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消される『ウクライナ・オン・ファイヤー』

 本紙でも内容を紹介し、ホームページ閲覧者にも動画サイトにアクセスできるようリンク付きで紹介していた、オリバー・ストーン監督が制作にかかわった『ウクライナ・オン・ファイヤー』(日本語字幕付き)がユーチューブから削除され、その他のいくつかの動画サイトからも次々と削除されるなど閲覧不能な状態に追い込まれている。SNSなど所詮はGAFAのてのひらで踊らされているようなものではあるが、ウクライナ危機を捉えるうえで必須ともいえるそもそもの経緯を描いた動画一つ観るにもGoogleの検閲が入り、観ていい動画と観てはいけない動画が検索八分の振るいにかけられているのだ。

 

 言論封殺に怒ったオリバー・ストーン監督は作品の著作権を放棄したのか、動画サイト「rumble(ランブル)」から自由にダウンロードできるようにアップ(3月9日付)したものの、実際にアクセスしてみるとそれは日本語字幕のない英語版であり、労力を割いて日本語字幕をつけてアップした某氏(日本語訳のバージョンアップのご連絡及び動画サイトのご紹介をいただき、ありがとうございました)による日本語字幕動画にアクセスできるサイトは「Odysee」くらいである。

 

 ネットとは、そのようにいとも簡単にアカウント停止したり、封殺することができ、我こそはインフルエンサー(影響力のある配信者)でございと誇る者がいたとして、みなその首根っこはGAFAに握られていることを証明しているようにも思う。著名なユーチューバーとて、GoogleにBAN(アカウント停止)されればお終いで、決して「自由な言論空間」ではないのである。アホみたいな動画はいくらでも投稿できるが、そうでない鋭い政治的言説や動画になると、運営側のさじ加減一つでいくらでも排除できるし、メディアとしての母体を運営側が握っている以上、それは当たり前なのである。


 『ウクライナ・オン・ファイヤー』は2014年の親米派によるクーデターや、それ以前から引き続くウクライナを巡る欧米ロシアの矛盾に迫り、なぜプーチンが今回の軍事行動に及んだのか、その動機やもう一方の側の主張を知り、視野を広げるうえでも観るべきドキュメンタリーであろう。目下、西側メディアによって「ウクライナ可哀想」一色に染め上げられた大洪水のような情報に対して、そもそもの矛盾の根源を捉え、NATOの東方拡大やアメリカが何をしてきたのかについても客観視するうえで、学ぶべき素材を提供していたといえる。ところが、現行のプロパガンダに反する作品であり、欧米にとっては触れてはならぬ急所だったことから封殺されている。ウクライナ危機を巡る深層について触れてはならぬという力が働き、第三者ぶって引っ込んでいるアメリカの支配層が何をしてきたのか暴いてはならぬという強力な意志が示されているのである。


 このドキュメンタリーを観たさい、「これはすぐに消される動画である」と反射神経が働いてダウンロードしていたため、某氏お手製による日本語字幕版の動画データだけは手元のSSDに確保している。おかげで自分や周囲の知り合いが観る分には困らない。制作者が著作権を放棄したというか、自由に誰でも観賞して事の是非を判断することを望み、それはGoogle幹部が決めることではないと主張しているなかで、日本語字幕版は最終的にどのサイトで生き残るのか、GAFAとのいたちごっこの行方にも注目している。


            吉田充春        

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この記事へのコメント

  1. ヘルヴェティア says:

    『ウクライナ・オン・ファイヤー』は、本日4月13日に、
    以下で英語字幕版が見られました。
    https://www.redvoicemedia.com/video/2022/03/ukraine-on-fire-an-oliver-stone-documentary-2016/

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