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マクロン改革に対抗しフランス全土で30万人がデモ 新自由主義に抗い公共求める

業種や利害を超え連帯

 

パリの駅構内で開催された集会(19日)

 4月19日にフランス全土でマクロン改革に反対する大規模なデモがたたかわれた。労組のSOLIDAIRESとCGT(労働総同盟)が中心となって「闘いの結集」を呼びかけ、目下3カ月にわたる波状ストライキに突入しているフランス鉄道(SNCF)をはじめ、公務員、エール・フランスなどのパイロット組合、エネルギー部門、公共放送部門、保育園・小学校教職員、病院・介護ホーム、郵便局などで働く労働者が、業種や個個の利害をこえて連帯し、フランス全土で呼応した。デモ参加者は内務省発表で11万9500人、CGTの発表では約190の決起大会に30万人が参加したとされている。社会党(左派)オランド政府に変わって登場したマクロン政府が、より大胆にグローバリズムや新自由主義を推し進めようとするのに対して、これに対抗する民衆の闘争が熱を帯びている。

 

 パリで開催された19日のデモには、警察庁発表で1万1500人、CGT発表では5万人が参加したとされている。警察官と衝突が起こり、機動隊がデモ隊に催眠ガスなどを発射し、沿道の建物や公共街路施設に多数の被害が生じたことが現地では報道されている。また、デモ参加者1人が負傷し病院に搬送された一方で、警官7人が「軽傷」を負ったとして、デモ参加者2人が暴力行為で尋問を受けたことも明らかになっている。URIF―CGTのバレリー・ルサージュ氏は「警察庁による言語道断の挑発行為」として警察庁を非難する声明を発表した。デモを呼びかけたSOLIDAIRESとCGTは5月1日のメーデーをはじめ、5月にも大規模なデモやストライキを呼びかけている。

 

民営化反対でストライキうつ国鉄労働者

 

パリの学生たちとデモ行進する鉄道労働者(4月13日)

 この間、動きが注目されてきたのはフランス鉄道のストライキだ。マクロン政府が今年2月、EUの鉄道自由化(2020年)にあわせて国鉄民営化、株式会社化と赤字の地方ローカル線や不採算部門の廃止をうち出したのに対抗して、4月から波状的なストがたたかわれている。4月3日のストには国鉄の4労組が参加し、75%の労働者が参加。高速鉄道の85%、地域路線の75%が運休した。

 

 この波状ストは、2日間ストをたたかい、3日間あけてさらに2日間ストをたたかうという戦術をとり、3カ月の間に計18回、36日間に及ぶ実力闘争を計画している。

 

 国鉄改革は既に20年来にわたって歴代のフランス政府が進めてきたもので、施設管理と旅客運行の分割や、物流、通信、運輸関連など650社もの国鉄子会社に分社化するなどしている。マクロン政府が手を付けようとしているのは、これを完全に民営化してしまうことと同時に、フランスの労働運動のなかでも存在感を持ってきた国鉄労働者の隊列を破壊することに向いているといえる。それはイギリスのサッチャー政府が炭鉱労組を破壊して新自由主義改革を推し進めた経験や、日本でも中曽根政府が推し進めた国鉄民営化等等によって、総評や国労が解体されていった歴史とも重なるものがある。

 

 国鉄労働者には「シュミノー」と呼ばれる雇用条件が保障されてきた。終身雇用、年間28日の有給休暇、本人および家族の運賃割引を約束してきたもので、マクロン政府はこれらの権利を「既得権」であるように印象操作し、剥奪しようとしている。それに対して、労組は公共交通機関として運営することの意義を強調し、民営化反対を訴えている。国鉄労働者は70年代には30万人いた。それが現在は14万人台へと半減し、貨物輸送は2003年の参入自由化を受けて、国鉄の取り扱いが40%減少するなどしている。そのもとで450億ユーロ(約5兆9000億円)もの負債を国鉄が抱えているのは、高速鉄道への過剰投資に原因があり、利潤追求のためにローカル線の25%、9000㌔もの廃止を強行しようとしていると労組は批判し、その他の公共部門の切り捨てとも重なる社会的な問題として訴えている。

 

「改革派」の正体暴露

マルセイユ市内のデモ(4月19日)

 昨年の大統領選挙で勝ち残り、大統領に就任したマクロンは、資本主義体制が世界的規模でぐらつき、欧州においてもイギリスのEU離脱にあらわれたような変化が顕在化しているなかで、フランス帝国主義の危機打開のため、20以上の分野での「改革」をうちだした。それら「マクロン改革」と呼ばれるものは、新自由主義による国政全般の再編をさらに強烈に推し進めるもので、労働者、勤労人民への搾取・収奪、抑圧・支配の強化にほかならない。リーマン・ショックや欧州危機まできて犯罪性が明らかとなったグローバリゼーション、新自由主義政策を改めるのではなく、むしろより徹底させることによって、フランスにおいて金融寡頭支配を極限まで強めるものだ。

 

 昨年秋に解雇規制緩和の「労働改革」を強行したのを突破口にして、社会保険制度、失業保険、介護、年金、CSG(一般社会拠出金)、公務員制度、国鉄、教育制度、税制、刑法、兵制など次次に構想を具体化している。これらのねらいは、かつて社会主義陣営の存在もあって独占ブルジョアジーが譲歩を強いられてきた労働者の諸権利や社会保障制度を新自由主義で再編し、資本が好き勝手に労働者を搾り上げ、首切りできるようにすることであり、派遣や臨時、外部委託などの非正規職の拡大をはかることにある。公務員制度改革では12万人の人員削減をうちだしている。CSG(一般社会拠出金)は社会福祉関連支出の財源をまかなうための目的税であり、その拡大をうち出した。税制改革の柱は富裕税の撤廃である。教育改革では、資本に必要な人材育成、選択強化へと舵を切った。

 

 さらに兵制改革では徴兵制の復活を掲げた。フランスでは2001年に徴兵制を廃止していたが、マクロン改革では18歳から21歳の男女に対して約1カ月の兵役義務を課し、毎年約60万人を徴兵して訓練するとしている。マクロンは「強いフランス」をさけび、アフリカや中東をはじめ国際的な「脅威」への対応が必要であり、軍事力が必要だと主張し、軍事力増強を打ち出している。若者への1カ月の兵役義務は予備兵力の確保を狙いにしており、本格的な戦争動員・徴兵への布石として批判を浴びている。同時にそれは20%におよぶ若年層の失業が長期化するなかで、もっとも社会の不条理に対して敏感であろうその年代を強制的に軍隊に囲い込み、統制することを意味している。

 

 マクロンは外交面では「欧州の再建」を叫び、EUの共通予算の創設やEUの防衛力強化などの改革を訴え、フランス主導で欧州統合推進の立て直しをうち出している。

 

 フランスの支配層は、2008年の金融・経済恐慌をへて、政治的にも経済的にも危機を深刻化させてきた。恐慌後の欧州債務危機でもフランスは一つの焦点となった。このなかで同時に労働者、学生らの新自由主義、緊縮財政政策反対のたたかいは、近隣の欧州各国と同様に広がりを見せてきた。パリ同時多発テロを契機にオランド政府は非常事態宣言を発して警察権限を強めたが、それはテロのみならず暴力によって民衆の抵抗を抑え、統治の枠組みを死守するのだという権力側の焦りをあらわした。

 

 共和党、社会党の二大既成政党は力を失い、左派のプログラムによって選ばれたオランド大統領とて労組を壊し、労働法制を壊し、フランス独占ブルジョアジーの代理人にほかならないことが暴露された。この退陣の後に新しい装いをして一躍登場したのがマクロン政府だった。マクロンはロスチャイルド系の銀行幹部出身で、前オランド社会党政府では経済相につき、労働改革を推進していた。それが昨年の大統領選前に辞任し、既成政党の枠外で「改革派」を結集すると称して大統領選挙に立候補した。右、左の使い古された代理人・政治家から、新しい代理人への継投となった。

 

 大統領選挙の予備選挙では二大政党の候補はいずれも敗退し、決戦投票ではEU離脱をかかげる右翼の国民戦線(現国民連合)のルペンとマクロンとの対決となったが、投票ボイコットや白票などが得票の3分の1ほどを占めるなど、いずれの候補をも大統領として信任せず、選挙そのものを拒否する動きが起きたことにも重要な特徴があった。

 

 そして、大統領就任後に鳴り物入りで始まったマクロン改革に対して、前述のフランス鉄道のみならず、各分野で実力闘争が始まっている。公共性の高い事業としてこれまで労働者の身分や福利厚生が保障されてきた業種について、マクロン政府がそれを廃止し、雇用を流動化させて民営資本に委ねようとしているのに対して、業種をこえた連帯と行動が広がっている。3月にも公務員や公共企業の労働者ら約50万人が参加する全国ストがたたかわれ、全土の150カ所以上で集会やデモがおこなわれた。

 

 こうしたなかで、一方では権力による暴力にも拍車がかかっている。教育改革では、これまでバカロレア(試験)を合格すれば学びたい大学で学ぶことができたが、この制度を廃止して、大学入学に選択制度を導入する改革に対して、トゥールーズのジャン・ジョレス大学、モンペリエのポール・ヴァレリー大学、レンヌ第二大学、ナンテール大学などで学生たちが学びの自由を掲げて大学を占拠してきた。ここに機動隊が投入され、学生たちが強制排除される出来事も起きている。

 

大学改革に反対する学生のデモ(19日、マルセイユ)

 さらに、フランス北西部ではノートルダム・デ・ランド(ロワール)の空港新設に対して長年反対運動が続けられてきたが、政府はその地の人口をこえる機動隊員を投入し、反対運動をしている住民の住居を破壊したり、「暴力行為」を理由に拘束する挙に及んでいる。拘束された者のなかには15歳の少年2人も含まれていた。活動家を憲兵が力ずくで排除する際に発砲し、負傷者が出る事件まで起こった。こうした反対運動を排除する際に「プロ市民の仕業」「アクションは合法だが心根がイリーガル(非合法)」「法治国家への回帰」などといった表現が盛んに用いられていることも特徴だ。

 

真当な社会求める動き

 

 世界的にポストキャピタリズム、すなわち資本主義になりかわる次の社会の展望を求める機運が強まっている。強欲資本主義に毒された1%vs99%の社会構造を乗りこえ、人間が人間として生きていける豊かでまっとうな社会をいかにして作り出すか、それは誰の力によって作り出すのかが問われている。EU離脱を主導したイギリスの大衆闘争であれ、スペインやイタリアにおける新しい政治勢力の台頭を支える機運の高まりであれ、大統領を退陣に追い込んだ韓国のロウソクデモ、アメリカ大統領選にあらわれたような労働者、民衆による突き上げ、さらに最近では銃規制を求める高校生たちの行動のように、各国で理由こそ違えど、閉塞し行き詰まった社会に対して、個個の経済的利害や損得をこえた連帯と行動によって、局面を打開しようとする動きが強まっている。そのことが各国で旧来の統治機構を揺さぶり、情勢の変化を促している。フランスで熱を帯びている労働者の闘争も、そのような世界の潮流と切り離しがたく結びついており、新自由主義に抗って「公共」を守り、社会の構成員全体の豊かさを希求する動きとして注目される。

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