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米軍駐留費5倍払えと圧力 カネ払ったうえに自衛隊は最前線へ 頓珍漢な「安保」の実態

 米軍駐留費経費負担をめぐる新たな特別協定締結交渉(交渉は来年開始予定)を前にして、米国が安倍政府に猛烈な圧力をかけている。トランプ政府は3月段階から同盟国に負担増を迫る「コストプラス50」計画を動かし始め、海外メディアは「現在の5~6倍に当たる額を要求される国も出てくる」と報じていた。そのなかで7月中旬に訪日したボルトン大統領補佐官(国家安全保障担当)が「5倍の負担」を求めたという話が表面化した。安倍政府はすぐに「要求された事実はない」と火消しに動いたが、その陰で来年度予算の歳出上限をとり払う「概算要求基準」を閣議了解した。安倍政府は「増額は要求されていない」とごまかし続けながら米国の指図に忠実に従い、国民が納めた税金を米軍へ貢ぐ体制作りを具体化している。

 

 在日米軍駐留経費(思いやり予算)の日本側負担は2016~2020年度の5年間で合計9465億円に達している。オバマ前政府のときに結んだ特別協定が21年3月末で期限切れとなるため、新たな協定を結ぶ交渉が来年始まる予定になっている。トランプ政府はこの新協定締結時に現在の5倍以上の負担を迫るため、その前段で圧力を強めている。それはボルトン大統領補佐官が7月に来日する前から具体化してきた「コストプラス50」計画の実行である。

 

 なお2019年度予算の在日米軍関係費をみると、基地周辺対策費=601億円、施設の借料=1019億円、米軍基地の労務費=1269億円、米軍基地内の光熱費=219億円、在沖米海兵隊のグアムへの移転費=219億円などあらゆる経費が日本側負担になっている。大まかな内容は、在日米軍の駐留関連経費(防衛省関係予算)=3888億円、防衛省関係予算以外の米軍基地関連経費(基地交付金等)=2021億円、SACO(沖縄特別行動委員会)経費=256億円、米軍再編関係経費=1679億円で、合計は7844億円になる。日本は毎年約8000億円規模の税金を米軍基地費用として負担している。これを菅官房長官は「日米両政府の合意に基づき適切に分担されている」と説明している。

 

 トランプ政府が米軍関係費のどの部分を5倍にするかはまだ定かでないが、在日米軍の駐留関連経費(防衛省関連予算)だけを5倍にしても、総額は2・3兆円規模に膨れあがる。日本全土への空襲や原爆投下、沖縄への艦砲射撃によって奪った米軍基地を維持・増強するために「もっと金を出せ!」と日本にたかり続けるのが米国である。

 

 問題はこうした米国の要求に唯唯諾諾と従う安倍政府の対応である。米国が米軍基地の経費負担増を求めた動きが表面化した直後に菅官房長官が記者会見し「そのような事実はない」と即座に否定しながら、予算増額を見越した体制作りを一歩進めた。7月31日には全国民的な論議もしないまま、2020年度予算編成の基準となる「概算要求基準」を決め、7年連続で歳出上限を定めないことを決定している。

 

 この概算要求の歳出上限は各省庁が予算を作成する基準であり、その上限設定見送りは各省庁が「青天井」で予算要求できることを意味する。これは米軍基地関連経費に加え、米国製の武器を今後大量に買い込む予算増額へつながっていく布石である。

 

 安倍政府はこうした動きに先駆け、すでに2019~2023年度の中期防で防衛費総額の「上限枠」を初めて削除し、単年度の兵器購入費に上限をもうけていない。中期防はもともと原則5年ごとに「防衛費」(米軍再編関係費は対象外)の総額を定め、「各年度予算はその枠内で決める」としてきた。2014~2018年度の中期防も5年間で「23兆9700億円程度の枠内」と規定しその枠内で予算を組んでいた。ところが新たな中期防は「防衛関係費は、おおむね25兆5000億円程度を目途とする」という表現で「上限」をなくし「限度額」規制を撤廃している。

 

 さらに今年3月には改定武器調達特措法も成立させた。同法は通常5年である支払期間を一部の兵器に限って最長10年に延長することが目的である。最初は今年3月までの時限立法だったが、改定特措法で2024年3月末まで期間を延長した。さらに19年度からは、同制度を米政府との直接取引である有償軍事援助(FMS)に適用することも決めている。

 

 もともと武器調達をめぐって財政法は、国による装備品調達の支払期間を原則5年以内と定めていた。ところが2015年に高額兵器を買いやすくするため長期契約を認める時限立法を成立させた。総額2000億円の兵器は「原則5年以内」なら単年度400億円の予算が必要になる。だが「最長10年間」の長期契約を結ぶと、単年度は200億円の予算しか表に出ない。単年度の兵器購入費を少なく見せ、高額兵器を分割で買いやすくするための措置だった。

 

 さらにこの長期契約をFMSにも拡大することになった。FMS調達は米国の兵器メーカーと直接取引するのではなく、米国政府を窓口にした取引である。それは米国側が「軍事援助をしている」という位置づけで同盟国に武器を売りつけるシステムで、米国の武器輸出管理法は①契約価格も納期もすべて米側の都合で決める、②代金は前払い、③米政府は自国の都合で一方的に契約解除できる、と規定している。そのためFMS調達は欠陥装備を高額で売りつけたり、代金を前払いさせておいて武器を納めない「未納入」が常態化している。このFMS調達額は第二次安倍政府登場前の2011年が431億円だった。それが右肩上がりで増えていき、2019年度予算概算要求では6917億円を計上した。安倍政府になって武器購入費は大幅に増え続けている。

 

 米国は度重なる戦争によって国家財政は破綻状態にあり、兵員の調達も行き詰まり状態にある。そのなかで同盟国を戦争の最前線に立たせ、人も金も出させる軍事戦略を実行している。その方向にそって「バイ、アメリカン」と恫喝して米国製兵器を日本に売りつけ、最近では対イラン有志連合の参加を求めて兵員動員を迫っている。その延長線上で米軍基地経費負担の5倍化まで要求し、日本を徹底的に食い物にしようとしている。カネを出して、なおかつ自衛隊が最前線にかり出されて命まで差し出さなければならない奴隷のような関係を浮き彫りにしている。

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この記事へのコメント

  1. 京都のジロー says:

    米国に大忖度というより植民地の奴隷扱い、米国とまともな交渉できないのでしょうか?
    韓国に喧嘩を売って、「外交の安倍」と自画自賛し指示している大多数の国民がいる日本
    正気になって欲しいです。
    忖度しない「長周新聞と山本太郎」の存在は私たちの希望です。

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