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日米首脳会談 頭撫でられ喜ぶ安倍政府

手を握りあうトランプ米大統領と安倍首相(2017年2月10日)

 日米首脳会談が10日におこなわれ、安倍晋三首相とトランプ大統領が1時間40分にわたって会談した後、別荘でゴルフを楽しんで何度も会食して終了した。

 会談では、日米同盟の強化、尖閣防衛とかかわった日米安全保障条約第五条の確認、辺野古基地建設の推進、経済対話の新設で合意するなどし、それをもって日本側では「手応え予想以上」「信頼構築に手応え」「日本側、安堵」「財界や市場は懸念薄れ好感」といった報道が溢れている。ことのほか米国の出方に脅えていたものの、ひとまず吠えられることもなく「あ~安心した」と大合唱しているような光景である。グローバル化やパクス・アメリカーナ終焉の局面を迎えてアメリカ・ファースト(米国第一主義)に舵を切った米国とどう対峙するのか、世界的に新段階での関係構築が余儀なくされているなかで、対米従属の鎖につながれた日本はまずモミ手をして擦り寄り、何ならたくさんインフラ投資にカネを献上しますというカードを忍ばせて出向いた結果、頭を撫でられて喜んでいる。
 
 世界で最も卑屈な隷属外交 ゴルフ会談の詳細分からず

 今回の首脳会談のポイントとして明らかになっている内容は①日米同盟と経済関係の強化を確認し、共同声明を発表。②経済対話の枠組みを創設し、麻生太郎副総理とペンス副大統領が対話を進める。③安倍晋三がトランプに年内訪日を招請して大統領が受諾。④尖閣諸島に米国の対日防衛義務を定めた日米安全保障条約第五条が適用されることを確認。⑤米軍普天間基地の名護市辺野古への移設を推進。⑥在日米軍の駐留経費負担に関しては要請なし。⑦東、南シナ海での力による現状変更には反対。⑧為替政策は財務当局間で協議する――といった点について確認したというものだ。


 事前には、在日米軍の駐留経費を日本側がもっと持つべきだとか、自動車貿易とかかわってトヨタがやり玉に挙げられたり、為替政策での意図的な円安誘導を名指しで批判されるなど、首脳会談で何を要求されるのか戦戦恐恐として挑んでいたのが日本側だった。そして迎えた会談で、公式に明らかになっているもののなかでは、とくに何かを強く要求されることもなかったといって、官僚や政財界が揃って胸をなで下ろしている。


 TPP離脱後に求めてくると見られていた2国間FTAがどうなるのか、あるいはアベノミクスによる円安誘導とかかわった為替政策に対する協議や、米軍の世界展開とかかわって軍事的に日本がどう組み込まれていくのか等等、具体的なものについてはほとんど表面には出てきていない。首脳会談以上に時間を費やしたゴルフ会談や会食で、いったいどのような会話がなされたのか非公式な部分は一切明らかになっていない。


 わざわざ出向いた初の首脳会談で、従来とさほど変わらない日米関係の建前を確認し、あとはゴルフを楽しんだ格好になっているものの、これを額面通りに受けとっていただけでは、なぜトランプがあれほどの厚遇でもてなしたのか、米国が何を意図しているのかは見えてこない。「麻生財務大臣を連れてこい!」という米国側の要求に従って金庫番が訪米した意味についてもペンス副大統領と握手するためだけだったというのでは説明がつかない。米国務長官と岸田外相の会談にしても同じだ。滞在時間のなかで多くを占めたはずの非公式の場において、彼らは建前以上の何をやりとりしたのか、今後の日米関係の展開を見ることによってしか解明できない部分が多く含まれている。


 「エアフォースワン(大統領専用機)に乗せてもらった」「ゴルフはどっちが上手か?」「トランプの懐に飛び込んだ安倍首相」等等のおべんちゃら報道に終始し、国内でまともな政治評論が出てこないのも重要な特徴となっている。いずれにしても、世界がトランプ以後のアメリカの変化に注視し、どのような関係を築いていくのか模索しているなかで、日本政府は今後とも断固として対米追随で進むことをアピールした。

 直前に51兆円拠出表明 米国での雇用創出に

 訪米前に日本政府は米国で70万人の雇用を創出することをうたったインフラ整備の資金拠出(10年間で51兆円の投資)を表明した。①米国でのインフラ投資に17兆円。②世界のインフラ投資で連携する事業に22兆円。③ロボットと人工知能(AI)の連携に6兆円。④サイバー・宇宙空間での協力に6兆円というものだった。そこに国民の老後のための資金である年金積立金まで注ぎ込もうとしていることも明るみに出た。


 首脳会談後の共同声明では、今後の日米FTAや一連のインフラ投資について遠回しに触れるような文面も盛り込まれた。「日米イニシアチブ」のアドバルーンを上げてキャッチボールをやり、51兆円を献上する覚悟を見せたうえで頭を撫でられに行った関係にほかならない。


 なお、中国を仮想敵国にして米国と軍事的に手を握り、日米安保条約によって「守ってもらう」というのがいかにペテンであるかは、ニクソンドクトリン以後にアメリカ自身が中国と直接にパイプを持って経済的関係を強めてきたことや、日中対立を煽りながら利を得ていくアジア戦略を貫いてきたことから見ても歴然としている。尖閣諸島をめぐって日中対立に火を付けたのはそもそも米国であり、渡米してそそのかされた石原慎太郎が共和党系シンクタンクで購入を叫び、民主党・野田政府が国有化をゴリ押ししたことで両国の関係は一気に冷え込んだ。


 アジアの近隣諸国として貿易等等で依存関係が強いにもかかわらず、歴代の日本政府は米国の許しなしに友好的関係を切り結ぶことなど許されなかった。アジア経済圏に軸足を移そうとした民主党・鳩山政府にはたちまち倒壊するような力が加わった。米国のアジア戦略にとって中国と対立する日本は使い勝手のよい存在であり、AIIB(アジアインフラ投資銀行)や中国包囲網としてのTPPなどで、ことごとく米国側で立ち回ってきたのが日本政府だった。アジアにおいてもっとも米国のお先棒を担いで立ち回る存在にほかならない。


 トランプは日米首脳会談の直前には中国と「一つの中国」を確認し、習近平とも電話会談で折り合った。台頭する中国とも良好な関係を切り結びつつ緊張局面では日本が矢面に立たされ、その領土には米軍の最前線の核攻撃拠点が何カ所も置かれて睨みをきかせている関係だ。さらに日米安保の現実は、米軍が「日本を守ってくれる」のではなく、米軍そのものは国家財政の危機に瀕して縮小再編を迫られ、今度は自衛隊が米軍を守り、鉄砲玉になって地球の裏側まで出かけなければならない時代となった。集団的自衛権の行使や自衛隊の海外への武力参戦に道を開いたのはそのためだ。


 TPPはトランプが就任初日に脱退を通告し各国と2国間貿易交渉を開始することを表明した。TPP交渉において、既に日本側は農林水産物では82%で関税を撤廃する高水準の自由化を受け入れ、農産物以外の分野でも医療や公共事業における外資の参入、ISDS条項にもとづき外資が国を相手どって訴訟を起こす権利など、国民生活の全般にかかわる分野で多国籍企業の参入を大幅に認める内容で合意している。トランプ政府が表明している日米FTA交渉で、TPPを上回る水準の市場開放を求めてくることは必至であり、「経済対話の新設」等等がどのように具体化されていくのかも目が離せない。

 民族的利益売り飛ばす 米国第一主義に貢献

 戦後世界ではアメリカが覇権を握ってきたものの、70年以上を経てこの一極支配が終わろうとしている。


 アメリカ国内においてグローバル化、新自由主義の矛盾が噴き上がり、このもとでトランプが登場して米国第一主義をやりはじめている関係だ。政治リーダーの人物としての善し悪し以上に、米国の支配階級が何を意図してどこに向かっているのか、あるいはどのような国内矛盾によって突き上げられているのかを抜きにして情勢を分析することなどできない。


 クリントンが敗北すればゴルフクラブを握りしめてトランプタワーに駆けつけ、TPPではアメリカ以上に献身的に民族的利益を明け渡したうえに梯子を外され、今度は51兆円ものインフラ投資を思いついて擦り寄るなど、この間の日本政府の狼狽ぶりは目に余るものがある。


 米国一辺倒で忠誠を誓い、国内を犠牲にしてでもカネを吐き出し続けることが日米同盟や外交というなら、今後ともますますむしり取られることを覚悟しなければならない。


 日本は世界でも稀なるアメリカの隷属国家に成り下がり、まともな独立国としての体を為していないことが誰の目にも明らかなものとなっている。TPP、原発再稼働、日銀による異次元の量的緩和、軍事政策や外交にいたるまでみなその指図で事が動き、売国的な為政者が民族的利益を差し出していくことによって社会を崩壊させてきた。新しいアメリカ大統領に取り入るために神経をすり減らし、怒鳴られずにゴルフができたといって安心しきって帰ってくる様が、そのことを端的に物語っている。強く要求された場合に、二つ返事で「イエス!」と応えかねない卑屈さを、訪米した日本の政治家たちは映しだした。


 日米同盟というのが対等な関係ではなく、きわめて隷属的な主従関係にほかならないことを暴露している。

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