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湾岸諸国が米国の身代わりに被弾 報復攻撃の的になった米軍基地 米国・イスラエルのイラン攻撃激化で

(2026年3月4日付掲載)

イランの報復攻撃を受けたバーレーンの米第5艦隊本拠地。イラン外務省は同地域にある米軍の資産すべてを攻撃すると警告していた(2月28日)

 米国とイスラエルが2月28日に開始したイランへの大規模攻撃により、イランでは最高指導者ハメネイ師が殺害され、現時点で555人(イラン赤新月社発表)の犠牲者が出るなど被害が広がっている。無通告の先制攻撃を受けたイランは、事前の宣言通りイスラエル国内、そして中東・湾岸諸国に駐留する27カ所の米軍基地への報復攻撃を断続的におこなっている。米軍が駐留する湾岸諸国は事前にイラン攻撃のために米軍基地や領域を使用させないと宣言して米国の暴発を牽制してきたが、その警告を無視してトランプが先制攻撃に踏み切り、各国の米軍基地は安全保障どころか報復攻撃誘導装置となった。国内に抱える多数の米軍基地を安全保障の根幹に位置づける日本にとって極めて教訓的な事態といえる。

 

米国の単独行動によって崩れる同盟国の安全保障

 

 米国とイスラエルの大規模攻撃により最高指導者ハメネイ師をはじめとする政府幹部を殺害されたイランは、予告通りイスラエルの主要都市テルアビブの市街地や、湾岸諸国に点在する米軍基地への報復攻撃を開始した。イランが保有する弾道ミサイルの射程距離は約1000~3000㌔㍍であり、イスラエルには届くが1万㌔離れた米国本土には届かない。湾岸の同盟国が米国の身代わりとなり、とくにイランに最も近いバーレーン、カタール、アラブ首長国連邦(UAE)が報復攻撃の矢面に立たされている。

 

 中東・湾岸地域には、イラク、ヨルダン、クウェート、サウジアラビア、カタール、バーレーン、UAE、オマーン、トルコ、インド洋のディエゴガルシア島(英国領)などに米軍基地がある。

 

 カタールのドーハ郊外には米中央軍が前方司令部を置くアル・ウデイド空軍基地(中東最大の米軍基地)があり、約1万人の兵士を収容。バーレーンには、ペルシャ湾、紅海、アラビア海、インド洋の一部を含む海域の監視を担当する米海軍第5艦隊の司令部がある。

 

 UAEの首都アブダビ南方にあるアル・ダフラ空軍基地は米軍が偵察活動をおこなう拠点であり、ドバイのジェベル・アリ港は正式な軍事基地ではないが、この地域における米海軍の最大の寄港地となっている。

 

 これらの国々(湾岸協力会議・GCC)は、イラン攻撃のために自国内の米軍基地を使用することを拒否する声明を出していたが、米国はペルシャ湾に空母打撃群を送るとともに、米中央軍の指揮の下、カタールのアル・ウデイド基地、UAEのアル・ダフラ基地、クウェートのアリサレム基地などからもイラン攻撃の爆撃機を出撃させた。

 

 現時点では、サウジアラビア、バーレーン、クウェート、UAE、ヨルダンなどの米軍基地を置く8カ国がイランのミサイルやドローン攻撃の標的となり、UAEでは民間人1人が死亡し、11人が負傷する人的被害が発生。カタールでは内務省発表で16人が負傷した。UAEのドバイ国際空港やアブダビのザイード国際空港も被弾して運航停止や避難に追い込まれ、カタールの首都ドーハなどの湾岸主要国の空港も一時閉鎖や飛行制限を余儀なくされた。

 

 被害は米軍基地にとどまらず、サウジアラビアのラスタヌラ製油所はドローン攻撃を受け閉鎖。クウェートの国際空港やドバイの人工島などでも負傷者が出た。米第5艦隊の拠点があるバーレーンでは基地に隣接する工業地帯で火災が発生し、死者が出た。ドバイ・マリーナやタワーマンション、高級ホテルなども損傷しており、米国務省は「深刻な安全上のリスクがある」として米国民にサウジアラビアやカタールを含む中東十数カ国から即時退去するよう警告を出している。

 

 湾岸国の一員として米国とイランの戦争回避に向けた協議で中心的役割を果たしてきたオマーンのバドル・アル・ブサイディ外相は2月28日、イランへの攻撃に「失望している。活発で真剣な交渉が再び台無しにされた」と即座に怒りを表明し、「米国はイスラエルに騙されて戦争に駆り出された」と批判。「米国の利益にも世界平和の大義にもまったくそぐわない。これから苦しむ罪のない人々のために祈るほかない。米国にはこれ以上深みにはまらないよう強く求める。これはあなた方の戦争ではない」と早期収束を求めた。

 

 湾岸諸国は迎撃システムを備えているものの、米国などからの経済制裁の下でイランは自爆型ドローンの製造基盤を拡大し、10万機以上のドローンを保有しているとされる。1カ月で100~500機の製造能力を持つとされ、製造コスト1機当り500万円のドローンに対して、米国側が同盟国に提供する迎撃ミサイルは1発当り6億3000万円と高額で、1カ月に10発程度しか製造できない。すでに報道では「UAEは、何年もかけて構築した迎撃ミサイルの備蓄のかなりの部分を使い果たした」(専門家)、「数日間で数年間分の生産量を撃ち尽くした」(湾岸諸国当局者)との指摘とともに、「ある湾岸諸国は枯渇した(防衛)物資の補充について米国当局に要請したが無視された」(『ミドル・イースト・アイ』)との情報も流れるなど、矢面に立たされた同盟国で長期化への懸念が広がっている。

 

 これらの国の頭越しにトランプは「報復攻撃による被害は最小限に抑えている」として攻撃継続(約4週間)を主張。イラン側は「現在までに米軍560人が死傷」と発表しているが、米軍は「虚偽の心理戦」として否定し、3日時点で米軍の死者は6人、重傷者は52人としている。

 

 近隣国の安全を考慮することもなく、イランに無条件降伏を求めるトランプ米政府の見境のない攻撃が続く限り、イランの報復攻撃も徐々にエスカレートせざるを得ず、米国と同盟関係を結ぶ近隣諸国の安全は、もはや攻撃を受けている側であるイランの「理性」に依存せざるを得ない状態にある。

 

 米軍の犠牲者が増加すると米国内で撤退論が強まるため、安全地帯から空爆するだけで地上軍を派遣せず、近隣の同盟国を報復攻撃の矢面に立たせるという米国の戦略は、中東だけでなく日本を含め世界中に展開する米軍基地の本質を改めて突きつけている。

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