(2026年9月11日付掲載)

極東最大の米軍嘉手納基地(沖縄県)
沖縄県内の米軍基地周辺で発がん性が指摘される有機フッ素化合物(総称:PFAS=ピーファス)によって土壌や水が高濃度で汚染された問題をめぐり、在日米軍が2023年に嘉手納基地と普天間基地が汚染源である可能性が高いと日本政府に認めていたことがわかった。米軍は基地が汚染源である可能性を認めながらも、沖縄県が求めた基地内立ち入り調査を拒否。日本政府はそのさい「立ち入り調査拒否」の回答だけを公表し、汚染源になっていたと米側が認めた事実を伏せていた。対米関係において、国民の生命と安全よりも米軍との関係を重視する日本政府の姿勢が改めてあらわになっている。
沖縄では2016年以降、県が独自に実施してきた水質調査で、嘉手納基地や普天間基地、キャンプ・ハンセン周辺の河川や湧水などから高濃度のPFASが検出され、生命と健康を脅かす問題としてその対策が求められてきた。県は米軍基地が汚染源である可能性が高いとして、2016年6月以降、嘉手納基地と普天間基地への立ち入り調査を米軍に再三にわたり申請してきたが、米軍が基地内の水質調査に応じたことはない。
沖縄地元2紙等によると、米軍は2023年12月、汚染源が基地である可能性が高いとの認識を日本政府に示していた。米軍は嘉手納基地と普天間基地内にある消火訓練施設でPFASを含む泡消火剤を大量使用しており、それらが地下に浸透していたことを認め、周辺の汚染源になった可能性が高いと伝えていた。このときは「公表しても構わない」との見解も出していたという。
一方、日本政府は米軍側の回答を公表するさい、その米軍側の認識は公表せず、県が求めていた基地への立ち入り調査の拒否のみを公表していた。発表された米軍の回答では、基地への立ち入り調査を許可するには、県が「米軍施設・区域が汚染源であることを示す科学的根拠が明確なサンプル調査のデータ」を提出する必要があると記されていた。
米軍が基地内の消火訓練場からPFASが地下に浸透したと認め、日本政府もそれを把握した以上、汚染源は日米間で特定されたことになる。ジャーナリストや地元紙などが米国の情報公開法(FOIA)などを用いて入手した米軍内部文書からも、沖縄県中北部の住民の多くに飲用水を供給している北谷浄水場のPFAS汚染について、「嘉手納基地の泡消火剤が原因である」と軍内部で明確に認識していたことがわかっている。
また、ジャーナリストのジョン・ミッチェル氏らによる調査報道でも、米国での情報公開請求によって米軍の「環境事故報告書」が多数暴露されており、過去15年以上にわたり、嘉手納や普天間で合計数万㍑に及ぶPFAS含有の泡消火剤が米軍の誤作動や不手際で土壌や河川、排水口などを通じて基地の外に流出していた詳細な記録が発見されている。
日本の外務省は、報道機関が求めた日米合同委員会・環境分科委員会の議事録開示請求に対して、「公にしないことを前提」としており、「国の安全が害されるおそれ、米国との信頼関係が損なわれるおそれ」を理由に不開示と回答してきたが、少なくとも2023年には日米の公式な場で汚染源は米軍基地であるとの認識が共有されていたことになる。
国は地方に対応丸投げ 米軍はタダ乗り

米軍普天間飛行場から付近の河川に流出したPFAS含有の泡消火剤(21年4月、宜野湾市)
だが、日本政府はその事実を隠し、基地との因果関係を曖昧にしたまま、あくまで「安心安全な飲料水供給のため」として沖縄県、宜野湾市、金武町などに除去施設などを導入するための補助金を交付。汚染対策を自治体に担わせる措置だが、初期の施設整備には補助金を出すが、それ以降の施設の維持管理費は自治体負担としているため、沖縄県には今年度から16億円の新たな負担がのしかかる事態になっている。将来的に水道料金の値上げなどで住民負担が増すことになる。
しかも、その除去施設からは、市町村を通じてPFAS汚染源である米軍8施設(基地や米軍住宅地)にも水が供給されている。米軍が汚染した水を国民や県民の税金を使って浄化してふたたび基地に送り返す、つまり米軍は汚染被害の補償も浄化の責務も何一つ果たすことなく、タダ乗りする構造となっている。
一方、米国内でも全米約700の米軍施設周辺でPFASによる水質汚染が深刻な社会問題になっており、米国防総省は数十億㌦(将来的には510億㌦=7兆円以上と試算)をその調査と浄化に投じている。米国内では、環境法に基づき米軍であっても汚染者負担の原則が適用されるため、飲料水基準を満たせない基地周辺の民間地域に対しては、米軍予算でボトル入り飲料水の配給や浄化施設の設置が義務づけられている。
他国の米軍基地でも、国内法に則った環境保護義務が米軍に課されている。ドイツでは2010年以降、米軍基地内でPFAS汚染が発覚し、汚染した地下水の基地外流出を防ぐための設備(約4億円)を米軍負担で設置し、国から地元自治体へ支払われた対策費の75%を米軍が負担した。
日本だけが日米地位協定を理由に米軍は汚染の責任も除去の義務も果たさず、立ち入り調査すらさせない歪な主従関係となっている。「国民の皆様の命と平和な暮らしを守り抜く」というフレーズを多用し、「日米同盟の強化」をその根幹に掲げる高市政府だが、米軍のために国民の命と平和な暮らしを犠牲にしている実態が改めて明らかになっている。
目下、県知事選がおこなわれている沖縄県内では、「県が求めてきた立ち入り調査とは、米軍と日本政府に汚染の責任を負わせることであり、責任を自治体や納税者に転嫁することではないはずだ。汚染源を日米政府が把握した事実が明るみに出た以上、米軍自身に基地内での調査や浄化の責任を果たさせる段階だ」「立ち入り調査を形骸化した政治スローガンにすべきではない」との声も聞かれ、米軍の自由使用を制限するための具体的な施策に着手することが強く問われている。





















