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統一教会総裁・韓鶴子に実刑判決 暴かれる宗教右派の政治介入 日本政界の病理にもメスを

(2026年9月9日付掲載)

任意聴取のため特別検察に出頭する統一教会の韓鶴子総裁(2025年9月、韓国ソウル)

 韓国で政界との不正な癒着関係が暴かれた世界平和統一家庭連合(統一教会)のトップである韓鶴子(ハン・ハクチャ)総裁(83)に8月31日、ソウル中央地裁は懲役二年の実刑判決を下した。創始者・文鮮明(ムン・ソンミョン)とともに教団の絶対的権威である韓総裁への実刑判決は、長年月にわたり信者から高額な献金を巻き上げ、安倍元首相の銃撃事件を契機に自民党と教団との深い関係性が明るみに出た日本社会においても一つの重要な節目となる。尹錫悦(ユン・ソンニョル)前大統領による事実上のクーデター未遂という民主主義の根幹を揺るがす事態に発展した韓国では、その要因として統一教会などのカルト教団との大規模な癒着構造が暴露され、長年放置されてきた宗教右派の生態にようやくメスが入ったが、日本では大きな社会問題になりながらも政界への組織的関与について司法による解明はまったくなされていない。韓国と日本をまたいだ宗教右派の政治介入は、近年の政治の右傾化や極端な排外主義の煽動を考えるうえでも解明すべきものとなっている。

 

自室から30億円の現金を押収

 

 ソウル中央地裁は、韓総裁が元教団の幹部らと共謀し、尹政権から便宜を受ける目的で尹元大統領の妻である金建希(キム・ゴンヒ)被告に高級ブランドバッグやダイヤモンドのネックレスなど総額8000万ウォン(約930万円)相当の金品を贈ったことを認め、請託禁止法違反とした。

 

 また、「2022年の大統領選の直前、教団の政治的影響力を拡大し、政権発足後に教団に有利な政策への支持を取り付けるため」に、当時の与党「国民の力」の国会議員に約1億ウォン(約1100万円)の違法な政治資金を提供したことを認め、政治資金法違反と断罪した。裁判所は、韓総裁の地位や、元幹部に責任を転嫁する態度などを念頭に「実刑判決は避けられない」と指弾し、これらの犯行は元幹部が主導し、韓総裁の承認を得て実行されたと断定。それらが韓総裁個人の利益のためではなく、教団の勢力拡大や政治的影響力の確保という組織の目的のためにおこなわれたとして、韓総裁に懲役2年の実刑を言い渡した。

 

 韓総裁を捜査・起訴した特別検察(特検)チームは「宗教と政治の違法な癒着によって国政が私物化され、国民の政治への信頼を大きく損ねた」として懲役13年を求刑していたため、韓国社会では「政教分離の原則という憲法上の価値を侵害した重大犯罪に対する処罰としては、量刑があまりにも軽すぎ、生ぬるい判決」(韓国『ハンギョレ新聞』)との批判もあがっている。判決を受けて検察側と被告側双方が控訴している。

 

 また、韓総裁らは2017~2025年にわたり、世界中の信者から集めた教団の資金(日本からの多額の送金を含む)を「海外宣教費」などと偽って不正に会計処理し、約105億ウォン(約11億円)を組織的に横領・隠匿した特定経済犯罪加重処罰法違反(横領)罪の容疑でも追起訴されている。

 

 この疑惑については、特検とは別に検察・警察による「汚職合同捜査本部」が捜査を進めており、8月27日には教団の聖地とされる巨大施設「天正宮」内にある韓総裁の自室にも初めて捜索の手が及び、金庫や複数のキャリーバッグの中から現金260億ウォン(約30億円)が発見された。合同捜査本部の発表によると、これらは世界中の信者から現金で納入させた献金を、公式な会計処理をしないなどの手法で横領していたものである疑いが強いという。そのなかには大量の日本紙幣も含まれていた。

 

韓総裁の自宅から押収された30億円相当の札束の一部(韓国合同捜査本部資料より)

韓総裁の自室金庫にも現金の束が積まれていた(韓国合同捜査本部資料より)

 銀行口座を介せば金融機関のマネーロンダリング検知システムに足が付くため、教団は信者の手荷物として小分けして現金を持ち込ませ、正規の帳簿には載せず、これまで捜査の手が及ばなかった韓総裁の寝室に隠匿していたとみられている。

 

 これらの捜査情報は、日本の全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)などが指摘してきた事実とも符合する。日本の関税法では現金を海外へ持ち出すさい、100万円以下であれば税関への申告義務がないため、教団が日本で集めた多額の現金を韓国へ流出させるさいには、信者や幹部に小分けにして持たせ、ツアーなどで韓国へ渡航させて物理的に本部に集約するというハンドキャリーの手口が組織的にとられてきたことが、過去の刑事裁判や教団元幹部、元信者らの証言で明らかになっている。

 

 日本の教団内では年間300億円近い献金ノルマが課され続け、韓国への送金は推計で毎年100億円以上にのぼっていたことが元教団本部幹部らの証言で明るみに出た。昨年、教団に解散を命じた東京高裁決定によれば、2018~22年度の5年間で日本から海外へ送金された献金額は650億円にのぼり、その9割が本拠地のある韓国に送られていたことが明らかになっている。

 

 高裁決定は、創始者の文鮮明(故人)が信者に「借りてでも天に捧げようとする心がなくてはならない」と献金を求め、日本教団の幹部を叱責していたことや、文鮮明死後は夫人の韓鶴子が引き続き送金を要求し、「(日本の)幹部は韓氏からの過度な要求を拒絶する意思も能力も有してないことをうかがわせる」とのべており、韓国教団本部と日本教団の歪な主従関係が浮き彫りになった。

 

 また、韓総裁は、教団信者を当時の与党「国民の力」に集団入党させて、大統領選に組織的関与した政党法違反罪にも問われており、別の裁判が進行している。合同捜査本部は8月、教団が2019~25年に国会議員を含む政治家132人に計1億8900万ウォン(約2200万円)を違法に寄付していたと発表。教団や関連団体が主催する行事に多数の国会議員を出席させ、彼らに「政教一致」の思想にもとづいて教団の社会的権威や影響力を拡大させるため、教団関係者の個人名義で資金を提供していたと断定した。これら政治家の買収のための資金に、日本を含む世界中から集めた現金が使用されていたとの見方が有力視されている。

 

 一方で、個人名義で小分けでおこなわれた献金であるため、それが統一教会の裏金であるという認識が持てなかったとして、政治家側の起訴は見送られたため、韓国メディアや専門家からは「政教癒着の教(宗教)側だけを処罰し、政治側の責任を問わないのは不十分」「経緯や名簿をさらに透明化すべきだ」という批判が強くあがる事態となっている。

 

 韓鶴子総裁への実刑判決を皮切りに今後、裁判で真相解明がさらに進むものとみられるが、これらの事実をみても、その手法は日本で明らかになった統一教会の政界汚染と瓜二つであることがわかる。

 

自浄作用働かぬ日本 政界汚染は不問

 

統一教会本部がソウルで開催した安倍晋三元首相追悼セレモニー(2022年8月)

 一方、日本における統一教会の政界癒着問題については、時折ゴシップ気味に報道される程度で、司法当局による捜査はおこなわれていない。小出しで報じられるニュースもすべて韓国側の捜査で浮上した事実のみで、いまだに腫れ物に触るようなタブー視が続いている。

 

 今年初めに韓国の捜査当局が押収した教団の内部文書「TM(真の母様)特別報告」(3200㌻)には、安倍元首相への言及が500回、高市首相の名前も32回登場し、萩生田光一元政調会長にいたっては教団と自民党の交渉を仲介する「ホットライン」の役割を果たした「神の摂理的な人物」と特記されていた。

 

 また報告書には、2019年の参院選直前におこなわれた安倍、萩生田、教団会長の三者面談では、自民党と教団が「運命共同体」であるとの共通認識を確認したとされ、2021年の総選挙(コロナ禍での解散)では、自民党議員290人に対して教団が応援、支援をおこなったことが記されていた。韓国で暴露された不正な政界癒着が、日本ではおこなわれていなかったと見る方が不自然といえる。

 

 「緊急事態条項」創設などを含む憲法改正の推進、スパイ防止法案、国家情報局設置、選択制夫婦別姓や同性婚などを否定する家族観とジェンダー政策、日米同盟の強化や防衛力の増強など、自民党などの保守勢力が掲げる政策と統一教会の教義はほとんどにおいて一致しており、あれほど「ジャパン・ファースト」「愛国」「移民排斥」「スパイ防止」などと訴えながら、彼らの根をたどれば韓国カルトとの密接な関係に行き着くという本末転倒な姿がその実態だ。

 

 統一教会は、韓国で軍事独裁を続けた朴正熙(パク・チョンヒ)政権以来、政治と密接に結びついて拡大してきたが、これらの宗教右派は「反共産主義」「北の脅威への対抗」を国是とする韓国において野放しが続いてきた。それは米国を中心に韓国と日本を繋ぐ反共ネットワークとして機能し、日本から巻き上げた多額の献金によって布教のためのロビー活動がおこなわれ、日本では高額献金による家庭崩壊など深刻な社会問題が顕在化しながらも根本的な対策がとられぬままきたことによって、安倍元首相銃撃事件にまで発展した。

 

 統一教会の被害者救済活動にとりくむ全国弁連は昨年9月、統一教会の解散命令をめぐる公式声明で、韓国で教団本部への捜査が進んでいることに触れ、「統一教会は、1960年代から韓国や日本の保守系の議員との関係を深めることで教勢を拡大してきた経緯がある。このような統一教会の政治家との関係構築は、統一教会の違法な活動の抑止を困難にさせる上、統一教会による違法な活動にお墨付きを与え、これを助長する結果を招くことになる。このことが統一教会による霊感商法や違法な献金勧誘を40年以上に亘って温存させてきた一因となっている」と指摘している。

 

 そして、「現在、韓国で進められている今回の捜査は、統一教会がどのようにして政治家に近づき、政治家を利用して来たのか、統一教会の実態を明らかにする重要な機会である」と強調し、要旨次のようにのべている。

 

 わが国では、2022年7月以降、各政党において統一教会との従前の関係性を問うアンケートが実施されたり、岸田文雄前首相(当時)において自民党は統一教会との関係断絶を徹底する旨の国会答弁がなされたりするなど、統一教会との関係を見直す動きが一定程度見られたものの、自民党の調査は自己申告に基づくものにすぎず、捜査機関や中立な第三者機関による統一教会と政治家の関係の調査はまったくおこなわれていない。

 

 そのため、選挙での協力を得るための自民党による組織的関係の構築の有無、政策形成への影響、統一教会の名称変更への便宜供与の存否等についての徹底した調査は未だおこなわれていない。

 

 現状は、一部の政党が統一教会との関係を断絶するとの決意を表明しただけであり、今後、同様の問題がくり返されないようにするための実効性のある具体的な施策については何ら講じられていない。来月には自民党総裁選挙が予定されているが、政治と統一教会との関係を争点にする候補者が一人もおらず、候補者が取り組む気配は今のところまったくない。

 

 韓国で統一教会と政治家との関係について捜査がおこなわれ、実態が解明されている機会に、日韓双方の政府において、日本における高額献金、霊感商法を通じて集金された金銭が、韓国の統一教会本部に流れ、どのようにして韓国の政界工作に使われたのか、そして日本の政界において統一教会がどのような役割を果たしてきたのか徹底解明するとともに、被害者救済につながる施策の検討を求める。

 

 また、中立な第三者機関を設け、統一教会と政党、政治家との関係について徹底した調査をおこない、継続的に違法な活動をおこなっている団体の活動が維持、助長されないよう、また、わが国の政治に不当な影響を与えることのないよう実効的な施策を講じるよう求める。(引用おわり)

 

残り滓が右傾化を先導 カルト化する政治

 

統一教会の教祖・文鮮明と握手する岸信介元首相(右)。1973年に撮影されたもの

統一教会系「天宙平和連合」の国際会議で韓鶴子総裁に花束を贈呈する自民党の江島潔参議院議員(2019年10月、名古屋)

 日本では今年6月22日、最高裁において統一教会の解散命令が確定した。統一教会の宗教法人格は失われ、財産の処分がおこなわれるが、任意の宗教団体としての活動は認められるため、清算後に残った莫大な資金がそのまま別法人に引き継がれる可能性が指摘されている。全国弁連などの弁護士団体は、この骨抜きを防ぐために残余財産の国庫帰属、あるいは被害者救済のためにそれらの資金を充てる立法措置を国に求めている。

 

 そして、なにより自民党を中心とする政界汚染については解明がまったく手つかずであり、韓鶴子を「真のお母様」などと崇め奉って統一教会と密接にかかわってきた議員らが依然として国政を牛耳っている。自民党内における石破降ろしで大騒ぎした旧安倍派から、その後に誕生した高市政権を野党の立場からアシストする参政党に至るまで、統一教会をはじめとする宗教右派と根深い関係性を持つ残り滓(かす)たちが「ジャパン・ファースト」「強い日本」などといって国政の右傾化を先導しているのが実態だ。

 

 彼らは口を開けば「日本を取り戻す!」とか「戦後レジームからの脱却」など勇ましく叫ぶが、彼らが選挙で世話になっている統一教会は、旧約聖書になぞらえて「韓国はアダムの国、植民地化をやった日本は(禁断の果実を食べた)エバの国であり、エバはアダムを支えなければならない」と教義で説き、「サタン(悪魔)の国」である日本の信者からむしりとれるだけむしりとって韓国や米国の教団支部に配分して世界的な布教戦略を展開していたわけで、ネット右翼(ネトウヨ)などが他者を攻撃するときに使う「反日」の定義がそのまま当てはまる。

 

 統一教会の成り立ちから考えても、前述したように韓国では親米独裁政権を敷いた朴正煕(岸信介と満州時代からの師弟関係)の時代に、KCIA(米CIAをモデルにした国家諜報機関)と結びついて勢力を拡大し、米国では反共主義を掲げたニクソン政権のころに共和党保守派を買収し、その後のレーガン政権、近年のトランプ政権周辺の要人へと半世紀以上にわたってパイプが受け継がれる基盤が作られた。

 

 日本では戦犯を免れてCIAに抱えられた岸信介や児玉誉士夫、日本財団の笹川良一といった右翼人士と繋がり、自民党の基盤となるとともに「反共」を旗印にした国際組織として形成されてきた。それらが米国を中心にした戦後の権力構造の一翼を為し、それを維持するためにカルト宗教を利用し、教団としては権力に支えられることで財を成して勢力を拡大した関係だ。日本と韓国の保守政党が米国には一貫して隷属的で、中国や北朝鮮、ロシアなどには強硬策一辺倒という共通性があるのはそのためだ。

 

 元首相銃撃にまで行き着きながらも、統一教会との政界癒着の除染がおこなわれないのは、まさに骨の髄まで表裏一体の「運命共同体」の関係にあるからだ。

 

 長期にわたって政権与党の座にある自民党においては、閣僚から政務官にいたるまで軒並み統一教会関連のイベントに参加したり、選挙で応援されたり、祝賀メッセージを送っていたり、関係がない人物の方が少ないのではないかと思えるほどの癒着ぶりで、その汚れた実態を本格的に捜査すれば韓国の比ではない可能性すらある。山口県内でも、参議院議員の江島潔は国内外の教団関連イベントに出席し、韓鶴子に直接花束を渡すほどの心酔ぶりを披露していたし、同じく北村経夫は、安倍首相(当時)の斡旋で統一教会から組織的支援を取り付けていたことが広く暴露されているが、このような壺議員たちが「国家インテリジェンスの強化」などといって国家情報会議の設置やスパイ防止法を推進しているのだから、それ自体滑稽極まりない姿というほかない。

 

SNS上の誘導にも関与 組織力で熱況を演出

 

 また、近年の選挙などでのSNSを使った世論煽動もこれら宗教右派による組織的関与が指摘されている。宗教右派は「強固な組織力」「共通の信念」「日常的なネットワーク」を強みとしており、これがSNSというツールと結びつくことで、極めて効率的かつ大規模な政治動員が可能になる。

 

 米国では保守系キリスト教団や新興宗教がSNSを駆使し、Qアノンなどの陰謀論などと結びついて政治運動を過激化させてきたことが知られているが、日本でもSNS上でのあらゆる政治的な世論工作や誹謗中傷の煽動などは、「Dappi」(自民党が資金を注入してSNS戦略を委託していた旧ツイッターアカウント)のようにすでに組織化、ビジネス化されている。

 

 先の総選挙では、高市早苗の動画が数日で1億回以上再生されたことが話題となったが、そのように巨額な資金を使ったアルゴリズムの操作で「高支持率」を演出したり、信者に動員をかけて大人数で街頭演説会場を埋めて「多数派の勢い」を演出するなどのあらゆる世論操作も宗教組織が絡むことで可能となる。あれほど日頃は「反日」「中国の工作員」などといって他者を攻撃するネトウヨが、まさに「反日カルト」というほかない統一教会に対しては一斉に口をつぐんでいるのが最たる証左だ。

 

 目下、日本政界ではこのような統一教会関連議員やその残り滓(かす)たちが大暴れしているが、それがいかなる原理で培養されたものなのかは、韓国における捜査の進展によって暴露されつつある汚れた生態から伺い知ることができる。戦時下における軍事独裁への引き戻しという民主主義の危機に直面した韓国においては、これら国政の意思決定をも歪めるほどに肥大化した宗教右派の一掃が市民社会にとっても死活問題と捉えられている。韓国で教団トップにお縄がかかるなかで、その巨額資金の出所となり、統一教会の政治への影響力においては「韓国以上」とされる日本での真相解明は避けて通ることはできない。スパイ防止法などによる国民監視強化の前に、韓鶴子の指示に従って国家の判断を恣意的に歪めてきた国家中枢の病理にこそ真っ先にメスを入れることが肝要といえる。

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