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メジャー参入への地ならし 水道事業の広域化を促進する意図

 水道民営化を促進する水道法改悪と連動して、安倍政府が水道事業の広域化を促進する施策を次次にうち出している。財務省は財政制度等審議会(財務相の諮問機関)の財政投融資分科会で、水道広域化にとりくむ事業者を優遇する施策を提案した。総務省は水道事業の統合に応じた市町村のみ補助金を出すことを検討している。しかし多くの水道局が独立採算制のもとで業務の広域化、人減らし、部分的な業務の民間委託に拍車がかかり、災害やトラブルが起きればたちまちパニックになる脆弱な体制がまん延している。そのような状態を拡大する広域化計画に住民も自治体職員も厳しい視線を注いでいる。

 

 今月2日、財務省は財界代表や労組代表などが参加する財政制度等審議会で上下水道向けの財政融資資金をめぐって「広域化にとりくむ事業者に優先配分する」と提案した。

 

 昔ながらの市町村単位で上下水道事業の運営を続けている地域は、守備範囲が広域でないため、漏水や水道管破損などトラブルがあればすぐ駆け付け対処することが可能だ。

 

 しかし財務省はそのような体制を「非効率」とみなし、複数の市町村を一つにまとめ、より少数の人員で広域の水道事業を管理する「効率化」を要求している。そのために、これまでは事業内容にかかわらず一括交付していた財政融資資金に差をつけ、広域化を促進する事業体の融資を優先する方向をうち出した。それは広域化をとりくまない自治体の融資は後回しにし、兵糧攻めのような手法で広域化を押しつける内容である。

 

 さらに総務省が「水道のあり方に関する研究会」で検討しているのは、都道府県が主導して水道事業統合を盛り込んだ「広域化推進プラン」をつくらせ、この内容に沿って事業統合を進めた市町村に限り、国が国庫補助金の拡充や地方交付税の増額をおこなうというものだ。統合内容は水道事業全体の統合だけでなく、「浄水場など一部施設の共同設置」や「共同利用や料金徴収業務や施設管理など業務の共同化」でもいいという。

 

 政府は統合をおし進める理由について「人口減少等による料金収入の減少」や「施設・管路等の老朽化に伴う更新投資の増大」によって経営困難に陥る団体が出てくるとし、事業の広域化によって経営効率を高め「水道事業における持続的な経営の確保」を図ると主張している。

 

 国が事業統合を呼びかけるのは、給水人口が5000人超の上水道事業、5000人以下の小規模な簡易水道、事業者に水道用水を供給する業者など約6500に及ぶ水道事業体が対象となる。

 

 ただ管轄範囲を際限なく広げて人件費を削減すれば、災害やトラブル時の対応が遅れるのは必至だ。水道事業広域化を促進している北九州市を見ても、もともと市内7区(門司、戸畑、若松、小倉北・南、八幡東・西)の全区役所内に水道の相談窓口と工事部門があったが、現在は2カ所に集約している。その結果、2016年に寒波が襲って水道管破裂があいついだとき、全市から2カ所に問い合わせが集中し電話受付はパニック状態になった。しかも2カ所から全市に工事作業にでかけていくため、移動距離ばかり長くなって作業が遅れ、「経営という面では効率的でも災害対応という点で見れば非効率的すぎる」と水道局の現場から批判が噴出した。

 

 都市部ですらそのような状態であるが、今回は僻地を多数抱える小規模な水道事業者にまで拡大する方向だ。断水が発生したときや水道管が破損したときなど、予期せぬ災害の対応が困難になることに危惧(ぐ)は強い。「経営効率を高める」と称して「住民生活を守るため水の安定供給を保障する」という水道事業本来の役割を否定していく広域化の反社会性が露わになっている。

 

 なお臨時国会で審議中の水道法改悪案は、広域化に向けて都道府県が関係市町村による協議会を設置する規定も盛り込んでいる。日本の水道事業参入を狙う水メジャーは水道施設のIoT(物のインターネット)導入を目指しており、事業の広域化と徹底したコスト削減をセットで実行することで利幅を増やそうとしている。水道事業広域化はそうした水メジャー参入の地ならしにもなっている。

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