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「国民に対するテロ」と怒り拡大 全米でICEに抗議行動 移民や抗議者を射殺するトランプ米政府

(2026年2月4日付掲載)

「ICEはミネソタから出て行け」「テロをとめろ」などの横断幕を掲げ、数千人がデモ行進(1月30日、米ミネソタ州)

 米国内では1月30日と31日の2日間、トランプ政府の移民税関捜査局(ICE)による不法移民取り締まりに抗議するため、全国的なゼネストと大規模な抗議デモや集会がおこなわれた。「ICEをあらゆる場所から排除しよう 全国行動の日」と題するこのとりくみには、米国全50州で300以上の抗議デモや集会、ストライキがとりくまれ、1000以上の組織、数百万人の市民が参加。「不法移民排除」という名目で市民を弾圧し、世論を分断し、異議を唱える者には国民であっても銃口を向けて射殺をも辞さないという凶暴な捜査は、もはや政府による「都市侵略」と呼ばれ、人種や世代をこえてかつてない怒りが噴出している。

 

ゼネストで「都市侵略」に対抗

 

 全米で怒りの中心となっているのは、トランプ大統領が命じた大規模な移民取り締まり作戦「メトロ・サージ作戦」で、約3000人の捜査官がミネアポリスに派遣されたことへの反発だ。トランプ政府は昨年来、ニューヨークやロサンゼルス、シカゴなど「聖域都市(サンクチュアリシティ)」と呼ばれる都市で移民取り締まりを強化してきたが、そのなかでもミネアポリスでの作戦は過去最大規模となっている。現在、同市内をパトロールしている警察官は戦術装備を身に着け、その数はミネアポリス市警察の五倍の規模となっている。

 

 ICEによる大規模な捜査に対して市民が抗議に立ち上がっているなかで、ミネアポリスでは1月7日と24日に、2人の市民が捜査官らによって射殺される事件が発生している。その他にもICEは、エクアドル移民である父親と5歳の息子まで標的にし、2人が幼稚園から帰宅した自宅前で拘束して収容所送りにした。父親はエクアドルからの亡命申請が保留中となっていたものの、米国からの退去を命じる国外追放命令は出ておらず、不法に滞在している証拠はなかった。そのため2月1日に釈放されており、ICEによる市民拘束がいかに不当で見境いのない「見せしめ」的なものであるかがより浮き彫りとなった。

 

 ミネソタ州ではICEによる市民銃殺事件以後、ミネアポリスを中心に抗議行動が拡大。1月23日には州全域でゼネストがとりくまれ、数十万人が協力して日常の経済活動を一時停止した。700以上の企業が閉鎖され、ミネソタ州民が統一行動で抗議をおこなった。

 

 このゼネストの直後、ミネアポリスではICEによる新たな市民銃殺事件が発生し、全米各地では即座に市民が路上で抗議行動を展開した。そして翌週の1月30日と31日に、全米でストライキと抗議行動がとりくまれており、短期間で相当数の米国市民が街頭でICEによる市民弾圧に抗議し立ち上がっている。

 

 1月29日には、ミネアポリスのジェイコブ・フレイ市長がワシントンDCでおこなわれた全米市長会議で演説した。フレイ市長はICEによる暴力的な市民弾圧に強く抗議するとともに今すぐに捜査を終わらせるよう求めた。そして、全米の市民を守るために全市長が結束すべきだとし、要旨以下のように語った。

 

 ――軍隊と連邦捜査官数千人が大規模に配備されている。アメリカの都市では目下、異議を唱える者を黙らせるために武器が「正義」として使われている。今、私たちの民主主義の基本原則、そして我々の共和国の正当性が問われている。

 

 政府は私たちと違う立場にいる。そして今私たちは非常に重要な戦いの最前線に立っているが、沈黙させられていてはだめだ。今は絶望したり、次は自分たちかもしれないという恐怖に怯えて黙っている時ではない。声を上げなければ、行動を起こさなければ、次に狙われるのは皆さんの街だ。

 

 「メトロ・サージ作戦」は終わらせなければならない。このような行為や包囲はミネアポリスだけにとどまらないし、全国的に止める必要がある。家族が引き裂かれるかもしれないという不安から、学校に行くのも食料品店で食料を買うのもためらうような状況は、安全とはいえない。街をうろつく捜査官集団がいるのも安全とはいえない。このような占拠があれば誰もが不安になるのは当然だ。

 

 捜査官らは、ソマリア人、ラテン系、アジア系かもしれないという理由で個人をターゲットにしているが、その目的は移民問題というよりも、政権と異なる意見や主張を封じることにある。

 

 今こそ私たち全員が一緒に立ち上がらなければならない。アメリカの有権者は、民主党か共和党かにかかわらず、日々の生活の中で民主主義者として、そしてアメリカ国民として何者になれるのかが問われている。その意味で、市長には重要な役割がある。そしてみなさんがそれを実行してくれると信じている。

 

 ミネアポリスの住民たちは今、非常に困難な時期を経験している。だが今後、他の都市も同じ経験をするかもしれない。これはまるで侵略だ。それでも堅固に守り抜かなければならず、我々は後退するわけにはいかない。私たち市長が立ち上がり、この民主主義を支えなければならない――

 

国家公認テロ許すな 市民も企業も抗議へ

 

2026年1月30日、ミネアポリスで「ICE OUT」デモに参加する人々

 1月30日と31日におこなわれた「ICEをあらゆる場所から排除しよう 全国行動の日」では、2日間にわたって全国規模でのゼネストと、統一抗議行動がとりくまれた。米国全50州で300以上の抗議デモや集会がとりくまれ、1000以上の組織、数百万人の市民が参加した。西海岸・カリフォルニアから東海岸・ニューヨークまで、労働者や若者が職場を離れ、学生、生徒や教師は授業を放棄して路上に出て「ICEは出て行け」の全国民的な怒りの声を上げた。メッセージは大学キャンパスや街中に響き渡った。また、ストライキに参加できない企業が寄付で支援するなどの動きも目立った。

 

 もともとアメリカではその調整の難しさから、全米規模でのゼネストが組織されることは稀だといわれている。そのため今回のゼネストは、まさに歴史的な規模で国民の世論を反映するものとなっている。スタンフォード大学のビル・グールド名誉教授は、メディアの取材に対し「全国レベルでこのような抗議活動がおこなわれるのは前例がない」と指摘。「これは非常に異例なことで、大部分は平和的な抗議活動でありながらも、ICEに対して多くの人が憤慨していることを反映している」「ICEは非常に暴力的で、場合によっては殺人行為も見受けられる。このことに対する怒りは、国中に広がっている」とのべている。

 

 ミネアポリスでは1月30日、数万人がICEに対する抗議のデモ行進をおこなった。参加者らは「ICEはミネソタから出て行け」と叫び、抗議の意志を示した。ミネソタ州出身の抗議活動家は、「トランプ大統領は見せしめとして、この件がもっと大きな事態に発展することを望んでいるだろうが、ミネソタ州民はそんなことは望んでいない」「銃に対して暴力で対抗することはできないが、だからこそ私たちは正しい方法で声を上げ、意見を表明することでこの状況を変えていきたい」とのべた。

 

 カリフォルニア州ロサンゼルスのダウンタウンと南カリフォルニア全域では数万人の抗議者が集まり、「仕事なし、学校なし、買い物なし」という全国的な呼びかけに応じ、地域全体の住民がトランプ政府の強引な移民取り締まりに反対の声を上げた。人々は通りを埋め尽くし、近くのグランドパークまで流れ込んだ。多くの市民が「ICEを廃止せよ」「ロサンゼルスからICEは出て行け」「学生を守れ」といったプラカードを掲げた。カリフォルニア大学リバーサイド校の学生は「私はここで、この国中で起こっている国家公認のテロリズムと闘っている」「今こそ労働者階級の人々が立ち上がり、路上で人々が射殺されるような状況に“私たちは耐えられない”と示す時だ」と訴えた。

 

 メイン州では1月30日、ポートランドとその周辺地域にある170以上の企業が、メイン州および全米でのICEによる弾圧に抗議するために休業した。この運動は「サービス産業ストライキ」と呼ばれ、企業やレストラン、バーなどが参加した。参加したコーヒーショップの店主は「最初は数社から始まったとりくみだったが、参加企業がどんどん増えていった。このムーブメントが広がっていくのを見るのは本当にうれしかった」と語った。

 

 メイン州では1月21日から、米国土安全保障省が不法移民に対し「地域社会を恐怖に陥れてきた最悪の犯罪者」というレッテルを張って標的にし、「キャッチ・オブ・ザ・デイ作戦」をおこなってきた。この作戦は州内で約1週間続けられ、約200人の市民が拘束された。

 

 ジャネット・ミルズ州知事はトランプ政府に対して、拘留された人々の身元や拘束の理由について情報を公開するよう求めているが、政府からの返答はないままとなっている。

 

学生や教師も行動 「私たちの未来のために」

 

UCLAの学生たちはブルーイン・プラザに集まり、ICEの移民執行活動に抗議するストライキに参加した(1月30日)

 今回の全国行動では、全米の大学や高校で学生らみずからがICE抗議デモや集会を主催し、地域住民も巻き込んで運動していることが大きな特徴となっている。学生団体などが地域の諸団体と連携して組織をつくり、将来を担う若者たち自身の手で未来を守るために立ち上がっている。

 

 カリフォルニア州のカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)では1月30日、数百人の学生がキャンパス内ICE抗議デモをおこなった。複数の学生団体が計画したもので、主催者たちは「雇用と教育のための資金であり、ICEと国外追放のための資金ではない」と書かれた横断幕を前面に掲げた。参加者たちは「ICEテロを止めろ!」と書かれたプラカードを掲げ、「これは単なる大量追放ではない」「これはコミュニティ全体の抹殺だ」「移民が攻撃されたら、私たちはどうする? 立ち上がれ、反撃せよ」「団結した民衆は決して敗北しない」などと声を上げた。同大学では1月28日にも1000人規模のデモや集会をとりくんでおり、学生による抗議の輪が広がっている。

 

 主催学生の一人は「私たちは沈黙させられ、強制的に隠され、家族から引き離された人々のために声を上げるためにここにいる」「肌の色、労働形態、言語、そして存在を理由に迫害されてきたすべての人々のために、私たちは“合衆国”と呼ばれるこの土地への帰属を主張する」と演説した。

 

 移民が多く暮らす「サンクチュアリシティ」と呼ばれるロサンゼルスは、歴史的に民主党支持が強い地域でもある。そうした地域の市民に対し、トランプ政府は「移民」を口実に弾圧を続けており、抗議する市民を片っ端から拘束・逮捕している。トランプ政府はロサンゼルスにおいて、昨年6月からICEによる移民取り締まりを展開しており、米国土安全保障省によると昨年12月11日時点までのわずか半年間で1万人以上の市民が逮捕されているという。

 

 抗議デモには、近隣の高校からも生徒たちが参加し、壇上で発言した。生徒の一人は「歴史家はよく、“続編は前編よりもひどい”という。だからこそ私たちは、自身の正当な権利のために戦う。これは私たちの責任だ」と力強くのべた。

 

 イリノイ州では1月30日、イリノイ大学とアーバナ高校の1000人以上の学生が授業をボイコットして路上で抗議デモをおこなった。学生たちはイリノイ大学近くの道路3ブロックを封鎖した。

 

 抗議デモの組織化に携わったアーバナ高校の学生自治会副会長を務める女子生徒は「このコミュニティで一人だけでもより安全だと感じたり、この闘いにおける自分の立場を考え直したりする人がいれば、私たちの目標は達成だ」「小さな闘いは本当に重要で、今はできる限り小さな勝利を積み重ねていく必要がある」と訴えた。

 

 生徒たちの運動に付き添った高校教師は、「生徒たちのことを誇らしく思う。アメリカでなぜこんなことが起きているのかほとんど想像もつかないが、まるで時代を逆戻りしているようだ。こんな社会は間違っている。だからこそ、若者たちが私たちの未来のために立ち上がる必要がある。そうでなければ、私たちには未来がない」と語った。

 

 オレゴン州のユージーン市でも「ICEに抗議する若者たち」と題する抗議行動がおこなわれた。同市では、公立小中学校が終日休校となり、若い教員らも行動に参加した。生徒たちを支援するために行動に参加した30歳の教師は「家族が連れ去られるのではないかと心配しているときに、分数の学習について考える余裕はない」とのべた。デモには小さな子どもを連れた母親や父親の姿も目立ち、人々は歩道にチョークでICEへの抗議の言葉を書き連ねた。

 

 この行動にもっとも多く参加していたのが、オレゴン大学の学生たちだ。全国ストライキのために授業を中止することは許可されていないが、多くの教授たちが学生らに連帯し、授業に参加しなくても欠席扱いにはしなかったという。デモに参加した学生は「彼ら(教授たち)が私たちが運動に参加する余地を与え、“何かできることを”と考えてくれていることがうれしい。この運動は私たちの世代が関心を持っていることのあらわれだ。多くの人がこれ(ICEによる取り締まり)が自分たちにはまだ影響がないことだと思っているようだが、実際には大きな影響がある」「私たちが終わらせるまで、この状況は続く。だからこそ私たち全員が戦い続け、抵抗し続けなければならない」とのべた。

 

「ICEは出ていけ」 俳優や歌手も公然批判

 

 歴史的なゼネストや抗議デモが全米に広がるなか、世界的に有名なハリウッド俳優や歌手たちも公の場で「ICEは出て行け」のメッセージに連帯の意志を示すとともに、みずからの言葉で批判の声を上げている。

 

 1日に開催された第68回米グラミー賞の授賞式では、「不法移民」を標的に厳しい取り締まりを続けるICEを批判するアーティストがあいついだ。

 

グラミー賞授賞式でICEを批判するバット・バニー

 年間最優秀アルバム賞を受賞したプエルトリコ出身のラッパー、バッド・バニーは、ステージで「夢を追いかけるために祖国を離れなければならなかったすべての人々にこの賞を捧げたい」とのべ、プエルトリコ移民への連帯感を示した。また、最優秀ラテン・アーバン・アルバム賞受賞後のスピーチでは、不法移民に対する厳しい取り締まりを続けるトランプ政権を痛烈に批判。「神に感謝する前に、“ICE OUT”といわせてもらう。私たちは野蛮人でも、動物でも、エイリアンでもない。人間であり、アメリカ人だ」とのべた。会場の参加者はスタンディングオベーションで彼の訴えを支持した。

 

 また、バッド・バニーは8日に開かれる米ナショナル・フットボールリーグ(NFL)の優勝決定戦スーパーボウルで、前半と後半の間におこなわれるハーフタイムショーのメインアーティストに抜擢されている。全米が注目する最大の音楽イベントでの発信にも注目が集まる。

 

 最優秀楽曲賞を受賞したビリー・アイリッシュは「ICE OUT」のピンバッジを付けて登壇。「今は感謝の気持ちでいっぱいで、正直何をいうべきかわからない。だが、盗まれた土地(アメリカ)において、“不法滞在”している人など誰もいないということだけはいえる。私たちの声、そして人々の存在は本当に大切なものだ」「Fuck ICE」と痛烈に批判した。

 

 ビリー・アイリッシュは、1月7日にレニー・グッド氏がミネアポリスの路上で銃殺された事件後にも、ICEについて「連邦政府の資金援助を受けているテロリスト集団」と呼び、「家族を引き裂き、市民を恐怖に陥れ、そして今や罪のない人々を殺害している」などとSNSに投稿している。

 

 その他、ジャスティン・ビーバーやその妻ヘイリー・ビーバーもICE抗議のバッジを着用した。また、人気歌手サブリナ・カーペンターやハリー・スタイルズらに楽曲を提供しているソングライターのエイミー・アレンも、ICE批判のピンバッジを付けてレッドカーペットを歩き「この国で起きている見るに堪えない事態が多すぎるため、このピンに込められたメッセージは誰にとっても重要だ」と話した。

 

 米音楽業界ではICEに対する抗議を示すアーティストが増えており、ブルース・スプリングスティーンは1月28日、ICEへの抗議を込めた新曲「Streets of Minneapolis(ミネアポリスの街)」を初披露した。また、レディー・ガガは1月29日に日本の東京ドームでおこなわれた公演を一時中断し、ICEの市民弾圧を批判した。

 

 「ICE OUT」のバッジは、キャンペーンを主催する団体の一つである「ワーキング・ファミリーズ・パワー」のディレクターが、ハリウッド関係者らとともに考案した。最初に俳優らが着用したのが1月11日、米国の優れた映画やドラマに贈られる「ゴールデングローブ賞」の授賞式だった。「アベンジャーズ」シリーズ等人気作に多数出演している俳優マーク・ラファロや、歌手のアリアナ・グランデなども着用し、ICEへの抗議の意志を示した。

 

 また、1月24日にプレッティ氏射殺事件が起きた翌日におこなわれたサンダンス映画祭の記者会見では、俳優のオリヴィア・ワイルド、ナタリー・ポートマンらがこのバッジを着けて登壇した。ナタリー・ポートマンは会見で「政府が市民に対しておぞましいことをしている。ICEがこの国でしていることを無視するわけにはいかない」とのべるとともに、全米で抗議を続けている人々について「声を上げてコミュニティを支えようとする素晴らしいアメリカ国民たちに大きな感銘を受けている。本当に素晴らしい」と語った。

 

 オリヴィア・ワイルドも、「私たちは映画の物語の美しさや希望を祝福するためにここにいるが、世界やこの国は今傷ついており、それは恐ろしいことだ」と発言。「人々が殺され、常軌を逸した現状を新しい日常として受け入れ続けることはできない。ICEという信じがたいほど犯罪的な組織の正当性を失わせ、追い出すために何かできるのであれば、今すぐに運動を支援すべきだ」と呼びかけた。

 

 歌手のケイティ・ペリーは、自身のSNSでファンに向けて、「怒りを行動に」とのメッセージを添えて、ICEの残虐なやり方に対抗するために、アメリカ国民が上院議員に、国土安全保障省に、そしてICEへの資金提供につながる法案に反対票を投じるよう求めるための電話番号などを投稿した。

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