(2025年12月26日付掲載)

下関市が実施した学校体育館施設解放についての説明会には多くの利用団体関係者が詰めかけた(12月22日、下関市陸上競技場)
下関市民がスポーツをする環境の一つである学校体育施設開放をめぐり、市が来年度から予約システムを導入することをうち出し、利用団体など学校開放にかかわるすべての人々のなかで大問題となっている。たんに「予約がシステムになる」だけではなく、これまで下関市のスポーツ振興を支えてきた各種団体やスポーツ少年団、クラブチームの実情を無視し、「公平」の名のもとにシステムによる抽選で利用者を決めるというものだからだ。以前は各学校ごとに利用団体が集まり、話し合いによって年間の利用を決めていたが、2年前に「教頭の負担軽減」といって学校から切り離して民間事業者に委託し、市内一括でとりまとめることで委託料を大幅に縮減してきた。今度は「新規利用希望者が入れない」「施設の有効活用」といって予約システムを導入するものだが、利用実態や活動形態も把握しないままシステム導入だけで突っ走る「雑」なやり方に批判が高まっている。記者座談会で状況を整理してみた。
【本紙記者座談会】
A 学校開放は学校の体育館、運動場、武道場などの体育施設を学校教育として使わない時間帯に「社会体育」として貸し出すものだ。その数は61校で約140施設になる。この施設を利用する「登録団体」が約450団体(2025年当初)あり、スポーツ少年団やクラブチームなど子どもたちがメインのチームをはじめ、スポーツ振興会などの地域のスポーツ団体、地域の大人たちで結成された各種目別のチームも幅広く利用している。
今月15日~23日にこれらの団体を対象に、市(観光スポーツ文化部スポーツ振興課)が説明して回っているのが、学校体育施設開放事業の予約システムの導入についてだ。これまでは利用団体ごとに希望を出し、重複したところは調整(話し合い)をおこなったうえで年間利用を決めていたが、来年度から「1カ月ごと」で予約申請をおこなわなければならなくなることと、利用が重なればシステムによる抽選で利用団体が決定することが主な変更点となる。これまでのような話し合いではなく機械による抽選になる。

B 例えば4月の利用を決めることを例にとると【表参照】、2月1日~10日が「抽選申し込み期間」で、抽選日は11日。ここで当選すれば予約申請を20日までにおこなって「予約」をとる。落選すれば翌12日~21日までの間は抽選後の空き枠に申し込み、「1カ月10回、又は30時間」の上限枠内で予約ができるが、これは先着順だ。さらに、21日18時以降はキャンセル分を含めた空き枠を、上限なしで利用当日の開始時間までいつでも予約することができる、といったものだ。要するに、1カ月中、拘束されたあげく、今まで拠点にしてきた練習場所が確保できるかどうかは運次第になるということだ。
D 市はシステム導入の目的について「一言でいえば施設の有効活用」とのべている。これまでは利用希望が重なって話し合いが必要になっても、「調整がうまくできなかった状況があった」という。つまり、長く使っているチームが先に年間で押さえているために新規の団体が入ることができずにいるということや、話し合いになっても結局古いチームが押さえてしまうということだろう。確かにそうした実態は関係者のなかでも認識されていて、みんなで施設を仲良く使っていくための課題になっているようだ。
市としては押さえられたまま使われない状況がなくなれば「有効活用」になるだろう。そしてこれまでのような話し合いをやめて「抽選で公平性を担保」すれば新規も入れるし、不公平感もないということだろう。予約については「優先順位はもうけない」とはっきりいっている。
C 気になったのは、この「優先順位をもうけない」と断言していることだ。市は「子どもを優先すれば大人が置き去りになり、大人を優先すれば子どもが置き去りになる」といっていて、つまりは「これでみんな平等なのだ」といっている。役所内部では既存の団体が拠点として使うことを「既得権益」といっているという話も漏れ聞こえる。そういう言葉や姿勢から、現在の下関のスポーツを支えている人たちへのリスペクトは感じられない。
本当は、これほど活発にスポーツがされていることは喜ぶべきことで、利用者みんなが満足いくために、よりスポーツが振興されるように頭を使うのがスポーツ振興課の役割のはずだ。しかし、新規利用者が入れないという「正義」をかざして、利用団体、とくに子どもたちがかかわっているスポーツ団体がどうなるのかなどまるで考えていないと思える説明だ。そして市のそうした姿勢に、説明会では利用団体から意見が噴き出している。
1カ月ごとに予約と抽選
B 本紙記者は全会場には行っていないが、聞くところによると多くの会場で怒号が飛ぶような雰囲気だったようで、「殴り合いが始まりそうな雰囲気だったらしいよ」と様子を聞いた人がいっていた。おもにみなが感じているのは、市が現場をまったく理解していないことへの怒りだと思う。
来年4月分の申請が2月に始まるので、それまでにメールアドレスをつくって利用者登録をして団体登録をし、団体情報や代表者、連絡者、構成員名簿などを登録しないといけないから、だれが担当するかを決めることも含めて多くの準備をしないといけない。説明会で「学校行事は3月に定まるところがあるが、2月に予約が始まるとなるとどうなるのか…」という質問も出ていたが、約1カ月後にスタートというわりには、雑というか、実態をまったく把握しないままシステム構築をしたことが浮き彫りになる感じだった。毎月必要になる予約に対応する体制をつくらないといけないことにも意見が出ていた。みんな働いているのに、体育館の予約に翻弄されるということだ。
A 驚かれている一つが、「雨の日にグラウンドが使えないとき、急きょ体育館を予約している団体と直接交渉して体育館を使うといった形をとっていたが、今後も直接交渉できるのか?」という質問に対して、「又貸しになるので、利用権限の停止措置もあり得る」という説明がなされたことだ。各校区で顔の見える関係だし、同じ学校の子どもたちのことだから、「ちょっと使わせてね」というやりとりが成り立つのはむしろいいことではないか。それが「虚偽」「利用権限停止」といった罰則的な言葉が用いられ、何か悪いことをしているかのような扱いをされたことに、何だかなという思いが語られていた。
これからは、体育館を予約している団体と話をつけて、システムで予約をキャンセルしてもらい、使う団体がすぐさま予約を入れて使うことは可能だという。ただし先着順だから、キャンセル直後に別の団体が素早く予約を入れてしまえば、話をつけた団体は使えない。これが「公平」なんだそうだ。
C 駐車場に関する質問も出ていた。グラウンドを使用するサッカーや野球チームと、体育館を使用するバスケなどの練習時間が重なったとき、これまではお互いに連絡をとりあって「サッカーは何台、バスケは何台」というように、駐車場で困らないように調整していたという。しかし、どの団体が使うかわからなくなれば、事前の調整はできなくなって早い者勝ちになる。それこそトラブルの元だ。スポーツ振興課はそういう状況は知らなかったようで「システムに駐車場の制限があるという情報を入れる」みたいな回答をしていたが、そういう問題じゃない。どの学校も駐車場の台数は決まっているから、練習時間が重なるチーム同士で調整していたのをどうするかということだ。そんなこんなも含めて、まるで実態を理解していないことがよくわかった。
B サッカーのスポーツ少年団の指導者が発言していたが、その学校では野球とサッカーがグラウンドを使うので、砂が減ってくると、サッカー、野球、学校、PTAなどで金額を分担して真砂を入れてきたそうだ。同じように、体育館を使うチームがモップを買ったり、一年の終わりにはワックスがけをしたりなど、拠点として使っている学校であり、チームの子どもたちが通っている学校でもあるから、お互いに支え合ってきた関係がある。備品が壊れたときにどうするかというルールなども同じで、各学校でみんなが話し合いを重ねながらつくってきたルールがある。もちろんトラブルもありつつ積み重ねてきたつながりや関係性に対して、スポーツ振興課の対応がものすごく軽い。「今後は教育委員会が負担する」が、「今からも負担してくれるならやってくれてもかまわない」というから唖然とする。
A 「問題が起こるのはシステムが間違っているから」という意見が出たのは当然だ。説明を聞いて「正確性、公平性、利便性が向上する」と思った人はほとんどいないだろう。むしろ市民のつながりを断ち切る仕組みに、「お互いの顔が見えなくなるのが心配」という声も出ていた。このたびの説明会で出たような実情をしっかり把握して、1年かけてみんなが使いやすく、安心してスポーツができるシステムを構築するのが筋ではないか。
C もう一つ、システム導入の理由の一つに「新規のチームが入れない」ことをスポーツ振興課はあげているが、新規に学校体育館を利用したいと思っているチームの関係者も、「説明のなかに子どもたちの姿が見えなかった」と話していた。大人はともかくとして、子どもたちは目標を持って一生懸命練習している。それが「今月は練習場所が当たらなかった」ということになれば練習ができない。そして翌月も当たる保証はないという状況では落ち着いて練習することなどできない。
「大会で優勝したら表彰したり褒めてくれるが、それは日常の地道な練習があってのこと。本当の意味で子どもたちのことを考えてほしい」といっていた。
練習場所が毎回変わる!?
C 関係者がもっとも懸念しているのは、今回のシステム導入によって「活動拠点」が失われる可能性がおおいにあることだ。抽選で決まるとなれば、これまで活動拠点としていた練習場所で練習できる保証はなくなる。「今回は〇〇小学校」「次回は××中学校」といったように練習場所が転々と変わっていくことも想定される。「新規チームが入れるように」というが、そのような決め方では新規のチームだって活動拠点が定まらないのは同じことだ。それが「公平」なのか?それで誰がよくなるのか? という疑問だ。
C 活動拠点が失われることによってどうなるかだ。とくに心配されているのがスポーツ少年団やクラブチームなどの子どもたちがメインのチームだ。スポーツ少年団は2024年現在で16種目、104の団体があり、2022人の子どもたちが活動をしている。このスポーツ少年団で具体的に考えてみると、「練習拠点」がなくなったときに真っ先に心配されるのは子どもたちの移動だ。104の団体の登録には「主な活動場所」が記されていて、例えばサッカーでは、吉見サッカースポーツ少年団の主な活動場所は「吉見小」になっているし、豊浦サッカースポーツ少年団は「豊浦小」に、安岡FCスポーツ少年団は「安岡小」、王司は王司小、江浦は江浦小となっている。ソフトボール、軟式野球、バスケ、バレーもみな同じようなもので、各小学校を拠点にその地域の子どもたちがメインで通っている。
もちろん保護者の送迎で他の小学校のスポーツ少年団に通う子どもたちもいるし、陸上競技場や公園などで活動するチームもあるが、多くは自分が毎日通っている学校だから、放課後自分で準備をして練習に行っている。システムによる抽選になれば毎回自分の学校が練習場所になる保証はない。活動拠点が実質なくなってしまい、子どもたちが自分で通える環境ではなくなってしまうのではないか、保護者の送迎が必要になるのではないか、という不安の声が上がっている。
D そのようになることになんの意味があるのだろうか。例えばだが、豊浦小で練習していた豊浦小の子どもたちがぞろぞろと周辺の学校や遠方まで行かなければならなくなることを想像すると意味不明だ。
B 移動しなければならなくなった場合のことを考えてみると、例えばスポ少バレーチームでは、ボール数十個、ボール入れ、ポールカバー、救急箱や補給用の水分(お茶など)を学校の部室に置いている。放課後やってきた子どもたちが大人の手を借りながらこれらを出して準備していくのだが、練習場所が変わるとなるとこれらの荷物を毎回運ぶ必要性が生じる。子どもたちが持っていけるはずもなく、保護者や指導者がこれを運ばなければならない。野球やサッカーにしても同じだ。そうした実情からも「毎回どこの体育館になるのかわからないようなシステムは難しい」というのが大半の意見だ。「今回、練習場所がなかったからお休みです」みたいなのが続いていくと、スポーツ活動が先細りすることにつながることも懸念されている。
C そうならないように、いかに練習場所を確保するかで、指導者たちが頭を悩ませ、対策を練っている状況があり、本末転倒な状況にもなっている。
A スポーツ少年団は、「スポーツによる青少年の健全育成」という目的のために、「一人でも多くの青少年にスポーツの歓びを」「スポーツを通して青少年のこころとからだを育てる組織を地域社会の中に」という願いのもと、1962(昭和37)年に創設され、下関市では1964(昭和39)年に誕生したという。創設当時の目的や願いから見ても、今の動きはむしろ地域社会のなかで子どもたちがスポーツすることを困難にさせている。スポーツ少年団の本部はスポーツ振興課のなかにあるのだが、なんの冗談かと思う。そういう理念や創設経緯を知らないのだろうか。
D あるスポーツ少年団指導者が、「地域にあることで、校区の子どもが見に来て“やってみようかな”と思ったり、友だちがやっているから僕もやってみようかな、と新しい子どもが入ったり、そうした広がりがあったのに、活動拠点をこのように崩していけば先細りしていく」といっていた。担当課がそうした視点を持ち合わせないまま、既存団体を「新規チームを排除する悪者」のような扱いをするのだから、ちょっと話にならない。
市は既得権益というが…

説明会では市側の説明に対して参加者が紛糾する場面もあった
C 説明会会場でも出ていたように、グラウンドや体育館の整備費用を利用するチームが負担している状況は各学校にある。「使用中に壊してしまった備品の弁償は当たり前」という共通認識はあるが、最近は経年劣化による破損も増えている。なにせ古いから備品も老朽化しているという。責任が問えない部分については学校と折半するなどして修理をしているし、年末や年度末に1年間お世話になった練習拠点の体育館や体育倉庫やグラウンドをきれいに掃除するチームはたくさんある。それはクラブチームも同じだ。どのチームも子どもたちが安心・安全に練習できることはもちろんであるし、活動のなかで責任感、感謝、協力、対話など、教育的視点を持って子どもたちにかかわっている。こうしたかかわりや、そこにある思いを市は理解しているだろうか。拠点があるというのは「既得権益」ではないのだ。
A システムを含め体制の課題も多い。例えば、システム予約は1時間単位になっているが、現在は30分単位で使っているケースも少なくないそうだ。今後もし「うちが借りておくから30分で交代しよう」と次のチームと分けると、それも「又貸し」になって利用権の停止になる可能性があるという。利用者の実態にあわせてシステムがつくられるのではなく、システムに利用者が振り回されるようでは欠陥品ではないか。このシステム導入に473万円(予算額)かかっている。それだけかけてなにをしているのか…という話だ。
B 体育館や体育倉庫の鍵についても、これまでは利用団体の代表者が鍵を持って管理していたり、キーボックスが設置されているところもあった。例えばA小学校に利用団体が5団体いれば5人が鍵を持っていればよかったが、今後は450団体すべてが対象になる。「まさか450個も合鍵をつくるなんてならないよね…」なんて冗談まじりに話題にされていたが、聞いてみると暗唱番号付きのキーボックスを設置するのだという。で、この暗証番号は変えることができるというから、システム上で変わるのかと思っていたら、変えるのは「学校」ということだった。学校が暗証番号を変え、スポーツ振興課に連絡し、スポーツ振興課がその日の利用団体の代表者にメールするのだという。また教頭先生の負担が増えてしまうではないか。このことを学校は知っているのだろうか?
A 今の学校体育施設開放に課題があるのも事実だ。ここでは細かくはいわないが、いろいろ耳にはする。やっぱりお互いに譲りあったり、どのチームも練習できるように心を配ったり、そういう風土をつくっていかないと、新規のチームがなかなか練習場所が見つからないという事態も発生する。そして利用しているなかでトラブルは発生するものだ。だからこそ、以前は校区や地域の人たちをよく知っている教頭先生がやっていたように、団体同士で解決できない場合は行政なりだれかが間に入って調整することが必要なのではないか。大変なときこそ本気で向きあって、「ちょっと譲ろう」と思えるようなかかわりが大事だし、行政の腕の見せどころだ。満足でなくても多くの人が納得いくやり方をしていくことで、苦情も減るし子どもたちも安心して活動できる。
B 今のやり方は、ただ「厄介な話し合いをせずに済む方法」にしただけだ。そして「新規が入れない」問題が解決されたかというと、新規も既存もみんなの活動の場が不安定になってしまうし、ますます分断を生んでしまう。つまり、いきいきと生涯にわたって体力づくりやスポーツ活動をおこなう社会体育を「振興」させるはずの市が、自らの手で逆のことをやっている。部活動の地域移行(展開)も中途半端であるがゆえに、中学生を心配してなんとか受け皿を整備しようと新規のチームをつくっていく動きになり、チームが増えていくなかで混乱はますます深まりそうだ。
課題はあるにせよ解決の仕方が歪んでいるし、「今まで入れなかった人たちからは喜びの声をいただいている」(スポーツ振興課)ではないのだ。
民間委託は2年前から
B そもそもだが、今回のシステム導入前の段階として、民間事業者への一括委託がある。2023年までは、学校ごとに設置された体育推進運営委員会に市が「開放業務」を委託し、その窓口を担う教頭先生が、登録や利用調整をおこなってきた。委託料の一部が学校に入り、それがワックスなどに充てられていたようだ。しかし、コロナ禍に学校閉鎖がたびたびあるなかで利用団体への連絡など事務が煩雑化し、それをきっかけに学校から調整業務の「切り離し」を求められたという。
市は小学校区ごとに設置されている「地域スポーツ振興会」に打診したが、地域ごとに温度差があり、「すべてを移行することは困難」という判断をしたという。
そこで出てきたのが、すべての学校体育施設を一括して民間事業者に委託する計画だ。このメリットとしては、「登録団体の利用希望が重なったときの調整の幅が広がる」「全ての開放校の利用状況が可視化される」ことなどで、より多くの団体に施設を利用してもらえる――といったことが表向きの目的だった。だが実際は「一括」にすることで学校ごとに出していた委託料を大幅にカットすることが眼目だったといっても過言ではない。事実、委託料(予算額ベース)は2020~21年度までは約530万円だったのが、22~23年度には260万円に半減し、民間委託した24年度は130万円まで削減されている。
C そして、2024年度からこの事業を請け負った事業者の体制がなんと貧弱だった。よほど学校施設に精通していないと62校134施設を担当者が1人で全部調整するなんて到底無理な話であったことがわかる。それまでは学校ごとに利用団体が集まって「〇〇は水曜日」「△△は金曜日」などの調整をおこなっていたのに、それを一旦白紙にして市内全域を対象に希望をとった。利用が重なったチームが1カ所の会場に集められたが、喧々囂々で民間事業者の担当者が泡を吹いていたという。それは今年度の利用を決める2024年度末の会議でも同じだった。
結局この事業者は1年でかわり、2025年度は公営施設管理公社が問い合わせ先窓口となった。そして来年度はシステムでやっていこうということだ。「教頭の負担軽減」といって始めた民間委託から2年、学校から調整業務を強引に切り離しただけで、スポーツ関係者は振り回されっぱなしだ。利用者と学校のあいだに業者を挟むようになったがために、やりとりがややこしくなっている現状も語られている。その解決もしないままに次の段階に進もうとしているなかで、「システムの前に現状の整理整頓をしてほしい」「実態を把握して対策を考えてほしい」という声が上がるのは当然といえる。
A 下関は広域で学校数も多いのに、すべてを一括の窓口にするなんて現実的ではない。どの学校の体育館が何コートとれるかとか、備品はどんなものがあるのかとか、それが使えるのか使えないのか、駐車場の収容台数、片付けの仕方などまで、全部把握するなんて無理に決まっている。山口市では地域の公民館が学校開放の窓口になっているそうだ。やはり地域に根ざした形が必須だと思う。システムを入れるにしても、地域ごとの括りで調整するみたいな中身にしたらいいのに…という声もかなりある。
D 教頭を含めた管理職からも「(調整は)確かに大変だったが、これまでは顔の見える関係だからこそ鍵を渡したりもできている。誰が来るかわからないとなると管理も不安だ」「誰が使っているかもわからない状況はどうなのか」「今のままシステムを強行するとますます忙しくなる」という声が上がっているという。
市は「教頭の負担軽減」のために始めたといっているが、当時、教頭の負担軽減の必要性を指摘した人たちもここまで混迷するとは思っていなかっただろう。
前田市長の判断に注目
D なぜこれほど、毎年当事者から怒られるようなことをくり返すのか――という疑問が湧くが、その一つが「社会体育」についての理念を持ち合わせていないからだという指摘がある。その昔、下関市には「体育課」があり、そこが社会体育を担っていたという。しかし体育課はなくなってスポーツ振興課にかわり、海峡マラソンやツール・ド・しものせきなど全国から人を呼び集めるような大規模イベントがメインの課になっていると市役所関係者も話している。人員配置も十分でないなかで、大規模イベントを抱えながら部活の地域移行や学校体育施設開放を地に足つけてやっていくことができるだろうか。利用者や当事者の声を聞き、課題を浮き彫りにして解決のために動けるだろうか。時間的にも人的にも余裕がないため業務委託するしかなく、さらに悪循環に陥っている。市の体制としても社会体育に責任を持つ係なり部署が必要ではないか。
A 2024年の一括民間委託からシステム導入までを見ていると、「新規が入れない」という親切心だけではないことは明らかだ。実際、下関市は2019年策定の「財政健全化プロジェクト」で新たな収入の確保として、「学校体育施設開放に係る使用料の徴収」を掲げている。その内容は「受益者負担の見直し基準をもとに、小・中学校体育施設等使用料の徴収を行い、新たな収入を確保する」となっていて、この3年の動きはこれを実現するためのものなのだろう。だから学校ごと、地域ごとで考えるのではなく乱暴に一括にするし、公共施設予約システムのようなシステムを導入するのだろう。
B 料金をとるといっても市民みんな知っているように今の学校体育館はかなり古い。今年の豪雨だけを見ても15棟が雨漏りするような状況だし、壊れたトイレはいつまでたっても修理されないし、臭いし、フロアの壁紙が剥がれているといった状態なので、料金をとるのは当分先のことにはなるだろう。で、「受益者負担でないのはけしからん!」といっているけど、むしろ今の古い施設を利用団体は大事に使っていると思う。使用料は無料かもしれないが、子どもたちの安全のためや練習環境の維持のために、お金を出して協力している。まずはその実態を知ってからじゃないか。
A みんなが激怒しているもとで強行するのかどうか、前田市長の判断が注目される。利用団体は私利私欲でいっているわけではなく、子どもたちを含め、みんなが安心してスポーツができる環境が失われてしまうことと現場への理解がないことに怒っている。が、スポーツ振興課はそうした声を「既得権益の人たちの主張」と片付けている節があり、説明会で出た意見にとくに対応する方針はないといっている。ちょっと偏見に基づいているのではないか? と感じるほどだ。市民やチームを分断し、トラブルが多発して大変になるのはむしろスポーツ振興課ではないか。
いずれにしても、このような乱暴な形では、解決するものも解決しない。いったん立ち止まって、関係者の声を聞きながら、みんながうまく回るにはどんなシステムがいいのか熟議を重ねることが必要だ。少なくとも優先順位をつけるなどして、子どもたちが地域で活動できる体制を保障すべきだと思う。でなければ大混乱になることは必至だし、市政全体に向けられる目がさらに冷ややかなものになることは避けられない。
最終的には市長の前田晋太郎にすべての矛先が向くわけで、担当職員や部局のやっていることについて、しっかりと認識するべきだ。そして、是正すべきを是正しなければ、来年にかけて市内のスポーツ界は大騒ぎになることが避けられない。





















