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食肉工場閉鎖相次ぎ米国産牛肉が4割超高騰 「8月にはパニック起きる」と肉卸業者は指摘

 米国産牛バラ肉の卸売価格が2015年以来6年ぶりに高騰していることが話題を呼んでいる。牛バラ肉を使った代表的な料理は牛丼だ。東京の輸入牛肉の卸売市場では、今年2月には1㌔当り780円だった仕入れ値が4月に入って1100円と4割以上高騰した。価格高騰とともに輸入量も減っており、スーパーの食肉売り場から米国産牛バラ肉の姿が消えている。バラ肉以外もアメリカ産牛肉は仕入れ値が上昇している。

 

 牛肉の輸入量を見ると昨年12月から前年実績を下回ってきていた。今年3月の牛肉輸入量は全体で3万7300㌧で前年比89・2%となっている。アメリカでの現地価格高騰などから前年を大幅に下回ったとしている。

 

 アメリカ産牛バラ肉1㌔当りの卸値は2014年10月には1080円の高値を記録した。だがその後は価格が下がり、今年2月には700円台だったが、4月に入り1067円まで一気に急騰した。

 

 都内のスーパーではバラ肉以外のアメリカ産牛肉も入荷が減り、店頭に並んでいるのはオーストラリア産牛肉だ。アメリカ産牛バラ肉の急騰に直面し、メニュー変更や値上げをよぎなくされる飲食店も出てきている。ただ大手チェーンの吉野家やすき家は事前に在庫を確保しているので値上げなどの影響はないとしている。

 

 アメリカ産牛肉の輸入量減や価格高騰は東京都だけの話ではなく地方にも及んでおり、肉卸業者のあいだでは、このまま状況が改善されなければ今年8月ごろには、全国的な米国産輸入牛肉不足が表面化しパニックが起きるのではないかといった話にもなっている。

 

 アメリカ産牛肉の高騰の原因については、新型コロナの影響が指摘されている。

 

 アメリカは世界最大の感染者数(3200万人以上)を出しているが、とくに食肉処理工場で大量の感染者が出て閉鎖や操業停止があいついでいる。昨年5月の米農務省の調べでは、アメリカの大手牛肉処理施設の稼働率は65%にまで落ちていた。アメリカは世界の牛肉総生産量(2018年で6069万㌧)の2割以上を占めており、世界市場への影響が危ぶまれていた。

 

 日本は牛肉の6割を輸入に頼っており、そのうち約40%をアメリカ産が占めている。アメリカでの生産減少の直撃を受けることは必至だった。

 

 また、コロナの影響でアメリカでは食肉工場だけでなく港湾荷役でも人手不足が起こり、コンテナの稼働率が低下し、船荷が停滞し輸入減につながっている。

 

 さらに新型コロナ禍のもとでトウモロコシや大豆、小麦などの穀物の国際価格が昨年の夏から急上昇している。品目によっては7年半ぶりの高値を記録している。この背景には各国の中央銀行が新型コロナ禍にともなう景気悪化を防ぐために大規模な金融緩和に踏みきり、市場でだぶついた投資マネーが先物市場に流入していることがある。

 

 穀物価格の高騰は牛や豚、鶏など家畜の飼料高騰につながる。国際価格の指標になる米シカゴ商品取引所のトウモロコシの先物相場は今年3月15日時点で2020年3月末と比べて61%、大豆も60%上昇し、7年ぶりの高騰を記録した。穀物がこれほど高騰したのは2012年以来で、このときも食肉価格が劇的に上昇した。前回と同様食肉を引き金に世界的な食料高騰に発展する可能性もある。

 

 この影響で牛などの飼料費は30%超上昇し、畜産農家の経営を圧迫している。畜産農家は経営危機のなかで牛の飼育頭数の削減をよぎなくされている。牛の飼育頭数は今年1月に前年比で0・2%減となっている。

 

 アメリカの食肉大手=タイソン・フーズなどの食肉企業は食肉製品の価格引き上げに動いており、アメリカ産牛肉の高騰は続く見通しだ。

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