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上関漁業権巡る裁判 双方が勝ったと主張する不思議 祝島漁協は合併へ

 上関原発計画をめぐる漁業権裁判で地裁岩国支部の判決が出た。漁業補償契約は有効とされたのをうけて、推進派や中電は「影響はない」「勝った」といい、敗訴したはずの祝島漁協・山戸組合長側も「実質勝訴」といっている。両方が「勝った」と喜ぶという、わけが分からない陰謀じみた空気のなかで、祝島漁協は合併して解散する方向に誘導されている。

 合併すれば24年間が水の泡
 祝島では今月24日、「漁協だより」が配布された。“速報!”として『漁業補償契約無効確認訴訟』の第一審判決の結果が組合員に報告された。「残念ながら契約無効確認は入口で却下されましたが、組合員個々人のまきえ釣り(許可漁業)や流し釣り(自由漁業)はこの契約に左右されず、操業できることが確認されました。このことは原発のための埋立予定地などでも、たとえ工事の船がきても自由に操業できるということで、中電が“安全に工事をすすめる”ためには、祝島の組合員個々人全員からあらたに“同意”をもらわなければならないということになります。そういうことは、とうてい不可能であることは明らかです。よって、弁護士の判断によると実質的に『勝った』ということにつながります」とした。
 島内では、「わしらが勝った」「祝島にとっては有利な判決だった」とする万歳調の声もあるが、「合併したら元も子もない」「管理委員会の決定そのものは覆っていない」「どう考えたらいいかわからない。また引っかけられるような気がする」などと懐疑的に見る声も多い。祝島漁協の動きとしては、「勝った」といって合併容認に動き、管理委員会と中電が結んだ不当な補償契約が有効とされても、「実質勝訴」なのだから控訴しないというもの。
 一方、原発立地点・田ノ浦に地先権を持つ四代では、推進漁民らが「影響はまったくない。補償契約にはなんの傷も入らなかった。合併するから、一個人が裁判をするようになる。祝島漁協はなくなるから、裁判取り下げみたいなものだ」「控訴審で中電が個人を負かしたらおしまいになる。そのときには祝島漁協はない。予定地で操業できるというが、わしらが優先的に利用する漁場だから“出ていけ”といったらおしまいだ」と、主張している。楽勝ムードといったところだ。
 双方が「勝った」と主張しているなかで確実にいえることは、漁業権侵害、実質的には放棄を意味する中心的な問題で、共同漁業権管理委員会の多数決による同意のない補償契約が「有効」とされたことである。この問題で祝島漁協側は今後争う気配がない。
 本来、漁協権は各漁協に与えられているもので、すべての漁協の同意が必要とされている。共同漁業権管理委員会にそのような権限は与えられていない。それが判例となるなら全県、全国の漁業者にとって重大な問題となる。合併推進の空文句のなかに「合併後も地元同意の原則は保証されて漁業権は守られます」というのがあるが、今回の判決は「地先権以外は管理委員会の多数決で決定できる」とお墨付きを与えたに等しい。4月1日以後、祝島や上関海域の漁業権は県漁協のものになる。祝島の地先権の変更(沖合300㍍)については、祝島の組合員の3分の2同意と県漁協総会同意となる。沖合の警備、港湾海域の漁業権変更が必要となる103共同漁業権については、8支店の多数決となり、祝島だけが3分の2で反対してもダメということになる。
 中電側は「諸迷惑を受忍する義務はない」とした点について控訴審で覆すとしている。判決が出るころには祝島漁協の法人格はなく、個人が敗北しておしまいとなることも十分予想される。漁協が訴えるのと、個人が県漁協内の手続きを問題にするのとでは、意味合いがまったく違ってくる。いずれにせよ、合併するなら抵抗の余地を格段に狭め、原発建設を容易にすることだけは明らかとなっている。

 補償金600万円のみじめさ
 祝島ではこの間、合併誘導にむけて意味深な動きが連続してきた。油や漁具資材は破格のマージンを抜かれて超高額。魚は大阪や福山などの遠方市場までわざわざ出荷されて、そのくせ隣接漁協の半値で売り飛ばされるなど、まさに漁協をつうじた“往復ビンタ商法”によって漁業者は疲弊しきってきた。漁協は山戸貞夫組合長が県下でもトップクラスの月給32万円を手にしながら、1600万円もの赤字を2、3年の短期間でつくり、「合併やむなし」と煽られてきた。
 現時点で敗北に流れるなら、祝島漁民にとっては哀れ惨憺たる結末しかない。将来的に補償契約容認、受け入れに動いたとしても、管理委員会で配分された10億8000万円を割ったら、1人あたり1000万円程度であり、所得として4割税金に抜かれたら約600万円である。関門海峡では、本船航路を確保するために国土交通省が砂を掘っているが、北九州の漁民は10年間限定の砂とりにたいして最高額4000万円の補償金をもらい、最低でも2000万円をもらったとされている。3㌔沖合の真っ正面に原発をつくられて600万円(原発の稼働年数は60年なので年間10万円程度)などというのは、いかに安上がりな売り飛ばしであるかわかる。
 94年時期の漁業権書き換え、その後の裁判取り下げといった漁業権放棄につづいて、毎回反対派のなかから売り飛ばすという事態が計画的にやられてきた。合併を拒否すれば終わっていた原発計画は、また首の皮がつながることとなった。こうした事態について、祝島のなかでは、かつてなく裏切り行為にたいする怒りと不信感が充満している。漁業権の放棄、24年のたたかいの売り飛ばしであるが、これは山戸氏らが代表してきた反対側から反対を崩すというシカケが破産したことを示している。これは全町民団結の新しい力の結集を促し、力関係を転換する条件をつくっている。
 上関原発計画にかかわる問題は山積しており、虫食いの計画予定地、神社地や共有地、送電線や道路の問題、選挙のたびに四割強が崩れない地元同意、漁業権消滅海区は不十分であること、活断層が近辺にあり地震の危険地帯であることなど、さまざまある。局面の裏切りは暴露されるほかなく、強力な反対運動への転換につながることは必至となっている。

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