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原水爆禁止全国実行委員会 大衆主人公の平和運動全国へ 戦争阻止の現実的な力胎動

 峠三吉の時期の原水爆禁止運動の再建をめざす原水爆禁止全国実行委員会は3日、下関市内で今年最初の全国会議を開き、今年の活動方針を確認した。安倍政府が安保法制を強行成立させる一方、全国的な戦争阻止の世論と行動が歴史的な高揚を見せ、第2次大戦、原爆投下から続く戦後社会の真実を明らかにした原爆と戦争展運動が大衆の歴史的な怒りと結びついて各地で開催されてきた。既存政党が存在感を失うなかで、新たな基盤をもって発展する全国的な行動機運と切り結び、大衆自身が主人公となった原水禁運動を発展させる意気込みが語り合われた。
 はじめに事務局から川村なおみ氏が今年の活動方針を提案した。
 提案では、3月29日、昨年強行可決した安保法制を施行させた安倍政府が、国家総動員体制を発動できる「緊急事態条項」の制定、米海兵隊の指揮下での日米合同演習をはじめ、5兆円をこえる防衛予算をつぎ込んだ辺野古への新基地建設、南西諸島への自衛隊配備、佐賀空港へのオスプレイ配備計画などを推し進め、アメリカの要求に従って戦争に踏み出す体制づくりを進めていることを指摘。他方では、福島原発事故の収束のメドは立たず、いまだに数十万人が避難生活を送る被災地に対する復興放置政策、主権を売り飛ばすTPPに参加し、アベノミクスの失敗による経済の破局的な危機が切迫するなかで「貧乏にして戦争をはじめる」ことに対する各層人民の激しい抵抗と反対運動が大きく高揚していることを明らかにした。
 議会政治が崩壊し、アメリカの植民地支配が露骨にあらわれるなかで、第2次大戦の深刻な体験に根ざして、既成政党と一線を画した大衆的な基盤をもった運動の力強い発展は、この数十年来の原爆展運動、原水禁運動、下関、広島、長崎、沖縄、岩国をはじめ全国で旺盛に展開してきたことと固く結びついていることを強調。①被爆者、戦争体験者の新鮮な怒りを共有し大衆自身が主人公になって立ち上がることに奉仕する、②アメリカの原爆投下の目的・野望を暴く、③米日反動勢力が日本の青年をアメリカの肉弾に動員し、ふたたび日本を原水爆戦争の廃虚にしようとする政策を暴き、各界各層のたたかいを合流させて原水爆戦争阻止の運動を発展させる、④アメリカを美化し戦争体験者を敵視する日和見主義、被害者意識や自己主張型の空中遊泳路線の影響を一掃する、などの柱を明確にし、人民に奉仕する精神を貫いて活動するなら、今日の戦争を阻止する運動を飛躍的に発展させることができることを明確にした。

 各地で行動機運が高揚 戦争体験と現代重ね 

 提起を受けて、各地の活動家が原爆と戦争展運動の報告と今年の抱負をのべた。
 広島の活動家は、「今年最初の五日市原爆展では、『東京大空襲の真実』の長周新聞号外を配布すると、東京大空襲や大刀洗空襲の体験者が声をかけてきて、同級生が手足がバラバラになって死んだ経験を語ったり、フィリピンで米軍の艦砲射撃を受けた沖縄出身の年配者が強く共感し、戦争阻止のために行動したいという意識で協力者になっている。若い母親が受付を手伝いに来たり、“家族にも聞かせたい”といってテープレコーダーに被爆者の話を録音していく戦争遺族もいた。貧富の格差や議員の腐敗への怒りが強く、原爆と戦争展への支持と参加が広がり、昨年以上の手応えを感じている」と報告した。
 「今年に入り、学校からの証言依頼、学生や若い社会人からも意欲的な申し出があいついでおり、8・六6に向けて私心のない精神で活動する集団をつくるために奮斗したい」と抱負をのべた。
 沖縄の活動家は、自衛隊ヘリ基地建設が計画されている八重山地域で2回目の原爆と戦争展を開催することを報告。「昨年11月に防衛副大臣が石垣島に来てヘリ基地建設を申し入れた。具体的なことが隠されたまま事態が進行していくなかで、八重山の3地区の自治会長が臨時総会を開いて絶対反対の決議をあげて運動を開始している。八重山列島は、沖縄戦後、米軍に土地を接収されて生活できなくなった沖縄本島の人たちが開拓移民として移住した地域だ。親兄弟を沖縄戦で殺され、戦後は米軍専用のゴルフ場のために家を奪われた人、裸一貫からパインやマンゴーを育てて町の産業を築いてきた人たちは、“弾があるところに弾が飛んでくる。ミサイルがあればミサイルが飛んでくる。基地を作ることは戦争を呼ぶことだ”と絶対反対が圧倒的だ。東京大空襲の号外や佐賀のヘリ基地化反対運動にも関心は強く、原爆展でこの運動に応えていきたい」とのべた。
 また、辺野古基地建設の一時中断について、「政府の狡猾な狙いも含まれているだろうが、大きくは、安保法制、原発再稼働、TPP、福祉の切り捨てなどに反対する全国的な世論の高まりのなかで強硬路線がとれなくなった。米軍トップが1カ月前から“工事は遅れる”と明言していた。原水禁運動は大きな局面を迎えており、昨年以上の情勢の発展を実感している」と意気込みを語った。
 長崎で原爆展運動を担っているメンバーは、「3月に安保法が施行されたが、アメリカのために自衛隊を武力行使をさせて海外に派遣する内容が広範に暴露され、“国土防衛や邦人保護のため”という政府の主張にまったく説得力がない。逆にこの3年間で、低賃金化と増税で貧困化が進み、モノは売れない、病院にもかかれない、介護も受けられない、保育園もないなど社会基盤の崩壊状況が話題にのぼる。“こんな政治家にまかせていたらいけない”“なにか行動したい”と被爆二世や学生、母親などが積極的に活動に参加し、被爆者たちと交流を深めてきた。被爆者たちも六月の長崎原爆展に向けて、“被爆70周年で終わりではなく、これからが勝負だ”と意気込みを強めている」とのべた。
 また、佐賀空港のオスプレイ配備計画をめぐって地元で反対運動が盛り上がっていることも報告し、「いわゆる既存の政治団体が主導するものではなく、農漁業などの生産者や地域コミュニティを支えてきた自治会や老人会などの人たちが中心になり、生産と平和な生活を破壊する軍事基地化に真っ正面から対決している。それは被害者意識で文句や泣き言をいうという自己主張型のものではなく、社会の主人公としての力強さをもっているし社会の未来を代表している。単純に騒音などの地域限定の問題ではなく、郷土をミサイルの標的にし、日本を再びアメリカの戦争に叩き込むものとして、職業や政治的な立場をこえてたたかわれている。権力の不正義がまかりとおるなかで、野党が崩壊しているから負けというものではなく、社会正義を掲げた国民運動が爆発的に発展する趨勢にある。歴史的な経験に根ざした大衆の意識に学んでいくことが重要だ」とのべた。
 愛知県の活動家は、『東京大空襲の真実』の本紙号外で暴露されたGHQの戦後政策に対する衝撃の大きさに触れ、「東京でも戦後は欺瞞のベールで覆われて真実が隠されてきた。全国も同じなのではないかと、豊川市での原爆展では豊川海軍工廠の空襲を明らかにすることに力を入れた。愛知県は軍需産業が多く、全国から学徒動員があり、米軍の爆撃回数も多い。豊川でも空襲で2600人が死んでいる。だが地元の小中学校ではほとんど語り継がれておらず、一般的に“軍需工場だから攻撃されても仕方がなかった”という、ニュアンスで伝えられるだけだ。死亡した学徒たちは戦死扱いで靖国神社に合祀されたが、遺体は6年間も穴を掘って埋められて放置されてきた。そして海軍工廠責任者の陸軍中将は、戦後は生き長らえて三菱重工の大幹部になっていた。ここに体験者の強烈な怒りがあるが、すべて表沙汰にされない隠然とした力に覆われてきた」とのべた。
 「これを意識して体験者一人一人に話を聞くと、殺したアメリカへの怒りとともに、日本支配層の戦後の豹変ぶりに対する激しい怒りが語られる。軍事的には戦争は終結していたにもかかわらず、日本を単独占領する政治的な野望のために皆殺ししたことへの怒りだ。この怒りを表面化させない力が戦後ずっと続いてきたし、修正主義や社民勢力もアメリカ民主主義を賛美する側から加害者論や自虐史観をふり撒いてアメリカに矛先が向かないようにしてきた。この欺瞞のベールを剥いでいくことが大衆の歴史的な怒りを引き出すうえで非常に重要だ」とのべた。
 山口県内の小学校教師は、「家庭の生活苦のなかで、学校現場では不登校やいじめ問題として矛盾があらわれ、人権を掲げたいじめ摘発キャンペーンや体罰禁止、体育での組体操やピラミッドの制限などの抑圧構造がある。そのなかで“いじめキャンペーンは権力が教育を抑圧する新たな戦争動員だ”という長周新聞の紙面を配布すると強い反響がある。“いじめに負けて死んで報復するのはおかしい”“死ぬ勇気があるなら立ち向かえ”というのが現場の大半の意見だ。一方で、人道的な装いで“死んだ者を悪くいうな”という流れもある。だが、原爆展パネルや父母や戦争体験者のなかでは“苦しみから逃げて困難に立ち向かわず、死んで仕返しするというのは間違いだ”というのが常識だ。途端の苦しみを乗りこえてきた被爆者たちが平和な未来のために命をかけて活動している精神と、“自由・民主・人権”で自殺をも擁護する考え方とは相容れないものだ。この戦争イデオロギーとたたかい、大衆とともに建設する立場で教育運動を発展させたい」とのべた。
 劇団はぐるま座団員は、原爆展運動10年の経験を描いた『原爆展物語』公演に力を入れることの重要性を再確認し、「客観的に動いている大衆の行動と結びついて運動を広げていく課題がある。手練手管ではなく、人民に奉仕する思想を打ち立てて50年8・6路線を届けられるように努力したい」とのべた。

 既存政党の枠外で発展 共感集める原爆展 

 論議のなかでは、安保法制反対を中心に大きく広がった大衆の世論と行動、地域共同体に根ざして戦争に反対して平和な社会を建設する運動の基盤が、既存政党の狭い枠の外側で大きく発展している特徴を鮮明にし、十数年来の活動で目指してきた国民的な原水禁運動をさらに発展させていくうえでの教訓について意見が交わされた。
 岡山の活動家は「小集団の自己主張ではなく、市民に奉仕する立場に立つことで多くの人が安心して参加できる運動になってきた。東京大空襲の号外を配ると、びっしりと赤線を引いて読み、“どこのマスコミも書いていない”と驚かれる。第2次大戦と戦後70年の経験がいまの安倍政治とつながり、敵はだれか、味方はだれかが鮮明になっていく」とのべた。
 沖縄の活動家は、「東京空襲におけるアメリカの用意周到な犯罪とそれを覆い隠してきた共犯者が鮮明になった。ここまできて沖縄戦を振り返るとよくわかる。広島、長崎への原爆投下、東京空襲と同じく、アメリカの凶暴で狡猾な意図、それに屈服して国を売り飛ばした日本支配層の犯罪性がいまの沖縄の苦しみを作り出している。鉄血勤皇隊体験者の集会で、沖縄戦号外と東京空襲号外を一緒に配ると、みな真剣に読んで“やっぱりアメリカか!”と共感していた。戦後、加害者扱いをされ黙らされてきた人たちが、戦争の全体像を明らかにすることで心から支持する関係だ。新鮮な怒りを引き出していく活動がますます重要だ」とのべた。
 富山の活動家は、「原爆展活動のなかでかかわってきた戦争遺族、遺児たちは親が戦地や輸送船で沈められ、戦後は母子家庭で苦労してきた。戦争反対の強烈な思いがある。この新鮮な思いを共有し、全国的な運動で戦争を阻止する戦略観点に立って活動すれば信頼が寄せられる」とのべた。
 また、「“貧乏になって戦争になっていった”というパネルが人人を引きつける。マスコミは“北が攻めてくる!”というキャンペーンばかりだが、経済権益から戦争になったのがみんなの経験だ。だれが戦争を引き起こし、だれが犠牲になったのかを大衆の経験からはっきりさせることでこの欺瞞は簡単に引きはがせる」「原爆展パネルは東京の街中でも国会周辺でも強い支持を集め、見た人たちが力を得て行動意欲を高めていった。これほどの威力をもった運動だったのかとはじめて実感した。日本の平和運動を刷新する力があることを確信してやらないといけない」「佐賀でも、下関の風力反対運動でも住民主導の新しい基盤を持った運動が発展し、いまでは安倍首相の方がコソコソしていることが話題になる。大衆の持つ力の巨大さに学んで頑張りたい」など、新たな情勢認識に立って旺盛な活動を推し進めていく決意が語られた。

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