(2025年9月8日付掲載)

8月10日の豪雨で冠水した下関市貴船町の赤岸通り
今年も線状降水帯や台風が各地を襲い、土砂災害や河川の氾濫などで多くの被害が発生している。災害が毎年起こるようになっているなかで、前年の復旧が終わらないうちに次の災害で被災する状況が各地で起こっている。市町職員のマンパワー不足、土木建築業者のマンパワー不足といった人手不足が災害に対処するうえで大きな課題となっていることは全国共通だ。下関市も23年、24年、25年と3年連続で豪雨災害が発生した。とくに23年災害は旧4町を中心にこれまで経験したことのない甚大な被害が発生し、その復旧工事はまだ終了していない。豪雨や台風などで毎年災害が起こる状況に対応し、国をあげて制度や体制を整える必要があり、土木業者などからも多くの課題が寄せられていることから、記者座談会を持って議論した。
観光開発よりも災害対応優先せよ

8月豪雨で最も大きな被害が出た長府中学校の法面崩壊(下関市長府逢坂、議会資料より)
A 下関は8月9~12日、今年もっともひどい豪雨に見舞われた。総降水量は3日間で、下関市内が512㍉㍍、豊田町の観測地点で304㍉㍍だったそうだ。
旧市中心部では赤岸通りが川になり、深いところでは男性の腰くらいまで浸かった。赤岸通りは昨年7月の豪雨でも浸水したから2年連続だ。昨年の豪雨災害のあとに雨水の排水工事をしたようだが、雨量が年々増えているから追いついていない。国道9号も毎回一定の雨量をこえると通行止めになるのだが、その後も土砂崩れがあって、1日半ほど通行止めになっていた。
新下関駅周辺もあっという間に川のようになった。車両が水しぶきを上げて走っていたとか、半分浸かった車がハザードを出して停車していたのを見たという人もいて、ひどい冠水だったし、響灘に沿って走る国道191号も、下を流れる川があふれて周囲の駐車場や国道が冠水し、水に押し流された土砂の勢いで国道の一部が陥没したりもしたそうだ。
B 安岡地区は被害がかなり出ている。8月10、11日の大雨で、下関市安岡町にある済生会病院の立体駐車場の上の山が崩れた。土砂は深坂のため池から出ている灌漑用水路を埋め、行き場がなくなった水はオーバーフローして、済生会下の交差点が池になり、農免道路を埋め、左側の田んぼに入り、さらに用水路を伝って安岡小学校付近が浸かった。車3台が水に浸かったそうだ。
そこに78年住んでいるという住民も「今までは水路が防災の役割を果たしていたが、その水路が埋まった。初めてのことだ」と話していた。すぐ近くの障害福祉サービス事業所では、入所者をバスに乗せて避難させたそうだが、高齢の入所者は恐れて、避難も大変だったそうだ。この障害福祉サービス事業所の上が、周辺では一番谷が深くて危険だといわれている。一帯に国と県が4カ所の砂防ダムをつくる計画を立てているが、土地取得の課題などもあってまだできていないという。
灌漑用水路の話に戻るが、東線・西線の両方の水路が埋まった。今はちょうど稲穂が出る時期なので田に水が必要だ。人間でいえば心筋梗塞を起こしているようなものなので、一刻も早く土砂をとり除いて水が通るようにしないといけない。
そこで、土地改良区から依頼して、7人が盆休みを返上して合計1週間かけて土砂をとり除く作業をしたという。朝8時から夕方4時半まで、途中はトイレ休憩くらいでブラック企業並みに働いたそうだ。土砂を掻き出すために合計7㌔は歩いたという人もいた。業者も来てくれたそうだが、業者は市の仕事を請け負っていて、納期が遅れるとペナルティが科されるという事情もある。地元住民ができるところまでやっておいて、業者でなければ難しい部分を市にお願いしたという。主力は高齢者だから、猛暑のなかで大変な作業だったと思う。これまでにない被害で、心が折れそうだったと話していた。
C 市防災安全課のまとめによると、8月9日には市内全域の土砂災害警戒区域1万7488世帯(3万9113人)、10日には武久川、友田川、粟野川、木屋川の浸水想定区域の計5693世帯(1万2932人)に避難指示を発出している。夏休み、しかも盆前ということもあって、人の移動も活発な時期だった。関門橋が通行止めになり、関門トンネルが大渋滞したものだから、インターハイで来ていた子どもたちが九州に渡るに渡れずバスで避難所に駆け込んで来たり、行き場のない観光客も避難してきたという。
今回は旧下関市内の降水量が多かったこともあって、被害も旧下関市内が多かったようだ。盆休みが明けた8月18日から本格的に業者に応急復旧の要請が始まったところで、そこからまだ2週間ちょっと。被害件数も日々更新されているところで、全体像はまだ公表されていない。
今月4日の市議会総務委員会で報告された被害状況は以下の通り。
住宅…大規模半壊1件、半壊1件、床上浸水37件、床下浸水10件。
道路…国道3件、県道5件、市道20件。
土砂崩れ等…土砂171件、倒木12件、河川60件。
農林関係…水路54件、農地38件、ため池3件、林道5件。
その他…権現山公園の法面崩壊、長府中学校の法面崩壊、火の山パークウェイ法面崩壊。
この数値は8月28日時点のものだ。防災安全課に通報があったのは約600件(重複がある可能性もある)にのぼっており、最終的な件数はまだ増えるとみられる。委員会のなかで議員たちも指摘していたが、床下浸水10件というのはあまりにも少なすぎて実態と乖離している。市に申告していないということは、自力でなんとか対応したということだろうが、どこが浸水したのかなど、被害状況の把握は今後の防災のうえで重要だ。広く市民に申告を呼びかけることも検討課題といえる。
業者は深刻な人手不足 工事積み残しが常態化

国道9号線では土砂崩れが発生し、ブルーシートと土嚢による応急対応状態が続いており、車両は片側通行となっている。(3日、下関市前田)
B 問題は、災害復旧に時間がかかり、なかなか元の生活に戻れないことだ。しかも、前年度の復旧が終わらないうちに次の災害が起こる。これは下関だけでなく全国どこも直面していることだと思う。
下関市の場合、近年でもっとも被害が甚大だったのが2023(令和5)年度だった。
そのときの市が担当する復旧工事は、補助災害(国の補助を受けるもの)が284件。一般災害(市単独で工事するもの)が132件(計416件)補助災害のうち今年3月末までに完了したのは114件と50%に満たない。規模の大小はあるにせよ、2年前の復旧工事があと半分残っているということだ。一般災害の進捗率はなぜか非公表なので全体状況はわからないが、相当数の工事が残っていることは間違いない。業者の話では、県の担当する工事も同じように残っていて、毎年積み残している状態だという。
A この年は、あまりにも膨大だったから県土木と市役所が合同で市内の土木業者を招集し、協力を呼びかけ、行政機関も当初から翌年度に送ることを想定して動いていた。他の工事をすでに契約している業者もあるので、災害復旧工事はとにかく契約だけ結んでもらい、受注業者がいないという状況は避けつつ、工期を長めにとるなど柔軟な対応をとったらしい。
翌年も災害が起こらなければ、2年間でなんとか終わったかもしれない。関係者は「来年は災害がありませんように」と祈るような気持ちでいたそうだが、結果的に24年度も豪雨があり、前年度災害の復旧工事とごっちゃになって大変になったそうだ。災害復旧の予算を繰り越せるのは2年間だけ。23年度分は、なにがなんでも今年度中に終わらせなければならない。
B そこで一番の課題になっているのが土木業者の人手不足だ。土木の現場に人がおらず、作業員の高齢化も進んでいる。人口減少・少子高齢化が進んでいる下関は、隣の北九州市よりも深刻だ。なかでもネックになっているのが現場監督の不足だという。現場監督がいなければ、会社として受注することはできない。23年度災害をきっかけに、下関市も1人の現場監督が複数の現場を掛け持ちできるよう規制を緩和した。公共工事の安全性という視点から見ると一現場に一監督がもっとも望ましいが、それをいっていると工事が進まないという判断だったそうだが、それでもマンパワーは不足している。
D 業者の方に話を聞いても、やっぱり人手不足は一つの問題としてある。県も市も災害復旧の工期を伸ばしたり、「ゆっくりでいいからやってほしい」という感じで発注していることは業界にも伝わっている。だが、現場監督が1社に1人、2人しかいないなかで、今抱えている仕事で1億円もうかるなら、会社としては500万円の緊急工事に現場監督を回すのは難しく、どうしても抱えている仕事を優先せざるを得ないという。
現場監督の人数がその会社の体力にもつながっているということだったが、何にせよ敬遠される業界になってしまい、若手の確保が難航している。中堅の土木業者のなかからは、「下請がいない」という声も聞かれる。
B しかし、地元の土木業者はそのなかでも「地元のインフラを守るのが自分たちの使命だ」という思いを持っている。もちろん人手不足もあるのだが、「今抱えている公共工事の工期を伸ばしてくれたら復旧工事を受注できる」という指摘もあった。今年の盆明け時点で、災害復旧工事の要請が300件超あったが、すでに請け負っていた市発注工事の工期が決まっているから、行きたくても行けない状態になっているそうだ。契約済みの工事で工期が遅れるとペナルティが科されるからだ。指名停止にでもなったら業者にとっては死活問題だ。「市役所の担当課が、災害復旧に行った日数分だけ工期を延長してくれれば両方の工事ができるのではないか」と提案していた。実際ここ数年の豪雨のあいだに、他県で不要不急の公共事業をストップして、災害復旧に集中した自治体もあった。やろうと思えばできるはずだ。
A それは本当にそう思う。23年度のとき、旧4町は稲刈りの直前に農家も農地も被災して、一刻も早く復旧したいのに業者が見つからない状況に直面していた。旧4町の地元業者は道路も河川も、土砂崩れも農地災害もと、いろんな方面から要請が来て手一杯で、とくに農地は後回しになっているのに、旧市内では不要不急の公共工事に業者が囲い込まれていて、なぜ災害復旧に振り向けないのか疑問だった。たとえば火の山とか観光開発なんて少しくらい工事が遅れたところで困る人はわずかだ。工期の延長となると、それはそれで大変な部分はあるのだろうが、災害が頻発する時代になっているのだから、機動的に対応できる仕組みをつくってもいいのではないか。
D 今回初めて知ったが、県道などはエリアごとに担当の業者が決まっていて、豪雨のなかで県道や河川をパトロールして回ったそうだ。機動力のあるメンバーを確保している業者が担当していて、普段でも道路が陥没したとか連絡が入ると、すぐに現場に向かって対処するそうだ。もちろん金銭的な面もあるのだろうが、多くは金だけでなく「インフラを守る」という思いを持って従事している。だから、「本当は復旧工事に行きたいけど、背に腹は代えられない」という感じで話す業者も多い。業者の話を聞いていると、復旧工事の単価を上げることが必要なのではないかと感じる。「“とにかくやってほしい”というスピード料みたいな加算があると嬉しいが…」と話す業者もいた。緊急の依頼が来て現場を見に行き、1日、2日で終わりそうなら請けるけど、半月くらいかかりそうなら今抱えている仕事を考えると難しいという判断になるという。業者にも実情を聞いて、逡巡する部分を後押しする解決策がいる。
A もう一つは、公共工事の書類の多さだ。災害復旧でも公共工事は公共工事。写真撮影なども含めて膨大な書類を仕上げないといけないので、すごい負担になるそうだ。公金だからある程度は必要とはいえ、500万円などの復旧工事でも、1億円の工事と変わらないくらい書類が必要で、書類づくりも工期内に終わらせないといけない。事務作業をする社員を雇えない小さな会社が受注するにはハードルが高いといっていた。
ある業者が、「災害のとき、もしものときの対応をするために、業者の余力を担保する対応が行政としても必要だ。民間の営業努力に任せているだけでは難しい。公的な仕事をするから、業者を育てていく視点も必要だ」と話していた。競争原理に委ねるだけでは、この災害頻発の時代に対応できないということだと思う。
D 「近隣市町の土木業者と連携するような体制がいるのではないか」という声もあったし、さまざまな手法は考えられる。人手不足問題のもっと奥をたどれば、サービス業やIT、金融、ユーチューバーなどばかりが脚光を浴びて、地道な生活を支える産業が空洞化してきたことがあると思う。だが、汗水垂らして働く業界の人たちがいなければ生活もできないし、災害からの復興もできないことを改めて教えているような気がする。現状に即した解決策と同時に、いろいろ考え直す時代に来ている。
農地復旧遅れ離農加速 個人資産扱いが壁に

8月中旬の豪雨で土砂崩れが発生して埋まった灌漑用水路(下関市蒲生野深坂)
A 道路・河川など生活インフラの復旧も課題は山積みだが、農地の復旧にはより課題が多い。災害が頻発するなかで、国の補助率もかさ上げされる傾向にはあるが、「個人の資産」という前提だから、どうしても個人負担が発生するため、長年赤字のなかで農業を続けてきた高齢農家が「今から数十万円、数百万円かけて復旧するかどうか」の判断を迫られ、辞めていくきっかけになっている。昨年からコメ不足が表面化しているが、全国各地で毎年のように災害を引き金にして離農する農家が出ていることも無関係ではないと思う。
C 安岡の農家が一刻も早く田んぼに水を流すために自力で水路の土砂除去をやったと話していたが、豪雨はだいたい7~8月の稲刈りの直前に起こっていて、毎年被災した農家は同じような状況になっている。
少しでも早く農地や農業施設の復旧をしないと今年の収穫ができなくなるが、災害申請をするためには市役所の現場確認が必要で、件数が多ければ市役所も手一杯になって、なかなか順番が回ってこない状況も出てくる。
また、おおよその負担額がわからないと、復旧するかどうかの決断もできないが、復旧の決断をしなければ詳細な設計も進まないというように、復旧工事が始まるまでに時間がかかる。そして、作付けした田んぼは工事に入れる時期が限定されるから、業者の人手不足とあいまって、翌年の作付け時期に間に合わないケースも出てくる。
国の災害査定のスピードを上げる対応もなされているようだが、今のコメ不足の状況では、もっと素早い農地復旧が求められるのは確かだ。
D 豊北町では2年前の豪雨で、粟野地区内の集落の農地12㌶に水を送っていた頭首工(取水堰)が壊れ、今も修理のめどが立っていない。自治会あげて解決策を模索し続けて、市にも支援を求めている最中だ。地元の人たちに事情を聞くと、災害の直後、大きく見積もって修理費が1億~1億5000万円くらいで、地元負担が500万円ほどになるという数字が市役所から示されたという。
昔みたいに地域に農家がたくさんいれば、なんとか負担できる金額だったが、農地を所有している13軒のうち稲作をしていたのは当時七軒しかなく、一軒当りの負担は大きい。しかも2年前はコメが安くて赤字の状態だ。取水堰だけでなく鳥獣防止柵の修理費も多い農家で約30万円の手出しが必要だったりして、取水堰を修理するという決断ができず、災害申請を諦めた。
結果的にこの年の豪雨災害は激甚指定され、農地や農業用施設の補助率はかさ上げされ、最終的には99・4%までなった。それなら地元でもなんとか負担できたのではないか? ということだが、最初に災害申請していないから、国の補助の対象外になって今に至っている。過年度災害に予算はつかないから、復旧するなら土地改良事業でしなければならず、その場合の地元負担率は20%。もし総額1億円だとすると約2000万円をみんなで負担することになる。結局、今も復旧のめどが立たないまま広大な農地が草まみれになっていて、どうしたものかと頭を抱えている。
A 同じような事例は各地で発生しているのではないか。農業用施設、とくに取水堰のような大きな施設になると修理費用が億単位になることは少なくない。農業が盛んで、後継者もいて、これからもっと生産しようという状況なら農家もすぐに決断できるだろうが、なんとか農地を維持し、踏ん張って生産してきた高齢農家が、突然の災害時にすぐに数百万円の出費を決断できるかというとできない。そんななかで貴重な農地がむざむざ失われている。
B 農地に関していえば、「受益者」といういい方をしているのが納得がいかないところだ。災害申請書類にも「受益者」と書かれているが、農地で生産されたコメや野菜などをだれが食べるのか考えたとき、農家だけが受益者ではないと思う。
農地というのは個人農家の所有である一方で、国民の食料を生産するという公的財産でもある。被災して生産できない状態になったとき、行政側が「負担がこれだけあるけど、あなたたち負担できますか?」みたいな雰囲気で行くと、そのつもりはなくても離農に導いてしまう結果になることも、この間の一つの教訓ではないだろうか。
膨大な災害が発生したなかで、総合支所の農林課などは少ない人数で休みなく動き続けていたし、件数が多ければ多いほど1件ごとの意志決定に時間を割くのが難しくなることは理解できる。ただ、災害申請の条件を満たしているのに「災害申請はできない」といわれたケースもあったりして、職員の人手不足によって、被災農家の声に耳を傾けながら、専門知識をもって復旧に当たることができなくなっていると住民自身が感じている。
職員削減で行政弱体化 大災害対応できるか

A 市役所の人手不足は、業者の人手不足とともに復旧工事が進まない二大要因の一つといわれている。23年度の復旧工事を翌年度に先送りしたのも、現実的に設計が間に合わないという事情もあったそうだ。今年の応急復旧についても市民から「市役所は遅い」という声が上がっているが、実際上、職員も手一杯なのだと事情が語られている。応急復旧は、防災安全課の予算を使ってブルーシートをかけたり、土嚢を積んだり、道路の土砂を撤去するなど、とりあえずの対処をする工事だ。
現場確認→数量計算でおおよその金額を出す→防災安全課に報告→業者に依頼→起案→防災安全課がOKを出す→契約という流れになるそうだが、今年の分は9月4日時点で、約1割しか契約にたどり着いていないという話だった。業者の盆休みが重なったという条件もあるが、3週間たってようやく本格的に動き始めた段階だ。
B とくに2年前は今まで経験したことのない規模の災害が発生したのだから、人手が足りないのは当然ではある。しかし、この8年間の大幅な職員削減計画が人手不足を顕在化させたというのが市役所内の共通認識としてある。約260人削減する目標を掲げた「定員管理計画」(2017~24年度)が昨年度に一区切りしたが、蓋を開けてみると目標を上回る減少になっていた。とくに21年(72人)、22年(43人)、23年(73人)の3年間の減少は大きく、一気に市役所の人手不足感は増し、「減らしすぎ」「もう限界」という声がどの部署に行っても語られるようになっている。
強気で削減計画を進めているうちに、公務員を志望する若者が減って採用したくてもできない時代に突入したうえ、せっかく採用した若手の離職が増加していることも人手不足に拍車をかけている。とくに技術系職員の離職は近年顕著だ。
D 頭数だけでは見えない部分もある。非正規率は50%近くになっているし、職員数のなかに再任用の一部や定年延長の職員も入っているから、実働部隊の実数はさらに少ない。絶対的に人手不足の状態のなかで一昨年、昨年、今年と災害が続き、来る日も来る日も復旧工事の設計に追われていると、達成感を見失ってしまうという声も上がっていた。雨が降ると憂鬱になるそうだ。悪循環に陥っていて、若手の離職を食い止める要素が見当たらないと職員自身が感じている。
市役所全体でもそんな感じだから、総合支所管内で異例の事態が発生するとキャパオーバーになるのは当然だ。
D 下関の被災規模でこの状況だ。もっと深刻な被害が出た自治体の復旧・復興が難航することは想像に難くない。小泉改革以来、公共の縮小が続いてきたが、自然災害が頻発するようになっているなかで、行政なり公共の役割がむしろ重要になっている。地方自治体でできることもあるだろうが、国として復興庁の創設をはじめ、災害対応の体制を確立していくことが待ったなしだ。





















