(2025年8月20日付掲載)

家宅捜索を受ける統一教会の総本山「天正宮」(7月18日、韓国・京畿道加平)
長年にわたり反社会的行為を積み重ね、信者に対して高額献金や霊感商法などを通じて多大な損害を与えていたことから解散命令が出た旧統一教会(世界平和統一家庭連合)が、韓国でも資金力をバックに政界汚染にいそしんでいたことが暴露されている。昨年末、「従北(親北朝鮮)勢力を撲滅する」として「非常戒厳」を発令したことから弾劾・訴追された尹錫悦(ユン・ソンニョル)前大統領夫妻に同教団が金品を送っていた疑惑が浮上し、特別検察官チームが統一教会本部や総裁が居住する「天正宮」を家宅捜索する事態に進展。教団「ナンバー2」の元幹部が、便宜を受ける目的で公職者や配偶者に金品を提供することを禁じる「請託禁止法」違反の罪で起訴され、韓総裁自身も捜査対象に含まれるなど、軍事独裁政権の復権を試みた尹前政権や保守政党と右派カルト教団との汚れた癒着構造が次々と明らかになっている。
非常戒厳招いた極右カルトの暗躍
韓国社会では2022年3月の大統領選で保守政党「国民の力」党員で元検察総長の尹錫悦が勝利したものの、国会では野党「共に民主党」が多数派であったため、政策課題の達成が困難になる一方、尹大統領(当時)自身による国会議員補欠選での不当介入や妻である金建希(キム・ゴンヒ)の金品贈賄、株価操作疑惑などのスキャンダルが浮上し、2024年11月には支持率が17%にまで急落。追い詰められた尹大統領は同年12月3日、「北朝鮮の共産勢力の脅威から韓国を守り、わが国民の自由と幸福を略奪する破廉恥な従北反国家勢力を一挙に排除し、自由憲政秩序を守り抜く」というテレビ演説とともに「非常戒厳」を発令した。あらゆる民主的な権利や社会的機能を制限し、軍が武力で統制する措置であり、かつて軍事独裁を敷いた全斗煥(チョン・ドゥファン)政権下の1979年以来初めてのことだった。
大統領が組織した戒厳軍の逮捕者リストには、「共に民主党」代表の李在明(イ・ジェミョン=現大統領)を含む与野党の国会議員や民主党政権時代の法務長官や大法院院長、市民運動の活動家などが官民問わず含まれており、逮捕者を京畿道果川の監修施設に連行し、処刑する計画もあったとされる。
だが、度重なる弾圧に抗して民主化を成し遂げた韓国社会における40年ぶりの軍事クーデターは、国民の歴史的な怒りに火を付け、封鎖された国会周辺には数万人の人々が集まって激しい抗議をくり広げ、非常戒厳は翌日解除。その後も権限に固執する尹大統領を包囲する圧倒的多数の国民の連日連夜の抗議行動を背景に、軍や警察まで分裂する混乱をへて、尹大統領は「内乱罪」容疑により逮捕・収監されるに至った。現職大統領の逮捕は憲政史上初で、弾劾訴追の結果、尹錫悦は2025年4月に正式に罷免された。
6月の韓国大統領選では、「共に民主党」の李在明が勝利し、二大政党における韓国保守派の本流であった「ハンナラ党」「セヌリ党」「自由韓国党」を前身とする「国民の力」は3年足らずで政権の座を失った。
軍事クーデターによる国家的な暴力、そして内戦に突き進みかねない危機的状況を国民の力で回避した韓国社会は、現在安定をとり戻しているが、この騒乱の原因を明らかにするとともに、このような国家権力の暴走をふたたびくり返させない社会の構築が喫緊の課題となっている。
内乱罪などの容疑でソウル拘置所に収監されている尹錫悦は、韓国当局の特別検察官チーム(特検)による逮捕状執行を拒むため、衣服を脱いで抵抗するなどの醜態をさらしており、非常戒厳の発令に至った真相は今も解明されていない。
シン・ジヌク中央大学社会学科教授は『ハンギョレ』紙(8月9日付)への寄稿で「クーデターがもし成功していたら、実現していたはずの世界はぞっとするものだ。戒厳司令部の布告令は国会、政党、地方議会を解散し、一切の政治活動を禁じるとともに、言論・出版と集会・結社の自由を廃止すると宣言した。内乱勢力は政権に批判的な政治家、判事、ジャーナリスト、聖職者、労組、選挙管理委員たち、(当時最大野党の)『共に民主党』の党員たちを大勢逮捕、収容、処刑する計画を立てており、(当時与党の)『国民の力』と多くの政府高官たちがこれを共謀・同調・黙認・庇護した」と指摘。
「尹大統領(当時)は弾劾され、政権は変わったものの、韓国には重要な課題が残っている。どうしてこのようなことが可能だったのか。一体何が問題だったのか。今、韓国社会はどこに立っているのか。王様ごっこを楽しんだあげく刀を振り回したのに、今は下着姿で横になって逮捕状の執行を拒んでいる“裸の王様”の実体は何か」「何よりも今回の危機の間、この国の相当数のパワーエリートが極右的信念を持っているという事実が明らかになった。尹前大統領はこれまで見せてきた暴力的思考を戒厳国家という実体的国家暴力として実行に移したが、さらに衝撃的なのは政府、与党、軍、学界、法曹、言論、宗教界の少なくない人々がこれを支持したという事実だ。そのような極右勢力は突然生まれたわけではない。ニューライトの時から強固になった極右パワーエリートのきめ細かいネットワークが底辺の構造的実体であり、それは今なお健在だ」とのべている。
宗教団体との癒着構造 スキャンダル次々と

㊧内乱罪容疑で取り調べのために出頭する尹錫悦前大統領(6月、ソウル高等検察庁)㊨被疑者として特別検察官チームの取調室に出頭する尹錫悦前大統領夫人の金建希(6日、ソウル)
「独り相撲」ともいえる非常戒厳の背景として、政権の金権腐敗とともにその支援母体となった宗教右派との蜜月関係が明らかになっている。それは日本における統一教会などのカルト教団と自民党や新興の右派ポピュリズム政党との関係を彷彿(ほうふつ)とさせるもので、国境を越えた右派ネットワークのなかで組織的におこなわれていると見るのが自然だ。トランプの支持母体であるキリスト教福音派や米国保守連合(ACU)などが背後で糸を引いている点でも共通している。
現在、尹錫悦政権下でのスキャンダルが芋づる式に明るみに出ている韓国では、前大統領夫人の金建希(すでに逮捕)が、統一教会の「世界本部長」(実質のナンバー2)であったユン・ヨンホ(起訴)から、高級ブランドバッグ、貴金属などの金品の贈与を受けていたことが発覚。2022年3月の大統領選で尹錫悦が小差で当選した直後であり、ユン氏の手帳には、シャネルのバッグ(約132万円相当)は統一教会によるカンボジアのメコン川開発事業に関する請託の品であったことが記されており、それに応えて韓国政府は同年6月にカンボジアに対する対外経済協力基金次官支援限度額(五年間)を既存の7億㌦から15億㌦へと大幅に増やしていた。
韓国文化放送『MBC』は、「政府の支援が増えれば、ODA事業の規模も拡大し、その分、統一教会が財政支援を受ける可能性も高まる。支援を増額した同年11月、尹前大統領夫妻は東南アジア歴訪のためカンボジアを訪れていた」と報じている。
その他、金夫人に送った別のシャネルのバッグ(約83万円相当)は大統領就任式の招待請託用、グラフのダイヤモンドネックレス(約643万円相当)は、教団関連組織・天宙平和連合(UPF)主催の「サミットおよび指導者会議」への教育部長官の招待請託用とされる。後にいずれの要求も実現している。
また、教団の韓鶴子(ハン・ハクチャ)総裁の三男である文顯進(ムン・ヒョンジン)が設立した「グローバルピース財団」によるニュース専門テレビ局『YTN』買収(入札参加)計画、国連事務局の韓国誘致などで政権に便宜を図るよう働きかけたとも報じられている。
これらの見返りとして、統一教会側がトランプ政権(第1次)のペンス副大統領と尹大統領候補(当時)との接見の場をセッティングしたり、大統領選における教団の支援を確約したとされる。ユン本部長は検察の取り調べに対して容疑を認め、「すべて韓総裁の決裁を受けておこなった」と供述した。
このため韓国当局の特別検察官チーム(特検)は7月18日、統一教会トップの韓鶴子総裁が暮らす「天苑宮」や「天正宮」、ソウルの教団本部などを家宅捜査し、会計帳簿11冊、法人カード17枚、電子機器(携帯電話・パソコン)54台などを押収。
家宅捜査は午前7時から夜まで続き、「韓総裁の内室を捜索していた特検が該当階のあちこちで隠れた空間を発見。そこには高級ブランドバッグや帯封付きの札束が散在していた。韓国ウォンだけでなくドルも円もあった。別の部屋にさまざまな種類の貴金属品が保管されていた。特検は現金と貴金属は押収しなかった」(『中央日報系』の放送局『JTBC』)などと報じられている。
さらに『JTBC』は、教団の現金(寄付金)関連の会計資料を独自入手し、「教団が韓国国内で集めた現金は年平均200億㌆(約21億円)程度なのに対して、日本からの現金は3300億㌆(約350億円)」であったと報じている。
統一教会への捜査は大がかりなもので、統一教会本部や天苑宮だけでなく、総裁の三男が設立したグローバルピース財団、教団幹部の自宅、野党「国民の力」の「ナンバー2」の国会会館内事務所と地元事務所など10カ所以上で一斉捜査がおこなわれた。
この強制捜査に激怒した韓鶴子総裁は、同月20日に天苑宮で開かれた統一教会の集会で、「一人の裏切りによって、わが国の特検が天を冒涜した。特検は公開の場で過ちを認めよ。真の父母をあまりにも軽く考えている」と演説。信者を呼び集めて抵抗を展開した。「真の父母」とは「マザームーン」こと韓総裁自身を指しており、これらの不正はあくまでユン元本部長が個人的判断でおこなったとして、一線を引いている。
だが、特検は不正が教団レベルでおこなわれたと判断して捜査を拡大。そこには教団幹部らの海外賭博に関する捜査を中止させた疑惑も含まれている。韓鶴子らが2008~11年に米ラスベガスのカジノへ遠征賭博に赴き、計約600億㌆(約64億円)を使ったとの情報を警察が入手して捜査を進めたが、尹前大統領の側近らの介入で捜査が中止されたとの疑惑があるからだ。
統一教会の選挙介入 党員増やして操作

統一教会の韓鶴子総裁(中央)とユン・ヨンホ世界本部長(右)〔2021年〕
特検がもっとも問題視しているのは、統一教会の組織的な選挙介入だ。これまでにわかっていることは、2022年にユン本部長が地区長らを通じて、信者らに「国民の力」への入党を奨励。各地区に政党加入目標が割り当てられ、地区長らが傘下の教会にそれを伝達し、その進捗状況を随時、「カカオトーク」などで本部長に報告していたことが押収資料から明らかになっている。真偽は不明だが、押収資料では教団側は1~3万人が新たに入党したと主張していた。
これら信者の入党工作を進めるため、教団の資金(寄付金等)が清平修錬苑(教団の礼拝施設)から「グローバルピース財団」へ送金され、そこから韓国協会へ再送金され、そこで現金化されて各地区長に支援金として支給されていたとされる。
表に出ない教団の組織内部で人やカネを動かし、尹錫悦を大統領候補にしたり、特定の政治家を党代表に選出することを助け、尹前大統領と側近の政治家たちがその見返りを提供する形で彼らと取り引きしたという疑いだ。
特検はすでに資金の流れを正確に把握し、証拠と証人を確保していると見られ、直接選挙に介入した地区長全員への逮捕状の請求は避けられないと見られている。選挙活動に熱心にかかわった人物ほど教団内部で出世しており、すべて検察の召喚対象となっている。
容疑が固まれば、公職選挙法(宗教団体等の選挙運動禁止)違反、政党法(宗教団体による政党加入や活動の組織的実施禁止)違反、政治資金法違反、業務上背任および横領(信者の献金や教団の公金を政治活動に使用)、強要罪(信者らに政治活動参加を強制)などの理由で、関連団体を含む教団幹部が一斉検挙され、さらに特定経済犯罪加重処罰法が適用され、5年以上の重刑となる可能性がある。
さらにユン元本部長の指示でカンボジアやアフリカなどに送金された資金を、韓国内の第三者名義の口座に戻し、マネーロンダリング(資金洗浄)をおこなった疑惑もあり、「外為管理法違反および背任・横領」の容疑もかかっている。
また、押収資料(デジタルデータ)からは、2022年3月当時、韓鶴子がソウル市内の「蚕室ロッテホテル」に教会指導者120人を集めて、尹錫悦を支持するように申し伝えていた事実も明らかになっており、組織的選挙介入の疑いを免れるのはもはや困難ともいわれる。八月に取り調べのため検察に召喚された教団副院長は、韓総裁に「総裁自身の逮捕の可能性がある」と報告したという。
4月半ばからユン本部長の贈収賄事件が報道されはじめたことから、韓総裁は5月にアメリカへ出国を図ったが、韓国政府による出国禁止措置で阻まれた。今回の捜索令状には、統一教会の天武院室長、天武院副院長、元世界本部長、元世界本部財政局長の名とともに「真のお母様」の名前も記載されており、金品贈与疑惑が事実として固まりつつある今、「すべて真のお母様の指示だった」というユン元本部長と、「裏切り者の独断だった」とする韓総裁との骨肉の争いが展開される模様だ。
背後に米国宗教右派 トランプ支持基盤とつながり

尹錫悦大統領の拘束に反発してソウル西地裁に乱入する支持者ら(1月18日、韓国ソウル)
韓国では、朝鮮戦争後のアメリカの統治政策とかかわって、キリスト教プロテスタント教会が拡大し、保守勢力の母体となってきた経緯がある。1954年に設立された統一教会もその一つだ。
その他、尹前大統領を熱烈に支持してきたことで知られる新興宗教団体「新天地イエス教会」(李萬熙総裁)も、1984年に韓国で設立され、信者は韓国に約21万人、海外に3万人いるとされる。尹大統領は検事総長時代(2020年)に、集団礼拝で新型コロナ感染拡大の原因を作ったとして発令された同教団の家宅捜索をやめさせ、その見返りとして教団は統一教会と同じ手法で「国民の力」の党内選挙に大挙介入し、尹錫悦が大統領候補に選出されるよう手助けしたとされる。
さらに、尹錫悦弾劾に反対するデモを煽動した新興宗教団体「サラン第一教会」の教祖・全光焄(チョン・グァンフン)は、キリスト教福音派の牧師であり、同氏が率いる「大韓民国立て直し国民運動本部」は極右勢力とみなされている。今年3月の「弾劾反対」デモでは、自身のユーチューブチャンネル「全光焄TV」で熱狂的な信者らにメッセージを発信した。
釜山にある「世界路教会」の孫賢寶(ソン・ヒョンボ)牧師も、保守団体「セーブコリア」(母体は「聖なる防波堤」という極右キリスト教団体)を主導し、昨年12月の非常戒厳後、全国を巡回して尹前大統領の弾劾に反対する集会を開催し、各地で万単位の人々を動員したことで一気に注目を集めた。これらの宗教右派は、主導権争いも激しいが、反共産主義、従北(親北朝鮮)左翼勢力の一掃、反同性愛、LGBTQなどの包括的差別禁止法に反対、地方自治体や学生に関する人権条例廃止などの主張で共通している。反ムスリム(反イスラム)でもある。常に中国排除論を唱え、親米であるため、集会では太極旗(韓国旗)とともに星条旗を振るのが一般的だ。
これに極右ユーチューバーなども加わり、今年1月には尹錫悦の拘束に反発する若者などの集団がソウル西部地裁を襲撃してガラスを割るなど過激な行為に及んださい、これをライブ中継して、過激な言動をすればするほど投げ銭(スーパーチャット)の収益が増えるという悪循環構造をつくり、社会的分断を商業利用する行為もみられた。尹錫悦が逮捕された1週間だけで、極右ユーチューバーが得た収益は平均1億7000㌆(約1060万円)にのぼったとされる。
軍事独裁政権による統治が終焉するなかで、保守勢力の基盤がこのような極端な宗教右派をよりどころにするようになり、その手助けによって大統領となった尹錫悦も必然的にこれらカルト教団や極右ユーチューバーのエコーチェンバー(自分と似た意見を持つ人々とばかり交流することで、自分の意見が強化され、他の意見に触れる機会が減る現象)やフィルターバブルのなかで狂信的な妄想を膨らませ、前代未聞の「非常戒厳」に踏み切ったと見られている。
その後ろ盾になっているのが、アメリカの宗教右派や保守連合団体だ。トランプ大統領の強力な支持団体である米国保守連合(ACU)が主催する保守系イベント『CPAC 2025』(2月)では、参加した主要政治家らはこぞって尹錫悦を「米国を愛し、米国と親密に連携する人物」と持ち上げ、李在明を「親中国、親北朝鮮の人物」と描写した。
アメリカ第一政策研究所のフレッド・フライツ副所長は「中国や北朝鮮が韓国の民主主義とアジア太平洋地域の安全保障を害し、米国をこの地域から追い出そうとしている」「不正選挙問題は、より大がかりな安全保障への挑戦の一部だ」と尹前大統領弾劾措置を非難。トランプの運動母体「MAGA(米国を再び偉大に)」を代表する人物で、第一次トランプ政権でホワイトハウスの首席戦略官を務めたスティーブ・バノンも「中国共産党の介入で、われわれの同盟国である韓国が危機的状況にあることを認めるべきだ」などとのべ、根拠のない主張を展開して韓国社会の分断と不安定化を煽るように外部から刺激し続けた。
また4月、米ホワイトハウスのホワイト信仰局長(キリスト教福音派の女性伝道師)や、共和党の重鎮であるギングリッチ元下院議長が、韓国で開かれた統一教会の合同結婚式や関連行事に列席した。信仰局は2月にホワイトハウスに設置された信教の自由を扱う部署であり、統一教会系の天宙平和連合(UPF)がソウルで主催した「ワールドサミット」に参加したホワイト局長は、「トランプ大統領は信教の自由を重視している」とのべ、韓鶴子を「マザームーン」と呼んで称賛したことが報じられている。
また、日本で統一教会幹部と岸田文雄(当時自民党政調会長)らと面会していたキングリッチ元米下院議長は、日本での統一教会解散請求について「日米関係、そして日本の政治情勢に対するわれわれの見方に重大な影響を及ぼすことになるだろう。旧統一教会に対する現在の攻撃は、日米同盟を弱体化させ、中国共産党と日本の接近のきっかけを作ろうとする試みだ」とSNSで発信。
2022年、安倍晋三とともにトランプ自身も統一教会系団体の集会にビデオメッセージを送っていたことは周知の事実だが、今年に入ってもトランプ政権のバンス副大統領が教団系の行事で講演している。
保守派による軍事クーデター(非常戒厳)が失敗に終わった韓国では、これまでにもまして保守勢力の宗教右派・カルト教団への依存度が深まっているといわれ、いまだに「尹(前大統領)アゲイン!」を叫んでいる野党「国民の力」は、もはやあらゆる極右勢力の集結地になったと指摘されている。だが、これらが「今だけ、カネだけ、自分だけ」の国家私物化や腐敗した利益関係で繋がっていることも広く暴露されており、韓国社会における民衆運動勝利の成果としてそれらが一つずつ摘発されているのが現状だ。
それは日本を含む世界で台頭している「右派ポピュリズム」の一端をつまびらかにするものでもあり、日本社会においても同じ課題が突きつけられているといえる。
韓国学中央研究院宗教学科のハン・スンフン教授(宗教学)は、尹錫悦弾劾騒動で顕在化した一部若年層の右傾化について、「20~30代の男性は近年のフェミニズムの大衆化・制度化に強い抵抗を感じている。彼らのなかでは、変化する社会に対する挫折感と劣等感が強まっており、それが尹大統領の弾劾を起点として奇妙に結びついた。彼らは“誰が悪者なのか、誰がこの汚い世の中を作ったのか”について明確な答えをくれる人間」を求めていたとし、その受け皿の役割を宗教右派や極右ユーチューバーが果たしたと分析する。
「国家権力に制限を設けたものが憲法だが、憲法を否定した尹大統領(当時)が頼るべきものはもはや宗教しかなく」、そのような社会不安や不満を吸い上げるために宗教的言説は常に用いられてきたとのべ、「米国の極右がトランプの再選を引き出したのは、民主党の政治家たちのせいでもある。自分は疎外されていると感じる人々を『あのおかしな狂人たち』としきりに他者化するものだから、反感ばかりが高まったともいえる。彼らを対象化するのではなく、一人一人の話を聞き、あの人々が何を見てこのような世界観を持つに至ったのかを収集すべきであり」「彼らの不安が反映された制度的代案を示すことができれば、極右勢力は自然に弱体化する」と韓国『ハンギョレ』紙上でのべている。
民主的な制度の破壊とともに妖怪変化のカルト宗教がはびこる土壌が作られており、日本においても政界汚染の実態を解明し、ふたたび戦前に引き戻そうとする亡霊を一掃する、新しい政治運動を有権者の手でつくることが求められている。






















「また、教団の韓鶴子(ハン・ハクチャ)総裁の三男である文顯進(ムン・ヒョンジン)が設立した「グローバルピース財団」によるニュース専門テレビ局『YTN』買収(入札参加)計画、国連事務局の韓国誘致などで政権に便宜を図るよう働きかけたとも報じられている。」
文顯進氏の財団がYTNの入札に参加したのは事実ですが、教団とは関係のない団体であり、入札には同時に教団側も競争相手として入札しています。
文顯進氏の財団は今回の贈賄とは一切関係がありません。以下は韓国での報道に対する顯進氏側からの反論です。ご参照の上、記事の訂正をお願いします。
https://m.asiatoday.co.kr/kn/view.php?key=20250804010000924