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下品な輩が騒ぐ「議会の品位」 本会議場で「与党も野党も茶番!」と訴えたれいわ・櫛渕議員に与野党が懲罰動議

 れいわ新選組共同代表の櫛渕(くしぶち)万里衆議院議員が18日の衆院本会議で、鈴木俊一財務大臣に対する不信任決議案の採択時、「与党も野党も茶番!」と書かれたプラカードを壇上で掲げたことをめぐり、自民、公明、日本維新、立憲民主、国民民主の与野党が「議院の品位を傷つけた」などとして提出した懲罰動議が25日の本会議で可決された。本会議で「身上弁明」に立った櫛渕議員は、この行動に出た理由について約18分間の演説をおこない、改めて国政の危機的現状を指摘し、「闘う野党」の復活を訴えた【全文別掲】。一連の騒動は、あらゆる法案可決が粛々と進む国会内でおこなわれている、与野党による「茶番」の実態を広く可視化するものとなった。

 

衆院本会議の採決時に壇上でプラカードを掲げるれいわ新選組の櫛渕万里議員(18日)

立憲民主党は誰の代表なの?

 

 国会ではこの間、岸田政府がうち出した防衛予算の5年間で43兆円への膨張と、そのための増税を推進することを含む「安保三文書」関連2法案(防衛財源確保法、防衛産業基盤強化法)、稼働60年以上の老朽原発の運転を可能にすることも盛り込んだGX電源法案、健康保険証を廃してマイナンバーカードに一本化するマイナンバー法改正案など、社会の根幹を揺るがす重要法案が次々と審議入りし、まともな論戦もないまま粛々と衆院可決されてきた。

 

 これに対し、れいわ新選組は12日、「闘わない野党への檄(げき)」とする声明を発し、「与党や太鼓持ちの衛星政党まで合わせれば圧倒的多数となるため、入り口に立ってしまえば(委員会の法案審査などが始まれば)、出口(委員会・本会議での採決)が見えることになる。会期延長まで視野に入れれば、全て法案は成立してしまう」と指摘。「『ちょっとは闘いました』アピールの野党では、悪法の増産は止められない。話にならない」と喝破した。

 

 また「数が足りないなら身体をはって徹底的にあらがい、法案の審議入りを遅らせる。採決を阻止するための戦術を重層的に展開し、国会を不正常化させてでも、悪法の中身をメディアが世間に説明をしなければならない状態を作り出し、法案の廃案を国会の外の世論に対してうったえる。そんな、野党のゲリラ戦法が必要だ。『あきらめ』の姿しか見えない野党に誰が未来を託すのか」とも提起していた。

 

 さらに、防衛財源確保法案の採決を遅らせるためとして、立憲民主と共産が共同提出した財務金融委員長の解任決議案をめぐり、れいわ新選組にも共同提出の誘いがあったさい、解任要求には賛成であることとともに、「委員会採決後には、本会議に向けての議院運営委員会の開催の阻止や、本会議での牛歩にいたるまでの身体をはった戦いをする覚悟があるのか?」と問うたところ、立憲の反応は「この時代に肉弾戦や牛歩は難しい」と否定的であったことを明かし、法案採決を数日遅らせるだけの「お茶を濁すための解任決議案ならば意味がない」として共同提案を断った経緯をのべている。

 

 12日の採決時には、れいわ新選組の大石晃子衆議院議員が、米『タイム』誌に載った岸田首相の顔写真に「NO」「大量の売国棄民法案を廃案にするためにもっと本気で闘う野党の復活を」と大書したプラカードを壇上で掲げた。これに対して、衆院議院運営委員会の理事会は全会一致で大石氏に対して、「秩序を乱す行為」などとして厳重注意している。

 

 れいわ新選組は同声明で、数々の凶悪な法案が「すし詰め状態」で審議されている今国会において、メディアによる報道が乏しく「国民の知る権利が保証されていないことも大きな問題だが、同時に野党が“国民に見える形”で抵抗し、闘わなかったことは深刻な問題である」とし、とくに野党第一党の立憲民主党が防衛産業基盤強化法に賛成したことを批判。唯一メディアで大きく報道された入管法改正案も含め、これらの法案採決は議員個人が意志表示できる「記名投票」ではなく、すべて「起立採決」であったことも指摘し、このような与党の暴挙を易々と開けて通してきた野党側の体たらくを有権者に伝え、奮起を促すための行動であったことを明かしている。

 

自公は登院停止を主張 萎縮効果狙い躍起

 

 18日におこなわれた鈴木財務大臣の不信任決議案もまた、防衛関連法案の採決を認めたうえで野党側がアリバイ的に抵抗のポーズを示すためだけのもので、れいわ新選組の櫛渕議員は、投票時に壇上で一人「与党も野党も茶番!」と書いたプラカードを掲げて抗議するに至った。

 

 国会でのプラカードを使った抗議は、過去にも自民党や民主党の議員らもおこなってきた手法であり、何も目新しいものではないが、本会議壇上で「与党も野党も茶番!」と訴えた今回の櫛渕議員に対する懲罰動議は、自民党では高木毅国対委員長を含め16人、立憲民主党は安住淳国対委員長を含め10人、日本維新の会は遠藤敬国対委員長含め3人、公明党も佐藤茂樹国対委員長含め7人、国民民主党は古川元久国対委員長含め2人が共同で提出。共産党は、櫛渕氏の行為は認められないとしつつ、動議提出には参加しなかった。

 

 懲罰動議を採択した25日の衆院本会議で、提出者を代表して自民党の盛山正仁衆議院議員は、「いやしくも会派の代表たる議員が、与野党の合意のもとに成り立つ本会議の最中に、議長が制止したにもかかわらずパフォーマンスをおこなうことは国会審議全体を冒涜するもの」であり、「無礼極まりない」と非難。「議員は議院の品位を重んじなければならない」とした衆議院規則に違反するものなどとのべ、「議院の品位を傷つけ国民からの信頼をなくす極めて悪質な行為」であり「猛省を促し、国会議員としての自覚を改めて認識するよう強く求めるため厳しい懲罰を課すべきもの」と主張した。

 

 櫛渕氏による「身上弁明」の陳述は、与野党の議員らが終始激しい野次や罵声を浴びせるなかでおこなわれ、懲罰動議も含めて、表向きあたかも対立しているかのように装いながら、国会のあるがままを表現した小規模政党に対しては徒党を組んで襲いかかるという与野党の補完関係を浮き彫りにするものとなった。

 

 動議は賛成多数で可決され、今後は懲罰委員会が具体的な処分について検討することになる。懲罰委員会への付託は16年ぶりで、懲罰は重い順に、除名、一定期間の登院停止、議場での陳謝、戒告の4種類がある。本会議での可決を受けて懲罰委員会は理事懇談会を開催し、与党は「登院停止10日間」相当と主張し、野党は持ち帰った。30日の懲罰委で具体的な処分内容を採決するとしている。

 

 だがプラカード一つに「懲罰だ!」と騒げば騒ぐほど、有権者の視線は、贈賄、セクハラ、虚偽答弁、私物化案件等々、数々の下品なおこないに対して説明責任も果たさず、ケジメもつけず、大騒ぎする側の「品位」の方へと向かわざるを得ない。

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