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新型コロナが問いかける安全保障

 新型コロナウイルスが世界的に猛威を振るい、地球規模でこれまで経験したことがない未知なる疫病への対処が迫られている。グローバル化した社会でヒト、モノ、カネが国境を越えて縦横無尽に行きかい、そのことによってウイルス感染も世界各国へと爆発的に飛び火し、アメリカでも、欧州各国でも、そして日本でも日々深刻な事態が深まりを見せている。抑え込みできるか否かが最優先課題ではあるが、できなければ病床数を確実に先読みしながら増大し、人工呼吸器の数を確保するなど、常に先手先手で施策をこうじていくことが待ったなしとなっている。病床削減などやりまくった結果でもあるが、今になって国民の生命と安全を守るために、各国は財政支出も含めて迅速な対応が迫られているのである。


 目下、社会状況を総括するのは後回しでもよい。ただ、問われているのはそれこそ安全保障とは何か――であろう。武器やミサイル、核兵器をどれだけ持っていようが役に立たず、むしろもしかの事態に備えて日頃から医療体制に余裕を持たせておくことや、食料自給率であったりマスク製造の自給率を高めてパニックにも対応できるようにしておくことなど、それぞれが大切な安全保障であることを考えさせられる。東京都は重症患者の受け入れ可能病床が500床しかなく、残り100床まで迫っている(4000床に増やすと小池知事が表明)とか、PCR検査も一日に可能な検査数が極端に少ないとか、人工呼吸器が足りない等々、逼迫する状況を伝えるニュースに接する度に、「もしか」に対応できないまで脆弱な体制だったことを痛感させられるのである。


 日本社会だけではない。もともと貧困層が医療にかかれないアメリカでの爆発的な感染拡大も、新自由主義政策の犯罪性を映し出している。医療改革と称して大なたをふるっていたイタリアでの医療崩壊もしかり。余力のなさからたちまちにして医療現場はパンクしてしまい、医師や看護師たちは悲痛ともいえる訴えを発信しているではないか。「今だけ、カネだけ、自分だけ」で目先の短期的利益ばかり追い求める市場原理が世界各国を犯し、長期的な視野で見たとき、社会全体にとって重大な損失を招いていることや、実は脆さと隣り合わせだったことを浮き彫りにした。医療機器などはスペイン風邪が猛威を振るったおよそ一世紀前よりははるかに高性能であろうに、今回のように未知なるウイルス感染が拡大すると、日頃から受け入れ容量が小さいだけに増大する患者数にまず対応ができず、手のうちようがないほど世界中がパニックになってしまうのである。


 国民の命を守るために急がれる安全保障政策とは何か――。まず第一に検査を徹底して感染患者への医療対応を確実に施すことが求められるし、感染拡大を抑え込むことが最優先だろう。東京都であれば、五輪の選手村を病床として利用するというのも社会全体の必要性から見て大いに賛成だ。そして同時に、経験したことがないような自粛によって、甚大な経済的ダメージを被っている企業及び国民生活への大胆な支援策も急がなければ、とんでもない事態を招きかねないように思う。もともと好景気でもなかったところにトドメを刺されるようにコロナパニックが襲い、業界によってはにっちもさっちも行かないような、聞いていて鳥肌が立つような売上減や混乱が生じており、かつてない倒産ドミノが起こっても不思議ではない状況だ。


 「いつまで続くのだろうか…」と誰もが思い、先の見えない疫病の猛威にただただたじろいでいる。終息させない限りは「いつまでも続く」のが現実である以上、やはり武漢を抑え込んだ中国や世界各国の成功事例を範にしつつ、投薬の情報なども世界的に共有し、科学的に封じ込めるよりほかに手はない。初期症状には有効とされるアビガンの投与など、できることはすべてやる以外にない。体制の脆さは後から徹底検証するとして、今できる本気が試されている。  武蔵坊五郎

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