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主権なき安全保障は空論 れいわ参院選全国ツアー 「フェイク保守」の欺瞞も指摘 沖縄での演説から

(2025年7月11日付掲載)

演説するれいわ新選組の伊勢崎賢治候補㊨と山本太郎代表(9日)

 参議院選(20日投開票)は選挙戦中盤に入った。公認候補24人(比例12人、選挙区12人)を擁立したれいわ新選組(山本太郎代表)は、九州・沖縄から北上しながら全国街宣を展開している。7日には、沖縄県に赴き、山本代表と全国比例公認候補の伊勢崎賢治氏(元アフガニスタン武装解除日本政府特別代表、東京外国語大学名誉教授)が街宣をおこなった。聴衆からは、人口減少社会における命の問題や沖縄の自然環境とかかわった経済問題等の質問のほか、今回の参議院選挙において急速に煽られ、表面化している「外国人ヘイト」をめぐる質問も出た。那覇市でおこなわれた街宣での伊勢崎候補の訴えと、外国人問題に関する山本代表と聴衆とのやりとり要旨を紹介する。

 

■伊勢崎賢治候補の訴え

 

 僕は、国際NGOや国連職員、また日本政府代表という立場で、シエラレオネや東ティモール(インドネシア)、アフガニスタンなどで紛争解決のミッションにあたってきたほかに、防衛省の統合幕僚学校という堅苦しいところで、陸海空自衛隊の精鋭たち(将来の幕僚幹部)を18年教え、それは現在も続いている。その意味で、すべての自衛隊員を自分の子どものように思っている。だから、政治家の間違った判断で自衛隊員を一人たりとも犠牲にしてはならないという思いにおいては誰にも引けをとらない自負がある。今からお伝えすることは僕の自衛隊での講義でも必ず触れることだ。

 

 空を見上げてほしい。この沖縄の空は「嘉手納ラプコン」と呼ばれる米軍管制空域だった。今から15年前に一応、制空権、管制権は日本側に移管された。しかし、「米軍の訓練と作戦を妨げない」と明文化された条件が付いている。だから実質的には、まだ米軍のものだといえる。東京にも、これよりも広大な「横田ラプコン」という米軍管制空域がある。実に1都8県に及ぶものだ。つまり戦後80年、日本の空はアメリカの支配下にあるということだ。

 

 アメリカは国外に持つ軍事基地の数において世界一の国だ。中国もロシアも持ってはいるが、アメリカの足元にも及ばない。アメリカ軍基地は世界80カ国以上にあり、その一つが日本だ。80カ国のなかには、つい最近までのアフガニスタンやイラクのように、アメリカ軍が駐留し、実際にそこで戦争をやっている国もある。あるいは日本と同じように、占領状態から戦後復興を成し遂げたドイツ、イタリア、フィリピンなど、いまだにアメリカ軍が駐留しているが、そこが戦場になっているわけではない国もある。

 

 アメリカ軍を受け入れている国々には、それぞれの、さまざまな事情があり、それを国際比較するのが僕の学者としての仕事であったわけだが、日本だけが異常な状態にある。嘉手納ラプコン、横田ラプコンのような米軍管制空域は、日本以外の世界には存在しない。

 

 その他の国では、アメリカ軍は駐留しても、そこに自由がない。なぜか? 主権国家だからだ。もしアメリカ軍がそこから自由に出撃して、隣国や敵国を攻撃したら、その隣国には当然、報復する国際法上の権利(個別的自衛権)が生まれる。では、真っ先にどこに報復攻撃をするか? 何千㌔も離れたアメリカ本土か? そうではなく、アメリカ軍の攻撃機が飛び立った、もっと近いところにある米軍基地が狙われるだろう。

 

 だから、普通の国はアメリカ軍の駐留を許したとしても、その国の国防の観点からアメリカに自由は許さない。あたりまえのことだ。アメリカ軍の勝手な行動で自国の安全が脅かされるからだ。

 

 これは出撃に限ったことではない。軍事訓練も含めて、すべてのアメリカ軍の行動は受け入れ国の許可の下に置かれる。環境基準、軍用機の安全基準も含めて、すべて受け入れ国の基準に従うのがいまや国際常識となっている。アメリカはこうやって受け入れ国の不満を緩和する(地位協定を安定させる)ことを外交手段として考えているわけだ。まずは日本だけに存在するこの異常性を理解していただきたい。

 

 「日本は国防をアメリカに依存しているのだから、少しくらいの不都合があってもいいではないか」と思う人もいるだろう。しかし、くり返すが、つい最近までのアフガニスタンやイラクのように、アメリカが今日出て行ったら明日には国が滅びるというほどアメリカの軍事力に依存した国でも日本のような自由をアメリカに許していない。

 

 とくにイラクは、拒否権を地位協定に埋め込んでいた。つまり、たとえばイラク国内の基地を使って、隣国イランを攻撃するという意図をアメリカが持ったとしたら、イラク政府がそれに「ノー」といえる権利を地位協定のなかに埋め込んでいる。

 

 先日、トランプ政権がついにイランの核施設を空爆した。これはとんでもない国際法違反だ。このとき空爆に使われたB2ステルス爆撃機はどこから飛び立ったか? アメリカ本土のミズーリだ。35時間もかけてイランまで飛んでいった。だが実は、アメリカは、イランの近隣にある君主制のアラブの国々にたくさんの基地を持っている。そういう国のほとんどがイスラム教スンニ派の国で、シーア派総本山であるイランとは歴史的に敵対し、戦争もしてきた。だから、これらの国々は米軍基地を置いてきたわけだが、アメリカ軍の行動に対して拒否権を持っている。イランと目と鼻の先のカタールには、中東最大のアメリカ空軍基地がある。でも、それが使えない。だからアメリカのB2ステルス爆撃機はアメリカ本土から飛び立ったわけだ。

 

 昨年、米軍基地を抱えるこれらの湾岸諸国は共同で「イランへの攻撃にはアメリカ軍の基地を使わせない」と声明を出した。それはこれらの国々がアメリカに依存していても、みずからの国防をみずからの足で立って考える主権国家だからだ。どんな国でもアメリカ軍の完全自由が許されるのは唯一、占領期だけだ。アフガニスタンやイラクでも、国が主権国家として独立し、国連加盟国の一つになるときには、駐留を続けるアメリカ軍の自由は消滅した。米軍の完全自由が続く日本は、まだ主権を回復していない。いまだに占領状態にあるということだ。たとえ今すぐに米軍基地が出て行かなくても、われわれは主権を回復して、この状態から脱さなければいけない。

 

 僕は研究者として、与党・野党の区別なく平等につきあい、超党派でこの問題意識を広げる運動をしてきた。とくに自民党の「防衛族」と呼ばれる2人の議員とは緊密にやってきた。現在の石破首相と中谷防衛大臣だ。彼らも同じ問題意識をもっているが一歩が踏み出せない。権力を持つと、戦後80年間ずっと続いてきたこの空気を読んでしまうわけだ。だから自民党は一回壊さなければならない。だが、野党もダメだ。与党との対立軸として「ヤンキー・ゴーホーム」と口ではいうが、主権を回復し、米軍の自由を消滅させることはいってくれない。

 

 でも僕は、この日本だけが抱える問題の危うさを直感的に理解し、同調圧力や空気を読まずにたたかう一人の政治家に出会うことができた。それが山本太郎さんだ。彼に残りの人生をかける決心をした。僕自身は政治家になることが目的ではない。皆さんから与えられた任期でやるべきことをやる。初日からこのミッションにとりかかるつもりだ。

 

■「フェイク保守」など滅べばいい 山本代表との対話より

 

那覇市で街頭演説をおこなう山本太郎参院議員(7日)

 質問 今、外国人による水源地や土地の買占めや勝手な開発などが進められていると聞く。その問題と移民政策について聞かせてほしい。

 

 山本太郎 土地規制の話をするならば、いわなければならないことが二つある。一つは、重要な土地に対して手が出せないように法律で厳しくしてもいいと思っている。

 

 だが、もう一つ、外国人に土地が買われたり、その国の資産が買われてしまうという話に関しては、それらが買われてしまう理由がある。日本は先進国でただ一つ、30年経済状況が悪い国だ。ここまで日本を安くしたのは誰か? ということだ。1995年には世界経済(GDP)の17・2%を日本の経済が占めていた。それが今や四%だ。世界でたたかえる経済大国ではなくなり、経済的にはもう極東の転落国家となりつつある。当然、日本国内で売っているものは全部安くなる。経済が弱い国は経済に強い国に食われるのが世の常だ。それ以上でも以下でもない。

 

 昔の日本を考えてほしい。「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と呼ばれ、非常に経済が豊かなときの日本は世界でいろんなものを買ってきた。絵画だったり、さまざまな会社だったり、「アメリカの魂」といわれるビルだったり。「カネにものいわせるのか」「またジャパン・マネーか」と世界中から批判された。それがやり過ぎだという声もあったが、普通に考えて、経済が弱った国は強い国に食われる。国防のうえで一番重要なのは、軍事力ではなく、経済力なのだ。日本ほどの小さな国で、技術力や製造力を元にして生まれた大きな経済力は、軍事力などとは比べものにならないくらいの大きな力を持つ。逆にいえば、それが一番の交渉力になる。軍事をいくら大きくしても、国内で生きてる人たちが、生きてるか死んでるかわからないような国民が多数で、未来に希望が持てない状況になっていたら、「武器だけバッチリ」などといったところで終わっている。

 

 そう考えると、「外国人が土地や物を買い漁ってる!」「○○人がどうした!」というような話にごまかされていてはダメだ。当然、資本力がある者たちは買いに来る。それに対して、なぜこの国をこんなにも弱らせているのかという怒りを、政治や資本に向けなければダメだと私は思う。

 

 移民政策に関しては、れいわ新選組は一言でいえば反対だ。一方で、すでに日本に入ってきている方々、日本国内にお住まいになっている方々の基本的人権は当然守られるべきだ。なぜれいわ新選組が移民政策に反対するのか? ということだが、普通に考えて、よその国を支えるべき貴重な人材を奪ってきて、この国に住んでくれということを政策にするなど狂っている。

 

 これまで日本は、安い労働力を求めるために海外からたくさん人を連れてきた。なぜか? 資本の側が日本人労働者の賃金が高いからといって、非正規雇用の拡大という形で労働規制を緩和して安くしたが、それが頭打ちになった。ここをもっと安くするために低賃金で使える外国人労働者が大量に必要になったからだ。誰が求めたか? 経団連だ。

 

 世界の常識から見れば、1年以上も同じ場所にいたら移民という解釈になるのに、日本は「移民政策ではない。帰ってもらえますから」というような意味不明なことをずっとやり続けた。資本が望むからそれをやったのだ。彼らが望むことをやれば、自分たちは票とカネがもらえる。目の前のカネと票のために、そうやって世界中の人間を傷つけてきた。安全保障上、それは一番最悪ではないか。

 

 何よりも、移民を受け入れるかどうかということに関して国民的議論にもなっていない。30年間も経済の底が抜けて、自分が生きるだけで精一杯で、明日もどうなるかわからないという国民が多数になったなかで、「外国人ガー」という話題に火が付けられたわけだ。

 

 しかし、本質は何か? 国を30年壊し続けてきた者たちに矢を向け、ひっくり返すための選挙ではないか? この外国人問題に関しては、かなり利用され、根深い部分がある。でも海外から来た人たちに何かをいってもしょうがない。だってそれを入れるシステムをつくったのは誰か? それを求めた人は誰か? なぜ目がそっちに向かないのか? と思う。

 

 「外国人ガー、外国人ガー」といっている政党や政治家は自民党に対して文句をいったか? 「外国人ガー」という政治家は経団連に対してものをいっているか? ほとんどがいってない。そして、なによりも外国人特権を一番持っている米軍に対してものをいっているか? いっていない。そして、日本の労働環境がこれだけ壊されてることに対して、何かしらものをいっているか? 変えようとしているか?

 

 そんなフェイク保守なんて滅んでしまえばいい。私は、そう思っている。

 

 政治にかかわることを諦めて、この国を食いつぶしてきた者たちに勢力を拡大させるのではなく、長いものに巻かれず、風見鶏ばかりの国会で空気を読まずにたたかう、れいわ新選組にあなたの力を貸してほしい。

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