(2025年11月14日付掲載)

質問する伊勢崎賢治議員(13日、参院予算委員会)
れいわ新選組の伊勢崎賢治議員は13日、参議院予算委員会で質問に立ち、高市政府に対し、停戦合意後もパレスチナ・ガザで虐殺と封鎖を継続するイスラエルへの外交的圧力として即時のパレスチナ国家承認を求めた。また、拉致問題解決と北朝鮮との国交正常化について石破前首相が示した方針の継承性を確認し、一刻も早い日朝首脳対話の実現を求めた。質疑の要旨は以下の通り。
ジェノサイド加担の十字架を後世に負わすな
伊勢崎 パレスチナ・ガザについて質問する。9月24日の国連総会における演説で石破前総理はこうのべた。
「今般のイスラエル軍によるガザ市における地上作戦の拡大は、飢餓を含むすでに深刻なガザ地区の人道危機を著しく悪化させるものであり、わが国として断じて容認できず、この上なく強い言葉で非難します」
総理、イスラエルの軍事侵攻に対する見識は前総理と変わりないか?
高市首相 前総理と変わりはない。
伊勢崎 ガザの悲劇を止める。この思いでわれわれは1年以上前に超党派議連をつくった。初代会長は石破前総理だ。最近また戻ってきていただいた。外務省と政策の調整をずっとやってきた。その知見の蓄積は相当なものになった。
現在、停戦合意に則り、ハマスは拘束していた生きている(イスラエル人)捕虜を全員解放したので、この先イスラエルが停戦を破ると、これまで以上に躊躇なくガザを攻撃・破壊できる環境が残念ながらできてしまった。われわれは継続して現場を注視し、政策提言をしていくのでよろしくお願いしたい。
石破前総理は、国連演説でこうのべた。
「イスラエル政府高官から、パレスチナの国家構想を全面的に否定するかのごとき発言がおこなわれていることには極めて強い憤りを覚える」
これがパレスチナ国家承認の問題だ。そして、世界的にも有名になったこのフレーズが続く。
「わが国にとり、パレスチナ国家承認は『承認するか否か』ではなく、『いつ国家承認するか』の問題だ」
外務副大臣に聞く。日本政府によるパレスチナ国家承認はいつか?
国光外務副大臣 現在パレスチナにおいては、停戦合意が10月上旬に、トランプ大統領をはじめ関係国等でなされたが、いぜん人道状況は厳しい状況が続いている。国家承認の問題についても、石破前総理が示されたように「するかしないかではなく、いつするかの問題」であると外務省として承知しているため、最近の情勢も踏まえ、もっとも効果的かつ実効的なタイミングで検討させていただきたいと総合的に考えている。
伊勢崎 「いつするかの問題」――このフレーズの後、前総理の国連演説はこう続いている。
「イスラエル政府による、一方的行為の継続は決して認めることはできません。二国家解決実現への道を閉ざすことになるさらなる行動がとられる場合には、わが国として新たな対応をとることになる」
この文脈は二つのことをいっている。一つは、「わが国の新たな対応」はイスラエルの行動を見極めておこなう。もう一つは、その「新たな対応」とは当然、パレスチナ国家承認であることだ。外務副大臣に聞く。この文脈の理解が正しければ、具体的にイスラエルのどんな行動がその「新たな対応」の見極めになるのか教えてほしい。
国光外務副大臣 今、さまざま情勢が動いている。イスラエルもガザも、周辺国のエジプト、トルコ、カタール等々も停戦の合意、それをより実効的なものにするように、まもなく近隣国エジプトでもガザ地区の復旧や復興に向けた会議が、エジプト主導で開催される予定だ。日本も招かれている。当然イスラエルもだ。多角的な情勢が非常に動いているので、そのなかで適切に情勢を見極めて判断してまいりたい。
伊勢崎 それ(停戦合意)は、トランプ政権が出した20項目プランのことだ。これが進行している。だが今この瞬間にも、イスラエル軍の大規模な停戦合意違反が報道されている。
この2年間でイスラエル軍は6万8000人以上を殺害。停戦合意後の10日間で、イスラエルは80回以上の合意違反をし、約100名のパレスナ人を殺害している。
イスラエル側だけ非難していてはフェアではないので、ハマス側はどうか? この一カ月間でイスラエル兵士が2名死亡する事件が発生したが、イスラエル自身がハマス指導部の関与を示す証拠を提示できていない。ハマスも関与を否定している。
世界有数の軍事国家イスラエル、そして軽武装集団のハマス。これを「非対称戦(アンシンメトリック・ウォー)」という。さらにハマスはこの2年間でその兵力と火力の八割強を失っている。指揮命令系統もズタズタのはずだ。これらを加味しても停戦合意違反をしているのは圧倒的にイスラエルの方だ。
極めつけに、イスラエルはガザへの支援物質の搬入をまだ妨害している。依然、人為的な飢餓が進行中だ。イスラエルは明らかに「二国家解決の道を閉ざす行動」をとっている。そこでまたお尋ねする。今こそ、日本政府として「新たな対応」を表明すべきではないか?
岩本外務省中東アフリカ局長 現場ではさまざまな動きがある。副大臣からも答弁した通り、そういった状況を日本政府としても引き続き注視している。そういうなかで、状況は刻一刻と変わってきているので、そこの状況を見て、最も効果的なタイミングを図っていきたいと思っている。同時に重要なことは、この停戦合意がしっかり守られるということなので、私どもは当事者に対して、あらゆる機会を捉えてこの停戦合意を誠実かつ着実に実施していくよう強く求めてきている。この努力はしっかりと継続してまいりたい。
伊勢崎 一刻の猶予も(ない)。人類史上最も記録されながら進行するジェノサイド(大量殺戮)――国際メディアはこう報道している。国際紛争の血生臭い現場で働いた僕自身、人間として申し上げる。
イスラエルの蛮行に対する国際司法のジェノサイド認定は、かなりの確率で実現するはずだ。将来の子どもたちが使う教科書には、ガザにおけるジェノサイドは、(ナチスの)ホロコーストとともに併記されるはずだ。日本がそれに加担したという十字架を、われわれの次の世代に背負わせてはならない。迅速な「新たな対応」をお願いする。
拉致問題解決のため北朝鮮との対話機会を
伊勢崎 次に北朝鮮問題に移る。総理は拉致問題の解決に向けて強い決意を表明されている。敬意を表する。そのなかで金総書記との首脳会談にも言及された。今一度その内容を聞かせていただきたい。
高市首相 今、首脳会談を実施するためのルート、方法を探っている最中だ。私は手段を選ばず、あらゆる手段を尽くして、一刻も一日も早い拉致被害者の皆様のご帰国を実現するためにとりくみたいという強い意思を持っている。ただ、以前以上に厳しい状況になっているのも事実だ。北朝鮮とロシアが組んだことによって、北朝鮮自体も、北朝鮮を取り巻く状況も変わってきている。相手も強気になっている可能性もある。あまり詳細には申し上げられないが、いろんなルートをたぐり寄せながらトライしている。なんとしても首脳会談を開いて、皆様のご帰国を実現したいという強い気持ちでいる。
伊勢崎 そのお気持ちに敬意を表したい。うまく運ぶことを心から祈っている。一方で石破前総理は、同じ国連演説でこうのべた。
「日朝平壌宣言に基づき、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して、日朝国交正常化を目指す」「北朝鮮に対し対話を呼びかける」
今、実現のためにご尽力いただいている日朝首脳会談は、国交正常化を示唆するものだろうか?
高市首相 石破前総理がおっしゃった方針に日本国政府としての変更はない。
伊勢崎 総理はこの問題の解決のためには「手段を選ぶつもりはない」とおっしゃった。それに敬意を表したうえで、その手段について一つ提案がある。
戦争犯罪、人道に対する罪――拉致や強制失踪がこれにあたる――これらの対処における「正義」とは、生きている被害者の捜索と解放、そして被疑者の訴追と懲罰だ。
しかし、その正義の追求が硬直状態に陥り、憎しみだけが支配し、時間が経過するだけ。そして、それが新たな紛争の火種になりそうなとき、人類は「正義」のかわりに「真実」の追求で歴史を前に進める手段をとってきた。「真実と和解」で有名な南アフリカ、そして、国家間でも真実の究明と引き換えに国交正常化を成し遂けたインドネシアと東ティモールの例がある。私は国連の一員としてこれにかかわった。
拉致問題においては、拉致被害者を全員返せというかけ声の下、残念ながらほとんど進展がない。まさに硬直状態にある。だからこそ北朝鮮側と対話し、そのなかで生存者が見つかれば保護することはあたりまえだ。残念ながら亡くなっている場合は、そうなった経緯の究明と証拠の収集、そしてご家族への補償を徹底する。こういう作業には当然時間がかかる。それゆえ常設の対話装置が必要になる。総理はご存知だと思うが、石破前総理には東京と平壌に連絡事務所を開設するという構想があった。これについてはどうお考えか?
高市首相 連絡事務所の設置については、懸念の声が非常に大きいと承知している。
伊勢崎 総理ともこの気持ちは同じだと思う。拉致被害者とご家族の高齢化が進むなかで残された手段は限られていると僕は思う。これは党派をこえて解決しなければならない問題であり、お力になるので、いつでもご連絡いただきたい。




















