(2026年4月24日付掲載)

2024年3月末に閉園した下関市立第一幼稚園。下関市が交流型子育て総合支援施設の建設を計画している(下関市貴船町)
本紙は記者座談会「お友達で溢れ返る下関市立大 市長&学長界隈が大賑わい」(4月20日付)で、下関市の前田市政が進めている「交流型子育て総合支援施設」の整備事業が、下関市立大学を中心とした「お友だち案件」の一つであり、市立大学そのものも市長界隈ばかりといわれる看過できない状況になっていることを報じた。下関の幼児保育・教育の現場を長年支えてきた関係者に意見を聞くことも、協議もしないまま進もうとしていた「交流型子育て総合支援施設」の建設(整備事業費約10億円)だが、業界のなかで広がる怒りの声を受け、市議会も問題意識を持って動き始めている。事業をめぐり明らかになる事実や市立大学で起きているお友だち人事について、市民や市役所のなかで「モリカケと同じではないか」「いや、モリとカケの両方を掛け合わせた最悪なケースではないか」と語られ、「これを許していいのか」という声が広がっている。
下関市内で幼児教育・保育にかかわっている人々は怒り心頭だ。17日開催の文教厚生委員会には関係者が連れだって傍聴に訪れており、審議過程における市側の答弁に不信感が広がっているほか、幼稚園や保育園の集まりなどでこの問題が話題になっているという。
ある関係者は、昨年の秋ごろから新施設について気にしていたといい、「ようやくみんなが問題にしたと思った。構想・計画の段階からボタンのかけ違えのようなものがあったと思う。あれだけ税金を使うのであれば、どんな施設をつくるのかということを保育業界だけでなく、発達障害の子どもなどにかかわるさまざまな関係者にも意見を広く聞き、とりまとめていく作業が必要だったのではないかと思う。その役割をしなければならないのが市ではないか」と話した。障害のある子どもとどのようにかかわっていくのか日々悩みながら携わっていることを話し、「だからこそ新施設は情報発信や相談を受けるハブ的な場所になるイメージを持っていた。企業型を否定する意味ではないが、企業はもうからなければ撤退する。私たちはずっと下関で保育をしてきた。歴史が長いから良いということをいっているわけではなく、そのような現場の意見をしっかり聞くということが大事ではないか。3月の委員会で市は“保育関係者から意見を聞いている”というようなことをいっていたが、私たちは新施設について意見を聞かれた覚えはない」と話していた。
別の関係者は、「園長の集まりのときに交流型子育て施設のことをみんなが話題にしていた。これだけ子どもが減ってみんな経営が大変ななかで頑張っているのに、このような施設を作る必要があるのか? とみんないっていた。自分もまったく同感だ。しかもみんなに説明もしないで進めようとしている」と怒りを語っていた。
またある保育関係者は、「市大との関係もびっくりだが、なぜここまで『紬(つむぎ)』にこだわるのかがつながった気がする。私たちが一番いいたいことは、長年、認可を受けてやってきているところを無視して、経験も歴史も情報もないところへ、公正な手続きを経ずに投げようというのであれば到底納得できないということだ。選挙のさいには前田市長を応援したが、口では耳障りのいいことをいいながら陰でこのような動きをするならもう投票しないと周囲と話している」と話していた。
別の保育関係者は、「保育園や幼稚園の業界の話から、市政の根幹を揺るがすような大きな話に結びついていてびっくりしている。交流型子育て施設の進め方はなにかが変だと感じていたが、市大に『紬』の配偶者まで雇われたと知って愕然とした。その他にも市大で“あの人も、この人も”という感じで雇われていて、あまりにも学生や市民のことを馬鹿にしていると思った。市大の教育水準を『紬』その他の水準にしたら絶対にだめだ」と怒りを込めた。
保育関係者のなかには、先の市長選で前田市長を支援した人も少なくない。「支持者への裏切りであり、ショックを受けている。支援をお願いした人にも謝罪しなくてはいけないと思っているほどだ」「もう市長をやめさせないといけない」と話す関係者も多い。
市役所関係者も「最初から『紬』ありきなのは明らかで、今の前田市政は江島の末期によく似ている」と話題にしている。そして保育行政にかかわった経験のある職員は、私立園が理念を持って下関の保育・教育を支えてきたことを知っているだけに、それをないがしろにしたことの重大さを感じており、それだけで市長案件であることが明らかだと指摘している。
ある市役所関係者は、「私立保育園の団体は影響力を持っているし、下関の保育を支えてきたという自負もあると思う。そこに意見を聞かずに市が進めるのはおかしい」といった。
別の市役所関係者は、「公立園の関係者は500人規模だが、対して民間の保育関係者は1000人以上の規模だ。公立に対してはるかに大きく、幼児保育の大部分を支えてもらっている。行政からお願いすることもたくさんある。そういう意味でも保育業界は絶対敵に回してはいけないし、今回そこを敵に回してしまった。自分が民間の保育園の立場なら、“そんなことするんだったら絶対に協力しない”となる。保育連盟がこれほど強いのも自分たちが良質な保育を下関でやってきたという自負があるからだ。理念もしっかり持っている。だからこそ大事にしないといけない。何十年と、そのときどきの担当者が気を使いながらかかわってきたのに、逆に火を点けてしまった。取り返しがつかないのではないか」と話した。
市役所関係者のなかでは、1回目(3月)の文教厚生委員会のときから、市長案件の臭いがするケースであることを感じている人は多かったが、2回目(4月)の委員会で答弁が次々覆されたうえ、市立大学に「紬」代表の夫が教授として採用されたという事実から、「やっぱり…」という受け止めが広がっている。
「自分がこども未来部でなくてよかった」「数年前に異動していてよかった」「今回の異動で行かなくてよかった」と本音を漏らす人も少なくない。かつてこども未来部に所属した経験のある職員たちからは、「以前からざっくりした構想はあったが、それがこんなことになっていたのか…」「複合化はどこから出てきたのか」「こんな事業にはかかわりたくない。今いる職員は本当につらいと思う」と担当する職員たちを心配する声が上がっている。
また、そもそも基本構想・基本計画の策定をプロポーザルではなく一般競争入札でおこなったこと自体に疑問の声も少なくない。「構想や計画にかかる委託は値段で決めるものではない。最低制限価格もないなかで安く入れた業者がとるというのであれば、安かろう悪かろうになってしまう」と指摘されている。実際、「紬」の落札率は59・4%。予定価格のおよそ6割で落札している。そして、応札したもう一者は業者の意向により非公表だ。
部下に責任転嫁の部長 文教厚生委の説明巡り

4月17日におこなわれた下関市議会・文教厚生委員会で説明する執行部
また、市役所やOBのなかでとくに驚かれ、話題になっているのが、こども未来部長が3月と4月の文教厚生委員会で説明が異なったことについて、「担当者の認識不足だった」などと、部下の責任にして片付けたことだ。
部長は4月の委員会の途上、「3月の議会において、不適切な発言や正確さを欠くような発言をしたことについては私の責任として大変申し訳なかったと改めてお詫び申し上げる」と言葉としてはのべているが、「他人事みたいだった」という印象を受けた市役所関係者やOBも少なくない。実際、その直後に「担当者の準備不足・認識不足だった」(公募資料の作成予算1400万円の見積もり先についての質問に対する答弁)などと発言し、この4月に異動でいなくなった当時の担当職員たちの能力不足であるかのように印象づけるものとなった。
部長経験者の市役所OBのあいだでは「部下の認識不足は部長の責任である」ということが当然の認識として共有されている。とくに本件は市長案件であり、説明がつかない部分が多いことが、担当職員の答弁から透けて見えるものだった。
あるOBは「かりに部内で認識の齟齬(そご)や伝達ミスがあったとしても、公式の場で部下の責任にすることは絶対にしてはいけないことだ。平たくいえば部下を売ったということ。これをやられると部下はもう安心して仕事ができなくなる」と指摘した。
市の事業を進めるうえで、実務上失敗はありうる。部下の事実確認が間違っていて、議場で議員に指摘されて頭が真っ白になった経験があるという部長経験者もいるが、「部長のせいで部下が責任を問われる立場になるという逆パターンは聞いたことがない」と多くの経験者が指摘している。
とくに虚偽答弁に値するほどだったのが、昨年度中に「幼保連携型認定こども園」から「認定こども園」へと変更した経緯についての説明で、保育連盟や幼稚園協会と協議したという答弁が、「協議をおこなえていなかった」と真逆になったことだ。委員会の中継を見た職員のあいだでは、「おそらく担当者は、関係団体との協議は知らず、部長以上の幹部たちがしているものと思っていたはずだ」「どう見ても部長が答える場面だったのに、だんまりで答えないからパニックになってあのような答弁になったのではないか」と話題になっている。
「部下の責任」であり、「部長は深くかかわっていない」と思わせるふるまいだったが、同部長と副市長が、「紬」やこの案件にも深くかかわっているといわれるI議員と、議会のたびに議会棟でお茶をしていることを議員たちも知っている。I議員と部長の関係の深さは市役所内では有名なことから、実際には深くかかわってきたのではないかという見方が支配的だ。
「お友達による乗っ取り」 下関市立大巡り
市立大学の現状については、職員間で話題になることも多いようで、「下関の伝統ある大学がもう大学ではなくなってしまった」と語られている。ある職員は「大学の法人化以降、表向き独立した自治をやるかのように見えて、実際は外から都合のいい人員を集め、そこに権力を集めて自治を崩壊させてしまった。市立大学に限らない話だろうが、それでも市立大学はひどすぎる」と話した。
話題にはなるものの、具体的な人間関係や実際になにをしているのか、細かいことは知らなかったので驚いたという人も少なくない。別の職員は「国も同じだが“有識者”といってお友だちを集め、これまで行政がやってきたことを全否定して、“改革”のような形で公金を使って好き放題乗っとるような手法があまりにも目立つ」と指摘した。
ある市民は、「今回の子育て施設のことは、文教厚生委員会が珍しく議会として厳しい対応をしているが、前田市長は“本当はいい施設なのに、こうなったのは担当部所や職員のせいだ”といい出しかねない。しかし最終的には市長の責任だし、開き直るのは筋違いだ」と話し、議会の動向に注目していた。
子育て施設で再度審議 文教厚生委員会
旧市中心部は少子高齢化が進み、歴史ある保育・教育施設も子どもの確保に苦心しているところだ。中心部のエリアには多くの保育・教育施設があり、「交流型子育て総合支援施設」建設予定地の近隣にも複数立地している。新設する子育て施設の必要性、立地、規模なども含めて、相談なしに実行するなどあってはならないことであり、ましてや特定の事業者ありきで進むことなどもってのほかだ。
市議会文教厚生委員会は、4月27日に「交流型子育て総合支援施設」に関して再度、委員会の開催を予定している。幼児保育、教育関係者のなかでは、この日みなで傍聴に集まり、審議を見届けようという機運が高まっている。





















