日前から「訓練」が繰り返され、モスグリーンの自衛隊車両や迷彩服が市内を走り回った。あまりの物物しさに「戦争でも起きたのか?」と周辺住民はビックリしていた。当日の15日には、市消防局のほかに陸上自衛隊第13旅団(広島県海田町)の約80人、自衛隊車両6台が出動した。数年前に済生会病院が安岡へ移転する際も、自衛隊が出動して市民を驚かせた。わざわざ迷彩服姿でヘルメットまでかぶって走り回る。まるで市街地訓練のような様相となった。
 その数日前には、あるかぽーと岸壁・下関港に自衛艦が3隻寄港。北朝鮮の人工衛星騒動に際して、迎撃体制の任務をおえたイージス艦や護衛艦が「親善」のために訪れ、装備を披露していった。対岸の門司港にも三隻が寄港したが、「下関に全艦を集結させたかった」のが自衛隊の本音だった。
 対北朝鮮などの軍事的行動において舞鶴、佐世保の中間ポイントにあたるのが関門地域で物資補給のほか、三菱重工のドックなど造船設備も整っている。ここから南下して佐世保に移動したり、あるいは瀬戸内海をのぼって呉港や横須賀港など主要な軍港に北上する起点ルートになっている。2006年のミサイル騒動の際、安倍元首相率いる内閣府が下関を臨検港に指定したことが、この地域を軍事的要衝として見なしていることをよく物語っている。
 あるかぽーと岸壁には商船の寄港があまり見られないかわりに近年は軍艦がよく停泊する。その度に歓迎セレモニーを行政が準備して、せっせと駆け回っている。海峡祭りには、陸上自衛隊が出動して車両を見せ物にするのが恒例になった。有事の際に立ち寄った“軍人さん”をもてなす施設が、あるかぽーと地区に計画されている高級ホテルやショッピングモールといったところで、出馬を断念した江島前市長は隣接する現庁舎を解体して、自衛隊ヘリポート・物資備蓄庫を備えた「防災公園」を建設する案までブチ上げていた。
 唐突に出てきた「防災公園」建設は、安倍派を中心とした勢力のなかでは絶対的な決定事項のようで、関谷議長らが3月に東京・武蔵野の防災公園を視察し、飛行機の格納庫などを備えたかつての陸軍基地の跡地をのぞいたり、市長選では安倍派・香川氏も幡生ヤードに防災公園を建設すると主張していた。江島氏は「これからの下関は海峡の街ではなく防災の街(つまり軍事都市)にする」と発言するなど、足並みを揃えている。地震や天災への備えというよりは、軍事色ばかり先行してきたのが特徴。

 響灘の方ばかりを重視 不気味な都市改造 
 そして市民が最も驚いているのが不気味な都市改造である。主に響灘側ばかりに力が注がれて、つぎつぎと巨大な道路群が連結していく。下関北バイパスや鉄道輸送の幡生ヤード、下関インターチェンジへと一直線でつながる道路は、戦車が走っても大丈夫な耐震性を誇る作りだ。市民生活とは関係ないので、日頃は車がほとんど走っていない。歩道も幅にゆとりがあり、緊急時には拡幅可能。すべての道が人工島を心臓部にして伸びているのが特徴で、「これほどの道路網整備を施して、いったい何に利用するのか」という疑問が語られてきた。いまのところ沖合人工島は岬之町コンテナを移動させる以外に利用目的の展望はない。春から一部供用開始となっているものの、まったく利用されていない。海風がひどすぎるので、商港として使うなら船会社や保険会社は嫌がって、船が逃げていくと懸念されている。
 しかし江島市政が「国策」と断言し、国が巨額の資金を注ぎ込んできた事業の背景に目的がないわけがなく、明確な別目的が含まれていることは疑いない。すでに700億円以上もの資金を投じている。最終的に米軍と海上自衛隊あたりが「海外派遣を本来任務にする」ための軍港にするとしか考えられないものとなっている。岩国では愛宕山開発で財政破綻・予算配分のストップをやり、米軍再編を認めさせる手口を使ったが、巨大箱物での食いつぶし政治は、軍港化のための意図的な財政破綻というなら、すでに岩国の前例があってわかりやすい。
 軍事利用という点では、かつての市長のなかに「防衛施設局に売り払えばよいのだ」と公言していた人物もいる。自衛隊駐屯地、あるいは物資庫などで利用されたとして、約5000人ほどが下関に住めば、給料は国から支給されるので、外(東京)からのカネが落ちて潤うし、用地が売れれば市財政への負担もペイできる、という踏み込んだ話を聞かされた人人もいる。
 公務で横須賀に自衛艦を視察に行く、あるいは市長応接室は自衛艦の写真ばかり飾るなど、軍事に異様な執着を見せていたのが、14年来の市政を執行してきた江島氏で、とりわけ海軍が大好きな「アーミー市長」として、オタクぶりは有名だった。しかし市長個人の軍事趣味だけでこのような事態にはならない。安倍戦争政治のお先棒を担いでいたに過ぎず、六連島で官邸と直結した全国初の実働訓練をするなど、国の政策を率先して進めてきた、海峡の街を軍事的要衝と見なしている連中が、1つの勢力をなしてうごめいている。

 岩国基地増強とも連動 山口県下も巨大道路 
 近年、政府が有事体制を強化するなかで、下関においても具体化が露わとなってきた。90年代から周到に準備してきた有事体制であるが、ここぞとばかりに興奮して推進してきたのが安倍代議士の選挙区・下関であった。もともと関門地域が狙われる動機などないのにムキになって「敵が攻めてくる」といって聞かない。米軍艦船が好き放題に利用できる港になり、テロ対策として港にはフェンスが張り巡らされた。テロ対策訓練には自治会などを動員し、「武力攻撃を受ける街」づくりは他の自治体よりも突出して進められてきた経緯がある。
 市民の知らないところで、核兵器や生物兵器、ゲリラ攻撃など、「武力攻撃」を想定し、市役所をはじめとした各組織の体制整備も整頓。各組織がどう機能して対処するか、国、県、警察、自衛隊、消防などの動きや指揮系統も確認し、情報収集体制の整備、住民避難の措置など、百数十ページにわたる計画書も作成した。度重なる訓練は、国の進める方向を先取りしてアピールすることと同時に、住民動員の実地訓練の意味も含まれた。
 「戦後レジームからの脱却」「北朝鮮制裁」等等、やたら勇ましい事を主張し、アメリカ隷属の“日本列島戦場化”体制を強化してきた張本人が安倍代議士で、落ち目になったと思えば、今度は林芳正参議院議員が防衛大臣に就任したりする。そして政府中枢のポジションから、米軍再編やミサイル騒動、有事法制にあらわれているような、日本列島をアメリカ本土防衛の盾にする国づくりを推進してきた。狙われているのはアメリカであって、こんな連中とは縁を切ればいいのに、日本政府が興奮して大騒ぎするのである。そしてイラクやアフガンまで米軍の下働きとして出動して、わざわざ恨みを買う。「武力攻撃を受ける国」づくりとしかいいようがない。
 山口県内では、厚木基地の空母艦載機移転が問題になっている岩国の都市開発、変貌ぶりもすさまじいが、そこから2号線を下った岩国―下松間の田舎道まで4車線化やバイパス建設が進行し、小郡―下関までの国道もバイパスを貫通させる工事が急ピッチで進められている。下関市小月のバイパスも四車線化。地方都市にそぐわぬ巨大道路は、住民の利便性よりも別目的を感じさせるもので、いったい誰が何のために整備しているのか、不可解極まりない状況になっている。岩国から瀬戸内海側の工業地帯、さらに下関へ至る移動時間は相当に圧縮されることになる。
 米軍再編が進められるなか、問題になっているのは、決して基地の街だけではない。日本が持っている修理・補給・物資調達能力を要求しているのが米軍で、地方自治体の管理下にある空港、港湾などの活用を願望して、各地で既定事実づくりに勤しんでいる。そして国内では、何かあれば政府機関・地方自治体、医療機関や交通機関、土木会社にいたるまでがフル動員される義務を負い、国民は戦争協力しなければ豚箱に放り込むという法律まで勝手につくり上げているのだから、デタラメである。下関や岩国などにあらわれている一連の動きは、決して他人事ではない。

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