自公惨敗だった参院選の後、石破茂本人はまだなにもいっていないのに毎日新聞や読売新聞が「石破首相、退陣へ」と号外までばらまいて扇動し、それに加えて先の自民党総裁選で敗北した高市早苗や裏金・統一教会問題の張本人である萩生田光一はじめとした清和会(旧安倍派)所属の面々が嬉々として石破降ろしに動いているではないか。火を付けた張本人が今度はヒーロー気取りで火消しに精を出しているというか、究極のマッチポンプのように見えて仕方がない光景である。
自公惨敗という選挙結果は、それ自体、安倍再登板からの十数年にわたる自公政権が行き着いた末路であり、冷や飯組だった頃にはなにやら自民党内で批判めいたことも口にしていた石破茂が首相になった途端にそっち界隈に気を使い始め、「なぁ~んだ、口ばっかりじゃないか!」というガッカリ感の産物でもあるのだろう。それまでが清和会の独壇場だったという影響もあってか、案外周囲には、「石破は裏金にしても統一教会問題にしてもおもねることなく発言してきたし、他に比べれば少しはまともなのではないか?」という期待感を抱いていた人もいたが、参院選まで来て失望していた人は少なくなかった。そして、選挙に負けたという結果を受けて、甘い処分で頭数として自民党内に内包した部分がここぞとばかりに反撃に出ているのである。
自民党の得票が大幅に減ったのは、それは“空気”だけでは説明がつかないほど大規模な数字であり、これまで自民党の組織票だった一定部分がごっそりと離れ、石破自民党の政権基盤を揺さぶって首をすげ替えたいという意志と統率された投票行動があったことを浮き彫りにしている。そして案の定、鼻息荒く石破降ろしにうごめいているのが極右側という訳で、だいたいの構図はお察しなのである。しかも、自民党の支持率凋落のそもそもの原因だったはずの裏金・統一教会側がなんらの制裁も処分も受けずにやり過ごし、弱り目に祟り目の石破茂を引きずり降ろそうと巻き返しに出ているのである。そして、張り切っているのが高市とか萩生田という光景を見て、極右台頭だけは勘弁といわんばかりに首相官邸前ではリベラル派といわれる部分が「石破やめるな!」とプラカードを掲げて石破応援団になっているのだから、世の中ぐちゃぐちゃになったものである。石破茂なんてそもそも右翼だったはずなのに…。
私たちが見ているのは、いかに自民党が宗教右派によって振り回されているかであろう。依存していたのは経団連をはじめとした大企業票や公明党・創価学会の宗教票だけではなく、統一教会、日本会議、幸福の科学等々、さまざまな組織票を重ね合わせて自公政権なるものがかつがつ存続し得てきたこと、これらはある瞬間に号令が出れば引き剥がされることもあり、政権を揺さぶるような動きを見せることは、今回の選挙結果からも歴然としている。それほどまでに依存関係が深いこと、すなわち政党としての基盤が脆弱だからこそ無視できないものとして影響を被るのである。弱体化の産物でもある。
選挙は相変わらず4割以上の有権者がそっぽを向いたなかでおこなわれた。いわゆる「選挙に行く」層のなかだけで、しかも表面的には見えない幽霊のような気持ち悪い組織票移動がおこなわれれば「躍進」等々を演出することは可能なのだろう。分母が小さければ小さいほど、組織票は影響力を与えられるのである。
石破茂が退陣しようが可哀想ともなんとも思わないものの、どうせ退陣するなら自民党と宗教右派との関係について大いに暴露せい! と思うし、心中覚悟でその仕組みや実態をバラしたらどうかと思う。闇を好む幽霊や魑魅魍魎にはスポットライトを当てて照らすべきである。
武蔵坊五郎