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政治を国民の手に取り戻せ! れいわ新選組・山本太郎のおしゃべり会 自民衰退のなか問われる選択 ツアーは北陸・中国地方へ

 (2025年9月19日付掲載)

山本太郎とおしゃべり会in三重県・津市(9月15日)

 山本太郎代表によるおしゃべり会の全国ツアーを9月から開始したれいわ新選組は、北海道内7カ所を皮切りに岐阜、愛知、三重、静岡県内で有権者との対話を重ね、今後は近畿や中国地方へと歩みを進める【一覧表参照】。石破首相の退陣表明と自民党総裁選がメディアを賑わせる一方、野党多数となった国会では選挙で約束したはずの減税議論も進まず、与党だけでなく野党の茶番に対する怨嗟の声が高まっている。各地のおしゃべり会では、ポスト自民党の装いで躍進した新興勢力の背景を詳しく分析するとともに、自民一強が崩れ、政局が流動化するなかで、有権者とともに国の進路について論議を深めていく必要性が語り合われた。山本代表と参加者との対話の一部を紹介する。

 

おしゃべり会で語る山本太郎代表(9月14日、岐阜県・多治見市)

 質問(帯広市) 13歳だ。先の参院選において、経済政策は似たような消費税廃止などを訴えているが、移民や外国人労働者については真逆のスタンスをとる参政党が大躍進し、れいわは3議席と伸び悩んだ。原因をどう考えているか?

 

 山本 たしかに参政党は参院選で14議席とった。だから参政党の良い部分を真似しようという話もあるが、それはなかなか難しい。全国に支部を作ってそれぞれの地域で活動されている。それ自体はすばらしいことで、将来的にそれは絶対に必要になってくると思う。でもそれは急にできることではないし、周到な準備が必要になる。

 

 私たちは全員が組織運営などしたことがない素人だ。宗教団体などの手を借りずに自分たちで拡大していくことを選んでいるので、党勢拡大の仕方にも波はあると思う。だが、国会の中では死んでいた消費税廃止の議論をもう一度蒸し返して、多くの政党が消費税減税というところまで押し上げていった。一方で、選挙では消費税減税といいながら、実際には国会でそのような動きをまったくしていない政党もある。選挙用のニンジンとして訴えていたわけだ。そのようなグループとあまり違いがないように見えてしまうという現象もあったのかもしれない。だから有権者のみなさんには、誰が本当にその政策を実現できるのか、政策の信憑性についても考えを深めていただく必要があると思う。

 

 もちろん大政党がやってきた組織化を私たちはおこなえていないし、選挙で広がりに欠けたという点については反省すべきところがあるが、一朝一夕にできることとできないことがある。

 

 たとえば宗教団体の力を借りる政党は、公明党以外にもある。そのような宗教組織の支部は全国にどれくらいあるかご存じだろうか。独自に一から全国的な組織を作っていくのと、途中から宗教と合体しながらその力を利用して拡大していくのとでは雲泥の差がある。

 

 なんとなく選んだ「幸福の科学」「旧統一教会」「キリストの幕屋」という宗教団体の地域拠点数を見てみたい。

 

 幸福の科学の地域拠点数は、全国に465ある。宿泊できる拠点「精舎」、活動拠点である「支部」「支部精舎」の合計だ。場所を借りるには、使用料やそこで活動する責任者などの人間のコストもかかるわけだから、このような元々ある資産を使えるならアドバンテージは大きい。北海道だけでも21支部がある。

 

 旧統一教会の支部は、全国に279(世界平和統一家庭連合として展開している支部のみ)。北海道だけで12支部。また、旧統一教会には、名前が違えど関連団体がさまざまにある。世界平和家庭連合、世界平和芸術人連合、世界平和宗教連合、天宙平和連合、特定非営利活動法人・日韓トンネル研究会、世界平和女性連合……紹介しきれないほどの数だ。そのなかには医療法人もあれば、訪問介護ステーション、総合病院、鍼灸マッサージ治療院、財団、株式会社などさまざまな企業体もある。ビジネスまで展開する巨大グループだ。

 

 キリストの幕屋は、全国に69の支部がある。日曜集会の拠点数だ。

 

 これらから組織的支援を受ければ組織化はスムーズに進むだろう。一方、ペンペン草も生えていないところから、どこともコラボすることなく、独力で歩いてきたのがれいわ新選組だ。いろんなところとコラボすればちょっとは楽になるかもしれない。でも、私たちはそれはしない。それをすれば、自分たちの政策や方向性がやはりコントロールされてしまうからだ。

 

組織があれば強いか? 草の根の力と比較

 

 山本 だから私たちは皆さんに「一緒に変えていきましょう」という。「私たちが変える! ついてきて下さい。私たちの後ろに!」とはいわない。それでは世の中を変えることなど到底無理だからだ。世の中を変えるというとき、どうやって変えるかといえば、選挙を通じて政治の主導権を握るしかない。でも、選挙のやり方は、ごく一部の人たちだけに閉じ込められている。つまり大企業、組合、宗教団体など、政治家や政党を応援し慣れている人たちにしか選挙のノウハウはない。

 

 これでは一般の人たちが、今の世の中に納得いかないからひっくり返したいと思ってもやりようがない。選挙前からどんな準備があり、選挙中、選挙後までのとりくみに関する知識なんて誰も知らない。教えてもくれない。だから、れいわと一緒になってそのノウハウを覚えてもらう。チラシ配布、電話がけ、ポスター貼り……まず自分が体験して、他の人にも教えられる人になってもらう。このような株分けをしていかなければ世直しは始まらない。

 

 一方で、組織があれば強いのか? という点も冷静に事実を見る必要がある。全国にいろんな支部を持ち、組織として大きな政党はある。たとえば共産党や公明党だ。

 

 その両党の地方組織体制や地方議員数を見ると、日本共産党の党員数は約25万人(令和6年12月)、地方議員は2282人(同)。

 

 公明党は、党員45万人(令和6年)、地方議員は2855人(同)だ。両党とも全都道府県にそれぞれ47の県委員会や県本部を置き、そこから細分化されて各支部がある。

 

 れいわ新選組は、党員ではなく「オーナー」という形だが、6590人(令和7年8月現在)。地方議員は60人だ。圧倒的な力の差がある。

 

 そのうえで今年7月の参院選での比例得票数を見ると、公明党は521万票、共産党は286万票、れいわは388万票。地方組織の少ないれいわの得票の方が共産党を上回っているし、前回よりも票を伸ばしている。公明党も組織の高齢化などの煽りを受けて得票を減らし続けている。だから「組織がないから負ける」「組織がないから躍進しない」というのは、一つの考え方としてはあるかもしれないが、実態を見ると多くの組織と地方議員を抱えていても衰退している政党はある。一気に躍進した政党を見て「あの政党のやり方を真似るべきだ」と流されるのは話が違う。個別に見なければいけない。

 

 今回は、宗教とマルチビジネスというものが一体化していきながら、マスコミの追い風を受けて一気に爆発したというような政党もあったと思う。でも、そのような何年に一回あるかないかの大災害、巨大台風が吹き荒れた選挙で、私たちは議席を減らすことなく、1議席増やし、得票数も十分ではないが増やすことはできた(前回から比例で156万票増)というのが事実だ。これを「負けたと認めろ」といわれても困る。

 

 ただ、この結果に納得はできない。今回の参院選のような勝ち方は今後は避けなければいけない。ここで踏ん張れたのは、ボランティアの皆さんの頑張りが非常に大きかったと思う。だからよりボランティアの皆さんが活動しやすい環境を整えること、そのための仕組み作りを党内で話し合ってきたところだ。さらに活動を広げていけるような状況をなんとしても早く整えたいと思う。

 

「極右」の台頭どうみる? なぜリベラルが弱いか

 

山本太郎とおしゃべり会 in 静岡県・沼津市(9月16日)

 質問(多治見市) 今ヨーロッパでもアメリカでも、日本国内でも極右政党が台頭してきている。そのなかで、れいわ新選組はどう戦っていくのか?

 

 山本 極右といわれる勢力の台頭には、移民政策や経済政策などによって市民が抱えたさまざまな不満、不安を一定すくいとった部分が大きいのだろうと思う。日本でも経済政策や雇用破壊で苦しみ、自尊心を失いながら生きている私と同年代のロストジェネレーションの人たちや、傷ついて社会から見放されたり、政治から最後通牒を突きつけられたような気持ちになっている人たちが、ワラをもつかむ思いで、より強い言葉、より強い者に救いを求めていくという傾向はある。それは世界中に広がっていて、それが極右といわれる勢力の台頭に力を与える源になっている部分がある。

 

 もう一ついえるのは、経済が傾き、みんなの生活が苦しくなっていることに対して、本来ならリベラルとか左といわれる人たちが最も積極財政を持ち出さなければいけないのにそうなっていない問題だ。人権やあらゆる権利は言葉やスローガンだけで守れるものではない。国民生活を底上げするために、今すぐにでも減税、給付金、社会保険料減免などを前に押し出していかなければいけないときに「財源はどうすんだ!」と一番声を高く上げるのが日本国内では野党になっている。これでは(票をよそに)とられるのも当然だ。国会の中でねじれが生じているときに、左派的な人たちがいわない積極財政の主張を極右側にとられていくというものも関係しているのだろうと思う。

 

 世界で起きている現象を見ても、たとえばハンガリーでは、移民問題は社会的にまったく大きな問題になっておらず、圧倒的少数の他民族の人たちは社会に溶け込んでいたにもかかわらず、当時政権与党にいた人たちが「あいつらに奪われる!」ということを声高に叫び始め、コミュニティのなかで起きる小さな問題を大問題であるかのように大炎上させて不安を煽り、政権の力を延命させていったということも起きた。ネット戦略やアルゴリズムみたいなもので何かしらネット上位に上がってくるもので世間の不安を煽り、「あいつらのせいだ!」と怒りの方向や受け皿みたいなものを自分たちで作りながら人心を掌握していくという展開だ。

 

 これに対してどう戦っていくのか? といえば、当然ながら私たちが主張していることをちゃんと理解してもらう努力を愚直に進める以外にない。そこに対して何かしら対抗しても、国民が求めているものはそれではない。国民が多く求めるのは、この国を立て直していくことだ。そのためにはまず経済的基礎が必要であり、さらに国民にとって必要なことを根本的に訴えていくしかない。彼らが投げかけた問題意識に全ノリしてもしょうがない。

 

 再質問 極右勢力は、聞こえの良い政策を口にするが、本質的な議論になると隠蔽するので議論が成り立たない。たとえば憲法改正で治安維持法的なものを復活させようとしていることなども暴いていく必要があるのではないか?

 

 山本 私は右翼とか左翼とかはどうでもいい。好きな人は勝手にやってくれという感覚だ。なぜなら私自身がフリースタイルだから。その私を「左だ」などとカテゴライズしたい人たちには何かしらの意図がある。面倒くさいから、そんなものに私を乗っけるなと思う。

 

 一方で、極右勢力が日本でも台頭しているというが、それを右翼のカテゴリーに入れること自体、右翼に失礼ではないか? と思うフシがある。ただの右気どりの者たちではないか? と。

 

 極右かどうかは別として、最近台頭している政党がどのような発言をしているのかを冷静に見ていただきたい。

 

 たとえば参政党。神谷代表の発言を見ると「医療費40兆円を半分にする」「70歳以上の高齢者にかかる医療費22兆円を削減」とSNS等で発信されている。「医療費40兆円もかけるぐらいだったら、それ半分に減らせば消費税なくせるんじゃないですかね」(2025年1月、神谷氏)。絶対にやってはいけないことだ。理由は二つある。

 

 国が出しているお金を減らせば、社会に回るお金も減る。今でさえ日本社会はまだ不況から脱せていない。カネが足りていないのだ。だから、あちらの予算を削ってこちらに付けますという方法では社会を底上げできない。もちろん無駄と呼ばれるようなものはあるかもしれないし、それは探さなければいけないかもしれないが、今の局面で「無駄を探してから皆さんに支出を決めます」といっていたら持たない。減税などいろいろな方法で、今すぐ出さなければダメだ。周回遅れの財政観だと思う。

 

 もう一つ、医療費40兆円を半分にすれば、高齢者を殺すことになる。2025年参院選における参政党の政策カタログを見ると、「多くの国民が望んでいない終末期における過度な延命治療を見直す」とあり、「70歳以上の高齢者にかかる医療費22兆円、全体の半分を延命治療原則廃止などで減らす」とある。でも、延命治療を望む方々もいるはずだ。むりやり生き長らえさせるということもあるかもしれないが、それがすべてではない。

 

 今日本は、命の期限が決められ、逆にいえば空気を読みながら自分で命の期限を決めなければいけないような世界に踏み込もうとしている。それが一番怖いし、それに抗うのがれいわ新選組だ。高齢者2900万人はどうなるのか? という話だ。

 

 その他、金持ち以外は病気になるな、高齢者に高い医療費を掛けるなという主張もされている。

 

 「高額医療制度も見直す。オプジーボ(がん治療薬)なんか1回打ったら3000万っていうじゃないですか。そういうの打つときは自己負担率を上げる。そしたらそういう高い薬は使えなくなる」「3000万の薬使うんだったら1000万ぐらい負担しないとだめですよ。少なくとも。お金持ちしかできないんですかっていわれたら、そうですって話になるんです。だって世界はそうですよ。日本人が青天井に医療費使えるようになってしまっているからアホみたいに薬使われてんですよ」「お金がないんだったら病気にならないようにしなきゃ」(2022年8月、神谷代表の演説)

 

 こういう考え方に賛同できるという方もいるかもしれない。私は賛同できない。そういう方向に行ったとしたら社会はよりカオスになる。誰しもが高齢者になるし、障害者になる可能性がある。難病を抱える局面だってある。死ぬしかないのか? その時点で死ぬことが決定するなら、国がある意味などない。

 

 世界のやり方にならおうという部分があってもいいが、これは別にならわなくてもいいと思う。こうやって高額医療費制度みたいなものも壊されていこうとしているわけだ。「あんたたちコストだから、悪いけど自分でカネ出してくれる?」と。病気にもなれない世の中になるが、国民の6割が生活が苦しいという状況でどうやって健康を維持するような生活ができる? 食べ物を選ぶときだって安いものしか買えない。添加物たっぷりの安いものを追い求めるしかない国民も多いなかで、体に良い物を食べろというが、それはお高いものではないか。

 

「先人敬え」でも「医療費削減」? 参政党

 

山本太郎とおしゃべり会 in 北海道・網走市(9月7日)

 山本 こんな発言もある。「大学無償化とかそういうの一切なくして、そのかわり毎月10万。わかりやすい。節約したら貯められるし、必要だったら使えばいい。何でも無償化、無償化ってしてるから逆にお金が足りなくなるんですよ。しかもありがたみがない。病気になったときは確かに無償でありがたいかもしれないけど、うちの子なんか元気だから病院行かないわけですよ。医療費無償化は関係ないからですね」(2025年7月、神谷代表の演説)

 

 私は子ども医療費無償化はした方がいいと思う。少子化が問題だといいながら、教育費も自己負担、さらに医療費もとなれば、あまりにもコストがかかりすぎて自分一人生きるので精一杯という社会が広がっている。そこに対して、そのコストを大胆に国が持つという考え方にならなければ、少子化の解決などできない。「うちの子は健康で病院にかかってない」ということが説得材料にはならない。

 

 支え合う社会、不安な思いにさせない国家というものがあるからこそ価値がある。それでこそ税金を払う価値がある国だ。それをどんどん諦めさせて、自己責任でやれみたいなことが拡大していくなら、政治家自体いらない。私はそう思う。

 

 このようなアプローチをする政党や政治家について、国民自身がどう考えるかが重要だと思う。このような勢力が拡大しながら、今後は野党第一党にもなるかもしれない。でも一番心配なのは、こうした考え方が国民のなかで「当たり前」「普通でしょ」という感覚になっていくことだ。

 

 一方で「先人を敬おう」といって家父長制みたいなものを持ち上げて、日本の古くからの家制度を守り、男は男らしく、女は女らしく、そして先人の皆さんに感謝!みたいなことをいいながら高齢者を切り捨てる。矛盾していないか?とも思う。お父さん、お母さんありがとう! 先人の皆さんありがとう! といいながら「高齢者医療費22兆円ぐらい削減します」。それでは先人の皆さんは死ぬ。何のお見送りですか? お葬式ですか? という話だ。意味がわからない。

 

 だから政治家がどんな言葉で皆さんに説明しているかということについて、多くの方々に注目してもらわなければいけないと思う。いろんな考え方があり、だからこそ別の政党で活動している。それを選ぶのは最高権力者の国民の皆さんであることを考えるなら、なんとなくテレビでよく見るな…ということで投票してしまうと、そのリスクは自分に確実に返ってくるから、やはり一人一人が見つめ直すべきだと思う。メディアはその判断のために必要な情報提供をするべきだ。

 

 ほかにも、「極端な思想の公務員を洗い出して辞めさせる」(2025年7月14日、神谷代表)ともいわれている。「極端な思想」ということで、何かしら必要だと思う人もいるかもしれないが、公務員の思想調査みたいなことを国家権力が絶対にやってはいけない。なぜなら過去にそういうことをやってきたからだ。

 

 国家にとって不都合なこと、たとえば戦争に進んでいく社会で「戦争反対」といえば「お前は共産主義者だ」といって殺されたり、拷問を受けた時期があった。言葉を発することも許されず、みんな空気を読んで黙る。「お国のために」と。みんながそのような方向に向かうなかで、間違っているということも許されない社会が作られた。その反省から、憲法でそれぞれの内心、思想には国家は介入できないという約束になっているはずだ。

 

 また、2022年参院選では「原爆を落とされた広島と長崎で原子力潜水艦を作ってほしい」(神谷代表)とも発言されている。「対馬あたりを独立させて30隻の原潜を持ってもらい、対馬国と日本が軍事同盟を結んで、ニュークリア(核)シェアリングをする」(同)と…。自分が中学生のときに考えたことみたいな雰囲気の話だが、そのような考えを持つのは自由だし、公党の代表がそういう発言をされるのもある意味しょうがない部分もある。これを支持するもしないも国民の選択だ。だが、これを右翼とか極右とラベリングをするのは、右翼や極右を自負する人たちに対して失礼なのではないかと思ったりもする。

 

 これから先、自民党の数が減っていく。そして、それを補完するために、自民党の考え方を共有している人たちがその受け皿になる。国民民主党や参政党などがそうだろう。自民党の数が減っても方向性を同じくする者が増えるだけだから、自民党は事実上なくならない。彼らは憲法改正にも前向きなのだから。

 

 また、「日本を守る!」という立場で43兆円の軍拡とプラス十数兆円でアメリカから武器を買わせてもらうこともすでに決まっている。これは緊張が高まること以外に何も残らない。戦争にならなくても緊張が高まるだけで人は死ぬ。スーパーコンピューター富岳の試算では、日本と中国の緊張が高まり、たった2カ月間、中国から日本に部品(約1・4兆円分)が入ってこなくなっただけで日本国内では53兆円分の生産額が失われる。たちまちにして企業も労働者も立ちゆかなくなる。つまり、アメリカの尻馬に乗って日本の軍拡を進めていくことは、自分たちの首を絞めているのと同じことなのだ。

 

 「日本が舐められる!」というような中学生同士の喧嘩みたいな感情は一回横に置いて、中国ともトップ同士が膝を交えてコンスタントに話し合う外交をやらなければ国益は守れない。現状では、北朝鮮とも中国ともロシアとも直接話ができていない。すべて日本の目の前にある国であるにもかかわらずだ。

 

 当事者である国同士でお互いの利益、国民の生命に関する話し合いをしていく必要があるし、そのために東アジア、東南アジアの国々で協議体を作らなければならない。軍拡して、超音速ミサイルで向こう側の基地を狙うみたいなことをしても、相手に同じように軍拡を進めさせて地域の緊張は高まるだけだ。それよりも地の利を生かして経済連携を広げていくことを目指すべきだ。

 

 国民の力で行き過ぎた軍拡にブレーキをかけなければ、自分たちの首を締める。この現実と国民一人一人が対峙しなければいけない。自民党にかわる新勢力も出てくるなかで、皆さんは今この状況で何を選んでいくべきだと思いますか? という国民的議論を広げなければいけない。

 

農業差し出す売国政治 米国の対日政治工作

 

愛知県一宮市でのおしゃべり会(9月14日)

 質問(網走市) 近郊で農業をしている。自動車輸出のために政府が農業を差し出してきたという話をされているが、それについて詳しく聞きたい。なぜならJAや農家の方は「自民党でなければダメだ」と思っている人が多い。政府自民党がどのように農業を扱ってきたのかを知りたい。

 

 山本 トランプ関税交渉が一定落ち着いたように見えるが、結局のところ、日本は自動車で脅せば一発でいうことを聞くという結論になっている。「車の関税を上げるぞ」「鉄鋼も上げるぞ」といえば、日本側は震えて「それだけはご勘弁を。そのかわりに…」とみずから別の物を差し出す。これでいくらでもとれるという仕組みが習慣化している。

 

 今回も80兆円規模の対米投資や、コメについても年間約77万㌧のミニマムアクセス米(低関税輸入枠)の量を75%増やすということを決めた。つまり自動車の関税を下げるために食料を差し出す。これは今回が初めてのことではない。

 

 以前にも、TPP(環太平洋経済連携協定)の加盟交渉があった。アメリカを含めた環太平洋の国々で貿易の条件を下げて、人・カネ・モノを自由に動かすために関税ゼロを目指すというものだ。だが、国には守るべき産業があるからこそ、輸入品に対する関税がある。なかでも農業(食料)は、安全保障上、絶対に譲ってはいけない分野だ。だが、日本ではそれを真っ先に譲ってきた。

 

 TPPを主導したのが米国で、日本が裏方でまとめ役になっていたが、第一次トランプ政権が誕生して米国はTPP交渉から脱退した。だから本来はTPPの枠内で決めた低関税枠を米国に与える必要はなくなった。

 

 だが米国は、TPPのような多国間交渉ではなく、相手国との2国間で貿易交渉を求めてきた。そして日米間交渉では、日本はTPPから脱退した米国に対しても、TPPの低関税枠をそのまま与えてしまった。牛肉、豚肉、小麦、ワインなどにTPPと同じ関税削減を約束したのだ。当時の安倍首相は、貿易協定合意の1カ月前にトランプ大統領に「中国が買ってくれないから」といって押し売りされた米国産トウモロコシ275万㌧を爆買いまでした。知的財産権も50年だったものを、米国の求めに応じてTPPと同様75年に伸ばすこともオマケとして差し上げている。

 

 「安倍さんはトランプさんと相性が良かったから、たいしたことにならなかった」という話ではない。安倍晋三さんは思いっきり売国している。さんざん差し上げてきたから相手に好かれた。それだけのことだ。

 

 こういうことをすれば毎回同じことを要求される。米国が日本に売りたい農産物(食料)をどんどん受け入れ、日本車については米国で売れるように低関税を維持していただく。だが期限は決まっていない。

 

 だから今回も車で脅され、食料安全保障を手放している。要するに、米国にいわれたことに関して「ノー」といえないのだ。

 

米国にもの言えぬ構図 CIAが政党育成

 

 再質問 なぜそれほど米国に対してものがいえないのか? 反対したら殺されたりするのか?

 

 山本 植民地だからだ。事実上死んだようになるのかもしれない。政治的権力を奪われるとか。それでもノーといわなければいけない。日本の主権を守るための交渉なのだから。

 

 でもそれができないから、いまだに国内にこれだけ米軍基地がある。北方領土も返ってこない。日本に返還したら、そこに米軍基地を置かれる可能性があるからだ。基地が置かれなくても軍事訓練区域が拡大されたら、ロシアとしたら自国の危険が増す。事実、日ロ交渉でロシア側から「米国に対して北方領土に基地を置かないことを確約させられるか?」と問われ、「それは無理だ」という話になった。だから、あの島々は帰ってこない。二島返還さえも流れた。日本は自国の領土をめぐる話さえ自分たちで決められない。米国にお伺いを立てる勇気もないから、ロシアとの北方領土返還交渉は決裂した。

 

 つまり自分の政治的立場を守るためには一番強いアメリカ様におもねるしかないというのが体質化している植民地だ。

 

 そもそも自民党は、米国が作った政党といっても過言ではないほど、米国が応援し続ける政党だ。CIA(米中央情報局)から資金が出ていたことが過去の公文書からも明らかになっている。CIAは自民党だけでなく社会党右派、かつての民社党にもお金を出していた。誰に力を握らせてこの国をコントロールするかということについてずっと工作を続けている。米国の世界戦略において、極東の最前線である日本はものすごく重要な存在だからだ。

 

 『ニューヨーク・タイムズ』(1994年10月9日)の記事によれば、1958年までCIAの極東工作を担当したアルフレッド・ウルマー氏は「CIAは自民党の最初期から同党を支援し、同党内部から情報提供者をリクルートするために資金を使った」とのべている。ケネディ政権の国務省・情報調査局長だったロジャー・ヒルマン氏も「自民党とその政治家への資金援助は確立され、ルーティーン化しており、米国の対日外交政策の基本的要素の一つとなっていた」とのべている。

 

 これらの記事が出た当時、一番焦ったのは日本側だった。当時の自民党トップが駐日アメリカ大使に対して「資金援助はなかった」との口裏合わせをお願いしている。

 

CIAの自民党への資金提供をめぐる日米極秘会談を報じた1994年の『産経新聞』

 1994年11月の『産経新聞』には、「CIA自民党資金援助・米大使と極秘会談」の見出しで記事が出ている。今の『産経新聞』には絶対書けない内容だ。CIAが50年代と60年代に自民党に対して多額の資金援助をしていたという『ニューヨーク・タイムズ』の報道が出た直後の10月10日、河野洋平副総理兼外相(自民党総裁)がモンデール駐日米大使と緊急に極秘会談をしていたというものだ。

 

 記事によると、日本側は「大使館に照会があった場合は『インテリジェンス(秘密)に関するものでありコメントできない』という線で回答してほしい」と、米側のマスコミ対応について具体的に注文。さらに、自民党の森幹事長がすでに同記事が指摘した資金援助の事実関係を否定するコメントを発表していたことを指摘し、米側もその点を踏まえて対応するように要望したという。

 

 米国では一定期間を過ぎた公文書は、それが密約などに関するものであっても公開される。そこで1955年の自民党結党時に米国が保守合同を先導した緒方竹虎・自民党総裁(朝日新聞副社長)を通じて対日政治工作をおこなっていたという公文書も発見された。文書によると、CIAは「彼を首相にすれば、日本政府を米政府の利害に沿って動かせる」と最大級の評価で位置づけ、緒方と米要人の人脈作りや情報交換を進めていたという。2009年7月26日付で『毎日新聞』が報じた内容だ。

 

 記事によると、CIAは1955年に緒方に「POCAPON(ポカポン)」の暗号名をつけて地方遊説に工作員が同行するなど政治工作を本格化。同年10~12月には、ほぼ毎週接触する「オペレーション・ポカポン」(緒方作戦)を実行。「反ソ・反鳩山」の旗頭として、首相の座に押し上げようとした。ポカポン(緒方竹虎)は情報源としても信頼され、提供された日本政府・政界の情報は、アレン・ダレスCIA長官に直接報告された。緒方がCIA担当者に「総理大臣になったら、一年後には保守絶対多数の土台を作る。必要なら選挙法改正もおこなう」と語っていたことも記されている。だが、緒方は総裁になれず2カ月後に急死。

 

 鳩山一郎氏が自民党の初代総裁に就任し、CIAは緒方の後の政治工作対象を、賀屋興宣(かやおきのり、後の法相)氏や岸信介幹事長(後の首相)に切り替えたこともCIA文書から明らかになっている。

 

1960年1月19日、ワシントンでおこなわれた日米新安保条約の調印式での岸信介首相(前列中央)とアイゼンハワー米大統領(同左端)

 岸信介氏は安倍晋三元首相の祖父だ。そして、米アリゾナ大学のマイケル・シェラー教授による論文では「1958年初頭、アイゼンハワー米大統領がCIAに対し、岸信介首相(当時)、佐藤栄作自民党総務会長(同)、社会党穏健派幹部らに、年間総額1000万㌦(当時の35億円)の秘密選挙資金を提供することを認めていた事実が明らかになった」(1995年5月7日『読売新聞』)。こういう類いの話は、公文書を見るだけでも山ほど出てくる。

 

 ついでにいえば、岸信介氏は統一教会教祖の文鮮明との関係も深く、カルトといわれるような集団の日本での活動の足場を作った人でもある。だから「自民党=CIA」「自民党=統一教会」といっても過言ではないと私は思う。彼らにとっては宗教2世問題でなく、宗教3世問題なのだ。

 

 日本はそういう国だ。これを見ても「ニッポン最高!」といえるか? 日本は誰のために存在しているのか。「日本ファースト!」「日本人ファースト!」というが、違うだろ。すべてがアメリカ・ファーストなのだ。そのことに関して、反旗翻せよっていう話だ。

 

 でも、誰もそれをしたくない。潰されるから。かつて鳩山由紀夫首相(旧民主党政権)が、沖縄の新しい米軍基地建設を「最低でも県外へ」といったところ、官僚から嘘の情報を呑まされて潰された。米国にではなく、官僚に潰されたのだ。つまり、敵は外国ではない。自分の身可愛さに、自分のポジションを守るために、そういった者たちの靴を舐め続けるような恥ずかしい大人が国内にいっぱいいるということだ。政治の世界にも、それを補佐する者たちの間にも。

 

 そのなかで、「一切忖度しません。一番は国民の利益であり、この30年で終わった国になっている日本をもう一度蘇らせるためにまずは経済政策から動かしていこう」というのが、れいわ新選組だ。私たちはもう捨てるものなんて何もない。別に自分がこの先もずっと政治家であり続けたいとも思っていない。ただ、このような国の状態、国民の苦しみを放置し続けている状況が許せない。そこまで覚悟が決まったうえで「やってやるよ!」っていう勢力は、おそらくれいわ新選組しかない。

 

 こんな嫌な世の中はとっとと変えよう。なかには、山本太郎なんか死ねばいいのにと思っている人たちもいるかもしれないが、その人たちにも安定して暮らしてもらえる社会を作っていくことが自分のやるべきことだと考えるし、そのような人たちの力も借りて世の中を変えていくことをやらなければいけないと思っている。この社会を変えるためにはあなたがいないと始まらない。最高権力者は皆さんだからだ。一緒に変えていこう。

 

おしゃべり会後に参加者と歓談するれいわ新選組の山本太郎代表(9月16日、沼津市)

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この記事へのコメント

  1. ここでの山本氏の発言内容の殆どは、私自身にとって既知の事だが、これを参加者との間で口答でやり取りする事実に驚きを感じる。スケジュールに隙もない過密状態で学び続ける熱意と努力に感服せざるを得ない。
    ガザ・ジェノサイドを止めるための街宣予告の知らせを受けたが、これを党として明瞭に表明できる政党は、この国でれいわの他にはない。現在、そのための人材も有していていることに、私事ではあるが、この政党を支持し続けてきて本当に良かったを思える。そして、そのことが率直に嬉しい。

  2. ヨコヤマミノル says:

    今までのおしやべり会と大きく違うのは、必ず質問者に「よろしいですか?」と
    納得できたか確認をして納得、理解できるまで根気強く説明をしていることです
    どこの政治家が、これだけ熱く真摯に向き合うことができるでしようか?

    山本代表のスピーチをまとめて文字化してくださるのはとても助かります。
    多くの知人(ネットと無縁な)に配布できます。
    いつか書籍にしてください

    3日は柳井市ですね、質問されてください!!

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