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神社本庁が林春彦宮司の解任を強行 上関

 宮司は断固戦う姿勢


 【上関】 上関原発建設計画をめぐって焦点となっていた神社地の問題で、神社本庁は16日付で、四代正八幡宮の林春彦宮司の解任を通知した。町内の一部の推進勢力はこれで原発ができたかのような調子であるが、四代地区民をはじめ町内全体は冷静である。選挙が近づくといつも、すぐ原発ができるような騒ぎをやり、補償金や土建事業などで踊らせてその後にとん挫することをくり返してきたからである。林宮司は、解任は予想されたこととして、法的な対応をとり本格的に争う姿勢であり、神社地売却問題も延長戦になる。

 新任宮司の「就任」祭り 参加者わずか30人
 宮司問題は、ヤクザ的なやり方で、みんなの財産を奪いとる、原発22年の中電支配の町になった象徴として、住民自身の難儀した経験を重ね、またいまのブッシュのヤクザのようなイラク戦争のやり方と小泉のぶざまな加担とも重ねて怒りが広がっている。町長選でその決着をつけようという世論に静かに火がつく様相である。


 県神社庁の上田俊成庁長(長門市・飯山八幡宮)は、「現状のまま貴職を八幡宮代表役員として容認し、神社運営の悪化を放置すれば、地域氏子の離反とともに、今後の神社運営にも重大な支障を来たし、神社本庁・県神社庁にたいする信頼の喪失にもつながりかねない」と解任理由を上げている。


 林宮司は今回の解任を受けて、「これまでのたたかいは序章にすぎず、これからが本章だと思っている。いずれ本庁が解任してくるということは想定してこちらも準備してきた。有効な手だてでたたかっていきたいと思っている。神社本庁、県神社庁、中電、国、県、自民党など総絡みのシカケで動いているが、正義をとおさないといけないと思っている」と語っている。今後、裁判などをつうじて争う構えであり、神社地売却問題に決着がつくのは相当の先にならざるをえない。
 四代地区民には17日になって解任を伝える文書が配布され、翌18日には手回しよく「後任」の宮成恵臣宮司(県神社庁理事、山口市・朝田神社)が四代に乗りこんできて「就任」の祭りをやって帰っていった。110世帯、200人が住む四代で「新宮司」を歓迎しようと足を運んだのはわずかに30人であった。林宮司を解任した神社庁が信頼を喪失したのである。これは今後神社庁側が思い知ることになる。


 四代の住民のなかでは林宮司の信頼は厚く、大多数が「首を切るなど、まったくえげつないことをした。中電や山谷はなんでも勝手にできると思っている。解任をお願いする署名が九割というけど、みんなは書類の閲覧をお願いした署名以外に、首切りをお願いする署名はした覚えはない」と語っている。


 「あまりに話の運びが早すぎる。解任したと思ったらすぐつぎの宮司がやってきた。まえから根回ししていたはずだ。中電や神社本庁がグルだというのがこれでよくわかった」。また「道理がとおらない。宮司さんが“ハイ負けました”と手を上げるのなら別だがそんなわけがない。これで決着がつくわけではない」とも冷静に語る。

 「上関はなにをしてもお金が一番先にくる町になってしまった。人の心のつきあいがなくなった。原発が来るまえはこんなじゃなかった」と語る。とくに山谷議員と中電の関係では、環境調査のさいの神社地の借地料1500万円も、地区共有地の借地料も10年近くなるのに地区民に会計報告もなく、ひとりじめしている問題もあり、「中電と山谷議員がみんなの財産を奪いとって、ヤクザのように支配している」という不信が渦巻いている。


 四代住民のなかでは、中電のいうことをきかなければ首にするといった傍若無人なやり方にたいしての憤りが強まっている。四代正八幡宮は中電の私有物でもなければ、山谷区長の私有物でもない。四代に住むみんなの生活の安全と繁栄を願ってたいせつにしてきたし、大多数は林宮司を心から信頼してきたのである。

 みんなの財産を奪い取るヤクザ支配

 

神社地売却拒否を表明する林宮司(2000年12月、中央)

 林宮司を解任するまでにいたった経過は、まさに上関町が中電が乗りこんできたことによってヤクザ支配がまんえんしてきたことを象徴する、すべての住民が受けてきた共通問題として語られている。


  中電が取得しようとしている四代正八幡宮所有の神社地(約10㌶)をめぐっては、94年の環境調査で問題がはじまっている。八幡宮の代表責任役員である宮司を完全に排除して、不正な借地契約をでっちあげて環境調査を強行した。しかも中電は借地料1500万円を神社運営には責任も権限もない山谷良数区長名義の口座に振りこみ、その会計報告は地区民にもなく横領の疑惑が寄せられたままであるが、警察は動く気配もない。


 98年からの用地買収では、開催してもいない責任役員会を開いたとし、その場の議事録までねつ造して「財産処分申請書」を作成して判を押せと迫ったり、神社運営のルールを踏みにじった不正不法な行為をくり返して、宮司に従えと迫ってきた。宮司が神職としての筋を貫くならば、とても認めるわけにはいかないものであった。神社庁としてもまるきり信頼も権威もないコケにされた関係であった。


 あくまで神社地売却を狙う中電は、宮司の首をすげかえて、承認の判を押させるために解任策動をめぐらせてきた。中電は山谷区長らを使って、宮司が祭りの期日を総代に伝えても地区民には知らせないでボイコットしたり、お宮の鍵をしめたまま入れないようにしたり、祭りをすればつるしあげをやるなど、四代のなかに正常でない状態をつくりだして「神社運営の悪化」と叫んだ。


 林宮司が本務する室津の賀茂神社でも、室津漁協の外村勝磨組合長ら現在の浅海陣営の顔ぶれが騒動を起こし、四代の神社地売却を認めなければ組合員が神社を脱退するとか、祭りをやらせないでおいて宮司がやらないなどと騒ぎ、中電から雇われている推進組織の町連協が全町に宮司不適格のビラを何枚もまき、それを商業マスコミが「氏子と宮司の対立」「不適格宮司」として描いて、よってたかって人格を攻撃し、「神社運営がでたらめな宮司は解任しろ!」と主張してきた。室津では、宮司が関与しないところで総代を決めたり、お宮にお初穂を出すなと圧力を加え、宮司が生活できないような卑劣な攻撃まで加えた。


 2000年10月には、脅したりだましたりして四代地区民の九割からとった署名をそえて「宮司進退具申書(解任要求)」を県神社庁に提出し、それは2001年3月には神社本庁に上申された。以後、神社本庁がどのようにあつかうかが注目されてきたが、2年をへて、この4月の町長選挙をまえに解任の通知を出した。


 こうして林宮司は「神社地を売却しろ!」という中電のいうことをきかなかったために神社本庁(東京都・工藤伊豆総長)によって解任通知を受けた。神社本庁、県神社庁は、中電という私企業の原発にくみして、神社としてのスジをとおすことも投げ出し、林宮司の解任に踏みきった。それは四代住民だけでなく、山口県内、全国の氏子の信頼を喪失する行為とならざるをえない。「家内安全」「商売繁盛」をとなえて人人からさい銭をもらう神社が、放射能で廃虚にするような原発に食らいつくというのである。愛国心などというものはかけらもなく、政府に原発建設の指図をしているアメリカに神様が変わったといわなければならない。神社庁の腐敗体質が鋭く問われることになる。


 町内の代理人や商業マスコミ、県神社庁、自民党や弁護士や裁判所などの金力、権力を総動員して、あらゆるデマ、中傷を浴びせて首にするという解任策動がこれまでやられてきた。林宮司はこの不当な攻撃にたいして、「正しいことを正しいとして貫く」として断固としてたたかってきた。
 町内では、町長選へむけてさらに気合いが入るすう勢にある。町民のなかでは、戦争が現実問題になったという実感とあわせて、ミサイルの標的になって日本を廃虚にする原発などとんでもないという論議が、もののいえない戦時中のような上関の20年とも重なって、みんなの財産を奪いとるヤクザ支配のような中電の町を変えなければの論議となって高まっている。

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