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長射程ミサイルの配備やめろ! 熊本市・健軍商店街で近隣住民1200が集会 敵基地攻撃で暮らし奪うな

(2025年11月12日付掲載)

陸上自衛隊健軍駐屯地への長射程ミサイル配備の中止を求め1200人が参加した集会(9日、熊本市東区健軍商店街)

 陸上自衛隊健軍駐屯地(熊本市東区)に、今年度中に12式長射程ミサイルを配備するという防衛省の計画に対し、駐屯地から約1・5㌔ほどの距離にある健軍商店街で9日、「ストップ!長射程ミサイル健軍集会」が開催された。今年に入って突如浮上したこの計画に対し、近隣住民ら約1200人が集結し「ミサイル配備反対」の声を上げた。西部方面隊総監部のある健軍駐屯地は、現在司令部の地下化が進められるなど戦争の準備が粛々と進められている。駐屯地は住宅地のど真ん中にあり、周囲には市民病院や学校も多く存在する。駐屯地の司令部は地下で守られる一方、周辺住民だけが戦禍に巻き込まれるミサイル配備計画に対し、怒りの声が高まっている。

 

 最初に挨拶に立った「ストップ!長射程ミサイル・県民の会」代表の山下雅彦氏は、「私はこの商店街から徒歩5分のところに住んでおり、商店街を通らない日はない。今日はあいにくの雨模様だが、私たちは空から降ってくるのが爆弾やミサイルは嫌だといっている」とのべた。9月15日に県民の会を立ち上げ、集会の準備を進めてきたという。「今日はさまざまな方がリレートークをされるが、まずはこの長射程ミサイルを配備することに反対し、なによりも早く住民への説明会を開けということを防衛省に求めていきたい。そして県や市にも、国の専管事項だからという言い訳を許さず、住民の命と暮らしを守るために自治体の役割を果たしてほしいという思いも訴えたい」と話した。

 

 次に登壇した30代の男性は、2015年の安保法制制定時に「WDW熊本」というグループを立ち上げて反対運動をしていたことを話した。それ以降は「同僚や上司たちに見られるとどう思われるのか」との気持ちからデモ等には参加せずに来たが、長射程ミサイル配備のニュースを見て危機感を持ったという。「僕たちの暮らしは何も良くなっておらず、奨学金を借りて生活に困っている同年代がたくさんいる。それなのにアメリカから武器を買ったり、台湾有事を理由に危機感を煽って防衛費ばかりが上がっている」と訴えた。

 

 市内の女子高校生は「私は自衛という考えは否定しない。暮らしや国民を守るために備える姿勢は責任ある行為だと思う。しかし、その備えが新たな戦争の火種になってしまうのであればそれは本末転倒だと思う」と話し、鹿児島県の知覧特攻平和会館に行って感じたことをのべた。特攻隊員が婚約者に宛てた手紙には「会いたい、話したい無性に」とあり、その婚約者が「私の青春は戦争とともにあった」と綴っていたことを話し、「私は高校生として人並みに学校生活を楽しんできた。戦争とともに青春を過ごすことはとても考えられない。だからこそ私は、今の世代やこれからの世代に同じことがあってほしくないと思う。戦争の悲惨さを学ぶことは大事だが、それを経験する必要はないし、私自身も経験したくない」と訴えた。

 

 地元の保育園で理事長を務める建川美徳氏は、これまで送り出してきた約1900人の卒園生のなかには自衛隊に入隊した子どももいることを語り、「“自衛隊が足りないから”と誘われて、“公務員ならいいかもしれない”と思って入った卒園児もいるし、子どもたちの保護者にも職員の夫にも自衛隊員がいる。しかし誰一人として戦争があると思って自衛隊に行った人はいない。だから私は絶対に長射程ミサイルの配備を許せないし、住民に説明するべきだと訴えている」と怒りを語った。

 

 建川氏は、地元選出の木原稔官房長官とあったさいに、木原氏が「ミサイルは移動式だから健軍駐屯地から撃つわけではないため、攻撃される心配はしなくていい」と住民たちの不安を聞こうともしなかったことを語り、「では、なぜ健軍駐屯地だけ地下壕をつくっているのか。戦争が始まっても自分たちはそこに入ればいいかもしれないが、私たち住民はそのまま攻撃を受ける。そんな馬鹿な話があるか。それなら私たちの分まで地下壕をつくるべきだ。戦争を始めることを決める政治家やその子どもたちは戦争に行かず、犠牲になるのは若者なのだ」と声を上げた。

 

 また、現在保育園に通う子どもたちの親がみな朝7時から夜7時まで必死に働いて子どもを育てていることなどを語り、「本来なら子どもたちのために使われるべき金がミサイルなどに流れ、その企業から自民党は献金を受ける。私はもうすぐ76歳になるが、このままでは死にきれない。生きている限りはこれに反対していくので、頑張りましょう」と呼びかけ、大きな拍手が起こった。

 

熊本で戦争準備するな 市民が次々と発言

 

 地元の小学校のPTA会長を務める女性は、「この地域は自衛隊駐屯地がすぐそこにあることもあり、ご近所、保育園や小学校の保護者にも自衛隊の方がたくさんいる地域で、生活のなかに自衛隊がごく普通にある。そういった所だ。熊本地震のときも大変お世話になったので、命を助ける自衛隊の姿に憧れて自衛隊を目指す人もたくさんいる。しかし、この自衛隊駐屯地に長射程ミサイルが配備されるということになると、戦争の危険が一気に高まり、今までのような呑気な話ではなくなってしまう」と訴えた。

 

 そして「ミサイルは移動できるらしいが、狙われた私たちは移動することができない。引っ越すこともできない。どこにも行くところがないのだ。戦争になれば、命を守りたくて入隊した人たちが誰かの命を奪うことになる。人道的には子どもは殺さないということだが、世界では子どもが避難する多くの施設が破壊され、たくさんの子どもが殺されている。今度は私たちの子どもが危険に晒されることになる」と、母親としての危機感をのべた。

 

 女性は「第二次世界大戦のことを聞いたとき、私は“なぜみんな戦争に反対しなかったのか”と思っていたが、今はそれがわかる。戦争は、戦争をするためだといって近づいてこない。安全のためだ、平和を守るためだといってカモフラージュしているので気がつかないのだ。まさに今がその状況だ。数十年後、子どもたちに“なぜ戦争は嫌だといわなかったのか”といわれないようにはっきりいう。長射程ミサイル配備も軍事力による抑止も絶対に反対だ」と語り、聴衆からは賛同の声がわき起こった。

 

 健軍地区で法律事務所を開設している弁護士は、高市首相が「台湾有事は存立危機事態になり得る」としたことから、台湾有事のために健軍駐屯地から長射程ミサイルが発射される可能性があることを指摘し、「防衛といっておし進められていることが、私たちの命を危険に晒す。安全保障のためといって軍備増強をしていることが、むしろ日本を戦争をする国にし、私たちの命を危険に晒している」とのべた。

 

 そして「日本が国際社会のなかでこれまで名誉ある地位を占めていたのは、『日本はあなたの国を攻撃しません』という安心の供与によって獲得してきた平和外交の成果だったはずだ。他国にその安心の供与ができなくなってしまっては、防衛費増強にひた走るしかなくなってしまう。経済界でも活躍した故品川正治さんが『今や憲法という旗はボロボロになってしまったけれど、その旗竿は国民が握っている。これからは国民の出番だ』といっていたことが思い出される。この健軍の地から憲法の旗を振って、長射程ミサイル配備は許されないという声を上げていきたい」と訴えた。

 

 40年以上健軍地区に住んでいる元教師の男性は、「あの戦争から80年が経ち、私たちの国はあの悲惨な体験を忘れ、同じ過ちをくり返そうとしている。国民が気付かないうちに既成事実を積み重ね、気付いたときにはもう後戻りができない。そのときが近づいている。あの戦争への道を再び歩むのか、否か。今がそのときだ。まずは国に情報を公開することを求め、住民説明会を開催させよう。私たち地域住民に何の説明もなく、国の戦争準備のために、私たちの愛するこの熊本を利用することは絶対に許せない。みなさんとともに熊本から全国へ、そして世界へ平和の声を届けていこう」とのべた。

 

 東日本大震災を機に埼玉県から熊本県へ移住してきた新谷真理氏は、「東日本大震災の2年後、私と子どもは放射能汚染された埼玉県でわけの分からない体調不良で寝込んでいた。子どもの尿を検査に出すと放射能汚染が検出されたため、放射能汚染がされておらず、水と空気が綺麗で食べ物が美味しい熊本市の健軍に子どもと一緒に引っ越してきた」と話した。現在は南阿蘇村に住んでいるが、2年ほど前から自宅の上を超低空で米軍機が飛ぶようになったという。

 

 新谷氏は「ミサイルを配備しても健軍駐屯地は駐屯地であり、基地ではないから攻撃されないと新聞に書いている人もいたが、ではなぜ司令部を地下化しているのか。今でさえ健軍は土地規制法に基づく特別注視区域に指定されている。これを地元の皆さんが黙って受け入れていてはいけないと思う。木原官房長官が“2027年に中国が台湾に侵攻すると公式にいっている”とユーチューブで断言していたが、それをいっているのは中国ではなくアメリカだった。このままでは日本が大国からいろんな武器を提供されて代理戦争をさせられているウクライナと同じようになってしまう。そのようなことにならないように、武力ではない方法で国を豊かにしていってほしいと思う」とのべた。

 

住民を盾に司令部は地下へ 報復攻撃を想定

 

「武力で平和は守れない」などと書かれた横断幕を持ってデモ行進(9日、熊本市)

 米国の退役軍人による平和団体「ベテランズ・フォー・ピース」で活動するケム・ハンター氏とレイチェル・クラーク氏も登壇し、連帯の声を上げた。

 

 ハンター氏は来日して日本各地で軍事化が進められている現実を目の当たりにしたことを話し、「私はかつてのアメリカがアジア各国におこなったことについてみなさんに警鐘を鳴らしたいと思う。ベトナム戦争では300万人の人たちが死んだが、そのほとんどは一般市民だった。どうか私の国、アメリカがみなさんの国を煽動して戦争に持ち込まないように協力をお願いしたい。戦争がもしおこなわれるとすれば、アメリカはみなさんの国を戦争に巻き込む。みなさんの国が攻撃され、国民に多くの死傷者が出る。アジアにおける米国誘導型の戦争にノーを突きつけよう! そしてこのアジアにおける戦争に日本が参入することに対してノーを突きつけよう! 近代戦争において勝者はない。参加する者はすべて敗者だ。だからみなさん、すべての戦争にノーを突きつけよう!」と呼びかけた。

 

 「軍拡を許さない女たちの会」の海北由希子氏は、ハンター氏の呼びかけを受けて「私たちはこのように市民同士で繋がることができる。かつては鬼畜米英といわれていた人たちだが、このように人々同士が集まってみんなで平和の話をすれば戦争なんてすることはない。では戦争を始めようとしているのは誰なのか。政治家であり、あの高市首相だ」と声を上げた。そして官房長官を務める木原稔氏が熊本一区の選出であることから、「木原さんを落とすことができるのは私たち熊本市民だ。他の県の人たちには落とせない。熊本一区頑張ろう」と呼びかけた。

 

 また、「防衛は国の専管事項だから」といって住民の声を無視している県や市に対し、「私たちは自治体に守られなければならない人たちだ。だから私たちは自治体に“私たちの命を守れ”と求めなければならない。国の暴走を止めるのは地方自治体の役割だ。そのことも私たちは県庁に行って訴えよう。県庁の職員も自衛隊の人たちも、誰も戦争をしたい人はいない。私たちはその人たちを味方につけ、みんなで国に対してノーを突きつけていこう」と力強くのべた。

 

 大矢野原演習場の近くに住んでいる男性は、「健軍駐屯地に12式地対艦ミサイルが配備されれば、相手国から攻撃を受ける対象になる。司令部は地下深くに身の安全を確保して、地上にいる住民が危険に晒される。これは自分たちの命を守るたたかいだ。この地で長射程ミサイルの配備を止めることは、全国の配備計画を止めることにも繋がる。秋田と山口にイージス・アショアというミサイルの配備が予定されていたが、住民のたたかいで断念に追い込むことができている。われわれも不可能ではない。ミサイル配備撤回までともに奮闘しよう」と呼びかけた。

 

 健軍商店街の商店主は「一住民として、ひと言だけいいたい。きちんと住民説明会を開催し、われわれがどうしないといけないのか、なぜミサイル配備が必要なのかということを説明していただきたい」と切実な思いを訴えた。

 

 最後に集会宣言【別掲】を採択したあと、全員で健軍駐屯地まで行進し、山下代表が駐屯地の代表者に集会宣言を手渡した。

 

陸上自衛隊健軍駐屯地の担当者に集会宣言文を手渡す山下代表(9日、熊本市)

●● 集会宣言 ●●

 

 本日、私たちは「STOP!長射程ミサイル・県民の会」の呼びかけにこたえ、自衛隊健軍駐屯地にほど近い健軍商店街に集いました。参加者は約1200名でした。

 

 防衛省は去る8月29日、ついに中国の上海にも届く長射程ミサイルを2025年度内に健軍駐屯地に先行配備すると発表しました。

 

 木原稔官房長官(元防衛大臣)は、これを「敵基地攻撃」の手段だとしながらも、「専守防衛」の範囲内、「憲法九条違反ではない」、当該ミサイルは「移動式なので、健軍駐屯地が狙われることは考えにくい」とも言います。

 

 駐屯地の周辺2㌔圏内には、市民病院や住宅・商店のほか、保育園や学校が60カ所近くもあります。一旦ことが起これば、ここが標的となり、地上は火の海となるでしょう。私たち住民は置き去りです。それが空想でないことは、ウクライナやガザ(死者7万人近く―うち子ども2万人超)の市街地の惨状を見れば明らかです。

 

 9月初めの『熊日』(熊本日日新聞)アンケートでは、6割近くの住民が、ミサイル配備を「容認しない」と答えていました。不安と説明会を求める声は、日に日に高まっています。にもかかわらず、木原官房長官は、最近の会見で「住民説明会を実施する予定はない」と述べるのです。

 

 「防衛は国の専管事項」というだけの熊本県や熊本市の“逃げ腰”も問題です。自治体には、市民のいのちと平和な暮らしを守る責任があるのではないでしょうか?

 

 本日のリレートークでは、若者、子どもの保護者、町内会・商店街の役員、市民団体のメンバーなど合わせて14名が、“ミサイルNO!”を訴え、共感の輪がひろがりました。集会終了後は、平和の歌をうたい、メッセージをコールしながら駐屯地に向かいます。

 

 私たちは、長射程ミサイルの健軍駐屯地配備が中止されるまで、声をあげ行動し続けます。まずは、1日も早く住民説明会を開くよう求めます。「武力で平和は築けない」「憲法9条を守り、世界で生かそう」の願いをさらにひろげることを、改めてここに誓います。

 

2025年11月9日

「ストップ!長射程ミサイル・健軍集会」参加者一同

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