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地獄の釜の蓋を開けた国会 参院でついに日米FTA承認

与野党、メディアあげて目くらまし

 

 参議院の外交防衛委員会は3日、「日米貿易協定及びデジタル貿易協定」(日米FTA)の承認案を採決し、賛成多数で承認した。4日に参議院本会議で採決し成立となる。これは安倍政府・与党の既定方針通りの成り行きだ。もっといえばトランプの思惑通りの進行であり、来年1月1日の協定発効は確実となった。安倍政府としては最初から今臨時国会の最重要課題を日米FTA承認に据え、協定発効に向けて全力をあげてきた。その中心は、国民に協定の内容を知らせないことであり、協定の内容を知った国民が抗議の声を上げることを阻止することだった。野党は「桜を見る会」疑惑が今国会の最大の焦点だといって茶番劇を演じて騒ぎ、メディアも「桜」一色の報道に終始して国民の目からそらすことに加担した。そうしたなかで国会では衆議院も参議院も政府・与党の予定通りに採決がおこなわれ、「賛成多数で承認」という結果になった。

 

 この間のいきさつを振り返ってみると安倍首相は8月25日、フランスでの日米首脳会談で今回の日米FTAに基本合意した。農産物ではアメリカ産の大幅市場拡大、自動車分野ではアメリカ側がTPPで約束した関税撤廃を反故にするなど、一方的に日本側が譲歩する内容だった。さらに安倍首相は日米FTAとは別枠で、トウモロコシの大量購入も約束した。トランプは「中国が約束を守らないせいで、トウモロコシが余っている。それを安倍首相が全部買ってくれることになった」と大喜びだった。外務省の発表ではまずトウモロコシを大量に購入したうえで、小麦の大量購入も約束している。

 

 トランプは来年の大統領選挙を控えて、米中貿易戦争の泥沼化によって大量の農業票を失いかねない瀬戸際に立っており、余剰農産物を日本に押しつけ危機打開をはかろうという思惑だ。

 

 昨年9月の日米首脳会談で交渉に入ることを決めたとき、安倍政府はこの交渉を「日米物品貿易交渉(TAG)」と呼び、日米FTA交渉であることを隠そうとしたが、今年8月の日米共同声明の原文には「TAG」という呼称はなく、物品だけでなくサービスや投資など幅広い分野を含む包括的なFTAであることが示された。

 

 米国通商代表部(USTR)は昨年12月に「日米貿易協定交渉の目的の要約」を発表しているが、これには今回の物品貿易やデジタル貿易に加え、サービス貿易(通信・金融を含む)や投資、国有企業、競争政策、政府調達、紛争解決、為替など22項目が盛り込まれている。8月の日米共同声明には、今回の日米FTA発効後4カ月以内に第2段階の交渉対象分野の協議に入ることが明記してあり、日米FTAの総仕上げに向けてさらにトランプが要求を突きつけてくることは確実だ。

 

 日米FTAは今回の農業、自動車分野に限ったものではなく、医療や労働、知的財産、金融や公共事業、為替など国民生活の全般にわたってアメリカの多国籍企業が利益追求のために有利なルールを押しつけるものにほかならない。「ウィン、ウィン」どころかまったくの対米従属の不平等条約でしかない。

 

参議院審議時間わずか9時間

 

 安倍政府はそれをおし隠すために、交渉内容をはじめ協定内容の全容を国民に知らせることを全力をあげて拒んできた。今臨時国会召集は10月4日で、冒頭から二閣僚の更迭問題に時間を割き、衆院本会議で審議入りしたのは10月24日で、本格的な質疑が始まったのは11月6日だ。与党が資料提出を拒否したために野党が退席するなどでもめたりもした。国会での審議時間を見ても、衆議院ではわずか11時間あまりで、野党が退席した「空回し」時間を除けば10時間にも満たない。参議院ではさらに少ない約9時間だ。

 

 ちなみにTPPでは衆議院で70時間、参議院で60時間の合計130時間を費やしている。またTPP11は両院で50時間近くを割いているのと比べても格段に短い。

 

 しかも、11月8日に参院予算委員会で「共産党」の議員が「桜を見る会」問題をとりあげたのを契機に、マスメディアもこれに一斉に飛びつき「桜」一色の報道をして、あたかも「桜を見る会」が最重要課題であるかのように世論誘導をはかっていった。他方で日米FTA承認案の内容については、見事にどのテレビ局も、どの大手新聞も口をつぐんだ。

 

 野党は今国会の最大問題は「桜を見る会」問題とし、「安倍首相は予算委員会に出てきて説明しようとしない。直接質問するためには日米FTA承認案を衆院で通過させ、参院に送り、参院本会議に出てきた安倍首相を追及する」といった本末転倒した論理で、日米FTAの衆院通過を容認した。

 

 衆議院での採決を11月19日とすることに合意したのは11月13日の国会対策委員長会談で、立憲民主と国民民主の国対委員長が自民党とのあいだで手を打った。これに他の野党各党も同意した。採決すれば賛成多数で承認されることは明らかだった。ここが日米FTA承認案を阻止するかどうかのヤマ場だった。この重要局面で、野党が「桜を見る会」を最重要課題として、「そのために日米FTA承認案の衆議院通過を認め参議院に送るのは苦肉の策」というごまかしをやった。国民に対する重大な裏切り行為となった。

 

 そして19日の衆院本会議で採決し、想定通り「賛成多数」で日米FTAを承認した。翌20日には、与党は「これで日米FTA承認案の成立は確実になった」として、今臨時国会の会期は延長しないことを決めた。

 

 11月20日から参議院での審議に移ったが、参院での審議時間も立憲民主や「共産党」など野党議員は大半を「桜を見る会」問題に費やし、日米FTA承認案の内容について国民に目隠しする自民党と同罪の役割をはたした。

 

 野党は「安倍首相出席の予算委員会の開催に与党が応じないので、首相が出席する参議院本会議で追及する」という話であったが、12月2日の本会議で安倍首相を前にして追い詰める迫力はなく、まんまととり逃がしてみせるという茶番を演じた。

 

 与党側は、衆院通過後すぐに、12月3日に参院外交防衛委員会で採決・承認、12月4日に参議院本会議で採決、日米FTA承認のプログラムを組み、ことはその通りに進んだ。

 

 与党多数の国会で、野党ともども息を合わせて国民に目隠しして通過させたのが今回の日米FTAである。安倍政府がもっとも恐れているのは、国民に知られることであり、今後の第2段の交渉も何が売り飛ばされるのか厳重に監視し、広く知らせていくことが求められている。また、国民に目くらましをして視線をそらす役割を果たす旧政治勢力やメディアの存在についても、厳しく批判を加えなければならないことを突きつけている。

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この記事へのコメント

  1. 太郎さんが、街頭記者会見で「桜なんて可愛いもの。野党は体を張って、日米FTAを阻止しないと」と言っていました。最終的には数の論理で阻止できなくても、メディアが報道せざるをえないほどの闘い方を国会でやらないといけないと。
    やはりれいわがもっと強く大きくならないといけませんね。

  2. ますます日本が衰退する。
    この国に生きる人々を守る気概のない政治屋ばかりだ。

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