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中小企業直撃するナフサ危機 国の無策で現場は窮地に 建設、塗装、船舶まで切実な声 倒産件数は過去最多ペース

(2026年6月8日付掲載)

ナフサ不足の煽りを受けて供給が滞る塗料やシンナー

 アメリカのイラン攻撃から3カ月がたち、原油・ナフサ不足の影響が各産業に広がっている。高市政府は2日の中東情勢に関する関係閣僚会議で、ナフサ由来の石油製品について「年度をこえて供給継続は可能」とし、これまでの「年をこえて」という説明からさらに期間を延ばした。ナフサの供給量は代替調達によって従来の85%まで回復し、川中の中間製品の輸入も「大幅に進んだ」(高市首相)といい、塗料やシンナーの原料となるトルエンなどは最大で例年の1・8倍供給するといっている。政府が現場の物資不足を覆い隠し、正確な情報やまともな対策が打ち出されないなかで、4月の倒産件数は5カ月連続で前年同月を上回り、建設業は21・71%増、製造業13・6%増(東京商工リサーチ発表)など、多くの業界で前年同月を上回る規模になっている。混乱と不安の渦中にある現場の実情を聞いた。

 

「足りている」一点張りの高市政府だが…

 

 水産加工業者や鮮魚店では、加工品や魚を入れる発泡スチロールのトレイが大幅に値上がりしている。5月からは3割値上げとなり、なかには7割も値上がりした商品もあるという。燃料代の高騰で出漁を控える漁師も多く、下関では巻き網船団の廃業によって魚が減少し、魚価も高騰している。水産加工や鮮魚販売といった事業は急激に経営が圧迫されている。

 

 包装資材卸業経営者の男性は「政府が“ある”といっているが、戦争開始から3カ月たった現在も流通現場には“ない”のが現実だ。あらゆる商品が値上げ続きで、そのうえいつ入るかもわからない。品物は手に入らないのに価格だけが上がっていくというおかしな現象がずっと続いている」と語る。発泡スチロールのトレイや弁当箱、ビニール袋やナイロンシートなど包装資材はナフサ由来のものばかりだ。すべての商品が値上がりしており、値上げ幅は平均で四割はこえているという。

 

 野菜を入れる「OPP防曇(ぼうどん)袋」は2倍近く値上がりしたうえにほとんど入荷がなくなっているという。この袋は収穫後の野菜から放出される水分で袋の内側が曇らないように防曇剤がコーティングしてあるため、高い透明度が維持されて見栄えが良く、かつ鮮度も保つことができるため農家や道の駅、青果店などで重宝されているという。

 

 男性は「2月ごろに納品した客から“以前の価格で売ってほしい”といわれたが、あまりに値上がりしているためさすがに断った。農家や青果関係の業者からも“どこにもないから”と新規で注文が来るが、品数が少なすぎるので客からの要望に100%応えるのは難しい」と語る。また、「だいたい商品が値上がりするときは、大手のメーカーなどが値上げした後に他の業者も様子を見ながら値上げしていく。だが今回の戦争が始まってからは、どのメーカーも業者もなりふり構わず値上げするようになった。一部便乗値上げもあるかもしれないが、それ以上に原料などの供給が困難になっているのだと思う。問題は今の状況がいつまで続くかだ。いつ入荷するのかと聞かれても“わからない”としかいえない。入荷時期がわからないということは物がないのと同じだ。メーカーからは“出荷制限”の通達が来ているが、実際には作れていないのではないかとも思う。同業者のなかにはメーカーから“在庫がないといってくれ”と頼まれている所もあると聞くが、それだけメーカーも供給体制がひっ迫しているということだと思う」と話していた。

 

 別の包装資材業者は、「完全に止まっているのがテープ類。養生テープ、クラフトテープ、PPテープなど、卸が注文を受け付けない状態が続いている」と話した。店舗でテープ類が大量に出るわけではないので、受注停止の影響は限定的ではあるが、問題は怒濤の値上げだ。「今までの売値が仕入れ値のような状態だ。4月から毎月値上げがあり、なかには3割アップの商品もある。弁当箱も軒並み値上げになっているので、500円弁当などをしていた弁当屋さんは大変だと思う」と話した。

 

 また、「注文は昨年水準」となっており、新規の注文が難しくなっているという。「たとえば、袋が高いからお客さんが小さいサイズに落としたいというのも『新規』になる。今までは注文するとすぐ受け付けてもらえていたのに、“昨年実績にない”という返事が返ってくる。そこからの交渉が一苦労だ。最終的にOKになる場合もあるが、お客さんがほしい物をすぐに届けることができなくなっている」と話した。

 

 ビニール袋なども値上がりや品薄が各地で起きており、全国の自治体では家庭ゴミの指定袋について入手が困難な場合は指定袋以外の袋を使った排出を可能とする臨時措置をとるケースが増えている。山口県でも5日に宇部市が県内で初めて臨時措置を開始している(下関市は12月まで在庫があり、不足する心配はないと説明している)。

 

 包装資材不足は「製品があっても出荷できない」状況が発生する点で影響は幅広い。県内のある印刷業者は、出荷に使うクラフトテープやPPテープを注文しても「注文をキャンセルします」という連絡が届くばかりで困っているところだと話した。インキを溶く溶剤も10缶注文すると、メーカーから「5缶にしてほしい」といわれ、思うように入ってこない。全体として資材は30%値上がりし、溶剤は1・5倍になっている。それでも何とか入荷して印刷をしているが、最終の梱包資材がなければ納品できない。「在庫がなくなったらどうしようという状態だ」と話した。

 

 長距離トラックの排ガス規制対応で必須のアドブルー不足も容器不足が原因で供給が滞っている。アドブルーを導入しているトラックはタンクが空になるとエンジンが始動しなくなるため必要不可欠だ。しかし、中身の尿素はあるのに容器が不足し、中小の運輸業者を中心に手に入らない状況が続いている。

 

包装資材業者ではほぼすべての商品が平均4割値上がりし、入荷未定のものばかりだという。(5日、下関市)

塗料・シンナー類 価格高騰し入荷も制限

 

 建設現場や工場、塗装業など、工業系のあらゆる現場でもっとも不足しているといわれているのがシンナーだ。

 

 山口県内の塗料卸業者は「塗料全般が品薄になっているが、そのなかでもいろいろなことに使われるシンナーはとくに品薄で、メーカーからの入荷も滞っている。卸先の業者はどこも早く手に入れたいと注文をかけてくるが、入荷の見込みがないものは“はい”といえない。イラン戦争が始まってからこの3カ月間で注文に応えられないことが増えた」という。品物は一向に届かないなかで、メーカーからは値上げのFAXばかりが次々と送られてくる状況だといい、なかでもラッカーシンナーは2・5倍にまで値上がりしているという。

 

 ひと言でシンナーといってもさまざまな種類があり、それぞれ用途が異なる。例えば塗装業では、ペンキなどの塗料を薄めて粘度を下げることで塗りやすくしたり、ハケなどの塗装道具の洗浄等に使われる。同じシンナーにも溶解力や乾燥性に違いがあり、さまざまなシンナーを塗料の種類や下地の特性などに合わせて使い分ける必要がある。

 

 「樹脂系シンナー」は、メラミンシンナーや静電用シンナー、アクリルシンナー、ウレタンシンナー、エポキシシンナーなどに分かれている。それぞれの樹脂の性質に合わせてシンナーの成分を変えているため、例えばアクリル樹脂にウレタンシンナーでは相性が悪くうまく溶けない。

 

 金属の焼付塗装に用いるメラミン塗料用のシンナーの場合、温度管理が重要で、気温によって夏用、冬用、春秋用のシンナーを使い分けなければならない。他にも、金属や樹脂、ガラスなどの表面に付着した油分をとり除くための脱脂洗浄用途に使うシンナーもある。このように「万能」なシンナーなどなく、細かく分かれた用途に合わせて現場で使用されている。政府が「足りている」と吹聴する一方で、現場では一向に供給体制が戻っておらず、物はないのに価格だけがどんどん高騰しているのが現実だ。

 

 市内のある鉄工業経営者は、戦争開始直後に急いでホームセンターを回ってシンナーをかき集めたという。鉄骨に塗料を塗るためにはシンナーが必要不可欠だからだ。経営者は「市内のホームセンターだけでなく北九州まで行って買えるだけ買った。先日は卸業者から偶然まとまった量を仕入れることができたので、しばらくの期間は枯渇することはない」という。現時点では材料不足によって仕事が滞り、納期が遅れてしまうほどの影響は出ていないというが、それでも「最初にホームセンターで確保していた分がなければどうなっていたかわからない。ほしいときに手に入らない状況に変わりはなく、今後どうなるかはまだわからない」という。

 

 また、鉄骨に塗る塗料を薄めるシンナー、塗装前に脱脂するためのシンナー、筆洗い用のシンナーなど、それぞれの作業に必要な専用のシンナーがあり、替えがきかない。「鉄骨はあってもシンナー不足により塗装ができずに出荷できないという事業者もあると聞く。時間がたつと錆も出てくるが、錆の上から塗装すると後から塗料が剥がれやすくなるので、また錆落としからやらないといけない。だが錆止めも枯渇している」と話していた。

 

 資材確保のために塗料やシンナーを買い込んで急場を凌いではいるものの、その一方で資金面での不安もあるという。「本来は極力在庫を持たず、注文に対して必要な材料だけ仕入れをおこなう。納品した製品の代金が支払われるまでの間の支出と歳入の差額を少なくしたり、他の複数の仕事の支払いなどのタイミングも見てバランスをとりながら資金繰りを安定化させている。だが今はそんなことはいっていられない。材料が底をついて仕事が止まるのが一番怖いので、卸業者から打診があれば余分だとしても仕入れるようにしている。だから今は支払いばかりが増えている」と話していた。

 

 別の鉄工業者も、ここ数カ月は塗料やシンナーの価格高騰、納期の遅れなどの影響が続いているという。担当者は「塗料やシンナーは、ものによっては1・5~2倍に値上がりしている。工程に支障を来すほどではないものの、シンナーが予定より遅く入ったりということはある。国は“大丈夫”しかいわないが、今後この状況が落ち着くのか、悪化するのかまったくわからないので不安はある」といった。

 

 造船所の仕事は塗料、シンナー等が支給されるが、シンナーは国産から外国産に切り替わったといい、「大手もこれまで通り国産指定で仕事をするのは限界があり、外国産を使わないと供給が間に合わないのだろう」と話していた。

 

テープ類も不足 ホームセンターに殺到

 

ホームセンターのボンド販売コーナー。欠品が続き、個数を制限して販売している(4日、下関市内)

 塗装業者にとってはとくに影響が大きい。市内のある塗装業者は「現場で使う資材はすべてナフサ由来だ。塗料、シンナー、マスキングテープ、養生テープ、ビニールなど、ニュースで問題になっている資材ばかりだ。そのなかでもとくにシンナーは入りにくくなっているし、価格も5割くらい値上がりしている」と話す。使用するシンナーはこれまで一斗缶(18㍑)で仕入れていたが、資材業者から「できるだけみんなに行き渡らせたい」といわれ、現在は4分の1サイズの容器(4・5㍑)に移し替えたものしか手に入らないという。だがその量でさえいつ入るかわからないという。

 

 ある塗装業者は「これまで資材は材料屋のみから仕入れていたが、イラン戦争が始まってからはホームセンターでも仕入れるようになった。こんなことは初めてだ。最近はホームセンターの在庫確認が日課になっているが、シンナーや接着剤、コーキング、マスキングテープなどナフサ由来の資材の棚はどこも品薄だ」という。資材の確保が不透明な状況が続いているため仕事もとりにくいといい、「うちは知り合いの業者が使わない塗料やシンナーを分けてくれたので、そのお陰でなんとか仕事を続けられている。だが同業者のなかには材料が入らないので仕事を止めているところもある。今後は入荷しにくい資材を使う仕事は請けられなくなるだろう。どんどん値上がりしているので、今後の値上げを見越して少し高めに見積もりを出したりもしている。本当なら資材の値上がり分を全額見積もりに反映させたいが、相手との関係もあるので難しい。小さい業者ほど四苦八苦している」と話していた。

 

 市内のホームセンターで聞いてみると、ペイント薄め液やラッカー薄め液、養生テープ・シート、テープとビニールシートが一体化した「布コロナマスカー」、マスキングテープ、ボンド、コーキングなどのナフサ由来の工業用資材が軒並み品薄だという。ほとんどの製品がメーカーに問い合わせても入荷は未定の状態だ。担当者は「いい出せばきりがないくらい何もかも品薄で、値上げ続きだ。2月下旬に戦争が始まってからいろんな商品を値上げしてきたが、6月に入ってからも系列の全店でいっせいにナフサ由来の製品を値上げした。業者さんも資材不足で困っており、よく買いに来るので個数制限をもうけて、できるだけ広く行き渡るように対応しているが、それでも足りず、すぐに棚がガラガラになる」と話していた。

 

 その他の建設業関連業者でも資材不足が深刻だ。ある業者は、とある施設の屋根工事の下請に入っており、図面だけが届いて催促されるが資材が入らないので仕事にならないという。経営者は「塩ビの雨樋が入らず2カ月待ち。トタンはあるがトタンの塗料が入らない。現状、40種類くらいある塗料のうち手に入るのは4~5種類しかない。仕事ができず工期だけが延びて収入はない。だがその間も毎月の固定費や職人の給料など支払いはある。このままでは建設関連業者の倒産は増えると思う。とにかく先が見通せないことが一番不安だ。7月以降の仕事もどうなるかわからないが、高市総理はこのような現場の実情をわかっているのだろうか」と語った。その他、サッシやガラス、網戸なども3、4、5、6月と毎月値上げラッシュとなっており、毎日戦々恐々の状態だという。

 

オイル・油圧作動油 仕事が止まった業者も

 

 ある鉄工所では、旋盤など機械加工に使うカットオイルが4月に受注停止になった。在庫はわずか3週間分しかなく、切れれば仕事ができないので、社長が必死で走り回ったという。同業者から同じオイルを扱っている別業者の紹介を受け、今月から契約を結ぶことができて最悪の事態は回避したものの、元の仕入先の受注停止は今も続いているという。

 

 「インターネットで通常1万円のオイルが9万円で販売されており、さすがに購入を見送ったが、それも完売していた。それだけ手に入らない業者がいるということだ」といった。実際に、取引先が資材不足で仕事ができず、回ってくるはずだった機械加工の仕事がキャンセルになる事例も発生しているという。

 

 船舶にかかわる分野で、入手困難といわれるのが油圧作動油だ。漁船や作業船に搭載しているウィンチやローラーは油圧で動くものが多く、作動油が必須だ。

 

 下関市を拠点にしている沖合底引き船(75㌧級)はメインタンクで約1000㍑(パイプ内などすべてを合計すると約2000㍑)、クレーン船になると約4000㍑入るという。近年は一部オイルをリフレッシュして再利用している(もちろん数十万円かかる)ものの、メンテナンスのさいに補給が必要だ。「船の出港日は決まっているが、このまま入荷しなければ出港できない船が出てくるのではないか」と関係者は懸念している。

 

 ある鉄工関係の事業者は、「アセトンが入らず、仕事が受注できないかもしれないと話していた業者もいた。見込んでいた仕事ができない状況が積み重なると、自分たち中小零細企業は資金ショートを起こしてしまう。今倒産が増えているのもそういうことだ」と話した。今年3月で紙の手形が廃止され、電子記録債権になったことも支払い形態の変化をもたらし、資金繰りの厳しさに拍車をかけているという。インボイス、税金などさまざまな政府の政策が中小零細企業の厳しさを後押ししてきたうえでの資材不足・高騰であることを指摘した。

 

自動車整備関連 エンジンオイルも枯渇

 

 自動車整備工場では、エンジンオイルの入荷未定が続いている。200㍑のドラム缶で仕入れているという事業者は、「いつ入荷するかわからず、入るときには倍の値段になるといわれている。エンジンオイルは1年前に値上げがあり、以前は3万~4万円だったのが七万円になっていた。これが倍になるということは14万円水準だ。そのほかにも塗料がない、シンナーがないという状態で、修理するにも塗装ができないし、その他さまざまなプラスチックの部品が入らず仕事ができない」と話した。

 

 養生テープもなかなか手に入らず、先日インターネットで注文したが、個数制限があり少ししか購入できなかった。「ここのところ全国的に倒産が増加しているし、廃業した知人もいるが、その状況は痛いほどわかる。自分ももう仕事をやめなければいけないのではないかと思う日々だ」と話した。

 

 別の整備工場では、エンジンオイルはなんとか手に入ったが、そのほかのグリスやブレーキオイルなど必要なオイルが手に入らなくなっているという。「入荷したとしても4倍、5倍と値上がりしている。万事がこの状態で、オールシーズンのタイヤも今のところ6月から2000円ほど上がることになっている。どこまで値上がりするかわからない状況で、タイヤの販売会社も大変だと思う」と話した。

 

 この工場では純正のオイルを使い、常連を大事にすることをモットーにして営業し、長年の信頼関係を築いてきた。「少ないオイルを常連さんに回すため、一見さんや行政のまとまった仕事は断らざるを得ない。本当は一見さんの仕事も請けて末永い付き合いにつなげていきたいし、探し回ってうちを訪ねてくる人もいるので応えてあげたいが、請けることができない」と話した。

 

 輸入車の自動車会社もオイル交換の新規受付を停止しており、「在庫がある限りお客さんには提供するが、次に入る保証はない」と説明を受けた人もいる。大手チェーン店は店舗同士で融通しあうなどして回している一方、在庫を抱えることができず、連携店舗もない個人の自動車修理工場がより厳しい状況になっているといわれ、「どこが大丈夫なのか」という声はどの業界でも語られている。

 

「不安煽るな」と業界に圧力 不足の原因ごまかす国

 

ホームセンターのシンナー売場。棚はガラガラだが、傍には経産省の「昨年とほぼ同量の供給を確保している」との通知が貼り出されている(4日、下関市)

 しかし、2日の閣僚会議で政府が示した資料に記載された「産業界の発信」は、3、4月も生産・供給に何ら問題はなく、5月以降も問題がないかのように記述され、政府は「目詰まり箇所を特定して解消した」と主張し続けている。

 

 たとえば石油化学工業協会は、ポリエチレン等について、「3・4月全体として供給は維持。在庫国内需要の3カ月以上の水準を維持」とし、今後の見通しは「中東以外の輸入ナフサは5月は大幅に増加見込み。5月以降も平年並みの供給が見込まれ、引き続き需要を満たすべく安定供給を維持」としている。

 

 日本塗料工業会は、塗料は3月前年同月比111%、4月は同115%、シンナーは3月に同115%供給しており、「5月以降も引き続き平年並み以上の供給を継続」とした。

 

 印刷インキも3、4月は前年同期より供給は多く、5月以降も問題は生じていない(印刷インキ工業会)。塩ビ管・塩ビ継手も3、4月通じて前年を上回る生産量、出荷量を達成したそうだ(塩化ビニル管・継手協会)。キッチン・バス工業会も、ユニットバスの3、4月の出荷台数は前年比で102%、99%と影響は出ておらず、5月以降も「通常時の発注を前提に安定的な製品供給の維持が可能となる見込み」としている。

 

 これらの政府発表を背景に、監督官庁や仕入れ先を通じて「資材不足の状況を外部に発信するな」「不安を煽るな」といわれたという話も各業界で語られており、実情を口に出すことがはばかられる空気も現場に漂っている。ホームセンターの棚に張り出された「経済産業省」からのお願い(4月28日時点)も、「シンナーや塗料、接着剤等については、日本全体で昨年とほぼ同量の供給を確保できています」とし、一時的な需給ひっ迫防止のために通常量の購入を要請する内容となっている。

 

 政府は「供給に問題はなく目詰まりが原因」と一貫して主張しているが、いうまでもなく原因は原油・ナフサ輸入の激減だ。3~5月のペルシャ湾岸諸国からの原油輸入量は前年同期より四七%減少(『日経新聞』5月30日付)。ナフサの4月の輸入実績は、総量で前年比55%と約半分、中東産は前年から約80%減となっている。ナフサも約6割を輸入に依存し、その7割を中東が占めてきただけに、代替調達が少し進んだだけで不足が解消するわけがない。

 

 米国産原油の輸入を拡大しているとするが、その米国の戦略石油備蓄在庫も低水準に落ち込んでいる。ホルムズ海峡を通過できるよう外交交渉に力を振り向けることが危機回避の近道であることはだれの目にも明らかだ。

 

「仕事がない」の声 資材値上がりも追討ち

 

 確かに、下関市では「資材不足になるほど仕事がない」ため問題が表面化していない業界もある。水回りの工事に携わる事業者は、「トイレなども大手優先で配分され、零細業者には少ししか配分されない問題はある。一方で物価高の影響もあり、お客さんが壊れた配管にビニールテープを巻いてしのいだり、突っ張り棒で対処するなど節約が顕著で、物が入らない以上に仕事がない状況にある」といった。

 

 資材の値上がりはすさまじく、9年前に1万4000円だった部品が今は2万4000円。洗面台などのシングルレバーは3000円だったものが1万円をこえている。トイレになると10万~50万円の世界なので、出費できない消費者も増えてきた。当然、零細業者は高額な在庫を抱えることはできず、最近は卸会社ですら在庫を抱えなくなっているという。「倒産のニュースが増えているが、うちのような中小零細企業が今からどんどんなくなっていくのではないか」と話した。

 

 4~6月は閑散期だが今年は輪をかけて仕事がないという業界や、住宅着工件数が減少して仕事がないと話す建築業者もある。しかしそれは「資材が不足していない」わけではない。

 

 業界団体を巻き込んで現場の深刻さを覆い隠し、いつ、なにが、どの国から、どのくらい調達でき、現在どの程度不足しているのか―という正確な情報も出されない状況に対し、「政府のいうことは信用できない」という声が広がっている。

 

 ある食品加工業者の社長は「政府がナフサについて“足りている”“大丈夫だ”といい続けているが、目詰まりや一部の買い占めだけでここまで業界全体の供給が滞るとは考えられない。令和の米騒動と同じように、現場が悪いといって政府は結局何もしないという考えが透けて見える。こうなってくると、資材を持っている者が強くなる。つまり大手だ。大手メーカーは強気で値上げするし、卸業者も中小零細業者からの新規の注文は受け付けなくなっている」と指摘する。

 

 さらに、中小企業ほど急激な変化に対応することが困難だといい、「あらゆる資材が値上がりするなかで生産コストは増え続けている。大手は多少シェアを失ってでも、値上げして利益を回収する手法をとれる。だが中小零細業者は大手ほど楽に価格転嫁できない。目先の利益よりもシェアを失うことの方がダメージが大きいため、生産費が増えて赤字であってもギリギリまで販売価格を抑え、苦しい経営を続けるしかない。現状、うちも三月からの仕入れ代高騰分を価格に反映できておらず、同業者の動向をうかがいながら赤字を積み上げている状態だ。だから戦争など急激な世の中の変化に対して中小ほど対応が困難になり、廃業や倒産のリスクが高くなる。このままの状態をいつまでも放置していたら小さい業者ほど先に苦しくなっていく」と危機感を語った。

 

 包装資材業者の男性は、「“目詰まりの原因を特定した”などといっているが、ではだれが? と思う。いうだけならだれでもできる。政府は国民から見えない架空の“だれか”のせいにして、“本当は足りている”といいたいのだろうが、現場の資材不足、価格高騰は何一つ解決していない。米騒動と一緒だ。中東の戦争の影響に巻き込まれて世界中が大変な状況にあるなかで、この窮地に自国の政府のいうことが何一つ信用できない、何の統率もとれずに国民だけが右往左往している。日本という国そのものがこんな状態でいいのかと思う」と話した。

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