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輸入飼料高騰でJAや農業団体が支援要請 昨年の倍以上の値上げで農家は限界

 輸入畜産飼料の高騰に昨年以来歯止めがかからない。ウクライナ情勢や中国からの輸出停滞や買い占め、大幅な円安などの影響で、飼料原料が急騰しており「採算が合わない」といわれるほど農家の経営を圧迫している。こうしたなか六月に入り全国各地でJAや農業団体が県に対して支援を求める要請があいついでおり、行政による早急な支援が求められている。

 

 この窮地に21日、JA全農は7~9月期配合飼料価格を前期比で1㌧当り1万1400円の値上げを発表。生産費負担の増加による経営圧迫が深刻化するなかで、さらに大幅な負担増により業界全体への大きな打撃だ。

 

 JA全農は21日、今年7~9月の配合飼料価格のさらなる値上げを発表した。前期(4~6月)に比べ1万1400円の値上げとなり、値上げ幅はこれまでで最大だった昨年4~6月期の2倍にも及ぶ。これで配合飼料価格は過去最高を更新した。

 

 配合飼料とは、トウモロコシや大豆などタンパク質を多く含む穀物を主とする「濃厚飼料」を牛や豚、鶏などそれぞれの蓄種に合わせてバランス良く配合したものだ。だが、日本では濃厚飼料の自給率は昨年時点でわずか12%となっており、配合飼料を使っている国内のほとんどの畜産業者が海外からの輸入飼料に依存している状況だ。この数年での世界情勢や円安、燃料費高騰などによる輸送コスト増など様々な要因が重なって輸入飼料価格が急激に高騰している。

 

 配合飼料(工場渡価格)の価格推移【図参照】を見てみると、2006年7月時点で1㌧当り4万3250円だったが、今年7月には9万9131円(推計)となり、この16年間で2倍以上に値上がりしている。特にここ数年の値上がりはすさまじく、2020年4月の6万円台後半からこの2年間で一気に3万円以上もの値上がりだ。

 

 

 配合飼料の値上がりに対しては、「配合飼料価格安定制度」があり、農家が支払う飼料代のうち値上がり分は基金から補填される。直近一年間の配合飼料平均価格を「基準価格」とし、飼料代が基準価格を上回った分だけ補填される。

 

 3カ月に一度おこなわれる価格改定の度に値上げが続いているため、当然「値上げ分」は補填されている。しかし配合飼料価格の値上げが長期化し、基準価格そのものが値上がりしているため、いくら値上げ分は補填されても実質的な農家の飼料代負担は増え続けている。

 

 また、主に乳牛や肉牛などに必要となる乾牧草の輸入価格も高騰しており、昨年4月時点で1㌧当り約4万円だったものが、今年4月までに同5万4000円まで値上がりしている。そのため全国各地の畜産農家は、生産コストの増加により経営が困難になっている。

 

 飼料だけでなく、肥料原料も海外に依存しているため肥料の価格も高騰している。肥料価格を巡っては、JA全農が地方組織に6~10月に販売する肥料を前期(昨年11月~今年5月)に比べて最大で94%の値上げを決めている。

 

 飼料や肥料、農業資材などが高騰して生産者のコスト負担が大幅に増えている。こうしたなか6月上旬から各県のJAや農業団体は、県に対して飼料価格の急激な高騰に対する対策や支援を求める要請を次々におこなっている。

 

 佐賀県では17日、燃料や肥料、飼料価格が値上がりしていることを受け、JA佐賀中央会と佐賀県農政協議会が県に対し、生産者の負担軽減と国の対策が行き届かない部分への対応なども含め、支援を要請した。

 

 岡山県でも3日、JAグループ岡山が県知事に対し、肥料や飼料の高騰などによる現状が「過去に経験したことのない難局」として、原材料高対策とともに、輸入依存度の高い小麦、大豆、飼料用トウモロコシの増産や県産農畜産物の消費拡大の支援などを求めた。

 このほか、沖縄県、千葉県、群馬県などのJA中央会が飼料や肥料価格高騰による経営打撃を訴えるとともに支援を求める要請を各県知事に対しておこなっている。

 

 また、関東の一都六県と山梨、静岡の酪農家による関東生乳販売農業協同組合連合会は13日、乳業メーカーに販売する生乳の価格(飲用乳価)について、1㌔当り15円(10%)の引き上げを求めて9月から交渉をおこなう方針を決めた。乳価は本来、需要と供給のバランスを見ながら乳業メーカーとの交渉で年度当初に決まる。年度途中で値上げ交渉をおこなうのは異例だ。

 

 全国で生産現場支援を求める要請が上がるようになったのは、6月上旬から中旬にかけてのことだ。これまで生産コスト増が続いてきたなかでなんとか耐えてきたが「限界」との声が全国の生産現場に広がっている。そこへ6月末になって配合飼料1万1400円の値上げまで決まり、さらなる負担が農家経営を圧迫することは必至だ。

 

 すでに国や各県・市・町が六月議会であいついで農業現場の支援のための予算を計上している。だが、今後もさらなる負担増が危惧されているなかで日本の農業生産を守り、現場の態勢維持のためにも国や行政による支援拡充が早急に求められている。また、経営支援と合わせて、海外からの輸入頼みとなっている飼料自給体制整備も喫緊の課題となっている。

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