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汚れどもの祭典だった東京五輪 電通界隈で続々と贈収賄疑惑 選手以上に飛んだり跳ねたり

 東京五輪・パラリンピックを巡り先月17日、大会スポンサーの紳士服大手AOKIホールディングス側から5100万円を受けとったとして、東京地検特捜部が組織委元理事の高橋治之を逮捕し、贈賄の疑いでAOKI前会長の青木拡憲ら3人を逮捕した。この汚職事件報道を皮切りに、元電通幹部で「スポーツビジネスのドン」と呼ばれた高橋容疑者の周辺から、芋づる式に不正が発覚している。当初予算の2倍にもなる1兆4238億円を投じ、コロナ禍で1年延長までして強行した「スポーツの祭典」から1年が経過したが、その実態はまるでカネにまみれた「汚れどもの祭典」と化していたことが明るみに出ている。

 

森喜朗も逮捕投獄が筋

 

 今回逮捕された紳士服大手AOKIホールディングスの青木前会長は、大会スポンサー契約などで有利なとり計らいを受けるために、2017年10月~今年3月の間に当時五輪組織委の理事をしていた高橋元理事に対し、50数回にわたり計5100万円の賄賂を渡していたとされる。特捜部による事情聴取は7月下旬からおこなわれており、高橋元理事は容疑を否認していたが、8月17日に逮捕された。

 

 青木前会長について特捜部は、高橋元理事に渡した5100万円のうち、公訴時効(3年)が成立していない2800万円分について、6日に贈賄の罪で起訴した。だが青木前会長は翌7日、保釈金3億円を現金で支払い東京拘置所から保釈された。一緒に起訴されていた青木前会長の弟で元副会長の青木宝久被告、専務執行役員の上田雄久被告の2人も保釈が決定しており、保釈金はそれぞれ1億5000万円、300万円となっている。

 

 今回保釈に至ったということは、青木前会長らが特捜部側の見解と一致する方向性で供述し証拠を提出したと見られている。青木前会長は特捜部に対し、大会組織委員会の森喜朗会長にも「がん治療の見舞金」として現金200万円を渡したと供述しているという。

 

 AOKI側は、高橋元理事に対して50回以上賄賂を渡す過程で、おもに6つの項目について要望していたといわれている。
 起訴状によると、
 ①スポンサーへの選定
 ②契約締結の迅速化
 ③公式服装優先供給権の追加
 ④大会延期に伴う追加スポンサー料減免
 ⑤公式ライセンス商品販売契約の迅速化
 ⑥速やかな商品の承認
となっている。

 

 この要求通りに、AOKIは選手らが着る開会式用と表彰式などで着るさいの公式服装を担当することが決定。公式服装についてJOCは「コンセプト等を含めた要項に基づき、オリンピアン、パラリンピアンも含めた服装選考委員会で総合的に検討して決定」としているが、結局何社が公募に参加したかは公表されていない。

 

 青木前会長は高橋元理事への賄賂5100万円以外にも、組織委へ多くの費用を投じている。招致段階でも活動資金として約2億円を拠出し、さらに大会スポンサー料として五億円を支出。選手強化費名目で2億5000万円も投じた。この強化費は配分先や手数料を定める契約書を交わさずに電通子会社を通じて支出しており、少なくとも1億6000万円を高橋が得ていたとされている。特捜部はこの件に関しても調査をおこなっているという。

 

AOKIに続き角川 電通界隈から広がる

 

 高橋元理事周辺での贈収賄をめぐっては、AOKIホールディングスに限らずさらなる汚職の連鎖が次々と明らかになっている。6日には東京地検特捜部が出版大手「KADOKAWA」の元専務・芳原世幸、元担当室長・馬庭教二を贈賄の容疑で逮捕。賄賂を受託したとしてAOKIとの件に続き高橋元理事を再逮捕し、さらに高橋元理事の電通時代の後輩で、コンサルタント会社「コモンズ2」を経営する深見和政社長も逮捕した。

 

 KADOKAWA側は、大会スポンサーの選定などで有利になるよう高橋容疑者に依頼し、約6900万円を賄賂として渡した疑いが持たれている。同社に対しては、高橋元理事がスポンサーの仲介をおこなったとする報道が出ていたが、KADOKAWAの角川歴彦会長は当初「賄賂を渡したという認識はない。法律事務所も入り、何も問題ない」と収賄容疑を否定していた。だが、6日に元専務らが逮捕されると、KADOKAWA社の公式サイトで、逮捕の報告とともに捜査を受けていることを認め、「関係者の皆様に多大なご心配とご迷惑をおかけしたことを深くお詫び申し上げます」と謝罪している。

 

 カネの流れを見てみると、2019年7月~2021年1月の間に10回にわたり、KADOKAWAから高橋元理事の後輩である深見社長が経営する「コモンズ2」名義の口座に計約7600万円が入金された。このうちの一部は贈賄罪の公訴時効(3年)が経過しているため、残りの約6900万円分が対象となる。

 

 KADOKAWAから賄賂が振り込まれた「コモンズ2」は、元々2013年にまず高橋元理事が取締役に就いており、その3カ月半後に深見が取締役に就任。高橋元理事は辞任し、新たに別のコンサル会社「コモンズ」の代表となっている。深見自身も電通の元幹部職員であり、高橋の5歳下の後輩に当たることや、似通った二つのコンサル会社の名前から見ても、かなり深い関係性があったことがわかる。

 

 結果的にKADOKAWAは2019年4月に東京五輪の「オフィシャル出版サービスサポーター」として契約を締結した。そして大会開幕前の2021年4月以降、オリンピックの「公式ガイドブック」や「公式プログラム」「テレビ&配信オフィシャル観戦ブック」など計10冊の大会関連書籍を販売して恩恵を受けている。

 

 また特捜部は5日に広告大手の「大広」への家宅捜索にも乗り出した。大広は、コモンズ2に1400万円の資金を提供しており、スポンサー集めの代理店業務参入を巡り、高橋容疑者に資金が渡った可能性があると見られている。

 

 電通界隈の汚れた関係性から汚職が広がり、AOKIからは高橋元理事の「コモンズ」に、KADOKAWAや大広からは深見の「コモンズ2」へと賄賂が渡ったことが明らかになった。そして、最終的に組織委理事を務める「口利き役」の高橋元理事へとカネが集まる仕組みができあがっていたというわけだ。

 

 その他にも、7日には大会スポンサーだった駐車場サービス会社「パーク24」に、特捜部が家宅捜索に入り、幹部らを任意聴取した。同社は、2018年8月に「駐車場サービス」のために東京五輪組織委と「オフィシャルパートナー」契約を結んでいた。同社の社外取締役を務めていたのが、JOC(日本オリンピック委員会)の竹田恒和元会長である。報道陣からスポンサー契約に不正はないかと問われた竹田元会長は否定せず、「今後の結果が出ればすべてがはっきりすると思う」とだけのべている。

 

高橋元理事も関わり 招致時から汚職だらけ

 

 東京五輪から1年が経過した今頃になって、突如として問題になったように報じられている汚職問題だが、すでに招致段階から高橋元理事も関わった金銭問題の疑惑が浮上していた。

 

 東京五輪の招致をめぐって2016年、アフリカ出身のIOC(国際オリンピック委員会)委員の票を獲得する工作に、ラミン・ディアク元IOC委員(国際陸連前会長)が関与していたことを英国紙が報じた。その年の5月、フランス検察が東京オリンピック開催をめぐり、日本の五輪招致委員会がラミン・ディアク氏の息子に約2億2000万円を支払ったとされる疑惑を捜査していると発表。実際に2013年7月と10月の2度にわたり「東京2020年五輪招致」という名目で日本の銀行から送金されていたという。振込先はディアク氏の息子が関与するシンガポールのブラック・タイディングス社だった。

 

 オリンピックの東京招致が決まったのはその年の9月。このときIOC委員に東京招致を根回しする役目を負っていた人物こそ高橋元理事だった。そのことを証明するかのように、東京五輪招致活動の間に招致委員会から、「工作費」としては最高額となる9億5824万円が高橋元理事が代表を務めるコンサル会社「コモンズ」に支払われており、第2位の電通を大きく引き離していた。

 

 高橋元理事は、ラミン・ディアク元IOC委員にセイコーの腕時計やデジタルカメラなどの贈り物をしたが、賄賂を渡すなど不適切なことはしていないと話している。

 

 高橋元理事や後輩で贈収賄に関わっていた深見社長も電通幹部だが、オリンピックの「カネ」に関わるあらゆる部分に絡んでいるのが電通だ。東京五輪でも「専任代理店」として指名され、組織委の窓口となってスポンサーセールスなどに力を入れ五輪の「商業化」を加速させてきた。

 

 オリンピックのスポンサー企業は、前回大会まで「1業種1社」と決められていた。しかし東京五輪ではその縛りをなくすよう組織委を説得し、IOCに頼み込んだのが電通で、こうしてスポンサー企業が急増した。1社150億円の「ゴールドパートナー」、60億円の「オフィシャルパートナー」、15億円の「オフィシャルサポーター」を募り、その結果68社3761億円となった。

 

 オリンピックそのものの商業化も急速に進んでいる。IOCは1984年のロサンゼルス五輪から、それまで禁止されていた企業スポンサーを解禁し、放映権料の引き上げなどによって莫大な収益を上げるような構造を築いてきた。以降、オリンピックが開催されるたびに金銭問題がつきまとうようになっている。

 

 IOC自体は国連の一機関のような公的な組織ではなく、世界最大級の非政府組織(NGO)であり、非営利組織(NPO)だ。そのため所得税や法人税の減免など優遇措置を受けており、本部があるスイスではNPOへの規制が緩く、非営利組織であっても収益事業は可能で、財務や報酬の公開も義務ではない。こうして世界最大の民間スポーツ営利団体であり興行主となったIOCは、テレビ放映権料やスポンサー料でおもな収益をあげ、その他にも入場券販売や開催国でのライセンス料などで膨大な収益をあげている。

 

 IOCは収入の9割を各国のオリンピック委員会などに支援金として支出していると主張する。だがIOCはさまざまな関連財団や子会社を設立しており、それを使って寄付金が各国を経由して環流する仕組みになっている。

 

 そして、バッハ会長はじめ理事たちはこれらの関連会社の役員を務め、役員報酬も得ている。それでいてIOCは五輪開催費用の支払いは免除されている。オリンピック憲章にはIOCは競技施設やインフラの整備、運営費の財政負担をしなくていいと規定されており、開催費用は開催国と開催都市、国内オリンピック委員会、国内オリンピック組織委員会が負うことになる。

 

 東京オリンピック招致時の猪瀬都知事(当時)は「東京五輪は神宮の国立競技場を改築するが、ほとんど40年前の五輪施設をそのまま使うので世界一カネのかからない五輪なのです」と謳っていた。だが、ふたを開けてみれば国立競技場をはじめあらゆる施設を新設し、開催費用は招致段階の見積もり額7340億円の2倍にもなる1兆4238億円にまで膨れあがった。

 

 「スポーツの祭典」のはずが、その裏ではカネにまみれた「汚れどもの祭典」がくり広げられていたことが明るみに出ている。電通OBで元組織委理事の高橋治之逮捕によって次から次へと汚職疑惑が浮上し、捜査の手が厳しくなっている。

 

 今回の捜査が進展し始めたのは、検察側が迂闊に手を出せないとされていた安倍元首相の死去からまもなくのことだ。五輪汚職事件をめぐってはスポンサー企業側だけでなく、利権にまみれた政界へも厳しい捜査が及ぶ可能性もある。まずは青木前会長が「がん治療の見舞金」として200万円を渡したとされている森喜朗組織委員会会長について、汚職事件の対象として厳しい捜査が必要だ。森氏に関しては現在、功績を称えるとして政財界人の15人が発起人になり、胸像制作の募金活動がおこなわれている最中だといわれる。胸像どころか汚職による逮捕が筋といえる。

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