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こっそり進む労働法全面改悪 大企業には解雇の自由

 安倍政府が「1億総活躍社会」「同一労働同一賃金」「働き方改革」の旗を振りながら、労働法の全面的な規制緩和に乗り出している。小泉構造改革を手がけた竹中平蔵やパナマ文書に名前が載った三木谷浩史のような面面を産業競争力会議(議長・安倍晋三)メンバーに登用し、派遣労働の拡大、「残業代ゼロ」を強要する労基法改悪、企業がいつでも労働者を解雇できる解雇規制撤廃、国内の低賃金労働をさらに促進する外国人労働力の増加策など諸諸の施策を一斉に動かしている。
 
 残業代ゼロで長時間労働強制 時代100年巻き戻す愚策

 都市部でも地方でも時給800円程度の非正規雇用があふれている。「アベノミクスで雇用が増えた」「求人数は増えた」というものの、中身は短時間パートやアルバイト、派遣労働ばかりだ。製造業、運送業、飲食チェーン店、ガソリンスタンドなどで、きちんと制服に身を包んでいても正社員はほとんどいない。コンビニやスーパーでは中国人や東南アジア、中南米の若者たちがレジを打つ光景も珍しくなくなっている。このなかで、直接雇用すらしない派遣労働の問題点が深刻化している。派遣会社に登録していても仕事がいつあるかわからない。事故や給料不払いなどトラブルは多いが、いつも派遣元と派遣先、職安のあいだをたらい回しされてまともに解決する保証すらない。かといって派遣先の会社で意見をいえば、すぐに派遣元の会社を含め関連企業へ連絡がいき、注意を受けたりする。企業のブラックリストに名前が登録され、二度と派遣依頼が来なくなったケースまである。
 もともと雇用契約は直接雇い主と交わすのが常識だった。それが2000年代以後、第三者が仲介する派遣業が急速に台頭した。賃金水準の低い地方から失業者をかき集めて都市部へ短期間だけ送りこむ人買い稼業だ。直接雇わず、雇用保険もかけず、必要なときだけ働かせることができる。大手企業が正社員を安上がりな派遣に振り替えていった結果、低所得で不安定な非正規雇用が一気に拡大した。非正規雇用労働者は1953万人(2015年)になり、3年前と比べ178万人増加、全労働者の約4割に達した。年収200万円以下の「働く貧困層」も1139万人(2014年)になった。「アベノミクスで景気が良くなった」のは大企業や一部の富裕層だけだった。
 このなかで労働法改悪を主導する竹中平蔵は、人材派遣会社パソナ・グループの取締役会長を歴任した人物で「みなさんには貧しくなる自由がある。何もしたくないなら、何もしなくておおいに結構。その代わりに貧しくなるので、貧しさをエンジョイしたらいい。ただ一つだけ、そのときに頑張って成功した人の足を引っ張るな」と公言している。楽天創業者・三木谷浩史は、産業競争力会議で「ベンチャー企業は夢を見て24時間働くのが基本」「ベンチャーは労基法の適用除外を」と要求してはばからない。人買い業者や、労働法制の存在自体を否定する財界代表が「改革派」として重宝され、労働法や雇用関連規制をみなとり払い、日本列島を大企業や外資の草刈り場に変えようとしている。
 このもとで真っ先に具体化したのが派遣法改悪だった。もともと派遣労働自体が禁じられていたのを「高度な専門職に限定する」「派遣期間は1年~3年でそれ以上過ぎれば正社員にすることを義務づける」といって強行した。今や製造部門を含めて労働現場は派遣労働者が主力を占めるようになっている。そして昨年の派遣法改悪では、派遣期間の制限をとり払った。人を代えたり部署変更をすれば、事実上、無制限に派遣労働者に仕事をさせられるようにし、派遣法の大原則だった「常用雇用の代替防止」をとり払い、全産業の正社員をみな派遣労働者に置き換えることを合法化した。このなかで主張する「同一労働同一賃金」は非正規雇用の待遇改善を目指すものではない。正社員の非正規化が狙いである。

 大資本の自由 生命の再生産すら否定

 「1億総活躍プラン」では「長時間労働の是正」をうたったが、安倍政府が実際にとりくんだのは労働時間ではなく「成果」で評価する「脱時間給」を盛り込む労働基準法改悪である。現在の労働時間は「1日8時間以内、1週間40時間以内、それ以上働かせたら残業代を払う」と決まっているが、「脱時間給」はオール歩合制や能力給が中身となる。タクシー運転手なら「運賃収入」、訪問介護職員なら「訪問件数」、保険の外交員なら「契約件数」、ヤクルトや弁当など外回りの販売員なら「売上」が給料の基準になっていく。「仕事のノルマ」と「給料」を決めるだけで、勤務時間は規制対象外とするものだ。短時間で終わる仕事なら確かに勤務時間は短くて済む。しかし圧倒的に多いのは過重ノルマが課せられる職場である。いくら長時間働いても、「成果」が少なければ残業代も深夜割り増し賃金も払わないし、まともな基本給すら保証しない制度である。時間内に与えられた課題や業務が達成できなければ、「能力が低い」と見なされ、自主的な長時間残業で補うことになる。
 当初、「ホワイトカラーエグゼンプション」(残業代ゼロ法制)といって持ち出したが、批判世論が強まるなか「高度プロフェッショナル制度(特定高度専門業務・成果型労働制)」と看板を掛け替えてごり押ししている。派遣法導入時と同様、「高収入の労働者が対象だから、過労死が増えることはない」と宣伝して導入し、なし崩し的に適用範囲を広げようとしている。労基法改悪自体は参院選の影響を恐れ「継続審議」となったが、選挙が終わればいつでも成立へ踏み出す構えである。「働き方改革」といって進んでいる現実は「長時間労働の是正」どころか、過労死激増の危険性の増大だ。
 そして昨年から具体化しているのが、正社員であっても簡単にクビにできる「解雇の金銭解決制度」導入である。現在は企業が一方的に労働者を解雇することはできない。国籍、信条、社会的身分、性別、病気、業務上のけがでは解雇できないことが労基法に明記されているからだ。労働契約法でも「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を乱用したものとして無効とする」と定めている。
 ところが昨年6月、「『日本再考戦略』改定2015」や「規制改革実施計画」を閣議決定し、「解雇自由化」の本格的な検討に着手した。それは企業側が金を払えば問答無用で労働者を解雇できるという内容である。裁判で「不当解雇」「解雇無効」の判決が出ても企業が罰せられず「金を払えば解決」とする法整備を目指しており、企業側が恣意的に労働者を排除したり、労働組合つぶしに利用することも可能にしようとしている。「1億総活躍プラン」で「保育士の賃金を平均で月額6000円、介護職員は平均で月額1万円引き上げる」と部分的な改善策を大宣伝する傍らで、「解雇の自由化」を含む社会的規制の剥奪で、労働者の権利を根こそぎ崩していく労働法制の全面改悪に乗り出している。
 もともと労働基準法や労働法は、労働者が人間として生活するために社会的規制として維持されてきた。労働者から労働力を買い、働かせて利潤を得るのが資本で、一方的な解雇を認めず残業代を支払うルールも定めてきた。労働者は奴隷のように24時間束縛される資本の所有物ではないからである。八時間労働制も資本主義登場から今日まで、労働者がたたかいで勝ち得てきた人間としての権利である。産業革命後の生成期には児童労働までやらせ、死ぬまで働かせる強欲資本とストライキでたたかい、人間的な生活、人間としての尊厳を認めさせてきた歴史がある。この覆しをやり、100年以上前に時代を逆戻りさせる流れが露骨になっている。
 実際に労働者が家庭を持ち、わが子を次代の担い手に育てたり、親の介護をしようにも、極めて困難な状況が蔓延している。労働環境に加え、教育も保育も福祉もすべて企業が営利追求の道具にして負担を強要しているからである。政府が大企業や財界の道具となって、社会に必要な規制や法律をみなとり払った結果、「大資本の自由」のみ花盛りとなり、国民生活の貧困化が進み、生命の再生産もできず急激に人口が減少する事態に直面している。こうした非人間的な労働環境や社会状況を抜本的に転換しないことには、結婚もできないし子どもも産めず、それぞれの生活の維持はおろか、国や民族まで消滅してしまいかねないところにきている。そしてこの遠慮をしらない大資本が国内市場の狭隘化にともなって海外市場を求め、その海外権益を守るために集団的自衛権行使を可能にし、アメリカに付き従って日本の若者を肉弾として放り込むところまできた。
 このような現状はたたかわなければ打開することはできない。労働者として勝ちとってきた歴史的な権利を含め、国民生活を守る全国的な政治斗争を戦争反対の力とつなげて強力なものにしていくことが急務になっている。

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