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安岡小学校建て替えへ 重い腰上げた下関市政 市内全域の老朽校舎対応にも注目 本池涼子市議の一般質問

(2025年12月15日付掲載)

学校施設の整備について一般質問をおこなう本池議員(手前)(12日、下関市議会)

 下関市議会12月議会で本池涼子市議(本紙記者)は12日、下関市民の大きな関心事となっている市立小・中学校の老朽化問題について質問した。下関では多くの学校で校舎内の雨漏りや外壁剥落などが起きる状況となっており、保護者や学校関係者、地域のなかで校舎の建て替えを求める世論が高まっている。このうち今夏、雨漏りにより子どもたちの教材にまで被害が及んだ安岡小学校の築71年の「2舎」について、教育委員会は、校舎耐力度調査の結果が基準点以下になったことを受け、建て替えを実施することを明らかにした。2009年に川中中学校が新築されて以降、校舎の建て替えが1校もされていない下関市で16年ぶりに建て替えをおこなうことになる。また、その他の学校についても必要な改修をおこなうと同時に、1校1校計画的な建て替えを進めていくことを求め、市教委もようやく計画の大きな見直しをおこなう姿勢を示した。以下、本池市議の質問と執行部の答弁(要旨)を紹介する。(学校の写真は本池議員が議会で提示したもの)

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 本池 子どもたちが育つ教育環境の維持管理、改修、更新について質問する。今年2月議会でもこのテーマで質問したが、今、市内の多くの学校施設は「老朽化」を通り過ぎてとても「危険」な状態になっている。学校施設の維持管理については、学校施設長寿命化計画にもとづき大規模改修と予防保全をおこなっており、このほか緊急性の高いものは適宜「修繕」により対応している。そのほか、空調整備事業、トイレ快適化事業、LED化改修事業に加え、個別には、玄洋中学校区小中一貫校施設整備事業、安岡小学校校舎増築事業としてプレハブ校舎の建設が動いている。ただ、学校施設の危険な状況は全般として改善に向かっておらず、子どもたちが学ぶ環境が年月の経過とともにどんどん悪化し、先が見えない状況に置かれている。

 

 教育委員会が9月末に委員会に提出した資料で、今年8月9日~12日にかけての大雨で雨漏りした学校は、64校中34校という信じがたい数になっている。この雨漏りも含め、どれほどの学校で雨漏りが起きているのか。

 

 門田教育部長 冒頭、「とても危険な状態になっている」といわれたが、とても危険な状態があるのならぜひ申し出ていただき、早急に対応したいと思っているので、遠慮せずにすぐにいっていただきたい。

 

 雨漏りの状況だが、令和6年度は117件。そのうち修繕が完了したものが110件だ。残り7件の内訳は、同様の不具合が生じていないため「経過観察」となっているものが4件、修繕対応中が1件、工事対応を検討中が2件となっている。令和7年8月の豪雨による雨漏りは36件で、修繕完了は17件。修繕が完了していない19件の内訳は、「経過観察」が10件、工事中が1件、工事対応を検討中が8件となっている。

 

 本池 「危険な状態があるなら申し出ていただきたい」といわれたが、教育委員会は把握済みのはずだ。

 

 今年の大雨でもっともひどい雨漏りが起きたのが安岡小学校だ。9月に宮野直樹議員が詳細についてはとりあげた。雨漏りのひどかったのが築71年の2舎だ【写真】。外壁の剥落だけでなく、剥がれたあとのコンクリート部分も劣化し、崩れているのがわかる。これが危険ではないというのか。

 

外壁が剥がれたまま手つかずの安岡小学校「2舎」(下関市)

8月豪雨で大規模な雨漏りが発生した安岡小学校「2舎」の内壁(10月)

 雨漏りした屋上は、しばらくビニールシートで覆ってあったが、最近になって塗装がほどこされた。その内側もかなり傷んでおり、その結果、雨が校舎内に流れ、床板が浮き上がったり、雨漏りで子どもたちの教科書やピアニカが濡れて使いものにならなくなった。

 

 この校舎は耐震補強もされておらず、コンクリートの圧縮強度が足りない「要調査」の校舎だが、今年7~9月に校舎耐力度調査を実施していることが9月の宮野議員の質問で明らかになった。基準点を下回れば「構造上危険な状態にある建物」として建て替えの対象になると説明しているが、結果はどうだったのか。

 

 教育部長 安岡小学校の耐力度調査は、耐力度点数の満点が1万点であるのに対し、3764点となった。国庫補助における長寿命化改良事業の対象判断において、耐力度点数が4500点を下回る建物は長期間の使用に適さないとされている。今後、国の補助を活用し校舎の改築に向けて検討していく。

 

 本池 基準点以下で長期間の使用には適さない、そして改築の対象になったということか。

 

 教育部長 その通りだ。

 

 本池 教育委員会として今後、2舎の建て替えを進めていくということでいいか。

 

 教育部長 検討に入っていく。

 

 本池 建て替えするかどうかの検討ではありませんよね。

 

 教育部長 改築つまり建て替えるという形で検討していかなければならないという判断をしている。建て替えを今後どの規模で、どの時期に、どうやっていくのか検討していく。

 

子どもの命に関わる問題

 

 本池 今後のスケジュールはどの程度まで決まっていて、どのように進めていくのか。

 

 教育部長 現在のところ決まっていない。

 

 本池 完成時期はいつごろを目指すのか。

 

 教育部長 工事実施がまだ決まっていないので、完成時期についても未定だ。

 

 本池 耐力度調査の結果で「長期間の使用には適さない」という結果が出ている。つまり構造上危険な状態にある。いつまでも待つことはできない。来年度には計画策定に着手するなど、なにもないのか?

 

 教育部長 長寿命化の補助事業に乗るか乗らないかというのが一つの判断だ。たちまちこちらのものが危険だということではないと思うが、国の補助事業の長寿命化(大規模改修)に乗らないのであれば、別の方法をということで、建て替えの方向で考えている。学校の建て替えは限られた敷地のなかで授業をしながら工事をおこなっていくため、通常いろんな調整が入る。いつできるかスケジュールとしては持ち合わせていない。

 

 本池 長く使うことが適さないという結果が出ているのだから、何年も検討を長引かせることがないようにしてほしい。「建て替えが必要」という結論については、保護者・地域からは大変歓迎されると思う。子どもたちの学ぶ環境がやっと改善に向う道筋が見え安心した。校舎は非常に危険な状態になっており、悠長にしている時間はないので早急にやっていただきたい。

 

 しかし一方で、そのような結論にたどりつくのは必然でもあるように思う。これほどまでに老朽化した学校をさらに長寿命化して使うという結論が出るなら、それはむしろ異常だ。今後、建て替えが進んでいくのは2舎だけか。安岡小は全体的に老朽化が進んでいる。今年の夏ごろにはもっとも新しい築43年の4舎の屋上部分が剥がれて落下する事態になっている。2舎の1棟だけでなく、残りの3棟や雨漏りしている体育館も含めて、安岡小の全体的な計画を考えていく必要があると思うが、検討するのは2舎だけか。

 

 教育部長 建て替えについては2舎のみ。その他については、建て替え、長寿命化も含めた施設管理の計画のなかで優先順位をつけ判断していく。

 

 本池 安岡小学校は今、教室不足が深刻だ。体育の授業のさいには男女が入れ替わって着替えないといけないとか、PTA室もないとか、1年生が2年生に上がるタイミングで5クラスから4クラスに編成されるので狭くてたまらないとか、特別支援学級が2つのクラスを1つの教室でやったり、通級が図書準備室を使ったりしている。これへの対応として、10年で3億円のプレハブ校舎を増築するのだと動き始めている。少人数教室、多目的室、放課後児童クラブなどの不足に対応するもので、改善する部分はあるが、普通教室が入っていないため教室不足の解消にはならないことが指摘されている。2舎を建て替えるとなると条件も変わってくると思うので、安岡小全体を考えた計画の検討が必要だと思うがどうか。

 

 教育部長 建て替えにおいては、仮設、その後の使用方法も含めて、工事にともなう児童の影響も踏まえ検討もしていく。

 

 本池 よくわからないが、安岡小全体を考えた計画の必要性について考えるのか。

 

 教育部長 安岡小全体を新築にするという検討はない。

 

 本池 全体を一気に新築してくださいといっているわけではなく、2舎の建て替えにともなって、教室不足や、他の校舎の老朽状況、体育館の雨漏りも踏まえて全体的な計画をつくらなければいけないのではないかと聞いている。

 

 教育部長 2舎以外の校舎については現在のところ「使えるもの」と判断している。使えるものについては長寿命化計画のもとで長く使っていきたい。教室のあり方については、2舎を建てるときに教室のレイアウトであったり、不足している教室などの検討はする。

 

 本池 もっとも新しい校舎の屋上が剥離し落下したことや、体育館の雨漏りも紹介したが、必要な改善を必要な時期にしなければ2舎と同じことが起きる。危険な状況を一刻も早く解決するために2舎の建て替えは早急にし、そのほかの不具合箇所や危険な場所についても解決のためにとりくむことを求める。

 

「要調査」の学校の現状

 

誠意小学校(黒井)の「旧校舎」(築67年)では雨漏りがひどいため天井板を外し、バケツで水を受け止めている

 本池 こうした学校施設の老朽化は安岡小に限らない。安岡小2舎の建て替えの目途がたったことはいいが、逆に、市内の他の学校の危険な校舎は、安岡小2舎のような状況にまでならなければ建て替えが検討されないのか――という疑問が湧いてくる。雨漏りや屋上・外壁が落ちている校舎はたくさんあるが、子どもたちの教材が犠牲にならないと校舎の建て替えは検討されないのか。

 

 築年数を見ると他の学校の校舎も安岡と似たり寄ったり。残念ながら、雨漏りは多くの学校で当たり前になっている。少しひどい雨になると管理職の先生がバケツを置いたり、たまった水を捨てるために走り回っておられる状況だ。

 

 加えて、豊浦小や勝山小のように外壁が剥落してどんどんなくなっていったり、川中西小では窓が落下する危険性が生じて窓が固定された。また、多くの学校で窓が枠ごと固定され、片方は開けられない状態になっている。天井が傷んで落ちてきた中学校も複数ある。

 

 教育関係者が「児童・生徒の犠牲が出ていないのが奇跡だ」と口にするほど今の学校現場の状態はひどい。もちろん工事で対応済みのものもあるが、応急的であったり、場当たり的といわれても仕方ない工事内容になっており、現状を安全・快適なレベルまで改善するところには至っていない。誰が考えても建て替えが必要なのに、安岡の2舎のような状態になるまでできないということにはならないか。

 

 安岡小2舎と同じく、耐震性もなく躯体健全度調査でコンクリート強度が足りずに「要調査」となっている校舎がほかにもいくつかある。その校舎はどの学校に合計何棟あるか。加えて耐力度調査の実施の有無はどうか。

 

 教育部長 文関小が2棟、清末小が1棟、誠意小が1棟。要調査の校舎に対する耐力度調査は大規模改修工事の実施前におこなう予定としていたので、現時点では安岡小以外ではおこなっていない。しかし、安岡小の耐力度調査結果を踏まえ、その他の要調査となっている校舎についてもできる限り速やかに調査をおこなっていきたい。

 

 本池 長寿命化判定をおこなったのは平成18年~24年ごろだ。すでに10年以上、20年近くたっているのに、「要調査」にしたまま耐力度調査をおこなっていないということだ。「よりよい教育環境」以前に、生徒の命や安全をどのように考えているのかという問題だ。今回安岡で基準点以下になったが、そのほかの学校もわからない状態だ。耐力度調査はいつ実施するか。

 

 教育部長 できるだけ速やかにおこなっていきたい。

 

 本池 来年度にやるのであれば予算化に向けて動かなければならないがどうなっているか。

 

 教育部長 予算編成のなかで判断される。

 

 本池 命がかかわっているので早急にやってほしい。年数でいえば安岡小2舎より古い校舎も含んでいる。事実として、「健全ではない」という結果が出ている校舎に子どもたちを詰め込んで、その先を決めるための調査をいつまでもしていないのはおかしい。早急にやってほしい。

 

放置されている誠意小の惨状

 

 本池 安岡小と同じく、「要調査」の校舎を抱えている誠意小について聞く。誠意小は今年で150周年を迎え、現在153人の児童が通っている。築45年の「新校舎」、裏に「要調査」となっている築67年の「旧校舎」がある。新校舎では1~3階のすべての男子トイレで小便器の水が流れない。そもそも用を足したあとにその都度流す仕組みではなく定期的に上部のタンクから水が流れる「配タンク式」トイレだが、その水が流れない。だったらどうなるかわかると思う。なるべく臭いを抑えるために、毎朝、校長先生がジョーロに水を汲み、1日に何回も流しておられる。また、使う便器をローテーションしており、使ってはいけない便器には張り紙がしてある。この状況を教育委員会はご存じのはずだ。

 

誠意小学校の旧校舎のトイレと洋式便器

 そして、築67年で「要調査」となっている旧校舎のトイレ【写真】だ。67年前の仕様なので電気が少なく全体的に薄暗い。女子トイレは、きれいに掃除されているが、ウェット式であり基本は和式。奥に一つ洋式便器がある【写真】が、まるでキャンプ場か海水浴場の仮設トイレのようだ。しかも、このトイレを日常的に使っているのは1年生と通級の子どもたち。木のパレットのようなもので高さを出してあるのはわかるが、これはあんまりだ。

 

 校舎内部も雨漏りに加え、床板が剥がれているところをテープで補修してあったり、職員室の鍵が壊れたまま修理されず、輪ゴムで止めてある。防犯上もありえない状況だ。こうした状況についてはすべて教育委員会に報告が上がっていると思う。

 

 こうしたことが長期間にわたって改善されない、危険個所すら手つかずという状況を見ていると、現在の整備事業がいったいどうなっているのかと思う。トイレの水が流れない状況を紹介したが、トイレ快適化事業の対象校に誠意小学校は入っているのか。

 

 教育部長 対象校になっているが、現時点ではトイレ改修の時期は定まっていない。

 

 本池 1~3階まで男子トイレの小便器はすべて水が流れないが、その状況はいつなおるのか。そのまま使っていくつもりなのか。

 

 教育部長 現場を早急に確認させていただく。トイレ快適化事業は便器だけでなく、水の道(1階から3階までの配管を含めて)の敷設から変えていく事業で、これについては計画的にとりくんでいると思う。今後もそれぞれの学校の状況を聞きながら対応が必要なところについては急いで対応していきたい。

 

 本池 旧校舎のトイレ【写真】だが、2月議会のさい当時の教育部長は、「平成30年には校舎の各フロアに1カ所以上の洋便器の整備を終えた」と答弁した。その洋便器がこれだろうか。1年生が使うものだ。「整備を終えた」といえるものではない。

 

 誠意小学校は第3期適正規模・適正配置計画までは豊洋中学校に統合が計画されていたために長寿命化事業の対象にすら入っていない。統合がうち出されている学校は環境改善の見通しはないのだろうか。誠意小の改修はどのように進んでいくのか。

 

 教育部長 誠意小は長寿命化計画の上位計画である第3期下関市立学校適正規模・適正配置計画において閉校予定となっていたため、大規模改修工事の計画は定めていなかった。今後は本年8月に定めた第4期下関市立学校適正規模・適正配置計画の整合を図るなど、長寿命化計画の見直しをおこなうなかで改修時期を検討していく。

 

 本池 安岡も誠意も一つの事例であって、各学校それぞれが深刻な状況を抱えている。統合予定だからとか、児童数が少ないからとかで改善に向けて動き出さない状況があるのではないか。子どもたちの教育環境にとっての必要性よりも、「どうせ人口減少する」「児童が減る」などの大人の都合が優先され、後回しになってきたのが教育現場であると思う。

 

誠意小学校の「新校舎」(築45年)の廊下。床板がはがれてテープで補修している

壁や屋上改修も5年で4棟だけ

 

 本池 市内のほとんどの学校で、改修を必要とする箇所が長期にわたって放置され、先生方や公務技師、学校支援課のみなさんのおかげでこれまで犠牲が出ずにきている。ここで、学校の改修がどこまで進んでいるのか質問する。まず、外壁や屋上防水について聞く。長寿命化計画では、対象施設254棟中、「5年以内に修繕が必要」のD判定が、「屋上・屋根」で105棟、「外壁」で104棟になっていた。どこまで進んだのか。

 

 教育部長 大規模改修は菊川中学校の体育館の建て替え(令和4年度)、勝山中学校の校舎3棟(今年度完成予定)だ。予防保全は、令和4年度から今年度までに実施中のものも含め、外壁や屋根・屋上が4校4棟。トイレの大規模改修が15棟47フロアだ。

 

 本池 屋根・屋上が105棟のうち何棟なのか。外壁が104棟のうち何棟進んだのか。

 

 教育部長 手元に整理した数字がない。

 

 本池 いずれにしろ、4校4棟だ。大規模改修は勝山中学校と菊川中学校の体育館の建て替えだといわれた。

 

 屋根・屋上や外壁について「5年以内に修繕が必要」と計画にうたったのは教育委員会だ。計画は令和2年度に策定しているので今年度で5年たつが、4校4棟ではあまりにも遅すぎないか。このようなペースではいつまでたっても子どもたちの環境が改善しない。大規模改修(9学級以上)の健全度「D」判定だけで考えても22校あり、5年で2校という今のペースでは110年以上かかることになる。計画にも合致していないし、もっとペースをあげなければならないと思うが、施設の維持管理を進めるうえでの課題はなにか。

 

 教育部長 D判定の工事についてはわれわれも心を痛めており、対応は急がなければいけないと思っている。課題としては物価高騰により、原材料費や人件費が増加する一方で、事業の財源となる国庫補助が予定通り交付されないこと、事業量の増加にともない設計業務などに関する人員の確保が必要となること、さらに近年の入札結果から推察される市内業者の工事従業者の不足があげられると思う。今後も課題をクリアできるよう努めてまいりたい。

 

 本池 施工上の課題はどうか。

 

 教育部長 児童・生徒の安全確保や学校運営の維持のために作業時間や作業範囲に制約が生じて進捗管理が難しくなる点が主な課題だ。

 

 本池 社会的要因もあって難しい部分も出てきているとは思うが、そのなかでどう早く進めていくかを考えていかなければならない。「だから仕方ない」ではない。

 

 ある教育関係者が、学校改修の考え方について「6年」「3年」という考え方を持ってやっているのだろうか、といっておられた。今通っている子どもたちには長くて6年、3年しかない。その間に学校環境がいい方向に変わっていく、薄暗かったり、壊れていたものが改善されていくことが大事だということだ。「立ち入り禁止」の場所があったり、窓が開かない、トイレの水が流れないといった状況が放置されていることによる精神面への影響も心配されている。

 

実際に合わぬ「長寿命化計画」

 

学校の老朽校舎の多くが放置されている下関市。写真は、外壁が剥がれている勝山小学校

 本池 今の下関の学校施設の現状を変えていくためには、改善に向けた予算をつけることと、思い切った建て替えを計画的に進めていくことがまったなしだと思う。

 

 防府市と宇部市の学校施設長寿命化計画にある「築年別整備状況」と下関市の同状況【グラフ】を比べると、下関市は川中中学校以来、校舎を建てていない。防府市は昭和40年以前の学校施設がないことがわかるし、宇部市は10年以上前から体育館の更新に着手していることがわかる。旧耐震基準と新耐震基準の割合も下関市とは逆だ。

 

 つまり、下関市は計画的に建て替えをしてきておらず、全体的に老朽化が進んでいて、計画でいう「改修時期」を逃している建物が非常に多い。今さら長寿命化して「100年使う」といっても、それはもう校舎の現状にあわないものになっているのだと思う。

 

 前田市長は2月議会のさい、私が「なにもしていない」といったといって、たいそうご立腹だった。しかし計画の「コスト試算」にこのように書いてある。

 

 「なお、実際の本市における学校施設の維持管理は、これまでに計画的な大規模改造等はほとんど実施しておらず、事後修繕で対応していますが、試算上は過去に計画的に大規模改造等を実施しているものとみなして、今後必要となるコストを試算します」。

 

 それで「建て替え費用の60%で長寿命化ができる」としているのがこの計画だが、市教委自身が実施してきていないといっているものを無理やり長寿命化などできるわけがないと思わないか。

 

 だから、この長寿命化ではなにも改善しないといっている。このことは教育委員会が一番わかっていると思うし、実際現場からも意見が上がっていると思う。長寿命化計画に関し見直しの要望は出ているか。

 

 教育部長 令和7年度の要望として下関市PTA連合会から出ている。その他の施設改修に関する要望は多く出ている。

 

 本池 長寿命化計画は今年度見直しになっているが、見直しの内容と進捗はどうか。まさか、また今の施設を長寿命化して目標使用年数を一律「100年」とする計画にはならないとは思うが、確認する。

 

 教育部長 長寿命化計画は、もともと使えるものを100年使おうという計画で、大規模改修をする前に耐力度調査を実施し、大規模改修が適さないと判断すれば建て替えを検討していく形になる。現在の期間中は、建て替え計画がないが、使えるものは使っていく、使えなくなったものは次の手を考えていくという現在の計画をブラッシュアップする形で見直しを進めているところだ。

 

 各学校の棟ごとに大規模改修ができないか、大規模改修できなければ建て替えできないか、ということも含めての見直しは大きな見直しになるがとりかかっていきたい。

 

 本池 今の長寿命化大規模改修計画は学校ごとになっている。これを古い棟ごとにしていくというのが、大きな見直し点になるのではないかということだ。計画で目標使用年数を100年としたのは教育委員会だ。だから、長寿命化という結論を出したがために建て替えが進まない現状になっているのではないかというのを以前から指摘している。それを見直していただきたい。一律100年みたいなことをやめなければ改善が進まないといっている。目標使用年数を100年とする方向性はそのままか。

 

 教育部長 使えるものは100年を目標にするというのがわれわれの基本スタンスなので、80年で使えないのであれば100年使おうということはない。

 

 本池 長寿命化は下関の学校施設の現状に合わないといっている。使えるものは100年使うというが、50年以上、60~70年も経っている校舎が多くある。それをあと30~40年使うことが現実的だと思うか。

 

 教育部長 古いかどうかで判断していない。それぞれの建物の状況を見極めながら大規模改修、もしくは改築の判断をしなければならないと思っている。もしも今までの計画がなにが何でも100年もたすと思われているのであれば、われわれのアナウンスがよくなかったのだと思っている。今までもこれからも使えるものは使い、使えないものについては正しい検討に入っていきたい。

 

 本池 計画的に老朽化した校舎を建て替える内容に見直していただきたい。「長寿命化して100年使う」という現実的でない方針決定があるがために、ボロボロの校舎が放置されているということに現場を知る多くの関係者が「おかしい」と思っている。

 

 ついでにいうと下関は今のところ、体育館の建て替え計画はない。災害の避難拠点となったときに使えるような、更衣室、シャワー室、男女別のトイレ、災害時にも使える研修室を備えた体育館につくり替えているところが今増えていて、県内でも宇部市などがそうなっている。下関は体育館に関する計画がまったくないが、防災ともリンクした問題意識も持って、現在の雨漏りする体育館を更新していく計画をぜひ進めないか。

 

 何度もいうが、この市役所は築59年で建て替えた。教育センターも新しくなり、総合支所も新築したり大規模な改修がされた。大人の環境はどんどん改善していく一方で、子どもたちの環境だけが置き去りになっている。

 

 空調も整って、温かい便座もあって、ふかふかの椅子に座っている関係者が、子どもたちの校舎になると「使えるものは使う」「まだ使えるじゃないか」とか「洋式化したじゃないか」「エアコンもつけたじゃないか」と、非常に冷淡だ。子どもたちを粗末にする街にどんな希望や未来があるのだろうか。地方自治体は子どもたちがいることで地方交付税交付金が下りてきており、財政を任されている者として、子どもたちに対する投資として施設整備は計画的におこなっていかなければならない。

 

 「国家百年の計は教育にあり」。人材育成こそ国家の要であり、目先ではなく、先を見据え、長期的視点に立って人を育てることの大切さを説いた言葉だ。なぜなら、国を形作るのは人だからだ。「百年の計」とは、本来の意味において、下関の学校施設のように100年施設を使うということではない。

 

 国や地域の未来を担っていく人材を長期的視点を持ってしっかりと育てていく――そのために学校施設も抜かりなく整備していくという意欲を教育委員会や行政がもって対処しなければならないと思う。それは大人の責務だ。

 

前田市長はどう向きあうか

 

本池市議(手前)の一般質問に答える前田市長(12日、下関議会)

 本池 以上、学校施設の現状から、長寿命化計画の抜本的な見直しの必要性までやりとりさせていただいた。最後に前田市長と磯部教育長に聞くが、今の学校現場の実態をどう認識し、どう向き合おうと思っているか。

 

 前田市長 厳しいご意見・ご指摘をいただいた。すべてこの責任は私にあると思っている。一刻も早い改善をやっていかないといけないと思っている。市長として九年目だが、これまで一番とりくんできたのはなにかと聞かれたら、私は子育て・教育だと答えている。なので、非常に今日の案件は胸が痛いというか、心苦しい。

 

 学校教育費に対する予算は、かつて200億をこえる規模でやってきた下関市が、私が預かったときは70億を切っていた。それじゃいかんということで、学校司書を10人増やすことから始まった。学校給食のことなんかもそうだが、お金がかかってすごく大きな案件を先にやらなくてはいけないと思ってきたので、そちらを優先してお金を投じてきたというのは否定できない。順番のミスとは思っていないが、やってきた順番だ。

 

 結局、置き去りになってしまった学校のハードの部分への対応。中尾市長のときは、耐震化の数字が低かったという下関の指摘が全国的に見てあったので、すごく耐震化を頑張ってやってくれていて、今はこれから順次計画を立てて、トイレも。指摘はあるけれどもかなり今までやってきていなかったことをやっている。予算も相当増やしているが、ちょっと追いついていないな、というのはある。それは何なんだろうと思ったときに、人口減少、子どもの数が私は(昭和)51年生まれで5500人の同級生がいるが、今は1200人。減っていくものに対してなかなかお金を投入すること、思い切った政策ができなかったというのが過去としてあるわけだ。だけど過去のことを責めても仕方がないので、今を生きるわれわれがいかに前向きにやっていくしかない。今日はいい質問をいただいたのでちゃんとやっていきたい。

 

 磯部教育長 学校施設の老朽化にともなう不具合が発生していることは認識をしている。今後、学校施設は児童にとって学びや生活の場でとても大切なところなので、施設の安全確保についてはしっかりととりくんでいかないといけないと考えている。

 

 本池 このたび、安岡に関して「建て替え」の結論が出たことは一歩前進で、地域の方々、父兄の方々、学校関係者も大変喜ばれると思う。これを機に下関市の学校施設の改善を1校1校、確実に進めていただきたいと思う。私もいくつもの学校で老朽化の実情についてお話を伺ってきた以上、何度でも施設整備の推進、老朽校舎の建て替えを主張していきたいと思う。

 

下関市内で最も新しい(築16年)川中中学校の体育館も壁紙が剥がれ始めている(10月)

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この記事へのコメント

  1. 松中京子 says:

    私の主人、子供三人が安岡小学校に行ってました
    名前聞いたら懐かしくなりました、新しい学校になりますようにお願いします。

  2. いちごちゃん says:

    私は今66歳です安岡小学校にかよってました写真を見て懐かしく思います校舎がこんなに古くなつてるのにびっくりしました早く新しくしてやってお願いします

  3. 北海道で子ども時代を過ごし、現在は沖縄で自分の子どもを小学校に通わせている者ですが、、、。
    ここまでボロボロの校舎は見たことがなかったので、大変驚いています。
    子ども達がとても可哀そう。

    ここにこれを書いても、聞いてほしい人には届かないだろうけど、、、

    使い続ける決断している人達(市長や教育委員会等?)はさ
    1週間でもいいから、その学校で過ごしてみたらいいのに。
    で、逆に子どもの教室代わりに自分達の職場を提供したら?

    で、過ごしてみて問題ないっていうなら、そのまま入れ替えたらいいよ。
    問題あるなら直せばいいし。

    県外在住で何の力にもなれませんが、本池議員の活動を心から応援しています。

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