(2026年3月20日付掲載)

質問する伊勢崎賢治議員(17日、参院予算委)
れいわ新選組の伊勢崎賢治議員は17日、参議院予算委員会の質問に立ち、イラン戦争の最中に訪米する高市首相に対して、トランプ大統領に即時停戦を促すよう求めた。米側が日本に求めているとされる自衛隊派遣については、国内法体系に自衛隊員や現地住民を守るための「国外犯規定」がない日本特有の問題を指摘し、国家命令の結果として起きる過失の責任を個人に押しつける「法の空白」を放置したまま派遣論議がおこなわれている異常性を強調した。政府側の答弁は一般論に終始した。以下、質疑要旨を紹介する。
伊勢崎 昨年9月の国連総会で石破前総理は、イスラエルのガザへの軍事行動をこのうえなく強い言葉で非難し、即時停止を求めた。続く11月、この場(参院予算委)で(高市)総理は「日本政府の姿勢は石破前総理と変わりはございません」と答弁された。
総理に確認する。日本政府は、国際法や国連憲章に反する、そして民間人の被害をともなう攻撃については、たとえそれが友好国であっても是々非々で向き合う――この姿勢はこれからも変わらないか。
高市早苗首相 イスラエルともパレスチナとも日本は良い関係を築いている。そして今、イスラエル、イランそれぞれに日本はお付き合いがある。当時(昨年9月)のイスラエルの軍事行動と今般のイランに対する軍事行動では、それぞれ経緯と状況が異なるので、両者を単純に比較することは困難だと考えている。
伊勢崎 おっしゃる通り、ガザで日本政府が踏み込めたのは、戦闘が長期化し、民間人の被害が膨大に累積したからだと信じる。
一方、今月始まったイスラエルと米国によるイラン攻撃は、国連憲章上の武力の行使に該当する。これが許容されるには、自衛権の根拠(第51条)、国連安保理の許可のどちらかが必要だ。米国とイスラエルは「イランの脅威に対する自衛」と主張しているが、国連憲章上の自衛権行使の要件となる「差し迫った脅威」の証拠はいまだ提示されていない。
今日問題にしたいのはこれではない。こうしている間にも子どもを含む市民の犠牲が累積していることだ。2月28日、イラン南部ミナブの女子小学校が授業中に空爆を受け、160名以上の命が奪われた。現場は凄惨を極め、がれきの中からバラバラの手足や頭部を回収せざるを得ないほど遺体の損傷は激しく、判別すらつかない状況が報道されている。

米軍のミサイル攻撃を受けたシャジャレ・タイエベ小学校の児童たち(攻撃前の写真)
トマホークミサイルの使用が示唆されており、米軍自身の調査が始まったことは周知の通りだ。かつてアフガニスタンで米軍の標的システム体制を身近で見てきた僕としては、「古い地図を使った誤爆」という説明では済まされない。これから米軍がものすごい力量で調査を始めると思う。6カ月から1年かかると思われる。
総理、くり返すが、この間にも市民の犠牲は、特にイラン側で「非対称」に拡大している。(米軍やイスラエル側と)比べると2ケタから3ケタ違う。ガザでイスラエルに即時停止を求めたように、米国とイスラエルに対しても同じ強さで即時停止を求めていただけないか。嘆願に近い僕の願いだ。
高市首相 民間の犠牲者をこれ以上増やさないために今もっとも大切なのは、事態の早期沈静化を実現することだ。日本としては国際社会と連携しながら、あらゆる外交努力をおこなっており、これからも続けていく。
伊勢崎 犠牲の非対称性――これを念頭に置いてもらいたい。
「法の空白」は国の責任放棄

伊勢崎 次の質問に移る。ジブチ(アフリカ北東部)の自衛隊基地についてだ。イラン情勢の緊迫を受けて、ジブチに拠点を置く米軍キャンプ・レモニエのセキュリティレベルが上がっている。
すでに米軍の基地防護の行動計画「フォース・プロテクション・コンディション(FPCON)」は、5段階あるうちの3つ目「BRAVO」に上がった。危険レベルはかなり高い。当然、自衛隊基地においても出入口の管理や警備要領の改定、もしくはROE(部隊行動基準)の見直しなど警備体制の強化は不可欠だ。これをしていなければおかしい。防衛大臣、現在の部隊の対応状況について確認したい。
小泉進次郎防衛大臣 部隊、隊員の安全確保に万全を期すのは当然のことだ。現在、自衛隊ジブチ拠点においても情報収集や連絡体制を強化しつつ、必要な警備体制をとっている。警備体制の詳細については、わが方の手の内が明らかになり、それによって部隊の安全に関わる恐れがあることからお答えできない。引き続き緊張感をもって情報収集と分析にあたり、各国軍とも緊密に連携しつつ部隊と隊員の安全確保に万全を期していく。
伊勢崎 自衛隊にとっては機密情報だが、米軍のそれはオープンソースで確認できる。それはさておき、基地の防衛体制が強化されれば、当然ながら誤射や職務上の過失といったリスクの蓋然性が高まる。ここで問題になるのが、海外派遣された自衛隊員が公務中に過失事件を起こした場合の「法の空白」の問題だ。これは日本特有の問題だ。
2020年に当時の河野防衛大臣が国外犯処罰規定(日本国民が外国で起こした犯罪を裁くために必要な国内法)の法整備に向けた検討を表明してから、すでに6年経つ。これは「自衛隊員は厳しい訓練を受けているから大丈夫」というような精神論で済む話ではない。
さらに日本・ジブチ地位協定では、自衛隊員が犯した過失を含むすべての事犯の裁判権をジブチ側が放棄する形になっている。しかし、肝心の日本の法に空白(国外犯規定の欠如)がある。このままではこの地位協定自体が砂上の楼閣だ。この深刻さがおわかりいただけるだろうか。われわれが逆の立場の日米地位協定において、もし米側に「法の空白」があったとして、それでも「裁判権を放棄しろ」と迫られたら、いくらわれわれでも怒るはずだ。
もし何らかの事故が起きてジブチ側から「法の空白」を指摘されれば、日本の国際的な信用は失墜する。速やかに法整備を進める決意をお願いしたい。
小泉防衛大臣 自衛隊は法令を遵守して任務をおこなうよう厳しい訓練をおこなっており、過失による事故等についても発生しないよう平素から部隊において安全管理を徹底するなど指導をおこなっている。さらに海外派遣部隊の隊員については、現地住民との良好な関係を維持し、事故の未然防止に万全を期すことが最も重要であり、現地状況や活動内容を踏まえた追加的な教育訓練もおこなっている。そのことから自衛隊員が武器を使用して現地の一般住民に危害を加える事態は、極めて想定しにくいものと考えているが、海外派遣部隊の隊員の服務規律は重要であり、隊員の過失行為にかかる国外犯処罰規定のあり方も含め不断に検討していく。
伊勢崎 それが精神論なのだ。ぜひ回避してもらいたい。念のために申し添えるが、ホルムズ海峡等の議論において、「法の空白」を解消しないまま自衛隊に新たな海外任務、それも交戦性の高い任務を課すことはもってのほかだ。
過失を裁く国内法が未整備のままでは、隊員、そして現地の人々も守れない。国家が命令した行動の結果を法で律することのできない状況を放置するのは、法治国家としての不作為にほかならない。ぜひ心に留めておいてほしい。もう6年経っており、法整備をお願いする。
湾岸諸国の本音に耳傾けよ
伊勢崎 最後に、質問通告していないことだが総理にお伝えしたい。
日本と同じく米軍基地を体内に抱える湾岸諸国(GCC)も、今回の戦争の巻き添えでイランの攻撃を受けている。その結果、安保理ではバーレーンが提出した決議が採択され、日本を含む多数の国が共同でイランを非難した。しかし、一方で湾岸諸国の本音がある。それは、戦争の拡大を止めたい――その1点だ。
その象徴が、この戦争が始まる直前まで米国とイランの交渉を粘り強く仲介してきたオマーンの外相の証言だ。米『CBSニュース』で流された。
どういうことかといえば、「核弾頭の製造につながる核物質を保有しない」「既存の濃縮ウランのすべてを可能な限り低濃度にして燃料化(平和利用)する」「IAEA(国際原子力機関)の全面的な査察を受け入れる」――このすべてに実はイランが同意していたというものだ。これをオマーンの外務大臣は明言している。
つまり外交の出口が見えていたにもかかわらず戦争が選択されてしまった。これはトランプ大統領の戦争の大義を大きく揺るがすものだ。
私はこの間、在京のオマーン大使とともに他の湾岸諸国の大使に呼びかけ、イランへの非難の連鎖ではなく、停戦と核交渉への復帰を求める声を日本政府に届けるべく奔走した。先週にはオマーン大使とサウジアラビア大使の両名を石破前総理におつなぎした。
現在、米国はかつてのイラクや、僕が日本政府代表として付き合ったアフガニスタンと同様の過ちをくり返そうとしている。これは止めなければならない。唯一の道は、第三者が対話と交渉の突破口を開くことだ。
訪米を控える総理におかれては、この湾岸諸国の大使たちの表に出ない本音にぜひ耳を傾けていただきたい。非公式で10分でも構わない。お許し願えるなら私も協力する。そのうえでトランプ大統領に会われ、友人として停戦をどうか説得していただきたい。これは僕の切なる願いだ。




















