いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

文字サイズ
文字を通常サイズにする文字を大きいサイズにする

れいわ新選組・山本太郎が九州でゲリラ街宣 コロナ禍で進行する「火事場泥棒」に警鐘

 れいわ新選組の山本太郎代表は、4月24日から九州に入り、福岡県内の主要な駅で街頭演説を展開している。コロナ禍のため関係者は全員PCR検査を受けて臨むなどの感染防止対策をしたうえで、事前告知をしないゲリラでおこなっている。長引くコロナ禍で一層深刻化する貧困や出口の見えない経済不況に対する国の対策の遅れを指摘するとともに、積極財政による人々への大胆な給付や経済支援、PCR検査拡充などの感染症対策の徹底、さらに消費税をはじめとする負担軽減などの緊急政策を熱を込めて訴え、沿道の聴衆から強い共感を集めている。一般聴衆からの質問も国のコロナ対策についての疑問が目立ち、山本氏は「意図的なコロナ放置の背景には別の目的が潜んでいる」と強調した。24日にJR小倉駅前でおこなわれた街頭演説から、聴衆とのやりとりの一部を紹介する。

 

 男性(質問) コロナ禍の先が見えないが、日本のコロナ対策は世界的に見ても非常に遅れている。国は飲食業に給付金を出すというが、多くの店はもう持たない状況にまできている。この国民の状況に対して、政治は今後どのようなコロナ対策を打っていくのか。われわれ高齢の世代は、とにかく頑張って働けば将来は国が老後を保障してくれるという時代を生きてきて、昔は今のようにフリーターもいなかった。だが今の若い人は、年金にしても50年先、60年先には制度が崩壊しているのではないかという不安も大きい。このような将来の不安に国はどのように対処していくつもりなのか。

 

 山本太郎 第一に、コロナが来たからみんなが困っているのではない。コロナが来る前から多くの方々は非常にしんどい状況があった。

 

 コロナ禍以前に日銀が調べた貯蓄ゼロの世帯別割合を見てみたい。これには、今銀行にお金が入っているが月末にはなくなってしまうという人も含む。20歳代では61%、30歳代では40・4%、40歳代は45・9%、50歳代でも43%だ。ひどい状況だ。

 

 この背景に高度経済成長やバブルというものがあるのなら、まだ逆転のチャンスはある。高度成長期に青春時代を送ったというお父さん、お母さんは自分が20代のときに貯蓄ゼロなんて普通だったという方もおられるが、今この貯蓄ゼロ世帯の背景には何もない。断崖絶壁しかない。今後経済が好転する気配もない。このまま高齢化したときに、国が何かしら手立てを打つのかといえば、残念ながら打たない。

 

 なぜか? このような状態にさせてしまった政治家たちはその頃には引退している。洪水がやってくるのは、その人たちがいなくなった後という話だ。こんな無責任な話はない。
 とくに経済的失敗であるデフレ――世の中にお金が回っていないときに消費税をどんどん上げていくという間違った政策をうち続けた。そればかりか労働環境も破壊し、安定した職業がどんどん不安定化した。いまや非正規雇用は四割をこえている。このように労働環境と税金のとり方を歪めていった結果、若い人が蓄財できるような余裕はなくなった。誤った政策によって人生が歪められた被害者たちに対して、今政治がなにができるかを考えなければならない。今20~50代の人たちが高齢化していったときにどうやって支えるのか? 現状ではのたれ死にだ。一発逆転できる人が何人いるだろうか。

 

 今やるべきは積極財政しかない。このような状況に陥ったのは、国から人々に対する財政出動を絞り続けてきたからだ。将来世代に対する投資を絞っている。だから教育でも、大学に行くのに多額の借金を背負わされ、自己責任化されている。公共事業に関しても、橋本龍太郎の時代から小泉の時代までの間に10年間で投資額は半分に減らされた。あらゆる分野に対して蛇口を絞り続けた結果、世の中にお金が回らない状態になった。それが何十年も続けられて消費税も上げ、いろんなことが複合的に絡み合えば当然社会は荒廃する。あまりにも無責任だ。

 

 徹底した財政出動でなにをやるか。大学や大学院に通うために借りた奨学金をチャラにすればいい。国家財政における9兆円でできる。現在は大学に行くために借金を背負い続けて、卒業する頃には数百万円の借金、大学院を出る頃には1000万円の借金を背負わされた若者たちに、細々と生活しながらそれを返済していくことを強制している。大学生の2人に1人だ。そのような状況から一刻も早く解放してあげることがなによりも重要だ。

 

 大学生に多額の借金を負わせたうえに利息までとるようになったのは、小泉政権時代の産物だ。大学生の2人に1人が奨学金のシステムを利用し、そのうち6~7割は有利子タイプだ。それによって年間に3百数十億円という利息が生まれ、それが一部の企業に対するインセンティブ(経済的刺激)になる。さらにそれをとり立てるサービサー(債権管理回収業)のような仕事にも波及していくわけだ。企業側に対して仕事を差し上げるために若い世代たちを犠牲にして金融商品にしてきた。この国の未来である若者たちを金融商品化してしまうような国は滅びる。人の命に対して、人生に対してなんのリスペクト(尊敬)もない。すべてカネや票と交換し続けてきた日本社会は当然荒廃していく。

 

 貯蓄ゼロが多い若年世代から中年世代を下支えすることは国の義務であり、学校教育を受けるための借金を9兆円でチャラにできるのなら、した方がいいに決まっている。財源はある。

 

 それだけではない。安い家賃で住める家を保障することも重要だ。少子化を問題にしながら、それに対する効果的な施策は何一つやっていない。効果的な施策とは、教育に対する本人や家族の負担を減らすこと、低廉な家賃で一人暮らしができる住宅を作ったり借り上げていくこと、そして収入が低い人に対して補填をすることだ。

 

 この三つを前に進めた欧州などの国では、出生率が回復しつつあるという報告もある。やるべきことははっきりしている。将来世代が高齢化したときに地獄のような世の中が展開されないように、最低限それをやらなければならない。

 

 年金がなくなるという話も出たが、年金制度は破綻しないが、もらえる額が減らされる。制度設計を見ても、現役世代が高齢者を支えるという形になっている。だから現役世代がどんどん減っていくような少子化は絶対に防がなければならない。すでに1970年からこの国は少子化に陥る恐れがあるとずっと警鐘が鳴らされてきた。大阪万博の年から警告されてきたのに現在は完全なる少子化だ。政治が機能していないのだ。

 

 「少子化は国難」という問題意識を抱えているのなら、一番にやらなければならなかったのは先述の三つの施策だ。ベビーブーム生まれの人たちに対して集中的にやらなければいけなかった。なぜなら人口のボリュームが一番多く、その後にもベビーブームを起こせるような状況を国として作らなければならないからだ。だが、その頃から国は蛇口を絞ってお金を出さず、すべてを自己責任化していった。

 

 ロストジェネレーション(失われた世代)が生まれるような状況を放置し続けた。97年に消費税は5%に増税され、アジア通貨危機もあいまってこの国は本格的デフレに踏み込んだ。そこから25年ずっとデフレ。政治が間抜けなこと以外に理由がない。やるべきことはやらず、目の前のお金だけ。自分が議員になりさえすればいい。そのためにずっとこの国を食い潰してきた。

 

 だからこそ今やらなければいけない。この国のオーナーは皆さんだ。政治家は雇われの期間限定の身だ。それを選ぶのは誰かといえばオーナーである皆さんだ。どれだけ金持ちでもワーキングプアでも、持っている票は一票。金持ちはうまく票をまとめ、それを組織票にして、自分たちの利害を叶えてくれる人たちを議員にしていった。一方で人々の方は50%が票を捨てているのが現状。これでは社会は好きなように破壊され続ける。

 

 労働環境を破壊して非正規労働者を最大限まで増やした後は、外国人労働者がより大量に入ってくることが可能な入管法の改正を2018年に通過させた。国内の労働環境がこれ以上破壊できないと見込んだら海外からそういった勢力を大量に入れるようにしてさらに安い労働力を作っていくようなことを政治が進めた。それは、組織票と企業献金で固めに入っている人たちの利害に叶うことをするためだ。首が絞まりながらも、この国のオーナーであることを忘れ、票を捨ててしまっている。みなさんが圧倒的多数派なのだということを忘れてはいけない。

 

徹底的な財政出動を! コロナ支援を絞る政府

 

 山本 一握りの人間たちだけでこの国をコントロールしてきた結果、25年もデフレが続き、貧困は広がるばかりだ。コロナ禍になったとしてもかずかずの救済策を絞っている。雇用調整助成金も絞りに入った(5月から段階的縮減)。持続化給付金も2月で打ち切った。家賃支援給付金も止めた。コロナの出口は見えてない。出口が見えていないのに出口戦略をとるということは、もう体力のない奴らは勝手に潰れろという宣言でしかない。

 

 これは非常に危険なことだ。ものを作れる人がいなくなる。ものを作る力を持っている事業者もいなくなる。ものを作る技術者も労働者も、みんななにかしらの所得を手にしてものを買い、それが誰かの収入になるという循環にかかわっている。一人でも失業者が生まれ、一つの事業が倒産すれば、その地域は確実に衰退する。それまで生み出してきた仕事や利益が一気に切れるわけだから、たった一つの事業者であっても地域に与える影響は甚大だ。それが二つ、三つになればなおさらだ。

 

 だからアメリカでは大胆に200兆円、300兆円というレベルで国がお金を出している。不景気やコロナという災害の下ではしっかりとした新政策を打たないと国が衰退するからだ。国が衰退すれば安全保障上の問題になっていく。つまり、いろんな企業が体力を失っていくことは、経済的に弱っていない国、企業によって日本の力がどんどん買収されていくことになる。だからこそ今大胆に支えなければならない。徹底的な財政出動をやるべきときだ。

 

 日本は円を刷れる。インフレ率の上限に達しない限り、国家の通貨発行権を使いながら大胆にお金を入れていくことは、どの国でもやっていることであり、絶対的に重要な施策だ。

 

 それをどうしてこの国はやらないのか? 理由がある。別の狙いがあるからだ。政治家がポンコツというだけの理由ではない。今立っているトップがどうしようもないという話で片付けられる話ではない。こういったコロナの混乱に乗じて、火事場泥棒的に大企業や海外の資本をもうけさせることをどんどんやっていこうとしているからだ。

 

 これまでの政治で大きく国を衰退させてきた現実を踏まえるなら、コロナ以前から危機的な状態だったことを多くの人々と共有しなければならない。コロナ前も危機的だったのにコロナが来てより危機に陥った。では何が必要か? といえば国が金を出すしかないというシンプルな話だ。金を出したら国が破綻するではないかという人もおられるが、日本が経済的に破綻することはありえないことも知っていただきたい。

 

 徹底的にお金を出して経済を回し、急場を凌ぎながら、破壊された労働法制や歪められた税制などいろんなものを直していく作業が必要だ。まずは徹底的にお金を出してみなさんが傷を負わないということを国が保障しなければならない。それをやらない政治なら存在している価値がない。

 

 どうして税金をとられる? どうして社会保険料をとられる? 真面目に働いても満足に生きられない理由は何? 困ったときに助けてくれるからだろう。それさえやってくれないのなら無政府状態と同じだ。その政治を作るのは、紛れもなくあなただ。変えられないのならこんな面倒なことはやらない。変わらない世の中ならとっくに諦めている。でも変える鍵を握っているのは、みなさんお一人お一人だ。これがあるから私自身もやっていられる。みんなの力でひっくり返してやりたい。

 

検査・隔離と補償こそ コロナ収束の鍵

 

 男性(質問) テレビで毎日コロナ、コロナと騒いでいるが、見ていて頭が痛くなる。もうあまりいわない方がいいと思う。コロナが大変なのはわかるが、騒ぎすぎなのではないか。大騒ぎによるダメージの方が大きい。

 

 山本 確かに全人口のうちコロナウイルスに感染するのはごく少数だから、ほとんどの人が自分事として考えられない。それは当然のことだ。ウイルスを持っている人たちがちゃんと捕捉され、保護されることが実現できるのならば、社会はちゃんと回せるはずだ。日本と同じ天然のバリアを持つ島国のニュージーランドや台湾では、もうノーマスクを実現している。ノーソーシャルディスタンスで1万人規模の音楽フェスティバルを全国で実施しているような状況だ。日本とは大きく違う。

 

 それは対策が違うからだ。検査を絞るのか、検査を拡大するのか。検査を拡大しないと多くの人口のなかで一握りの無症状・軽症者は見つからない。見つからなければ捕捉できず、くすぶり続けるしかない。その数が多くなったときに緊急事態を宣言して“一旦閉じましょう”といい、数が減ってきたら“また開きましょう”。開いた時点ですでに違う変異株が存在していて、それが一気に広がって行く――のくり返し。これを何年続けるのか? という話だ。テレビでもその話ばかりで気が滅入る。

 

 こういった状況を誰が作っているのかといえば、ちゃんとした施策を打ってこなかった政治だ。今からでもやればいい。徹底的にやればいい方法がある。全人口のうち一握りのコロナ感染者をしっかりと捕捉・保護し、経済的にもしっかり支えてあげる。ボーナスも出るという形にするのもいいのではないか。現状ではコロナの疑いというだけで人にはいえない。口に出せば下手したら村八分。これでは収まらない。

 

 中国などでは、熱があってPCR検査を受けにきた人にはお金を渡している。賢い。患者が向こうから来てくれる。そして、昨年は連休の時期に外に出ない人たちにクーポン券やお金を渡す。これも賢い。GoToキャンペーンとは真逆だ。その結果、もう日常をとり戻している。つくづく真逆のことをやっているのが日本だ。大胆な緊急事態と大胆なお金の給付がセットでおこなわれていたなら、ニュージーランドや台湾と同じく去年のうちに終わっている。今頃はノーマスク、ノーソーシャルディスタンスだ。

 

 島国なのに水際対策(出入国制限)もザル、国内の検査も絞っていくのならいつまでも続くのは当たり前の話だ。

 

 1日当たりの最大検査能力をみても、イギリスでは78万2000件。中国は2401万件。人口も多くレベルが違う。日本はたった17万5200件だ。そして1日の最大検査能力が17万件あっても、これまでの実績で最多の日でも6万件程度だ。検査能力も1日当たりの検査数ももっと増やさなければならない。

 

 例えば、東京都では1日当たりの最大検査能力は6万6000件。これにはPCR検査だけでなく抗体検査も含まれる。ところが実績としての最多検査数は1日あたり1万1500件程度だ。日本は陽性者が少ないというが、検査をしていないから当然だ。コロナに罹患している人は一握りなのだから、この人たちを経済的にも保護し、その期間しっかりと医療が受けられる状況を整えれば、それ以外の人たちは社会活動を再開できる。

 

 コロナの収束について失敗し続けている大阪を見ても、緊急事態宣言を早めに終わらせた結果、医療の逼迫どころか医療崩壊だ。手術の延期や、救急車に乗せられて何時間も受け入れを求めてウロウロさせられる事態が起きてしまっている。なのに、失敗したトップがテレビに出続ける。本来なら全国の自治体のなかでもコロナをしっかり抑え込んでいると評価されているような自治体トップがテレビで教訓や必要な施策について伝えなければいけないはずだ。それが、もう次の選挙に照準が変わって、選挙に向けて露出を高めていくために、今大阪の首長をテレビに出し続けているのだ。

 

 一番悪い例としてとりあげられるべき地域の首長が電波を独占し続けているのが現在のメディアなのだ。

 

意図的なコロナの放置 中小企業淘汰の狙い

 

 山本 今やるべきことは徹底した検査、徹底した保護・隔離だ。これが徹底されたら社会生活は回せることは海外の成功例が実証している。ここまで変異株が流入した日本でどこまでとり戻せるのかは未知数だが、やるべきことをやるしかない。

 

 逆に、なぜやるべきことがはっきりしているのにやらないのか? を考えると、そこには別の狙いがある。国がポンコツなわけでも、菅総理が間抜けなわけでもない。なぜいい加減なコロナ対策が許されているのか。それはより混乱を大きくする必要があるからだ。なぜか? 火事場泥棒をするためだ。

 

 一言でいえば、25年のデフレに加えて、コロナという状況で、いろんな企業が体力を奪われていく。その多くが中小企業だ。この中小企業の体力が弱ったところに別の企業が来て買いとっていく。これを機にM&A(合併・買収)をどんどん進めようとしている。
 つまり、中小企業をどんどん潰し、よりお買い得な製品として、オンセールしていくためのコロナの放置だ。その根拠について話したい。

 

 政府によるコロナ対策の不手際には、災害便乗型商法を押し出すという別の意図がある。コロナ禍は今後数年間続くだろう。少なくとも現状では終わりが見えてないというのが大半の理解だ。にもかかわらず、なぜ給付金を終わらせるのか? なぜ家賃支援給付金も打ち切り、無利子無担保融資の受付も終わるのか?なぜ納税や社会保険料の納付猶予を止めるのか?

 

 終わりが見えていないのに救済策を絞っていくということは「体力がないところは潰れていけ」ということの宣言でしかない。個人や民間の努力が足りずに潰れたり、失業するのではない。その背景には25年のデフレがあり、コロナによる需要の喪失が大きく影響している。

 コロナは紛れもなく災害だ。なのに災害指定もせず、個人の努力に委ねることをずっと続けている。しかも救済策は絞っていく。

 

 みんなに金を給付するような政策はそこそこにしておけ、あとは絞っていくだけだ   このような方針を後押しする存在がある。『東京財団政策研究所』というシンクタンクが昨年3月に「経済学者による緊急提言」なるものを出した。発起人の一人である小林慶一郎は、政府の新型コロナウイルス対応に関する「基本的対処方針等諮問委員会」の委員であり、政府に直接もの申せる立場にある人だ。その東京財団の提言には、「企業の退出(廃業、倒産)と新規参入による新陳代謝が不可欠である」と書いてある。

 

 普通に読めば、その通りだと思うかもしれないが、コロナ禍ではいくら個人で頑張ってもどうにもならない現実があるのに新陳代謝を活発にしていけばバタバタと事業者は倒れる。それまで事業者が地域で回してきたお金が途切れ、従業員も解雇されて収入が失われ、彼らが消費者として回してきたお金も両方失われる。

 

 だが、提言は「適正なスピードでの企業の新陳代謝を促す政策も組み合わせることが必要である」と続く。このような提言を政府に出しながら、金を絞っていけということをずっといっているわけだ。

 

 もう一つ。財務大臣の諮問機関として「財政制度等審議会」がある。メンバーには、榊原定征・経団連名誉会長、元東大の吉川洋・立正大学長、土居丈朗・慶應義塾大学教授、小林慶一郎・慶應義塾大学教授など、緊縮財政論を唱える学者たちに加え、労働者の味方であるはずの連合の神津会長もいる。財務大臣にもの申す場であり、ここでいわれたことがどんどん形になっていくと思っていい。

 

 この審議会が11月25日に出した「建議」には、「政府の一時的かつ非常時の支援を継続し、常態化させれば政府の支援への依存を招き、産業構造の変革や新陳代謝の遅れ、モラルハザードを通じて今後の成長の足かせとなりかねない」とある。つまり、これ以上金を出したら、金くれ、金くれとうるさいからもうやめろということだ。

 

 25年ものデフレで格差が開き、内需国の日本において需要が失われ続けてみんな貧乏になっているのだ。そのうえにコロナがやってきて、いつ終わるかもわからない。にもかかわらず金を絞れということは、「倒れるところは倒していくしかない」という話だ。モラルハザード、規律がなくなる、みんな金くれ狂になると――。何様なのかという話だ。

 

 この国にある数々の産業を守るのが国の役目であるはずだ。中小企業はこの国の企業の99・9%を占める。中小企業の雇用者は国の全雇用者の7割だ。バタバタと潰れたらどうなるのか。自殺率が増え、犯罪率も増える地獄みたいな社会が待っている。

 

 そして、今国会中に「新陳代謝」という名の中小企業の淘汰を加速させていくような法律案が提出される。所得税法の改正だ。中小企業に対してM&Aをおこなう人たちに対して減税するという内容だ。体力が弱った中小企業を買いとるのは、体力のある大企業や海外の資本だ。狙いはここにある。政府がポンコツなのではなく、目指している方向が違う。見ている景色が違うのだ。

 

 国内でコロナを収束させるのではなく、コロナの混乱に乗じて体力を失わせる方向に持っていきながら、大企業や海外資本にこの国の中小企業を食わせていく。小泉・竹中時代にハゲタカファンドが活躍したが、過去にやられたことを今回はもっと大々的にやっていくという方向性だ。これに対してブレーキをかけなければいけない。

 

官邸操る外資の代理人 コロナに便乗し産業構造を破壊

 

 山本 菅総理が総理になる前、「パンケーキおじさん」みたいな演出がされていた昨年9月頃、菅氏は「中小企業の統合・再編を促進し、競争力を強化する」と表明している。この後押しをしているのが、デービッド・アトキンソン(元ゴールドマン・サックスアナリスト、小西美術工藝社社長)だ。英国出身で「日本が大好きです」という雰囲気を醸し出しつつ、日本の産業構造を破壊しに来ている人物だ。本来なら国外追放ものだが、菅総理はアトキンソン信者といわれ、新たに設置した「成長戦略会議」の民間委員に任命している。

 

 このデービッド・アトキンソンなる人物の目指す方向性は、彼の発言からも明らかだ。「日本の生産性が低いのは、小規模な企業が多すぎるせい」「360万社弱ある中小企業を200万社弱に統廃合すべき」というものだ。北九州や福岡県全体で中小企業の割合は九割以上だろう。この数を半分にしてしまったら労働者はどうなるのか。考え方としては、統廃合していくうちに失業者が出て、失業者は次の仕事を選びづらくなるので、より安い労働へと新たに人を流していくという目的もあると思われる。

 

 さらに彼は「慢性的な赤字企業はただの寄生虫」「小規模事業者に補助金を出す必要はない」「コロナ危機が最後のチャンスだ」と強調する。日本になにをしに来たのか? という話だ。菅政権やそのブレーンとされるアトキンソン、竹中平蔵みたいな人間たちが産業構造をぶち壊し、中小企業を淘汰しながら数を減らし、その過程で日本の大企業や海外資本をもうけさせ、失業していった労働者をより安い労働力として流出させていくということをやろうとしている。

 

 このようなことをやってはダメだといっているのがIMF(国際通貨基金)だ。IMFはアジア通貨危機のときにはインドネシアやタイ、マレーシアなどに財政支援をするかわりにコストカットなどの緊縮を迫り、公衆衛生を含むさまざまな社会事業がカットされて大惨事が起きた。アジアではそれに逆らったマレーシアだけが成長したという過去があった。このような間違ったことをやってきたIMFだが、今回は正しいことをいっている。コロナを機にしたM&Aにはノーを突きつけている。

 

 IMFが3月15日に出した警告(要約)では「コロナ危機に伴う景気悪化で、多くの中小企業が破綻し、少数の大企業の市場支配がさらに強まる。市場支配はIT、製薬業界で拡大が目立つ。企業の合併・買収、いわゆるM&Aが原因である。少数大手が市場を支配し、競争が低下すれば、企業の革新性が損なわれ、産業活力の落ち込みと経済成長の鈍化を招く。全国の独占禁止当局に対し、市場支配の乱用を積極的に取り締まるよう対応を求める」としている。

 

 これと逆のことをやろうとしているのが、アトキンソンとその信者たる菅首相だ。「このコロナ危機をチャンスに、潰れるところを潰した方がいい」というようなことをいっており、その方法として今国会では所得税法の一部改正によってM&Aをおし進める企業に減税する法律を決める。IMFが「今やるなよ」ということを積極的に進めていくのだ。こんなことをすれば、すでに壊れている国はさらに壊れる。

 

 今やらなければならないことは、社会にお金を回すこと。25年もデフレで、みんなの購買力である需要が失われた。この国のGDPが縮小するのは、その6割を占める個人消費が縮小しているからだ。25年もデフレ続きという他の先進国に存在しないような状況は、あなた自身の購買力を奪う税制や不安定な働き方を拡大する政治によって生み出されたもので、さらに間違った経済政策も上積みされたことでこの国は弱り続けた。

 

 世界の国では、検査と隔離を徹底し、とくにアメリカでは200兆円を出して、次には300兆円の財政出動をする予定があり、3度の現金給付を終えている。ニュージーランドでも台湾でもできたことを日本ができないのは、やる方法がわからないんじゃなく、やれるけどやらないことを選択し続けている。それによって混乱を生み、そのなかで火事場泥棒をする。

 

 すでにこの混乱のなかで、国は原発汚染水の海洋放出を決めた。テレビではトリチウムしか含まれていないようにいわれるが、汚染水には64種類の核種が含まれ、規制値をこえているものがいくつもある。二次処理をしても全体的にいろんな核種が基準値をこえているという状況があるから、トリチウムも世界で流している量であっても日本では流せない状況になっているだけの話だ。それでもコロナの混乱に乗じて放出方針を決定した。
 中小企業についても「淘汰する」とは決していわないが、「足腰を強くする」ときれいな言葉にかえて実際にやろうとしているのは淘汰そのものだ。

 

 こんな状況を誰が作ったのかといえば政治だ。その政治を作ったのは誰かといえば、こういった政治を放置し続けた私自身だ。政治に興味が持てず、自分の人生で精一杯で、自分の人生が充実しているかどうかだけがメインテーマだった。それが、原発事故を境にして世の中の異常さに気付き、地獄のような社会になっているのなら、なんとかしなければならないと思った。私のように極端に考え方が変わった人は少ないかもしれないが、そこからが始まりだ。知ってしまえばやるしかない。

 

 でも私たちだけではできない。この国のオーナーであるあなたの力を借りなければ、命に対する価値が低すぎる国、人間が部品みたいに壊されることもよしとされる国、働き方改革という名の下に残業時間月80時間も認められるような国の状況は変えられない。

 

 命に価値がない国だからこそ、絶望を感じて年2万人以上の人が自分で命を絶ち、命に対して尊厳がない国だからこそ毎年50万人もの人が自殺未遂に追い詰められる。

 

 この状況で孫の世代にバトンタッチできない。次世代に対してまともな社会をバトンタッチするためには、今この世に生きる、今の時点で生活されている皆さんに対して人間の尊厳が守られるような社会を作らなければいけない。あなたの力は1億数千万分の1ではない。あなたが政治から体を離した瞬間に好き放題やられる。

 

 男性(質問) ニュースでは政治的にネガティブな情報が流れ、今の情勢に向き合う機会はなかったのだが、演説を聞いて山本さんの日本をよくしていこうというとりくみに対してすごく明るさを感じた。私は30歳だが、今まで高校も大学も私立で、自分も含めて若い世代が学費で今もなお借金を背負って返済し続けている現実がある。国を支えてきた企業が支援を受けられずに倒産していく危うさも痛感している。そこで若い世代が何をしていけばいいのか教えてほしい。

 

 山本 私たちは同じ船に乗っている。今はデフレやコロナの影響を受けていなくても、世の中のお金が回らずに減っていけば、間違いなくあなたの収入や暮らしにも反映される。当然のことだ。その影響が劇的に広がらないためにも、国が下支えをしていくという財政出動が必要で、お金を出していくことでその被害を縮小化しなくてはいけない。そのときに一番大事なことはやはり財源だ。この国のオーナーであるあなた自身が、この国において財政出動をしても財政破綻することはないという事実関係を知っていただかなければいけない。そして、それを理解したうえで他の人にも話せるようになっていただきたい。

 

 私たちは、コロナが収束するまで赤ちゃんからお年寄りまで一人一人に毎月10万円の給付が可能だと主張している。年間144兆円がかかるが、これはすべて国債発行で賄うことが可能だ。消費税の廃止も26兆円かかるが、この国の屋台骨である中小企業の首を絞め続けている消費税をなくし、徹底的に補填していきながら供給能力を守る必要がある。

 

 政府の借金は、あなたの借金ではない。政府の負債は民間の資産であり、政府の赤字は民間の黒字なのだ。この国には財源はあるという事実を知っていただき、それを広めていく主体になっていただきたい。

 

 生きているだけで価値がある社会は、みなさんの手によって作ることができる。政治によって歪められた社会は、政治によってとり戻すことができる。どうかその先頭に立たせて下さい。

 

関連する記事

この記事へのコメント

  1. 京都のジロ- says:

    ・菅首相は意図的にボンクラな的外れなコロナ対策を しいてるのではと思います。 意図的に中小企業を倒産させ外資が草刈り場をすのでしょう。 老人が少なくなれば年金、医療の国の負担は軽くなります。・広島再選挙が自民党が負けたのは計算づくではないでしょうか? 岸田を再起できないほど潰しすためです。 どちらも、やっぱり、安倍さんに再登場してもらわないと….って 下地作りではないでしょうか? 
    自民党は愚かなことをやっているようで全てシナリオがあり着々と日本破壊工作が進行しているように勘ぐってます。要注意! れいわ新選組から一人でも多く、国会へ送りましょう。

京都のジロ- へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。なお、コメントは承認制です。