いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

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「南西諸島を再び捨て石にするな」 11・23沖縄県民平和大集会 ミサイル配備の島々からの報告&集会宣言 軍拡でなく対話を

 沖縄県那覇市で11月23日、沖縄を再び戦場にさせない県民の会主催の「11・23県民平和大集会」【前号既報】が開催され、台湾有事を念頭にした自衛隊の「南西シフト」によって自衛隊駐屯地やミサイル部隊の配備が急速に進んでいる南西諸島の島々から現地の生々しい現状が報告された。国境の島々で今何が起きているのかを全国的に共有することが求められている。島々からの発言内容とともに、県民平和大集会で採択された集会宣言を紹介する。

 

■自衛隊配備で変貌した与那国島のいま

 

 与那国島の明るい未来を願うイソバの会

                 狩野史江

 

狩野史江氏

 与那国島に自衛隊基地ができて7年。人口増と経済活性化を謳った基地誘致だったが、人口流出は止まらず、田畑は荒れ、後継者不足は深刻だ。その一方で、人口に対する自衛隊の比率は現在17%にのぼり、この先どんどん増え続けることは確実だ。島の自治が国によって翻弄され、自分たちの島が自分たちの島でなくなっていくことが悔しい。台湾有事では与那国島が一番危ないといわれ、日本各地や海外からもたくさんのマスコミが訪れ、島の人々を不安の中に陥れている。


 町は国へのシェルター要請や避難基金条例を制定するなど、戦争への準備に慌ただしく、自衛隊官舎が次々に作られ、島は騒々しくなっている。昨年11月、日米共同訓練で小さな与那国空港に巨大な戦車があらわれ、私たちはどうしても止めたい一心で抗議をしたが、とうとうここまで来てしまったかと悔し涙がこぼれた。


 昨年末、安保3文書改定が発表されてからは、与那国へのミサイル基地増設、与那国空港滑走路の延長、そしてカタブル浜という貴重なビーチを潰し、国指定天然記念物アカヒゲ(鳥)も生息する樽舞湿地もつなげて一帯を軍港にするという計画まで出てきた。この計画には、当時自衛隊の誘致に動いた人たちでさえも「これは違う」と声をあげている。ただ与那国の場合、人口が少ないなかでの抗議行動は難しく、大きな動きになっていないことがすごく残念だ。


 有事のさいの避難について、与那国島は1日で全住民を九州に避難させるということをいっているが、そんな無謀なことが許されてはならない。私たちの島を捨てられない。どんどん軍拡で荒らされ続けている今、この思いはさらに強くなっている。みなさん一緒に頑張ろう。

 

■住民の自己責任に委ねるだけの国民保護計画

 

        石垣市議会議員 内原英聡

 

内原英聡氏

 私が石垣で生まれ育ち、島の先輩方から教えられてきたことの一つは、祈りでは平和はつくれないが、祈りなくして平和はつくれないということだ。この言葉とともに石垣、八重山の平和運動は常に唄や芸能とともにここまで歩んできた。


 宮古・八重山は現在、信じられないほど早いスピードで軍拡計画が進められている。石垣市では石垣駐屯地が3月に開設され、それ以後、日米の共同訓練もおこなわれるなど、市民が事前に説明を受けることもなく、次々と計画が進んでいる現状がある。先日、石垣市議会臨時会で、この日米共同訓練について市民にしっかり説明してほしいという意見書が可決された。これに対して自衛隊は、その必要はないという態度を貫いている。


 石垣市議会は昨日、別の臨時会で「ガザ・パレスチナ地区における即時停戦および更なる医療・人道支援を求める決議」も可決した。海を隔てた遠方で起きていることだが、とても他人事とは思えない。


 石垣市議会は今年、国民保護計画等調査特別委員会を設置し、有事にはたして本当に住民の生命や財産が守られるのか検証を進めている。ここから読みとれることは、今の日本政府が考える国民保護計画というものは、最終的には皆さんの自己責任であり、逃げられる者も、逃げられない者も、それぞれがしっかりと意思を示さなかったからこうなったのだと、有事が起きた未来に行政が責任を逃れるための計画だということだ。それくらい恐ろしい内容だ。


 石垣市議会の特別委員会は、与野党や保革の枠をこえてこの検証を進めている。ぜひ沖縄県議会、各自治体議会でも、またお一人お一人でも検証してほしい。国民保護計画の欺瞞性を暴くことが戦争回避の第一歩になる。石垣市では2018年、当時20代の若者たちが中心になって駐屯地配備予定地の賛否を問う住民投票の実施を求めるため、1カ月で1万4263筆の署名を集めて提出した。だが5年たっても市長はいまだに実施していない。市長は石垣市民の民意を図るのが怖いのだ。さらに厳しい状況が続くと思うが、皆さんとともに連携して歩んでいきたい。

 

■故郷を捨てさせることを前提にした軍事要塞化

 

      宮古島平和ネットワーク 福里猛

 

福里猛氏

 宮古島の現状を報告したい。今、日米両政府は、中国が国家統一のために台湾侵攻すると煽り立て、それに備えるとして抑止力の名の下に南西諸島の軍事化を進め、島々が標的にされるリスクを急激に高めている。


 政府防衛省は、「防衛の空白を埋める」として、2015年、宮古島に自衛隊基地建設構想を発表。2017年から基地建設を開始し、警備部隊、地対艦・地対空ミサイル部隊を含めて約700人余りを配備し、集落・民家から250㍍という目と鼻の先に弾薬庫2棟、今年3月には射撃訓練場を完成させ、地元の反対の声を無視して運用を始めている。


 さらに来年度には、住民に説明のないまま宮古島駐屯地に電子戦部隊を配備することを公表し、さらなる軍事要塞化を進めている。


 今年4月、海岸地形の航空偵察をおこなっていたと思われる陸自ヘリが伊良部島沖で墜落した。隊員10名全員死亡という痛ましい事故であったが、一歩間違えれば陸上墜落により私たち住民が犠牲になっていたかもしれないと思うと、基地があるゆえの危険と隣り合わせであることを実感させられた。また、事故ヘリ捜索のためとはいえ、自衛隊が下地島空港をなし崩し的に使用していたこと、さらに同時期に米軍F16戦闘機や輸送機まで離着陸していたことは断じて容認できない。米軍機は、海中に墜落したヘリの引き上げ作業終了後にあわせていなくなっていた。そもそも事故から半年余りが経過しているが、いまだに事故原因究明に関する詳細報告はない。


 宮古島はすべての生活用水を地下水で賄っている。宮古の住民は、たとえ政府の計画通りに有事のさい九州方面に避難できたとしても、戦争になればミサイルの撃ち合いで自然や町は壊され、間違いなく地下水も汚染される。専門家によると地下水汚染の解消には、400年もの年月がかかるという。私たちには、果たして戦争後に戻る島が残っているのだろうか。避難する心配よりも、戦争を絶対にさせないことを求めていきたい。


 8月12日、日中平和友好条約締結45周年を迎えた。戦争の歴史を乗り越え、あらゆる紛争を武力に頼らず解決すると誓った同条約の意義を日中双方で再確認し、対話による平和外交を積み重ねることこそが、本来政府がもっとも力を入れるべきことだ。


 沖縄を再び戦場にさせないよう連帯して頑張ろう。

 

 

■米国本土防衛の捨て石にするな! 国民の命を守れ

 

 奄美ブロック護憲平和フォーラム議長 関誠之

 

関誠之氏

 私たちが暮らす奄美大島では、住民が声を出すことすらできない間に自衛隊が頭ごなしに基地をつくってきた。2019年3月26日、奄美大島北部(奄美市)に陸自駐屯地、南部(瀬戸内町)に分屯地がつくられた。


 奄美の駐屯地は、当初の説明では、350名で対馬の警備隊程度の駐屯地をつくるという話だった。ところが蓋を開ければ、53㌶という広大な土地を山上に開墾し、そこにミサイル部隊をもってくることがわかった。さすがに自衛隊を誘致した議員連盟の議員たちも、後の討論で「ミサイル部隊までは知らなかった…」と吐露していたほどだ。基地建設は、住民が声に出して訴えていかなければ防衛省の思い通りに物事が進んでいく。


 2019年、奄美では、米軍と自衛隊が一緒になって共同演習をおこなった。「自衛隊は良いが、米軍はダメだ」というのが、奄美の人たちの感覚だが、私たちは心の叫びとして、自衛隊も米軍の基地もいらないと訴え続けている。毎週金曜日には市街地に立って「自衛隊はいらない」というコールを続ける非常に小さな団体ではあるが、声を出していくことで、それへの答えが少しずつ返ってきて、自衛隊がいかに嘘をつき、住民を騙し、自分たちの権益だけを大きくしていくかということが少しずつ知られていっている。


 馬毛島、奄美から与那国島までの南西諸島一帯にミサイル基地をつくり込み、第一列島線(米本土防衛ライン)とし、中国を仮想敵とする包囲網をつくり、その脅威を煽り、防衛費を43兆円にまで増大していく。そして「オリエント・シールド(東洋の盾)」「キーン・ソード(鋭利な剣)」「アイアン・フィスト(鉄の拳)」などと銘打った日米合同訓練が矢継ぎ早にされている。これは南西諸島を捨て石にしてアメリカ本土を守るものだ。決して日本を守るためではない。だからこそ訳せば「東洋の盾」などという横文字の名前が付いている。このようなごまかしを見破り、住民、国民とともに反対しなければいけないと思う。


 沖縄と奄美は戦後、北緯28度線から日本の行政から切り離され、米軍統治下に置かれるという同じ運命をたどってきた。奄美は日本復帰から今年で70周年にあたる。行政は「70周年、70周年」と浮かれているが、本当に苦労して生き延び、沖縄と一緒になって歩んできた奄美の人々の苦しみを住民に伝えようとする向きはない。私たちは、しっかりとそれを訴えていきたい。


 戦争はしない、させない。そして、国を守る前に、私たちの命を守れ!このことを国会議員の先生方には訴えたい。私たちの命は私たち自身で、みなさんと一緒になって守っていく。国を守る前に命を守れ! だ。連帯して頑張ろう。(鹿児島県奄美市)

 

■東洋最大の軍事訓練施設整備が進む馬毛島

 

  鹿児島県・西之表市議会議員 長野広美

 

 馬毛島では、東洋最大の軍事訓練施設がつくられようとしている。古(いにしえ)からの貴重な漁場と自然を破壊し、私たち種子島を守らない施設だ。6000人もの労働者を全国からかき集め、防衛省は島の暮らしを破壊しつつある。


 私たちに必要なのは、持続可能な暮らしだ。平和こそが暮らしの土台だ。種子島からも平和を守る強い覚悟を沖縄の皆さんと共有する。

 

(馬毛島への米軍施設に反対する市民・団体連絡会、メッセージ)

 

発言者に拍手をおくる集会参加者たち(11月23日、那覇市)

 

【集会宣言】対話による信頼こそ平和への道――全国連帯・沖縄から発信しよう!


 政府はここ数年「中国脅威」を強調し、昨年2022年の暮れには「安保関連三文書」を閣議決定しました。その上で「台湾有事」「南西諸島有事」に備えるためとして、最大の軍事強化を図ることを宣言しています。与那国、石垣、宮古の島々に限らず、沖縄島や奄美、馬毛島に至るまで自衛隊基地が相次いで建設されミサイルや弾薬が持ち込まれています。


 さらに島々の空港、港湾をはじめとする公共インフラの軍事利用が謳われ、その上で空港滑走路の延長や港湾の拡張・新設のために予算化が図られています。


 また驚くことに、日本から直接中国本土を攻撃する長射程のミサイル開発に乗り出すことが明言され、米国から2000億円の巨費を投じて購入するトマホークミサイルの配備計画について一年前倒しで2025年から配備する動きになっていると報じられています。米軍の無人偵察機MQ9が自衛隊鹿屋基地から嘉手納基地に、地域住民の反対を押し切って配備されたように、また沖縄が配備先になることは必至です。


 一方で自衛隊や米軍は、昨年2022年11月に実施された日米共同軍事演習キーン・ソード23や今年10月に実施されたレゾリュート・ドラゴン23のように最大規模の軍事演習を相次いで強行し、そのたびに島々に大量の軍事兵器が持ち込まれるようになりました。自衛隊や米軍の車両が白昼市街地を走り回り制服姿の自衛隊員が隊列をなして行軍するようになっており、戦前を彷彿とさせる光景が広がっています。かつてない軍事的緊張が島々を覆っています。


 そのような情勢下で政府は、戦争の足音に恐怖する県民感情に配慮するどころか、辺野古新基地建設の代執行問題に見られるように「安保外交・基地問題」は「国の専権事項」と強硬姿勢を強めるばかりです。「台湾有事は南西諸島有事」、「台湾有事は日本の有事」と言い切った安倍政治を踏襲し、「南西諸島」の島々の軍事基地強化に邁進しています。


 このままでは本当に戦争が起きかねません。何としても政府の暴走を止めなくてはなりません。沖縄戦の悲劇を繰り返さないためにも、私たちは今こそ、戦争をするな! 無謀な戦争を繰り返すな! と腹の底からの声を上げようではありませんか。


 台湾問題は中国の国内問題であり、決して軍事介入して事の決着を図る問題ではありません。台湾問題に限らず諸外国との外交問題は、決して武力に訴えることなく、外交を柱に対話を通じた相互理解と相互尊重の立場で問題解決を図るほかはありません。そのことが先の戦争から学んだ教訓であるはずです。私たちは政府に対し、平和外交に撤し問題解決を図るべきであることを強く訴えます。


 私たちは本日の平和大集会で戦争に反対する県民意思、全国各地から参集した多くの市民の燃え立つ思いを発信しました。本日の集会は、今後さらに拡大していく県民大運動、全国運動の序章であり、スタートラインに立ったばかりといえます。戦争の道を暴走する政府の動きを止めるために、思想信条を越え老若男女が手を取り合って団結すること。次は5万、10万人の単位で県民総決起の大集会を開催して、政府に、そして全国に県民の決意を伝え、全国と全世界と団結して戦争を止める、私たちはその決意を内外に発信します。


 以上、ここに宣言します。


2023年11月23日


 全国連帯! 沖縄から発信しよう! 11・23県民平和大集会 参加者一同

 

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