(2026年1月9日付掲載)

ベネズエラ危機をめぐって開かれた国連安全保障理事会の緊急会合(5日、ニューヨーク)
国連安全保障理事会は5日、米国のベネズエラへの軍事介入を受けて緊急会合を開催した。会合では米コロンビア大学教授のジェフリー・サックス氏がブリーフィングをおこない、米国の軍事行動の放置は国連や国際法秩序を事実上の崩壊に導き、人類を滅ぼすものであることを強く警告した。以下、発言要旨和訳を紹介する。
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ジェフリー・サックス教授
本日、国連安全保障理事会で問われているのは、ベネズエラ政府の性格に関するものではない。問われているのは、いかなる加盟国も武力、威圧、あるいは経済的な締め付けによって、ベネズエラの政治的将来を決定する権利、あるいはその内政を支配する権利を持っているのかという問題だ。
この問題は、いかなる国家にも領土の保全または政治的独立に対する軍事的威嚇や武力行使を禁じている国連憲章第2条第4項に直接関わることである。理事会はこの禁止規定を維持するのか、それとも放棄するのかを決断しなければならない。これを放棄すれば、きわめて深刻な結果をもたらすことになるだろう。
背景をいくつか説明する。1947年以降、米国の対外政策は、他国における政権転覆を実現するため、武力、秘密工作、政治的操作をくり返し用いてきた。これは、綿密に記録された歴史的事実だ。政治学者リンジー・オルークは、2018年の著書『Covert Regime Change』のなかで、1947年から1989年の間だけでも、米国による政権転覆作戦の試みが70件に及んだことを記録している。
こうした慣行は冷戦終結後も継続された。1989年以降、国連安全保障理事会の承認を得ずにおこなわれた主要な米国による政権転覆作戦は、とくに重大な影響を及ぼした例として、2003年のイラク、2011年のリビア、2011年以降のシリア、2009年のホンジュラス、2014年のウクライナ、そして2002年以降継続中のベネズエラが含まれる。
用いられてきた手法は、すでに確立されており、十分に記録されている。そこには、全面戦争、秘密諜報活動、騒乱の扇動、武装集団への支援、マスメディアおよびソーシャルメディアの操作、軍・文民当局者の買収、特定の人物を狙った標的型暗殺、偽旗作戦、そして民間人の生活を崩壊させることを目的とした経済戦争などが含まれる。
これらの措置は国連憲章の下では違法であり、その結果、一般的に継続的な暴力、致死的な紛争、政治的不安定、そして民間人に深刻な苦痛をもたらすことになる。
ベネズエラのケース
ベネズエラに関する最近の米国の行動の記録も明白だ。
2002年4月、米国はベネズエラ政府に対するクーデター未遂を把握し、これを承認していた。2010年代には、米国は反政府抗議活動に積極的に関与する市民社会団体に資金を提供した。とりわけ2014年が顕著だ。ベネズエラ政府がこれらの抗議行動を取り締まると、米国は一連の制裁措置を講じた。2015年には、バラク・オバマ大統領がベネズエラを「米国の国家安全保障および外交政策に対する異例かつ並外れた脅威」であると宣言した。
2017年にトランプ大統領は、国連総会開催中におこなわれたラテンアメリカ諸国首脳との夕食会の場で、政権を転覆させるために米国がベネズエラに侵攻するという選択肢について公然と議論した。
2017年から2020年にかけて、米国はベネズエラの国営石油会社(PDVSA)に包括的な制裁を課した。その結果、原油生産は2016年から2020年にかけて75%減少し、1人当り実質GDP(購買力平価ベース)は62%低下した。
国連総会は、このような一方的な強制措置に対し、くり返し圧倒的多数で反対決議を採択してきた。国際法の下で、この種の制裁を課す権限を有するのは、安全保障理事会のみである。
2019年1月23日、米国は一方的にフアン・グアイド氏(議会議長)を「暫定大統領」として承認し、同年1月28日には、海外に保有されていた約70億㌦のベネズエラ国家資産を凍結し、その一部についてグアイド氏に管理権限を与えた。
これらの行為は、20年以上にわたって継続してきた米国の政権転覆のとりくみの一環を成している。
最近の米国による過激な動き
過去1年間に、米国は7カ国で爆撃作戦を実施したが、いずれも安全保障理事会の承認を受けておらず、また、国連憲章に基づく合法的な自衛行為としておこなわれたものでもない。標的となった国には、イラン、イラク、ナイジェリア、ソマリア、シリア、イエメン、そして今回のベネズエラが含まれる。
過去1カ月の間に、トランプ大統領は、コロンビア、デンマーク、イラン、メキシコ、ナイジェリア、そしてベネズエラを含む、少なくとも6つの国連加盟国に対して、直接的な脅迫をおこなった。これらの脅迫は、本声明の別紙1に要約されている。
今日何が危機に瀕しているのか
理事会の構成員は、ニコラス・マドゥロを裁くために招集されているのではない。また、最近の米国による攻撃や継続中のベネズエラに対する海上封鎖が、自由をもたらすのか、それとも従属をもたらすのかを評価するために招集されているのでもない。
理事会の構成員は、国際法、とくに国連憲章を擁護するために集まっている。
ジョン・ミアシャイマーによって最も鮮やかに論じられている国際関係における現実主義学派は、国際的な無政府状態を「大国政治の悲劇」として正確に描写している。その意味で、現実主義は地政学の記述であり、平和のための解決策ではない。その結論は、国際的無政府状態は悲劇に至る、というものだ。
第一次世界大戦後、その悲劇を国際法の適用によって終わらせるために国際連盟が創設された。しかし、世界の主要国は1930年代に国際法の擁護に失敗し、その結果、ふたたび新たな世界大戦へと突き進んだ。
この大惨事を受けて、人類が国際的無政府状態の上に国際法を据えるための2度目の大きな試みとして国際連合は誕生した。国連憲章の言葉を借りれば、国連は「われらの一生の間に二度も人類に言い知れぬ悲しみをもたらした戦争の惨禍から将来の世代を救うため」に創設されたのだ。
私たちは核時代に生きている以上、同じ失敗をくり返すことは許されない。人類は滅亡する。3度目の機会は存在しない。
安全保障理事会に求められる措置
安全保障理事会は、憲章に基づく責務を果たすために、直ちに以下の行動を確認すべきである。
1.米国は、ベネズエラに対する公然および非公然のあらゆる脅迫または武力行使を直ちに停止し、中止すること。
2.米国は、安全保障理事会の承認なしに実施されている海上封鎖およびそれに関連するすべての強制的軍事措置を終了すること。
3.米国は、ベネズエラの周辺地域内および周辺地域から、諜報機関、海軍、空軍、および強制目的で前方展開されているその他の資産を含む軍事力を直ちに撤退させること。
4.ベネズエラは、国連憲章および世界人権宣言で保障されている人権を遵守すること。
5.事務総長は直ちに特使を任命し、ベネズエラおよび国際社会の関係者と協議し、国連憲章に則った勧告を14日以内に安全保障理事会に報告する権限を与えるものとし、安全保障理事会は引き続きこの問題に緊急にとりくむこと。
6.すべての加盟国は、憲章に厳密に従い、安全保障理事会の権限外でおこなわれる一方的な脅迫、強制措置、または武力行動を控えること。
最後に
議長ならびに理事会の各位、
平和と人類の生存は、国連憲章が生きた国際法としてあり続けるか、それとも形骸化して衰退するかにかかっている。それが、本日この理事会の前にある選択肢である。
【出典】https://www.commondreams.org/opinion/jeffrey-sachs-un-security-council-venezuela




















