衆院選に圧勝したのを受けて「時は来た!」と自民党大会で改憲に向けて叫んだ高市早苗であるが、混沌とするイラン情勢の傍らでこっそりとやっていることは、武器輸出規制の「防衛装備移転三原則」と運用指針の改定だったり、国民監視を強める「国家情報会議」設置法案の可決であったり、戦争体制の強化ばかりである。今後は「スパイ防止法」や「日本版CIA」の設立、改憲といった政策を数の力に任せて次々と進めていく趨勢で、それに対して野党はなんらのブレーキ役にもならず、翼賛国会は機能不全に等しい状況となっている。メディアももっぱらイラン情勢や京都の小学生行方不明事件ばかりに世論を釘付けにして、目くらましをしている有り様である。
新設される国家情報会議は首相をトップとする組織で、実務を担うのは内閣情報調査室から国家情報局に格上げされた組織である。人権やプライバシーの侵害を防ぐ条文は法案には明記されておらず、為政者が思いのままに情報収集活動をくり広げることができるというものだ。こうした情報機関を欧米各国のように議会が監視する体制もなく、抜け穴だらけであることが指摘されているが、国会では立憲民主党まで賛成する始末で、なんなく採決されることとなった。
そして武器輸出規制の防衛装備移転三原則と運用指針の改定というのも、戦闘機や護衛艦、ミサイルなどの殺傷兵器の輸出を全面解禁するという戦後の平和国家としての国是を覆す重大な案件であるにもかかわらず、国会に諮ることもなく閣議決定で変更した。これまたまともな議論すらない有り様である。イラン情勢で国民生活が翻弄され、「悲願」だったはずの消費税減税もお預けになったまま、国会や政府は存在感を消しながらこっそりと戦争体制の強化に勤しんでいるのである。そしてゴールデンウィークの外遊で早速、高市早苗や小泉進次郎が武器輸出のトップセールスに乗り出すという。
安倍晋三からこの方、自民党政府は「戦争できる国」を目指して安保政策の大転換をはかってきたが、要するにアメリカから求められて米軍の二軍として世界の紛争地に鉄砲玉として駆り出される体制作りであり、防衛産業の利権拡大に奉仕するというだけである。九州一円でミサイル配備や武器弾薬庫の建設などが一気呵成でやられているのも、米国が覇権を争う中国との武力衝突を睨んだ体制強化にほかならず、なにかの拍子で開戦すれば最前線に肉弾として立たされるのは自衛隊員である。大分の戦車暴発事故のように人の跡形もなく肉片が飛び散って命を失っていくのは若い自衛隊員なのである。そして武力攻撃の拠点として標的にされるのはミサイルが配備されたり出撃していく基地であり、周辺住民の生命は守られるどころか巻き添えで危険にさらされることになる。イランでの武力衝突の有り様を見てもわかるように、叩かれるのは間違いなく最前線の基地なのである。軍事的脅威を与えて睨みを効かせているつもりが、逆に睨まれる関係を作り出しているだけで、ミサイルを向けるとは、ミサイルを向けられることを意味するのである。
武器輸出解禁で大喜びするのは、三菱重工業、川崎重工、富士通、三菱電機、NECのような会社である。既に膨張する防衛費にぶら下がって防衛省から莫大な軍需利権を分け与えられているのが、今後は海外からも武器製造を受注するようになる。こうして「死の商人」たちが人殺しの武器を製造することによってカネを稼ぎ、戦争経済に依存する体制が出来上がろうとしている。
戦後からこの方名乗ってきた「平和国家」の称号を投げ捨てて、アジアにおけるイスラエルのような存在になったのでは、変わりゆく世界の潮流のなかで逆コースを進むことにならざるを得ない。落ちぶれたアメリカの大暴れに付き従って共倒れ、孤立する道ではなく、世界各国と平等互恵、友好平和で関係を結び、貿易にせよ国際協力にせよ独自の存在感を持つことの方が日本社会を豊かにする選択である。
軍事大国化してマッチョぶりながら、その実態としては米軍の鉄砲玉というのでは愚かである。また、そのために日本列島を戦場に晒すなど国賊のやることであり、防衛に値しない。
吉田充春

















