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森友学園問題訴訟第1回口頭弁論 真相究明求め赤木氏の遺族が訴え

 財務省が大阪府豊中市の国有地を実質無償で譲渡していた「森友学園問題」をめぐり、一昨年に自殺した近畿財務局職員の赤木俊夫氏の妻・雅子氏が、国と佐川宣寿・元財務省理財局長に損害賠償を求めて起こした訴訟の第1回口頭弁論が15日、大阪地裁(中尾彰裁判長)でおこなわれた。真相究明を求める遺族の訴えに対し、国と佐川氏側は請求棄却を求めて争う姿勢を示している。

 

 訴状によると、故・赤木俊夫氏(当時54歳)は、2017年2月に同国有地を森友学園に売却した取引の経緯を記した公文書から、国側が特別な配慮をしたことを示す部分の改ざんを強制され、昼夜を問わない長時間労働のストレスからうつ病を発症し、2018年3月に自殺した。そのさい赤木氏は、公文書改ざんに至る詳細な経緯とともに、自責の念に苦しむ胸中を吐露する手記を遺族に残している。

 

 今年3月、遺族によって公開された赤木氏の手記(2018年3月作成)には、「本件事案(森友学園への国有地売却問題)に関する真実」として、「財務局が現場として対応中の個別の事案は、動きがあった都度、本省と情報共有するために報告するのが通常のルール」であり、売却にかかわる応接記録などすべての資料は近畿財務局から本省に提出されており、手続きは財務省本省の主導でおこなわれたことを暴露している。

 

 また、佐川氏が国会で「廃棄した」とした文書は執務参考資料として保存されるのが一般的であり、その他の開示請求資料についても財務省(理財局)から「できるだけ開示しない」「開示するタイミングをできるだけ後送りする」、また「資料は最小限とする」「できるだけ資料を示さない」「検査院には法律相談関係の検討資料は『ない』と説明する」などの指示が出ていたことを実名入りで明かしている。

 

 そして、虚偽答弁の矛盾が明らかになるにつれて、局内で違和感が強まったものの「近畿財務局の幹部をはじめ、誰一人として本省に対して、事実に反するなどと反論(異論)を示すこともしないし、それができないのが本省と地方(現場)である財務局との関係であり、キャリア制度を中心とした組織体制そのもの(実態)」であるとし、「財務省理財局(国有財産担当部門)には、組織としてのコンプライアンスが機能する責任ある体制」はなかったことを指摘している。

 

 最終的に佐川氏から「野党に資料を示した際、学園に厚遇したと取られる疑いの箇所はすべて修正」するよう指示が出て決裁文書の調書の差し替え(改ざん)がおこなわれた。抵抗した赤木氏もこれに従わざるを得ず、「本省杉田補佐の指示に従い、あっけらかんと修正作業を行い、差し替えをおこなった」「大阪地検特捜部もこの事実関係をすべて知っています」とのべている。

 

 すべて本省の指示でありながら「最後は逃げて、近畿財務局の責任とする」という筋書きで処理しようとする財務省本省への憤りとともに、「刑事罰、懲戒処分を受けるべき」は「佐川理財局長、当時の理財局次長、中村総務課長、企画課長、田村国有財産審理室長ほか幹部、担当窓口の杉田補佐」であることを告発したうえで、「この事実を知り、抵抗したとはいえ関わった者としての責任をどう取るか」というみずからの苦悶とともに、家族への別れの言葉を記している。

 

 15日、口頭弁論で初めて公の場に姿を現した妻の赤木雅子氏は、涙で声を詰まらせながら裁判官に向かって概略以下のように意見をのべた。

 

陳述の要旨

 

 私は夫の死後2年経過した2020年3月18日、やっと遺書や手記を公表しました。

 

 同じ日に夫がみずから命を絶った原因と経緯を明らかにし、夫と同じように国家公務員が死に追い詰められることがないようにするため、そして、事実を公的な場所で説明したかったという夫の遺志を継ぐため、国と佐川さんを訴えるところまで進みました。

 

 夫は、亡くなるおよそ1年前である2017年2月26日(日曜日)、私と神戸市内の梅林公園にいた時、近畿財務局の上司である池田靖さんに呼び出され、森友学園への国有地払い下げに関する決裁文書を改ざんしました。

 

 決裁文書を書き換えることは犯罪です。

 

 夫は「私の雇い主は日本国民。国民のために仕事ができる国家公務員に誇りを持っています」と生前知人に話していたほど、国家公務員の仕事に誇りを持っていました。そのような夫が決裁文書の書き換えという犯罪を強制されたのです。

 

 夫の残した手記によると、夫は改ざんを指示されたさいに「抵抗した」とあります。私は夫の死後、池田さんからも、夫は改ざんに最初から反対していたと聞きました。

 

 夫が、決裁文書の改ざんによって受けた心の痛みはどれだけのものだったでしょうか。国家公務員としての誇りを失い、強い自責の念に襲われたと思います。

 

 夫は手記や遺書に「この事実を知り、抵抗したとはいえ関わったものとしての責任をどう取るか、ずっと考えてきました。事実を、公的な場所でしっかりと説明することができません。今の健康状態と体力ではこの方法をとるしかありませんでした。(55才の春を迎えることができない儚さと怖さ)」、「現場として相当抵抗し、最終的には次長が修正に応じ、修正前の調書に合わせて自ら、チェックマークを入れて体裁を整えました。事実を知っている者として責任を取ります」と書いています。

 

 夫は、改ざんしたことを犯罪を犯したのだと受け止め、国民の皆さんに死んでお詫びすることにしたんだと思います。夫の残した手記は、日本国民の皆さんに残した謝罪文だと思います。

 

 国は、夫の自死の真相が知りたいという私の思いを裏切り続けてきました。

 

 財務省は、夫が亡くなった5日後の2018年3月12日に改ざんしたことを認め、3カ月後の6月4日に調査報告書を発表しました。しかし、この調査報告書の中には、誰のどのような指示に基づいて夫が改ざんを強制されたのか記されていません。夫が自死したことすら記載されていません。

 

 私は、夫の自死が公務災害となった理由を知るため、人事院に対して情報開示請求をしました。しかし、人事院の開示した文書は70ページのほとんどが黒塗りで、夫がなぜみずから死を選び悩み苦しんだのか、私の知りたいことは何一つわかりません。

 

 そこで私は、2020年4月13日に、近畿財務局に対して情報開示請求をしました。

 

 しかし、1カ月後の5月13日に開示されたのは、年金の金額や支払日などが書かれたたった10頁の文書でした。残りの文書については、新型コロナウイルスによる緊急事態宣言に伴う処理可能作業量の減少などを理由に、1年後の2021年5月14日までに開示決定をするそうです。国はこの裁判でも同じような態度をとるのでしょうか? これではこの裁判でも真実には近づけません。

 

 私は、夫が自死に追い詰められた真相を明らかにするため、第三者委員会による再調査を求める電子署名を始めました。35万人を超える方々から賛同の署名をいただき、2020年6月15日に安倍首相や麻生財務大臣へ提出しました。しかし、安倍首相も麻生財務大臣も、すでに検察の捜査も済んでいるので調査しないと切り捨てました。でも、検察の捜査は刑事処分のためのもので、真相解明の調査とは別の物です。

 

 国は、国民にも夫にも向き合わず、あるものを出さず、ズルズル先延ばしにして逃げています。再調査を実施して、正直にすべて明らかにしてください。再調査の結果はこの訴訟でも役に立つと思います。

 

 安倍首相は、2017年2月17日の国会で、安倍首相や安倍昭恵さんが森友学園の国有地払い下げにかかわっていたら総理大臣も国会議員も辞めると発言しました。

 

 財務省秘書課長は2018年10月、私に対して「この首相の発言によって、野党が理財局に対して資料請求するなど炎上したため、理財局は改ざん前の文書を出せなかった。その意味で、首相の発言と改ざんは関係がないとはいえない」と言いました。安倍首相は、自分の発言が改ざんの発端になっていることから逃げているのではないでしょうか。安倍首相は、自分の発言と改ざんには関係があることを認め、真相解明に協力して欲しいと思います。

 

 安倍昭恵さんも森友学園への国有地売却の関係を明らかにしてほしいと思います。

 

 池田さんも、池田さんの前任者も「裁判になれば、本当のことを話します」と私にはっきりと言いました。

 

 この裁判では、前任者には、安倍昭恵さんと籠池夫妻のいわゆるスリーショット写真がどのように国有地の取引に影響したのかを、池田さんには、国有地値引きと決裁文書改ざんをめぐり、近畿財務局の中で何がおこなわれたのかを話していただきたい。

 

 また、佐川さんをはじめとする理財局の幹部の人達や、美並局長をはじめとする近畿財務局の幹部の人たちも、事実をありのままに話してほしい。もしこれらの人たちが裁判に来なかったり、裁判に来ても事実を話さなかったとしたら、国が本当にあったことを国民から隠し、すべてなかったことにするために止めたのだと思います。

 

 安倍首相、麻生大臣、私は真実が知りたいです。

 

 夫は亡くなった日の朝、私に「ありがとう」と言ってくれました。最期の夫の顔は「絶望」に満ち溢れ、泣いているように見えました。決して生き残らないように、電気コードは首にきつく二重にくくりつけていました。怖がりだった夫が、こんなことをしなければならないなんて。

 

 真面目に働いていた職場で何があったのか、何をさせられたのか私は知りたいと思います。

 

 最後に、裁判官の皆様にお願いがあります。夫がみずから命を絶った原因と経緯が明らかになるように訴訟を進めてください。夫が作成したファイルを含めてできるだけたくさんの資料を集め、できるだけたくさんの人の尋問をおこなって事実を明らかにしてください。そのうえで、公正な判決を下してください。

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