(2025年11月7日付掲載)

ニューヨーク市長選に当選したマムダニ氏(中央)と、応援に入ったサンダース㊧、コルテス㊨の各議員(10月26日)
米ニューヨーク市長選が4日投開票を迎え、元ニューヨーク州議会議員ゾーラン・マムダニ氏(34歳)が、過去最年少で当選を果たした。ウォール街を抱える「資本主義の象徴」であり、9・11テロが起きたニューヨークで、「民主社会主義者」を自認するイスラム教徒の候補者が当選を果たしたことは、米国のみならず世界に大きな衝撃を与えている。当初支持率1%台だったマムダニ氏が当選を果たすまでに支持を拡大した背景には、長年、米国政府やニューヨーク州・市のもとで大企業や富裕層優遇政策が進められる一方で、労働者など99%の市民の生活が犠牲にされてきた問題がある。ニューヨークに限らず、米国内では「ノー・キングス(王様はいらない)」運動にみられるように、独裁政治への抗議と政党や人種の枠組みをこえた民主主義をとり戻す世論と行動がかつてなく広がっている。今回の選挙結果はそうした機運を如実に反映するものとなっている。
ニューヨーク市長選は、開票率91%の時点で、マムダニ氏の得票が50・4%の過半数に達した。日本時間の6日夜の時点(93・5%開票、残り14万5000票)の得票は以下の通り。
▼ゾーラン・マムダニ(民主党)…103万6051票(50・4%)
▼アンドリュー・クオモ(無所属)…85万4995票(41・6%)
▼カーティス・スリワ(共和党)…14万6137票(7・1%)
市内にある5つの行政区のうち、ブロンクス地区、ブルックリン地区、マンハッタン地区、クイーンズ地区の4地区でマムダニ氏がトップの得票を得た。
総投票者数は1969年以来で初めて200万人をこえた。また、ニューヨーク市選挙管理委員会によると、期日前投票は9日間で73万5317件の受け付けがあったという。これは、2021年におこなわれた前回のニューヨーク市長選の16万9879件の4倍以上の数字で、過去最多だ。
『AP通信』の有権者調査によると、ニューヨーク市の30歳未満の有権者の7割以上がマムダニ氏に投票した。彼らは市の有権者のなかでは比較的少数であるものの、高齢の有権者に比べて、市長選挙に初めて投票する割合がはるかに高かった。
当選を確実なものとしたマムダニ氏は4日、勝利演説でニューヨーク市民に向け、「この勝利はみなさんの勝利だ。そしてこのキャンペーンを誰にも止められない力へと育て上げた10万人以上のボランティアの皆さんの勝利でもある。皆さんのおかげで、私たちはこの街を、働く人々が再び愛し、暮らせる街にすることができる」と呼びかけた。
そして、これまで億万長者階級によって労働者自身が分断されてきた長い歴史を断ち切り、「私たちは共に、変化の世代を先導する。そして、この勇敢な新たな道筋を、逃げるのではなく受け入れるならば、寡頭政治と権威主義に対し彼らが渇望する宥和政策ではなく、彼らが恐れる力で対抗できる」とのべた【演説全文は別掲】。
マムダニ氏は選挙活動を通じて、バーニー・サンダース上院議員やアレクサンドリア・オカシオ・コルテス下院議員らと同様、「民主社会主義者」を自認してきた。有権者調査では、ニューヨーク市の有権者の約4分の1が民主社会主義者であると回答しており、30歳未満の約4割が同様の回答をしている。
選挙当日、マムダニ陣営には10万人以上の市民ボランティアが所属しており、その多くは市内の大学キャンパスに拠点を置く全米自動車労働組合(UAW)の大規模な支部の組合員だった。マムダニ氏のウェブサイトによると、10万人以上のボランティアたちによって、300万件の戸別訪問、450万件の電話呼びかけが展開された。
また、さまざまな労働組合や市民団体も後援に回ったことも大きな特徴となった。なかでも真っ先に支持した労組は全米自動車労組で、マムダニ氏への支持について「私たちに必要なのは、労働者階級を団結させて寡頭政治に対抗し、民主主義を再建する運動だ」と位置づけている。その他、バーニー・サンダース上院議員(無所属)、アレクサンドリア・オカシオ・コルテス下院議員(民主党)も正式に支持を表明した。10月26日にはマムダニ氏とともに「ニューヨークは売り物ではない」と題する集会を開き、サンダース氏が今年全国各地で展開してきた集会で用いてきたスローガンを踏襲した内容を改めてニューヨーク市長選に向けてアピールした。
サンダース氏は、ニューヨーク市長選の位置づけについて以下のようにコメントしている。
「ニューヨーク市長選は極めて重要だ。ニューヨーク市にとってだけでなく、この国全体で起こっていることに対する非常に深いメッセージになるからだ。政治体制に対する深い嫌悪感があると思う。人々は真の変化を求めており、マムダニ氏が力強く勝利すれば、国中の人々が変化のために闘うよう鼓舞されるだろう」「この選挙の重要性は、ニューヨーク市長になることだけではない。選挙自体が非常に重要だ。米国最大の都市で、労働者階級の側に立つ市長、寡頭政治家に立ち向かう覚悟のある市長が、実際にうまく統治し、労働者階級の人々の生活を改善できることを示すことができれば、労働者階級の人々には自分たちのために立ち上がる代表者や市長を持つことができるという理解が国中に広がるだろう。そして、彼らは旧体制の政治をこえることができる」「この国中の人々は、億万長者階級がますます富を蓄え、民主党と共和党の両党を支配しているのを見ることにうんざりしていると思う。マムダニ氏が示しているのは、草の根運動が彼らに立ち向かい、打ち負かすことができるということだ。人々は寡頭政治家の強欲にうんざりしている。そして、マムダニ氏は、“もうたくさんだ。1%の富裕層ではなく、私たち自身を代表する人物を選出しよう”と人々がいい始めたことを完璧に体現している」。
恫喝に躍起なトランプ
サンダース氏は、今年6月におこなわれた民主党市長選予備選でマムダニ氏を支持していた。この予備選でマムダニ議員が元ニューヨーク州知事アンドリュー・クオモ氏や他の有力な民主党員を破り、政界を驚愕させた。
だが予備選後、寡頭政治家や彼らと連携する有力民主党員や幹部らはマムダニ氏への支持を拒否または消極的な支持しか示さなかった。こうした勢力のバックアップを受ける形で、予備選に敗れたクオモ氏が「無所属」候補として市長選への出馬を決め、『ニューヨーク・タイムズ』は1面で「民主社会主義者を市長にするなど許されない」というキャンペーンをなりふり構わず打った。
対抗馬のクオモ氏は選挙を通じてウォール街の支援を受け、社会主義やイスラム教徒への恐怖や嫌悪を煽るキャンペーンを展開。なかでもトランプ支持派のヘッジファンド王ビル・アックマンは私財100万㌦をクオモ陣営に投入。さらに元ニューヨーク市長のマイケル・ブルームバーグもクオモ当選のために830万㌦を費やしたと報じられている。その他、石油業界のシェブロン社取締役ジョン・ヘスや、共和党の大口献金者で化粧品業界の最高責任者ロン・ローダー、カジノ経営者のスティーブ・ウィンなど、あらゆる大富豪たちが巨額の献金を投入してクオモ陣営をバックアップした。
こうした資金を元手に、攻撃的なネガティブキャンペーンが展開された。そこではマムダニを「社会主義者」と呼び、「ニューヨークをベネズエラやキューバに変える」などのパンフレットが大量に配布された。
トランプ大統領も自身のSNSで「マムダニが当選すればニューヨーク市は経済的にも社会的にも完全な破綻に陥る」「彼は州議会でもまったくの無能で最下位の成績だった」などとコメントし、マムダニ氏が当選し市長に就任すれば、義務付けられた最低限の連邦資金以外を削減することや「州兵の投入」まで言及し、有権者に対する脅しをくり返した。
マムダニが掲げた公約とは

マムダニ氏の当選を喜ぶニューヨーク市民(4日)
マムダニ氏は選挙戦のなかでさまざまな公約を打ち出したが、そのどれもがニューヨーク市で暮らす労働者の生活を支えるためのものであり、1%ではなく99%の市民のための政策を追求したものだ。こうした内容を左派ポピュリズムによる「過激」な政策だと主張する報道もあるが、支持が拡大した背景には、これまでの米国政府およびニューヨーク市の政治が大企業や富裕層を優遇し、庶民への支援や公共部門への予算を大幅に削ってきた経緯がある。こうした政治を正すための数々の政策が金融街ニューヨークを支える労働者や若者たちのなかで大きく支持を拡大した。マムダニ氏の選挙公約は、要旨以下のような内容となっている。
▼家賃の凍結
ニューヨーク市の平均家賃は今年、月3800㌦(約58万円)に達した。ニューヨーク市民の大多数は賃借人で、そのうち200万人以上が「家賃安定化アパート」に暮らしている。家賃安定化アパートとは地方自治体が定めた割合までしか値上げできない住宅であり、借主を急激な家賃値上げから保護し、より安定した生活を提供するためのものだ。これには不当な立ち退きに対する保護が含まれる場合も多く、ニューヨークはこうした住宅がとくに多く整備されている地域でもある。マムダニ氏はこうした住宅について「ニューヨークの労働者にとって経済的安定の基盤となるべきだが、エリック・アダムス市長はあらゆる機会を利用して賃借人を圧迫し、みずからが選んだ家賃ガイドライン委員会の委員らが、安定化アパートの家賃を12・6%も引き上げ、現在も上昇中だ。これは共和党が市役所を率いて以来、最大の値上げだ」と批判している。マムダニ氏は労働者の家族が街を離れる最大の理由が「住宅危機」であるとし、こうした状況を変えるために安定した入居者全員の家賃をただちに凍結し、利用可能なあらゆる資源を活用してニューヨーク市民が必要とする住宅を建設し、家賃を引き下げることを訴えた。
▼高速で運賃無料のバス
マムダニ氏は「公共交通機関は信頼性が高く、安全で、誰もが利用できるものでなければならない」とし、すべての市営バスの運賃を永久に無料化するとともに、優先レーンや専用乗降ゾーンの整備や優先信号機の拡充等を計画している。ニューヨーク市民の五人に一人が値上がりし続ける運賃を支払うのに苦労しており、さらにニューヨーク市のバスは全米でもっとも遅いといわれている。
▼コミュニティ安全局の創設
同局はニューヨーク市全体のメンタルヘルスプログラムと危機対応への投資をおこなう。これには地下鉄100駅への専任支援員の配置、空き商業施設への医療サービスの提供、ニューヨーク市民の移動を支援する交通アンバサダーの増員などが含まれる。また、銃暴力防止プログラムの拡充、ヘイト暴力防止プログラムへの資金を800%増額する。
▼保育料無料化
ニューヨークで働く家族にとって、家賃に次いでもっとも大きな負担が育児だ。6歳未満の子どもを持つニューヨーク市民の転出率は、他のすべての世帯の2倍にのぼる。マムダニ氏は生後六週間から5歳までのニューヨーク市民全員の保育料無償化を訴えている。また、保育士の4分の1が貧困状態にあることから、保育士の賃金を公立学校の教員と同等に引き上げることも公約に掲げている。
▼市営食料品店
食料品価格の高騰が制御不能な状態となるなか、ニューヨーク市民の10人中約9人が、食料品の価格が収入を上回るペースで上昇していると答えている。マムダニ氏は、利益追求ではなく低価格維持に重点を置いた市営食料品店ネットワークの構築を掲げる。市営化によって家賃や固定資産税を支払わずに済むため、経費を削減し、その節約分を消費者に還元するという仕組みだ。卸売価格での仕入れと販売、倉庫と配送の集中化、そして商品や調達に関しては地域住民との連携を強化する。
▼ニューヨークによる、ニューヨークのための住宅
市民の資金を有効活用し、今後10年間で20万戸の新築住宅を建設し、恒久的に手頃な価格で組合が建設し、家賃が安定した住宅の供給を3倍化する。さらに悪質な家主の取り締まりも強化する。賃貸世帯の10世帯に一世帯が昨冬は暖房が不十分だったと報告している。また、4世帯に1世帯が自宅にネズミがいると報告しており、約50万人が劣悪な住宅に住んでいる。マムダニ氏は「すべてのニューヨーカーは、安全で健康的な住まいを持つ権利がある」とし、テナント保護のための法令執行を一元化することで関係機関が連携し、所有者に建物の状態に対する責任を負わせるよう徹底。家主が修繕を拒否した場合、市が修繕をおこない、請求書を送付。家主がテナントへの継続的な配慮を怠った場合、市が介入して物件の管理を徹底し、最悪の場合家主は廃業に追い込まれる。
富裕層や大企業に課税
以上のような政策を実現するための経済政策として、今回の市長選をめぐって大きな注目を集めたのが「大企業とニューヨークの富裕層への課税強化」だ。
マムダニ氏の公約では、法人税率を現在の7・25%からニュージャージー州と同じ11・5%に引き上げる。これにより50億㌦の歳入を確保する。さらにニューヨークでもっとも裕福な上位1%、年収100万㌦(約1・5億円)以上の市民には、所得税率を一律2%引き上げる。現在、ニューヨーク市の所得税率は年収5万㌦でも500万㌦でも実質的に同じだからだ。
マムダニ氏はこの公約について「過去60年間、富裕層の税率は大幅に低下してきたが、ドナルド・トランプほど貧困層から奪い、富裕層に与えようとしてきた人物はいない」と指摘している。
最初のトランプ政権の代表的な政策が企業と富裕層への減税だった。これにより法人税率は35%から21%へと引き下げられ、米国の法人税率は1930年代以来最低水準に達している。この法人税減税だけですでに米国は1兆㌦の損失を被っている。それでもなおトランプ政府は現在、今後10年間で4兆㌦の費用がかかるさらなる減税を望んでいる。こうした減税と引き替えにメディケイドやフードスタンプ、公立学校、公共交通機関などへの支出など数兆㌦の国家予算を削減することもいとわないという姿勢を見せており、こうした政策に対して全米でかつてない批判が強まっている。
マムダニ氏は「ニューヨークもトランプ大統領による公共サービスへの攻撃から逃れることはできない。市の予算は100億㌦、州の予算は900億㌦の連邦政府資金に依存している。これらの財源はすでに攻撃を受けており、災害救援プログラムが最初の標的の一つとなっている。そしてトランプ大統領がニューヨーク市交通局、公立学校、メディケイドに狙いを定めていることは周知の事実だ。簡単にいえば、私たちには反撃し、日々のニューヨーカーを守る以外に選択肢はない」と訴えている。そのためにもっとも収益性の高い企業と、もっとも裕福なニューヨーク市民への増税による政策資金調達を目指している。
マムダニ氏は、ニューヨーク市では、年収5万㌦でも500万㌦でも、課せられる税率は全員同じだと指摘。さらに、州の法人税率は、隣接するニュージャージー州、コネチカット州、マサチューセッツ州、ペンシルベニア州、バーモント州、ロードアイランド州、ニューハンプシャー州よりも低い。1兆3000億㌦の経済規模という全米一の経済力を誇り、公共部門を支える余裕があるにもかかわらず、その経済力や安定性を労働者階級のために活用できていないニューヨークの課題を指摘している。
マムダニ氏は対抗馬であり元知事のクオモ氏が在職時の10年間、企業や億万長者への課税を拒否し、教師や公立病院職員の年金を削減してきたこと、エリック・アダムス現市長の下では税法の執行がさらに悪化してきたことを指摘している。ニューヨーク州の法人税率はクオモ知事による法人税減税の結果、1970年代半ばの12%から1990年代半ばの10%、そして2014年には6・5%まで低下した。現在の最高法人税率は7・25%で近隣のすべての州よりも低い水準となっている。
また、ニューヨーク市の納税者の上位1%(約3万4000世帯)は年間100万㌦以上の収入を得ている。このごくわずかな割合の人々がニューヨーク市住民全体の所得の35%を占める。彼らはトランプ大統領の最初の税制改革法案において、所得税率が39・6%から37%へと引き下げられたことですでに恩恵を受けている。また、この減税は次期連邦予算でも延長される見込みとなっており、マムダニ氏はこの層に対して2%増税を訴えている。それでも元の税率以下の水準だ。
また、ニューヨーク市は米国最大の地方予算を有し、市役所には30万人の常勤職員を雇用しているが、一方で緊縮財政と職員採用の凍結によって約1万5000人分の雇用が空席のままとなっていることも指摘している。
ニューヨーク市の予算は1150億㌦で、その内訳は市資金850億㌦、州資金200億㌦、連邦政府の資金100億㌦で構成されている。トランプが「凍結する」と脅している連邦資金は市の予算のなかでは10%に満たない。
市資金850億㌦は、税金770億㌦と雑収入(罰金、水道料金等)80億㌦で構成されている。市の税収の内訳は以下の通り。
▼固定資産税…350億㌦(45%)
▼個人所得税…180億㌦(23%)
▼売上税…100億㌦(13%)
▼法人税65億㌦、非法人事業税30億㌦(12%)
▼残りはホテル税、住宅ローン税などの雑税
市はおもに固定資産税に依存している。一方で、すべての納税者に対する所得税率は一律3・9%となっており、富裕層に高い税率を課す累進課税にはなっていない。
今回のニューヨーク市長選で「富裕層への課税強化」が大きくとりあげられ、マムダニ氏に批判的な現地報道では「合計34%(290万人)の市民がニューヨーク市からの離脱を検討」などと報じてきた。だが、すでに米国内の他の州や市でも富裕層への増税を実施し、誰もが公平な負担を負うよう改革が進められている。そうした州や市の対応は、国による連邦予算削減に対抗するための自衛策でもある。
マサチューセッツ州では、州議会が州全体に新たな「億万長者税」を制定。マムダニ氏の公約と同じ年収100万㌦以上から課税され、他の税負担に加えて4%の付加税が課せられる。これによって税収は22億㌦に達し、増収分はボストンの公共交通機関への投資に充てられる予定となっている。
米国の首都ワシントンDCでも2021年に高所得者への増税を実施している。この増税は年収25万㌦以上の世帯からが対象となり、100万㌦以上の世帯に対しては限界税率が1・8%上昇した。
全米で転換望む声噴出

マムダニ陣営を支えたボランティアたち
ニューヨーク市長選の投開票と同日、南部バージニア州と東部ニュージャージー州の両知事選も投開票を迎え、どちらも民主党候補が当選。共和党はトランプ大統領就任後初の地方選で3戦全敗となった。
サンダース上院議員が今回のニューヨーク市長選を「ニューヨーク市にとってだけでなく、この国全体で起こっていることに対する非常に深いメッセージになる」と位置づけるように、米国内では億万長者たちによる独裁政治ではなく、市民のための政治をとりもどす世論と運動が全土に拡大しており、今後全米各地で今回のニューヨーク市長選のようなダイナミックな変革が次々に起きてもおかしくないすう勢にある。
10月におこなわれた「ノー・キングス(王様などいらない)」全国行動では、全米50州の2700カ所で抗議集会やデモ行進が展開された。参加者は700万人にのぼり、トランプ政府発足後最大規模にまで膨れあがった。人々は政治的意見の相違をこえ、政党や人種など関係なく、一部の者たちによる独裁政治と腐敗を拒否し、「全米の国民の手に民主主義をとりもどそう」との呼びかけがかつてない規模で浸透している。
こうした運動を主体的に組織しているのが全米の労働組合などで、彼らが一貫して呼びかけ続けているのは「体制側は皆が無力で現状を変えることはできないと信じ込ませようとしているが、それは嘘だ」「彼らにできたのなら私たちにもできる」という訴えだ。
ニューヨーク市長選におけるマムダニ氏の当選は、一部の者たちに奪われ続けて来た歴史を転換し、市民みずからの手で市民のための政治をとりもどす運動によって力強く支えられた。ニューヨークという資本主義の中枢でおこったマムダニ氏の勝利は、米国内のみならず世界中に大きなインパクトを与えるとともに、市民のための政治をとりもどす全世界の運動に大きな力を与えるものとなった。





















