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籠池被告が語る森友事件の真相 何がおこなわれてきたのか 長崎市で講演会

長崎市で講演する籠池泰典、詢子夫妻(6日)

 安倍首相夫人が名誉校長に就いた小学校建設のために国有地がほぼ無償で提供されて騒動に発展した森友学園問題の真相に迫ろうと、報道機関のOBなどでつくる「言論の自由と知る権利を守る長崎市民の会」が6日、森友学園の籠池泰典(前理事長)、諄子(元副園長)夫妻を長崎市に招いて講演会 「真相トーク 森友事件」を開催した。

 

 事件をめぐって検察側は10月31日、籠池夫妻に対して詐欺罪などで懲役7年を求刑。一方、財務省が初公開した国有地売買にかかわる5600枚もの資料は大部分が黒塗りであった。首相夫人や多数の政治家がからみ、2年以上も国会を空転させたあげく、公文書の改ざん、担当職員の自殺など重大問題を発生させた事件であるにもかかわらず、私人である籠池夫妻だけを問答無用で処罰し、権力側の疑惑に対しては「記録も記憶もない」や黒塗り文書で対応するという極めて不公平で不可解な形で幕引きが図られている。トカゲの尻尾のように「被告人」とされた籠池夫妻の発言から森友学園問題のその後を見てみたい。

 

異例づくしの国策捜査 事実の隠ぺいと口封じ


 検察に「懲役7年」を求刑された籠池夫妻は現在保釈中で、来年2月19日の判決を待つ身にある。2回の家宅捜索で証拠品を押収され、大阪地検特捜部による逮捕で300日間に及ぶ異例の長期拘留を受け、学園の土地・建物、さらに自身や親族の自宅などの財産まで差し押さえられたあげく競売にかけられており、もはや失うものは何もない立場といえる。籠池夫妻は論告求刑を受けた31日には外国特派員協会でも記者会見をおこない、この間おこなわれてきた「異例づくし」の捜査の内実を明らかにした。


 講演に先だって籠池泰典前理事長は「森友事件をいい換えるなら『安倍晋三記念小学校ゲート(疑獄)事件』といえる。私たち夫婦は300日間も拘置所に入っていたが、政権の側からいえば口封じだ。この問題が騒動になってから国会の証人喚問にも応じ、知りうる限りの真実を語ってきた。官邸側は私たちだけを詐欺を働く人間として逮捕して世間の目やマスコミの画面から強制的に遠ざけ、『人の噂も75日』で事件を忘れさせる効果を狙ったものだ。だからこそ原点からもう一度見つめ直して、事件の真相を紐解いていただきたい」と訴えた。


 また今回の検察側の論告求刑では、求刑理由に書かれた事柄の大半が籠池前理事長ではなく、妻の諄子氏のことだったことを指摘し、「拘置所でも独房に入れられ、24時間監視されるなど、私よりも家内に対する仕打ちがひどいものだった。その理由は家内が安倍昭恵夫人と親しかったからであり、家内に詐欺師としての罪を負わせることで安倍首相夫妻からすれば“私たちは詐欺師に騙された”という図式にできるからだ」とのべた。


 そもそも検察が籠池夫妻を逮捕した容疑は、森友学園が新設小学校建設に、木材建築を推進する「サステナブル建築物等先導事業」の補助金(約5600万円・後に全額返還)を受けるさい、国交省に実際の工事代金よりも高い契約書を提出するなどしたというもので、事件の核心である国有地売買とは別件である。たとえ書類に不正があったとしても、補助金支出は国による厳正な審査が前提となるため、「審査は適正だった」という国側の説明と矛盾する。しかも全額返還済みの事案であり、補助金適正化法違反では「未遂罪」で起訴することはできない。


 籠池氏によれば、籠池夫妻が逮捕される日を前後して、籠池氏の自宅や学園には大阪地検特捜部が2回の家宅捜索に入ったが、この補助金の交渉を担当し、工事費の見積もりを一任されていたキアラ設計や工事を施工した藤原工業には一切家宅捜索は入っていない。設計や工事費用、補助金額算出について素人である籠池氏が国の目をごまかせるような不正資料を作成することは不可能で、詐欺罪を問うのなら作成した業者も共犯となる。だがキアラ設計は施主である籠池氏との会話内容を秘密裏に録音して検察に提出していた。籠池氏は「彼らが主導者でありながら、その罪を施主である私に振り向けた。検察はその音声を恣意的に抜き出して証拠として裁判所に提出した。あからさまな司法取引がおこなわれた」と告発した。


 「逮捕された2017年7月31日は、家内は私の付き添いのつもりで検察庁に出頭したが、途中でわかれて家内も逮捕された。しかも家宅捜索をしたのも、逮捕したのも同じ堀木博司検察官だった。この事件発覚後の2017年4月1日に、わざわざ東京地検特捜部から大阪地検特捜部に異動してきた“特捜部のエース”といわれる人物で、彼が私たちの尋問を担当し、そのなかで300日も勾留した。しかも公判が始まると今度は公判の検事としてやってきて懲役7年を求刑した。通常は捜査・立件・公判は別の検事が担当する。異例のことであり、背後に練りに練られたシナリオがあることがわかる」とのべた。


 また、「私たちを逮捕した当時の山本真千子・大阪地検特捜部長は、函館地検に栄転する直前、もともとの補助金適正化法違反から詐欺罪に私たちの容疑を変更した。補助金適正化法では未遂罪が適用できず、勾留ができないからだ。勾留することで口封じができ、詐欺を働く人物という強力なレッテルを押せる。勾留の間、財務官僚をはじめとする国の役人の責任が不問に付され、闇に葬られ、森友問題の幕引きが図られたことと関係している」とのべた。山本検事は、公文書改ざんや国有地の不正売却で告発された佐川元国税庁長官など財務官僚を全員不起訴にした後に検事正に昇進し、11月の人事でふたたび大阪地検に次席検事として戻っている。官邸に忖度して黒を白といい張ることで出世した財務官僚と同じく、検察でも論功行賞ともいえる人事が露骨にあらわれており、籠池氏は「国家が動いた国策捜査、国策逮捕、国策勾留であることの証だ」と強調した。

 

昭恵氏関与で吹いた「神風」   国側が値引シナリオも

 

小学校予定地を訪れた籠池夫妻と安倍昭恵(2014年4月25日)

 籠池氏は、事件の一連の経緯について「小学校建設に向けて事態が急速に動き出したのは安倍昭恵夫人の力添えがあったからこそであり、講演で来園されたさいには“一人にさせてごめんなさい。安倍晋三からです”と100万円の寄付までいただき、公私ともどもに力添えいただいた。昭恵夫人には名誉校長を快諾してもらい、小学校で使う予定のテキスト(副読本)も相談して見てもらっているし、建設予定地の国有地までお連れして“いい土地ですね、どうぞ進めてください”という言葉をかけていただき、写真まで撮っていただいた。ところが2017年2月8日、大阪府豊中市の木村真市議の記者会見で国有地が安価で取引されている問題としてとりあげられてから騒動がはじまった。そのとき私は“何が起こったのか?”と不思議だった」と当時をふり返った。


 問題の核心は、8億円値引きの根拠となった国有地の地下埋設ゴミの存在だった。この時点で1億3000万円(後に航空局からの有益費で補てん)かけて地下ゴミを搬出し、「きれいな土地になった」と認識していた籠池前理事長は、近畿財務局との交渉をゴミ搬出業者の中道組から紹介された酒井康生弁護士に一任していたという。


 そして2015年9月4日、前日に安倍首相が迫田理財局長と面談後、国会審議を抜け出して大阪を訪問し、昭恵夫人が森友学園塚本幼稚園で2回の講演会をするなど、安倍夫妻の動きが森友学園のある大阪に集中していたころ、近畿財務局でキアラ設計、施行者の中道組の担当者、近畿財務局、国交省大阪航空局の「4者協議」がおこなわれた。ここで業者側から新たなゴミの存在が出され、財務省から「場内埋め戻し」が提案されるが、その内容は施主である籠池氏には伝えられていなかったという。


 籠池氏は、「2016年3月11日、杭打ち工事で地下3・8㍍よりも深くから廃材ゴミが出てきたと業者(藤原工業)から突然連絡を受けた。不可解にもゴミの存在を発見してから5日後に私に伝えてきた。業者から“これで校舎を建てたら倒壊する恐れもある”といわれたが、すでに入学希望者も決まっており、これ以上開校が遅れたらたいへんなことになると思い、近畿財務局の池田統括官に連絡し、財務省国有財産審理室長の田村氏の連絡先を教えてもらって直接電話をした。翌日に霞ヶ関に夫婦2人で会いに行き、中道組から受けとった「4社会談」の(私もこのとき初めて見た)議事録をもって行き、“近畿財務局からゴミの埋め戻しを要求されているのでなんとかしてほしい”とお願いした」とのべた。


 さらに「その前の2015年11月に安倍昭恵首相夫人に電話し、首相夫人付秘書の谷査恵子氏につないでもらって“年間2700万円の賃借料をもっと安くできないか”という相談をしていた。昭恵夫人は政府専用機の中にいたので安倍首相の耳にも入っているはずだ。財務省の田村室長と会ったときにもその話をして“学校開設が間に合わなければたいへんなことになる”と話した。このあたりから物事が急速に動き始めた」と話した。


 この田村室長との面談について田村氏本人は「記憶にない」としていたが、録音していた音声データを籠池氏が公表したことで事実を認めている。ここで田村室長は本事案について「特例的なもの」とのべていた。さらに近畿財務局の池田統括官とのやりとりも音声データが残っており、「来月早早には金額をご提示させていただくので、それでご判断いただきたい」と値段提示(規則違反)を約束し、「1億3000万以下への値下げは厳しいが一10年分割の支払いなら可能」「劇的に月額の負担料が安くなる」と異例の譲歩案まで提示していた。そして、2014年時点で、近畿財務局から名前と日付を書きさえすれば提出可能な契約書原案まで添付された「手引き書」が学園側に手渡されていたことも発覚している。


 籠池氏は「私たちが田村室長に会いに行ったときは“賃借料を安くしてくれ”というレベルのお願いだったが、酒井康生弁護士が入るとともに近畿財務局の方から“買いとるという方法もあります”といわれた。そこから買いとりの方法に進んでいった」とのべた。そして、近畿財務局と大阪航空局から「埋設物に関する資料」の提出を求められ、キアラ設計、藤原工業が算出した複数のプランを引用する形で国交省が8億円の値引きを決めたことも明らかになった。財務省や国交省の「国の独自調査による積算」という答弁は虚偽であることを物語っている。

 

公文書改ざんと籠池切り 首相の発言を契機に

 

 さらに籠池氏は、2017年2月に「森友学園問題」がメディアや国会でクローズアップされるなかで、2月20日には酒井弁護士から「財務省の佐川理財局長から“身を隠せ”といわれた」と連絡を受けて、その日のうちに大阪から京都に出奔していたことを明かし、「翌日に野党議員が学園を訪問したが、それは私には知らされていなかった。事態が錯綜し、保護者への説明など非常に重要な時期であったが、私は指示通りに身を隠した」とのべた。


 そして「22日には内閣府で官房長官会議が開かれていた。佐川理財局長、中村理財局総務課長、太田審議官(現主計局長)、国土交通省航空局次長、さらに航空局職員と秘書官らが財務省から出てきた一連の文書を確認していた。その日のうちに2回も開かれており、その場で決まったのが財務省文書の改ざんだった。同時に籠池切りがはじまった。私は27日にNHK大阪放送局でゴミの問題について説明していたが、ちょうどそこから100㍍しか離れていない近畿財務局では文書の改ざんがはじまっていたのだ」と強調した。


 その後、2月17日には「(籠池氏の)教育に対する熱意はすばらしい」「私の考え方に非常に共鳴している人」といっていた安倍首相が、24日には「非常にしつこい人」「教育者としていかがなものか」といいはじめ、籠池夫妻が出奔する前日には、大塚高司・自民党国対副委員長が籠池氏のところへ訪ねてきて「昭恵夫人の名誉校長を外してくれ」と要請していた。


 籠池氏は「私が“当人がそういわれているのか?”と聞くと、大塚氏は“違います。国対からの要請だ”というので断った。すると23日、財務省に従って京都にいた私のところへ安倍事務所の初村秘書から電話がかかり“昭恵夫人の名誉校長の称号を外してくれ”という。そして“いまから学園にFAXを流すから、その内容を学園ホームページに掲載するように”といわれた。学園が“理事長不在です”と断っても執拗に電話してきたのも初村秘書だった。そして私の携帯に電話があったのでFAX番号を教え、その内容に従って昭恵夫人の名誉職を外した。すると、その直後に昭恵夫人から家内のところに連絡があり“私は知らないんです。私は名誉校長を外れる気なんてないんです。いまも一緒です”といわれた。それが演技なのかどうかはわからないが、事務所まで関与していたのは事実だ」とのべた。


 安倍首相は「私や妻がこの認可あるいは国有地払い下げに、事務所も含めて一切かかわっていない。もしかかわっていたのであれば総理大臣をやめる」と国会で明言している。

 

学園破産させ証拠隠匿か 管財人の奇怪な動き

 

大阪府豊中市にある森友学園の新設小学校予定地(2017年)

 安倍首相夫妻の「てのひら返し」と「尻尾切り」によって籠池夫妻は一気に追い詰められていく。


 籠池氏は「3月15日に私の国会証人喚問が急きょ決まったが、先立つ3月10日に私たちは酒井弁護士から“学校の認可申請をとり消したらどうか?”といわれ、松井大阪府知事(当時)もぶら下がり会見で“認可しない”と発言した。教育委員会の下に私学課があるので本来は府知事には権限はない。だが、その言葉がメディアを通じて私の耳にも、融資を約束していたりそな銀行の耳にも入る。すでにりそな銀行は2月24日の安倍首相の発言の段階で財務省銀行局から“融資をやめておけ”と連絡が入ったのか、融資を渋り始めていた。その10億円の融資がなければ、藤原工業に工事費を支払えない。だからりそな銀行とは10億円の枠内での融資を約束する契約を結び、そのために私たちは2500万円を払っていた。だが藤原工業も取引銀行がりそな銀行であり、運転資金を握られているため“このままでは会社が潰れる”といわれ、酒井弁護士からもいわれるので、私はやむなく小学校の認可申請をとり下げた。だが現段階では、藤原工業も弁護士も官邸側の意向に沿って動いていたことがわかる。藤原工業は国交省の認可団体であり、キアラ設計も設計業務に国交省の認可がいる。学校用地ももともとは国交省の土地であり、埋設ゴミの有無も含めて全部知っているのが国交省だ。私たちの嫌疑も国交省のサステナブル補助金をめぐる詐欺になっている。財務省だけが大きく扱われるが、この事件で核になって動いていたのは国土交通省だ」と指摘した。


 小学校開設が水泡に帰した後も「籠池潰し」は止まらなかった。籠池氏が国会の証人喚問で安倍昭恵夫人から100万円の寄付を受けとったことを公表すると、自民党の竹下国対委員長は「首相に対する侮辱だ」と恫喝しており、籠池氏は「このときすでに私たちを拘置所にぶち込むというのは既定事実だったのだと思う。大阪地検の最高検の検事長は首相の任命であり、官邸指揮下で籠池抹殺のシナリオを動かしていった」とのべた。


 多額の負債を背負って小学校の認可をとり下げた森友学園は、籠池夫妻が理事役員を退いた後、娘が新理事長に就く。


 籠池氏は「学園は20億円もの負債があり、民事再生をしなければ債権者に迷惑がかかる。このとき裁判所が管財人として選定したのは、弁護士として日本では2人しかいない共謀罪法案賛成で名乗りを上げた疋田淳(きよし)弁護士だった。民事再生はスポンサーからお金が集まれば解決する。学園にスポンサーが集まり、返済のメドがついたため、疋田管財人に“スケジュール通りではなく、早めに債権者にお金を返してほしい”と相談したところ、疋田管財人は“民事再生などする気はない。3年後に破産させるつもりだから園児の募集はしないように”といい放った。驚いた理事長が裁判所に行って資料を確認すると、民事再生ではなく破産扱いにすると疋田管財人が記入していた。ここまで政権の手が伸びていたのか…と驚いた」とのべた。


 また「疋田弁護士は民事再生中にある学園の教職員のボーナスをなくし、給料も削ったあげく、学園資金から毎月70万円を自分の給料として受けとり、これまでに2100万円ほど自分の懐にしている。勝手に印鑑まで変えられ、学園はたいへんな事態になっている」と訴えた。


 そして、国が債権回収もせずに破産を選ぶ理由として以下の三つを挙げた。


 、「森友学園を潰してしまえば、森友学園という名前がなくなるため、森友学園問題が世間の記憶から消えて行く」。


 、「財務省が管理している学園用地を氷漬けにできる。いまは藤原工業が留置権をもっており、森友学園も4億5000万円分の債権をもっているから好き勝手にはできない。だが森友学園がなくなれば、留置権が解決さえすれば国交省大阪航空局は氷漬けにすることができる。本当に地下に8億円分のゴミがあるのかどうか調べることができなくなる。すでにりそな銀行は学校認可を取り下げた時点で、財務省銀行局を忖度したのかみずから質権を手放している」。


 、「森友学園がなくなると、2回にわたる家宅捜索で押収した膨大な資料を返却する先がなくなる。押収資料には有力政治家とのかかわり方、財務省とのやりとり、安倍昭恵夫人とのかかわり方などがわかるたくさんの証拠書類がある。彼らがそれを隠匿し、闇に葬ることができる」。


 さらに籠池氏は次のように続けた。


 私たちを詐欺罪で拘置所にぶちこんでいる間に、私たちが別に運営していた籠池学園の幼稚園は大阪府によって仮差し押さえされ、そのまま競売にかけられた。籠池学園にも文科省から補助金が入っている。通常は国の補助金の入った学校法人の幼稚園は確保しておくものだ。だが大阪府の固定資産税を滞納していたので、首長が「維新の会」である府と市が連携して企業に売り払った。8月にできたばかりの松井大阪市長の関連企業だ。


 肇國舎高等森友学園(保育所)にも1億円ほど国の子ども資金が入っていた。ここには46人の子どもが通っていたが、吉村前大阪市長は他の保育所に強制的に転園させ、どうしても残りたいという保護者については“待機扱いにする”と脅迫めいたことをしてすべて退園させたうえで認可をとり消した。これによって固定資産税が発生すると同時に、森友学園の土地を借りていたために、森友学園の疋田管財人に賃借料を払わなければならなくなる。それが10カ月分ほど滞納した段階で疋田管財人が提訴し、裁判所は保育所の賃借権を解除した。それによって保育所は潰されることとなり、1億円の国の補助金は水泡に帰した。国の財産を守るべき国としては異例の措置だ。

 

値引問題に触れぬ検察  片手落ちの国策裁判

 

 「私たちは家もなくなり、運営するものもなにもなくなった。なにもないがこうして生きている。この事件の真相を究明するために頑張ってみなさまにお話をして回っている」とのべた籠池氏は、「安倍首相夫妻が動いてくれたことでスピーディーに学校建設が進み、平沼赳夫先生や故・鴻池先生にもお願いし、他の有力な政治家もたくさん動いてくれた。忖度をして動いてくれていた地方議員もいる。当時は内閣府副大臣の西村康稔さん(現・経済再生担当大臣)も自民党会館の前で“なんでもいってください! なんでもします!”といっておられた。キアラ設計、藤原工業は8億円分のゴミがある前提で動いていたが、私には知らされず、最終的には近畿財務局から1億6000万円といわれて印鑑を押した。だが、あの官房長官会議からは、安倍首相や昭恵夫人の名前がつくものはすべて改ざんだ。官がかかわるところはすべて口封じであり、“ここまでやるか”というほど、分立しているはずの三権がまとまって襲いかかってきた」とのべた。


 そのうえで森友学園の新設小学校づくりの人脈となった日本会議や、園児に教育勅語などを唱和させていた当時の学園教育についての認識を参加者から問われると、「日本会議は国会議員、地方議員は多いが、会費を払っている一般会員はそれほど多くない。だが権力に集まっていくという習性がある」とのべ、みずからそのなかに身を置き「教育勅語や安保法制万歳などと子どもに唱和させたことについては、まことに行きすぎたことをしたと思っている。お詫び申し上げる」と夫婦で頭を下げた。


 森友学園をめぐる籠池裁判は、問題の核心である国有地の値引き払い下げには一切触れることなく結審し、国側が隠してきた事実を暴露した籠池夫妻だけを、国家権力の限りを尽くして「詐欺師」として断罪する国策捜査に終始した。一方で、財務省資料のような「真っ黒」な疑惑は何ひとつ解明されておらず、世間は誰も納得しない。力業で幕引きを図るも、閣僚の不祥事や辞任があいつぎ、トップが嘘に嘘を重ね、人事権を振り回して組織ぐるみの隠ぺいを続けるなど、統治の腐敗と組織瓦解に歯止めが掛からない。国政の崩壊ぶりを象徴する森友学園問題の真相をつまびらかにしなかぎり、国の疑惑は払拭することはできない。来年2月の判決を含む今後の推移に注目が集まっている。

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