いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

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1%が決めた自民党総裁

 所詮は自民党総裁選。99%の国民にとってははじめから選ぶ権利などなく、また関係もなく、悲憤慷慨して見守るほどの関心もない話である。自民党という小さなコップのなかでくり広げられた覇権争奪に過ぎないのだ。この総裁選に参加したのは、国会議員294人のほかに全国の党員(党員投票にエントリーできる人々)およそ91万人であり、全有権者の1%にほかならない。この1%のなかの多数派が担ぎ上げた人物が次の総理大臣になるということで、連日メディアを動員して世論を盛り上げようとしたのだった。


 ただ、巷の空気は冷め切っていたのが実態だろう。我こそは次の総裁にふさわしいのだと出てきた5人の顔ぶれを見て、いったいどう盛り上がれというのだろうか? 誰がなっても一緒じゃないか! という空気が支配的なようにも思えた。笛吹けど踊らず。世間はいたって平常運行だった。ニュースで流れてくるのは、やれ奈良の鹿がどうとか、ステマやカンペがどうとか、英語力がどうとか、しまいには子ども食堂に食料の差し入れをするならまだしも、出向いて食事を食べさせてもらい(子どもに食べさせる側だろうが!)誕生日祝いまでさせる者までいて、バカではあるまいか? と思いながら、政治のどうしようもない劣化状態をながめていた。

 

 この自民党総裁選でいかに大立ち回りをしようと、結局のところ少数与党という状況には変わりない。客観的に見るなら今回の総裁選は「ばば抜き」ならぬ「ばば引き」であり、弱体化して単独与党を維持できなくなった自民党のなかで誰が貧乏くじを引くのかを争ったようなものである。政権与党がイケイケで好き勝手ができるような政権基盤ではなく、第二自民党や第三自民党のような亜流たち、あるいはインチキな野党風情を率いて世間を欺瞞しつつ、当面の政権運営をしていくほかないのが現実であろう。つまり、見方によっては「もっとも間が悪いヤツ」選びでもあった。従って、総裁選の勢いに乗って解散総選挙? やれるものならやってみればいいのである。誰がどう見ても世論全般としては高市早苗フィーバーなどきていないし、1%のなかの0・5%にも満たない部分がコップのなかの天下を奪還したというだけである。それをあたかも国民的人気があるかのようにすり替えるのは、まことにおこがましい話なのである。


 追い込まれていたはずの右派が全力で担ぎ上げた高市早苗の総裁就任。いわゆる岩盤保守層といわれる安倍晋三親衛隊界隈の組織票が参政党に雪崩を打った夏の参院選で、その惨敗という結果をもって石破茂が揺さぶりをかけられて引きずり下ろされ、なんのマッチポンプなのか自民党凋落のそもそもの原因を作り出した統一教会とズブズブだった連中や裏金問題の当事者たち、すなわち自民党清和会の残党どもが高市早苗を押し出して自民党トップの座を奪い返したのだから、それはゾンビが復活したようなものである。ただ、これで裏金問題や統一教会問題には蓋をして、保守強硬派が腕力でもってオラオラな支配をするといっても、土台ムリな話でもある。振り子が戻って安倍晋三路線に先祖返りといっても、その振り子はまた戻る――の繰り返しであり、自民党そのものは今日に至るも凋落の過程なのである。

 

 SNSでは懲りずに情報戦略を駆使した「熱狂」や「右傾化」が煽られ、自民党総裁選でも奈良の鹿がどうとかやっていた。そうして外国人の取り締まりを強化するとか、勇ましい国家観を振りかざしても自民党は自民党で、いつも大企業や資本家の番頭であり、アメリカの植民地と化したこの国のなかで、日本人ファーストではなくアメリカファーストばかりしてきた連中である。奈良の鹿をひっぱたくといって中国人に怒りながら、一方ではアメリカには何をされてもすり寄り、米兵の犯罪には目をつむり、主権を蹂躙されてもいとわないという状態で戦後からこの方やってきて80年にもなる。

 

 総裁選の結果は「右派復権」である。しかし、こうした右のウイングを装った親米売国勢力を「右派」とか「右翼」などと呼称するのは本来、反米愛国を鮮明に打ち出している本職に対して失礼な話でもあり、「右派もどき」「なんちゃって右翼」くらいの呼び名が丁度良いように思う。反日カルトに犯されながら、「真のお母様」(本国の韓国で捜査機関から追い込まれている最中)に小遣いをもらうために群がっていた清和会界隈が一方でオラついて「右派」を標榜するなど、ウケ狙いなのかと思うような、笑っちゃう話なのである。そんな彼らが貧乏くじとわかっていながら総理総裁ポストに飛びついたのは、むしろ追い込まれた挙げ句の焦りにも見えて仕方がない光景である。

 

 武蔵坊五郎             

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