いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

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箱物で下関食潰す中尾市政 新市庁舎、消防、駅前開発も

 下関市の中尾市長が任期最終年度に新市庁舎建設や消防署移転、下関駅前開発など大型箱物事業をいっきに動かし始めている。旧4町の総合支所や勝山支所の建て替え、長府の新博物館建設をはじめその他にもあいついでいる。一方では市財政の再建を叫び、市民経済が極端に疲弊して税収減となっていくなかで、不要不急の大型利権事業が繰り広げられる。人の金と思って痛みもなく大盤振舞し、下関を略奪し尽くすような狂った市政運営に批判世論が高まっている。国政の舞台で、「財政危機」といって増税しながら「国土強靭化」といって高速道路や新幹線など大型公共事業の利権拡大を叫んでいるのが自民党であるが、ともに次期総裁を目指している安倍代議士や林芳正参議院議員のお膝元で、国民の困窮をよそ目にして財政を食いつぶしていく政治が先駆けて実行されている。
 
 失業、倒産、税収激減のなかで

 9月議会を前にして、大型箱物事業のメインである新市庁舎建設の建築工事にかかわる入札が実施された。建築主体工事は戸田建設・野口工務店・貴船建設JVが33億1700万円で落札し、電気設備工事は7億9900万円で中電工・ダイワ技研・和田電機JVが落札。機械設備工事は10億1255万円で三晃空調・新ホーム・エビス商会・大上設備JVが落札した。9月議会で業者選定が承認された後は、総事業費79億円を見込んでいる本庁舎整備事業の工事がいっきに動き始める様相となっている。
 市庁舎については3年前の市長選で、「庁舎は建設しない!」「大不況のさなかに本社を建て替える経営者がどこにいるのか!」と叫んで当選したのが中尾市長だった。ところが当選すると建設中止ではなく「凍結」にすり替え、1年もしないうちに解凍。「公約の進化だ!」「庁舎問題だけが私の得票につながったわけではない」と開き直ってゴリ押ししてきた。あるかぽーとの芝生公園化、満珠荘の老人休養ホームとしての存続など、主だった公約を投げ捨てていったのと同じように、市長選の中心争点だった公約すらへっちゃらで覆した。公約全面破棄の民主党政府の先をいったが、任期終了間際で駆け込み発注をやろうとしている。
 「本庁舎(現庁舎)は残す。今から建設するのは市民サービス棟なのだ」「だから公約破棄ではない」といいながら、名称をカモフラージュした建物たるや現庁舎(8階建、床面積8800平方㍍)の2倍のフロア面積(1万8400平方㍍)を誇る建物で、だれの目から見ても本庁舎そのもの。見晴らしのいい上階には議会棟を備える作りになっている。
 驚くのは、人口減少のさなかに庁舎面積が3倍に膨れ上がることだけではない。巨大な本庁舎建設計画が進められるかたわらで実施された現庁舎のコンクリート劣化診断では、河砂を使用していた時期のコンクリートで質が良いため、「深さ三〇㍉の位置にある鉄筋まで中性化が進行するには132年かかる」という数値がはじき出されている。建設から54年たった現在の中性化の深さは最大値が12㍉で、鉄筋まで残り18㍉もある。この18㍉が中性化するには、放っておいてもあと78年かかる計算で、コンクリート面に中性化防止の薬剤を浸透させるなど丁寧にメンテナンスを施せば、さらに耐用年数は延びることも明らかになっている。計算上は「78年」であるが少なくとも「50年は十分に使える丈夫な建物」という結論である。
 それなら大慌てで箱物利権をやる必要性はまったくなく、50年先に庁舎建設を先延ばししても何ら問題ないが、今建設することにこだわっている。もともと基金の積立もなく降って湧いたような新庁舎利権であったが、老朽化して仕方なく建て替えるという代物ではなく、お金を使いたい願望から「庁舎は古い」「ボロい」といってきたにすぎない。
 江島市長の時代に庁舎移転が持ち上がった過程では、壊れた雨水管を修理しなかったおかげで洪水が七階から発生し、「雨漏りが大変なボロ庁舎」といって雨水が滴る中で仕事をさせたり、天井壁が職場に落ちてきたり、市役所はいったいなにをしているのかと疑いたくなるような事態も招いてきた。修理して原因を解決すれば良いのに後回しにして結果だけを大騒ぎする。わざわざ雨が浸透して老朽化させるような対応についても、庁舎内外で半ば呆れ顔で話題にされてきた。

 総額200億近い大盤振舞 新博物館建設等も 

 新庁舎だけではない。中尾市長になってから総額200億円もの箱物計画がぶち上げられ、着着と青写真作りは進行してきた。海峡沿いの岬之町では30億円かけて消防庁舎を建設する工事が始まっている。消防庁舎が移転した後は、現在の消防庁舎を解体して高層の立体駐車場を建設する予定にもなっている。さらに勝山公民館の建て替え、豊北総合支所、豊田総合支所、菊川総合支所の建て替え、豊浦総合支所の改修工事が市長交代を機に持ち上がり、新博物館建設、幡生ヤードの教育センター(学校耐震化の進行次第では中止になる可能性もある)など、総額にして200億円近い大盤振舞が動いている。
 新博物館は、長府功山寺前の山口銀行の関連会社が所有していた土地を市が買い上げ、来年秋には着工予定。すでに基本設計も実施設計もでき上がり、住民説明会も終了。あとは発注するのみとなっている。
 さらに、250億円をかけて過剰整備する必要性があるのか疑問視されている長府浄水場整備にも巨額の経費が注ぎ込まれ、おかげで水道料金が跳ね上がった。川中地区の土地区画整理事業にも毎年のように10億円を超える市財政が注ぎ込まれている。乃木浜総合公園の整備(ソフトボール球場など)にも、この2年間だけで12億円が注がれた。750億円をかけて軍港になることが懸念されている沖合人工島や、周囲の道路群整備、都市改造も巨額の予算を投じて続行している。

 駅前開発しイズミ進出 地元商店追い出し 

 さらに現在色めき立っているのが駅前開発だ。JR西日本、山口銀行、下関市の3者が150億円(下関市の負担が55億円)かけて進めているもので、5億円をかけた梶栗駅、29億円をかけた長府駅に続いて、JR西日本とその土木建築部門を担当している広成建設が受注していく大型事業となっている。昨年の15億円に続いて、今年は24億円も下関市は負担している。
 この事業をめぐって最近明らかになったのは、JR西日本がとり仕切っている名店街にもイズミ(本社広島市)が乗り込んでくることだった。これまで名店街で営業していた地元商店が追い出されたあげく、外来資本が郊外も中心市街地も独壇場で商圏を抑えていくことに対して、「にぎわいプロジェクトとは、山口銀行と政治家とJR西日本、外来資本がにぎわうという意味だった」「これでは市街地開発ではなく市街地“壊滅”にしかならない」と話題にされている。
 川中・伊倉地区や新椋野地区などの郊外開発をさんざんやって、金融機関を中心とした勢力が不動産バブルを謳歌した結果、そこに広島からイズミがやってきて郊外型ショッピングモールを建設し、あるいは土地を買い占め、商業地や市街地形成は分散。すると今度は郊外型の街作りによって疲弊しきった中心市街地を「活性化させる」といって再び巨費を注ぎ込み、廃屋街にオシャレなレンガ歩道をつくったり、駅前や中心市街地の不動産バブルへと目移りしている。
 郊外開発と市街地活性化という相反する政策が同時進行し、どっちも欲張ってなにがしたいのかわからない状況に陥っている。工事がやりたいだけ、お金が使いたいだけにしか見えないといわれても仕方がないくらい、デタラメで一貫性のない街作りが繰り広げられている。しかも、中心市街地の歩行人数や滞留人口が増えなければ、国からペナルティを受けて補助金返金などの事態にもなりかねないという、笑えないむだ遣いとなっている。

 市税は4年で28億円減 経済疲弊で財政悪化 

 一方で「財政健全化計画」を進めているのが下関市で、決して財政が潤沢なわけではない。経常収支比率は過去最悪の99%にもなり、いざ市民にとって切実な事業をしようと思っても自由に使える金などないのが実情である。大散財をやるおかげでますます首が締まっている。
 自主財源である市税(市民税、固定資産税など)はこの数年急激に落ち込んでおり、リーマンショックからのわずか4年間で28億円も減少している。この間、強引な税金滞納差し押さえが中尾市政の大手柄とされてきたが、いくら強面で巻き上げても頭打ちどころか激減していく。市民生活や市内の経済的な疲弊が急ピッチで進行していることを物語っている。
 現在やられている異様な箱物バブルは、合併特例債によって450億円の起債が認められたことによって火がついている。これは下関市の借金にほかならない。国が交付税措置して面倒を見るという仕組みになっているものの、国自体にカネがないから増税といっているなかで、どう転ぶかわかったものではない。
 しかも財政的に見てみると、合併による特例措置で旧下関市、旧豊浦郡四町に合併前から支給されていた交付税額が保証されているのは平成26年度までで、27年度から31年度にかけて、地方交付税は毎年約20%ずつ減額していき、最終的には35億円減額されることがわかっている。従来なら270億~280億円ほど国から下りてきたお金が、1割強も減ることになる。そのために学校統廃合や保育園統廃合、教育予算や老人福祉の切り捨て、公共施設の切り売りがやられている。
 いまや地方交付税依存といっても国税収入そのものが減り、国からの地方自治体への割り当ても減っている。その分を「合併特例債」の体裁で地方自治体の借金に貼り替えながら、さらに散財させ道州制へと導いているのが国である。合併特例債の償還期間の間、国家財政がもつかどうかすらわからないなかで、脳天気に箱物バブルにのめり込む姿は、自己破産者が他人に大迷惑をかけてトンヅラしたり、破滅していく姿と何ら変わりない。下関市が財政パンクしたときには、市長は1期3000万円の退職金をもらって逃げ、尻拭いを強いられるのは市民なのだ。
 市債残高は一般会計だけで過去最高額の1240億円に達する見込みで、特別会計にかわしているものまで含めると2000億円は楽に超す。年間130億円もの借金支払いをしながら、同額ほどの新たな借金を重ねて、キチガイのように使い果たす食いつぶしがやられている。
 市民生活の窮乏化という尋常でない経済情勢は市税の激減状況にあらわれている。若者に職がなく年間2000人規模の人口減・流出に歯止めがかからず、生活保護率も児童扶養手当の受給率も全国先端。まれにみる貧困都市で倒産や失業の波が容赦なく襲いかかっている。
 安倍事務所が熱心でJR西日本と山口銀行、下関市がすすめる駅前開発はひとつの象徴となっている。JR下関駅にイズミを呼んで、駅を出入りする客を囲い込み、長府、川中の郊外店とあわせて下関全体を押さえる。そのためにシーモールをはじめ下関の商業が大打撃となることに市の税金を投じる。下関は広島の資本であるイズミに占領されていくが、広島や北九州に殴り込みをかけている山銀が、自分の商圏を広げるために下関を売り飛ばしており、市民が預けた預金で市民経済がつぶされていくとの批判はうっ積している。
 市民生活が危機的な状況に直面しているなかで、市民や地元企業が税金を払えるように産業振興、雇用確保に全力を尽くすのが、行政の最大任務になっているが、市民の生活など心配する意志も能力もない者が、巻き上げた税金を端から使い果たしていくこと、安倍・林事務所の代理人、山口銀行の番頭になって使うことばかり考えていることへ、市民の怒りが強烈に充満している。「国政も市政も同じだ」と語られ、カネを与えれば与えるほど食い物にする政治に批判世論がうっ積している。
 駅前開発や200億円の新庁舎関連事業を中止することはもちろんであるが、そのような巨額の余裕資金があるのなら、銀行やゼネコンや政治家の食い物にさせるのではなく、もっと市民の生活に根ざした施策に充当することが求められている。
 安倍、林代議士は総裁選出馬で自分の出世が一番の関心。中尾市長や幹部職員、そして議員というものが、市民不在の突っ走りをやっているが、公務員精神など無縁な存在で市民感覚がまったくわからない。先の知事選で、下関における自民党票は壊滅的な減少となっているが、その危機感すらない。それは秋といわれる衆議院選挙、来年の市長選で地殻変動的な激震に見舞われることは疑いない。

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