(2025年6月23日付掲載)

佐賀空港へのオスプレイ配備に反対する抗議集会(6月21日、佐賀市川副町)
佐賀空港への陸上自衛隊輸送機オスプレイ配備計画が進められる佐賀市川副町で6月21日、「欠陥機オスプレイ来るな! 6・21佐賀駐屯地抗議集会」が駐屯地建設地に近い佐賀空港グラウンドでおこなわれた。7月9日に迫る佐賀駐屯地開設とオスプレイ配備を前にして、佐賀県内をはじめ九州各地、全国から620人の人々が集まり、「オスプレイ来るな!」の抗議の声を上げた。強引な国の軍備増強政策にあきらめるのではなく、今後も反対運動を続けていくこと、さらに全国で戦争に反対する人々との連帯を強めていくことを誓い合う集会となった。
最初に挨拶に立ったオスプレイ裁判支援市民の会共同代表の吉岡剛彦氏(佐賀大学教授)は、「戦後80年という戦争の歴史を反省し、平和の重要性を再認識すべき節目の年に、それと完全に逆行する軍事基地建設が進められている。暴力的に地ならしした土地に巨大で異様な軍事基地が出現しつつある現実を目の当たりにして改めて身の毛のよだつ思いだ。ひさしを貸して母屋をとられるというがごとく、我が物顔で構える駐屯地の片隅で佐賀空港の方が遠慮がちに間借りをしているかのような状況に強い憤りを抑えられない」とのべた。
そして、地権者の所有権を否定し、何度も墜落事故を起こしているオスプレイの危険性も認めない裁判所の不当判決を批判したうえで、「佐賀空港には中国から上海便が飛んできている。来月からは週4往復に増便される予定になっているが、オスプレイは台湾有事や南西諸島の島嶼防衛など中国に対抗することを目的にした機体だ。佐賀便を利用してやってくる中国人観光客がさらに増えようとしているなかで、中国に対する敵対心をむき出しにしたオスプレイを見せつけるというのは賢明な策とは思えない。中国人に見てもらうべきは、青々とした稲田が広がる佐賀平野であり、色とりどりのバルーンが浮かんだ佐賀の空であり、そして漁船が行き交い冬場にはノリ養殖がおこなわれる豊かな有明海だ。有明海の美味しいノリを実際に味わってもらい、多くの楽しい思い出を中国に持ち帰ってもらうことこそが、遠回りのように見えても戦争を防止する真に一番の抑止力になると私は固く信じている」と訴えた。
さらに「基地建設とオスプレイ配備が強行されようとしているが、それによって私たちの運動が終わるわけではない。むしろ引き続き裁判闘争を力強く支えていくことに加え、駐屯地やオスプレイの運航状況、騒音や振動、水質汚染の有無などを厳しく監視しながら駐屯地やオスプレイの最終的な撤去や撤廃を求めていくべきだ。今日の集会は、その決意を新たにし、ともに力を合わせていきたい」と呼びかけた。

挨拶するオスプレイ配備反対地域住民の会の古賀初次会長
有明海でノリ養殖を営む漁師であり、駐屯地建設地の地権者でもある古賀初次氏(オスプレイ反対住民の会会長)は「私は生まれも育ちもこの川副町だ。この会場も私が小学校のころは有明の海だった場所だ。私の父や祖父はこの海で魚介類をとり、祖母や母が行商して私たち子どもを育ててくれた。まさに命の海だった。駐屯地建設が進む今の姿を先人たちが見たら嘆き悲しむだろう。佐賀空港建設の話があったとき、私は南川副共同漁業組合青年部の幹部として真っ向から空港建設反対のたたかいをしてきた。そのあとにできたのが筑後大堰、諫早湾干拓だ。私たち漁民の反対を無視して国が強硬におし進めた国策事業によって、宝の海であった有明海は魚も貝もとれない死の海となっている。このような海にしたのは国だ」と憤りをのべた。
そして「地権者である漁業者を金で釣り上げ、オスプレイという欠陥機まで持ってくる。地元に住む私たちにとっては耐えられない計画だ。地権者4人で裁判をしているが、市民245名が私たちを支援してくれている。心強い限りだ。駐屯地は7月9日に開設することになっているが、これからが本当のたたかいだと思って頑張るつもりだ。今後ともみなさん一緒に頑張ろう」と力強く呼びかけた。
弁護団の東島浩幸弁護士は、現在国を相手にたたかっている地権者4名と北部九州4県を中心とする市民原告245名の裁判について次のようにのべた。
裁判で差し止めを求める根拠の一つは所有権だ。建設工事がおこなわれている土地は、昭和63年に佐賀県から地権者個々人が所有権を取得した。そのため地権者一人一人の承諾がなければ国はこの土地の所有権を取得できないにもかかわらず、佐賀有明漁協から所有権を取得したといって工事をしている。これは地権者の所有権侵害だ。
二つ目は人格権侵害だ。欠陥機オスプレイの墜落や環境汚染の危険、そして仮に戦争が起きたときに攻撃対象となって被害を被るという危険等を訴えている。
しかし、佐賀地裁、福岡高裁ともに地権者の訴えを認めなかった。昭和63年に佐賀県から土地を買ったのは漁業者個々人ではなく漁協であるとし、人格権についても「オスプレイは今までに何度か墜落したが、今後も墜落するということについて具体的な証明がない」という。2023年11月29日発生した屋久島沖でのオスプレイ墜落事故についての原因調査では、ギアボックスのギアの破損ということまではわかっているが、根本原因についてはわかっていない。原因がわかっていないのだから根本的対策ができているはずもない。それなのに具体的証明がないというのは、まったく証明不可能なことを住民側だけに強制していることにほかならない。
軍備増強の必要性やミサイル基地の南西諸島各地への配備、さらい「台湾危機」を喧伝することで軍事的緊張がどんどん高まっている。住民が戦争被害を被ることも杞憂とはいえなくなっている。裁判のなかでのたたかいも重要だが、それよりも重要なのは、裁判の外で、オスプレイ来るな、オスプレイ立ち去れ、佐賀空港の軍事化を許さないという圧倒的多数の市民の声を大きく結集していくことだ。
全国各地の人々も発言
裁判支援市民の会の太田記代子共同代表は「私は90歳で戦争を知っている。佐賀の自然美と歴史、これを後世に残したい。オスプレイ配備を決定した古川康前知事は今は国会議員となっている。冗談ではない。ここは明治維新を成し遂げた土地だ。佐賀から政治を変えよう」と力強く呼びかけた。
川副町住民で、オスプレイ反対住民の会の下村信廣氏は「川副町は日本赤十字社を創設した佐野常民の出身地で博愛の郷といわれている。この博愛の郷にもっとも似つかわしくないのがオスプレイであり自衛隊基地だ。私はこの川副町が基地の町になることは絶対に認めない。平和な空、安心できる大地、宝の海を子や孫へ、決して軍用基地ではなく、美しく豊かな自然を子どもたちに手渡す必要がある。オスプレイ反対、配備計画の白紙撤回と駐屯地建設の即時中止を強く求めて頑張る」と決意をのべた。
オスプレイ配備反対の住民訴訟などをたたかっている山下明子氏は「佐賀空港に降り立ったときの広い空、海、そして広がる麦畑が長い間のシンボルだった。その姿が変わってしまった。駐屯地建設のためにつくられた貯留池は、県有地を無償で貸してその土を駐屯地の盛り土にしている。それなのに駐屯地建設とは関係がないとして環境アセスもせずに進められていることに怒りを感じている。『みんなでSTOPオスプレイ佐賀』としてこの2年間29回にわたって国や県、佐賀市に対する申し入れを重ねてきた。何としてもオスプレイを許さないという思いをこれからもみなさんと繋いで頑張っていく決意だ」とのべた。
集会には、全国でオスプレイ配備や各地の軍拡に反対する運動をとりくんでいる人々も駆けつけた。
「オスプレイいらない習志野・八千代・船橋ネットワーク」の金光理恵氏は「木更津に配備されたオスプレイの主な訓練先が、私たちの住む船橋市にある自衛隊習志野演習場だと防衛省が発表したのが2019年だった。そこで『どこの空にもオスプレイはいらない@船橋』を結成して抗議活動をしてきた。その結果、翌年には習志野、船橋、八千代の三市の市長に連名で国に対して“説明なくオスプレイを飛ばすな”という要請書を出させるところまできた。おかげで今のところまだ飛んでいないが、佐賀に移駐したあとも国は千葉県でのオスプレイ飛行をそのまま続けるつもりだ。どこで飛ぼうがこんな欠陥航空機はあってはならない。ともに頑張りましょう」とのべた。
佐賀駐屯地にオスプレイが配備されたときの飛行ルートとなる福岡県柳川市の新谷信次郎氏(九条の会・柳川)は、佐賀へのオスプレイ配備計画が発表された当初から柳川で反対運動をおこなってきたことを語った。「2014年には9000人の柳川市民の署名を持って抗議の意志を示し、2019年には400人の集会もおこなうなど、佐賀空港と目と鼻の先である柳川からオスプレイ反対の声を強く上げてきた。これからは私たち柳川、大川、大牟田市民は、欠陥機オスプレイが飛ぶたびに恐怖を感じなければならない。何かあってからでは遅い。オスプレイ反対の声を柳川から、有明海沿岸から上げ続けていく」とのべた。
佐世保市で在日米軍を監視する市民団体「リムピース」の篠崎正人氏は、「オスプレイが佐賀に配備された場合、その最大の利用者である水陸機動団が佐世保にある。これまでも佐世保には何度か米軍のオスプレイが来ているが、自衛隊のオスプレイが佐賀に配備されることで日常的な運用が開始される」と危惧を語った。そして相浦駐屯地(佐世保)に2機のオスプレイが試験的に飛んできたさいに、CH47ヘリコプターがついてきたことを話し、「理由を聞くと、オスプレイがどこで落ちてもいいように心配だからついてきたという。そんなオスプレイが佐賀にやってくる。事故の危険性を一番知っているのは乗る人たちだ。私たちはそんな人たちとも連帯して反対運動をやっていきたい」と語った。
大分県の池田年宏氏(戦争止めよう!沖縄・西日本ネットワーク)は「大分では敷戸弾薬庫に長射程ミサイルを配備する弾薬庫が9棟つくられようとしている。湯布院には水陸機動団、ミサイル連隊、さらに沖縄・九州のミサイル連隊に“撃て”と命令を下す第二特化団が配備された」と大分で進む軍拡の現状を報告した。そして「軍事基地というものは破壊し破滅に向かわせるものだ。それに対して平和を求める運動は、物を生産し、希望と笑顔を作り出す運動だ。沖縄も九州・西日本も、そして全国で同じ思いを持つみなさんが繋がり今の戦争体制を止めよう。私たちの力で戦争を回避することができたと将来の子どもたちが学べるような歴史を刻んでいきたい。今日はその一日になる」とのべた。
市民運動を今後も継続
最後に集会アピールが採択された。
アピールでは「私たちはいかなる理由があったとしても軍事行動にも戦争にも反対します。戦争になれば被害を受けるのは一般市民です。基地は相手国の標的となり、住民を守りません。佐賀空港が建設された時、戦争の悲惨さを骨身に感じていた世代の漁師たちは、平和への思いを込めて『自衛隊との共用はさせない』との文言を盛り込んだ『公害防止協定』を佐賀県との間で結びました。ところが2018年8月24日、山口祥義知事は、防衛省が計画する佐賀空港西側の土地への駐屯地新設と、オスプレイ17機の配備計画受け入れを表明しました。このことは佐賀県知事と防衛省による、漁民たちの、平和への切なる希求と祈りを、いとも簡単に踏みにじる暴挙にほかなりません」「さらに、基地建設予定地が、漁業者個人に所有権がある土地であるにもかかわらず、多数決で用地売却を決めるという、あってはならない行為によって、防衛省による基地建設が強引に始められてしまいました」とし、「私たちは佐賀空港の軍事化と、オスプレイをはじめとする軍用航空機の一切の配備に対して、心の底から反対の意思を表します」と訴えている。
集会後には、現在建設工事がおこなわれている駐屯地前まで全員で「オスプレイ来るな!」の声を響かせながらデモ行進をおこなった。
長年反対運動を続けてきた古賀初次氏は集会後、「これだけ多くの人が一緒になってオスプレイ反対の声を上げ続けてくれていることに励まされた。裁判だけではなかなか勝てないが、市民の側から反対の世論を大きくしていくことが大切だ。来月には駐屯地が開設されるが、実際に問題が起きてくるのは今からだ。私たちのノリ養殖にもどんな影響が出てくるかわからない。だからここでたたかうことをあきらめるわけにはいかない。九州各地や全国で戦争反対を訴えている人たちと一緒になってこれからも運動を続けていきたい」と力強く語った。

名護沿岸に墜落した米軍オスプレイ(2019年12月、沖縄県)