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「ガザ地区におけるジェノサイドの1000日」 パレスチナ人権センター(PCHR)が現地から告発

(2026年8月21日付掲載)

イスラエルの2年以上の攻撃で破壊され尽くしたパレスチナ自治区ガザ(2025年、南部ラファ)

 2023年10月、それ以前から続いてきたイスラエルによるパレスチナへの生活基盤の破壊、土地強奪、民間人殺害が段階を画したものとなり、2年10カ月にわたる常軌を逸した無差別攻撃によってパレスチナ自治区ガザ(人口220万人)は見る影もなく破壊され、子どもや女性を含む7万3000人をこえる人命が失われた。昨年10月にトランプ米大統領が示した「和平計画」によりハマスとイスラエルの間で停戦合意が結ばれたものの、ガザの人道状況は改善することなく、ガザ完全併合を目論むイスラエルは占領と虐殺を続け、その暴走はイラン戦争にまで飛び火した。イスラエルの最大の擁護者である米国は、イスラエルのネタニヤフ首相への逮捕状を出した国際刑事裁判所(ICC)の赤根智子所長にまで制裁を科し、戦争犯罪の継続を助長している【既報】。ガザに拠点を置き、戦争犯罪を告発してきた国際NGO「パレスチナ人権センター(PCHR)」は7月3日、「ガザ地区におけるジェノサイドの1000日」と題する総括的なレポートを出し、国際法の観点からイスラエルの戦争犯罪を告発し、この「人類の恥辱」といえる犯罪行為に終止符を打つため国際社会に断固たる措置を求めている。米国によるICC職員への新たな制裁を非難する8月19日付の声明と合わせて、PCHRレポートの和訳全文を紹介する。(小見出しは編集部)

 

◇      ◇

 

 本日2026年7月3日は、イスラエル軍が2023年10月7日にガザ地区のパレスチナ住民に対するジェノサイド(大量虐殺)を開始してから1000日目にあたる。

 

 この1000日間、イスラエル軍は、世界中が見ている前でこの犯罪を続けてきた。一方、国際社会、とりわけ「集団殺害罪の防止及び処罰に関する1948年条約(ジェノサイド条約)」の締約国は、民間人を守り、進行中のジェノサイドを止め、加害者の責任を問うという法的な義務を果たしていない。

 

 トランプ和平計画の下で、2025年10月10日に停戦が正式に発効した。しかし実際には、停戦は何の効果もあげていない。イスラエル軍はガザ地区全域でジェノサイドを続けている。現地の状況を見る限り、この計画に基づいて設置された和平評議会は、ジェノサイドを常態化させ、永続化させる役割しか果たしていない。人々が暮らし続けられないような状況を意図的に残し、ガザの全住民が強制的に追放される脅威をそのまま放置している。

 

 ガザ地区で現在起きているジェノサイドは、イスラエルの入植者植民地主義体制の下で、パレスチナ人に対してくり返されてきた国際犯罪の最も新しい一章である。この体制は、パレスチナ人住民の民族浄化、故郷からの強制移住、そして、自決権という奪うことのできない権利の否定の上に築かれている。

 

封鎖と軍事攻撃の連続 2007年以降

 

 2007年以来、イスラエル軍はガザ地区を全面的に封鎖し、人為的な人道危機をつくり出してきた。その危機は今も続き、人々の日常生活のあらゆる面に影響を及ぼしている。封鎖によって、人々の生活はかつてないほど悪化した。イスラエル軍は、ガザ地区でパレスチナ人が生き続けることをますます難しくする、強圧的な環境と生活条件を意図的につくり出してきた。

 

 この違法で非人道的な封鎖と並行して、イスラエル軍は2008年から2021年までの間に、ガザ地区に対して4回の大規模な軍事攻撃をおこなった。これらの攻撃によって、数千人のパレスチナ人が命を奪われた。その圧倒的多数は民間人だった。医療施設、学校などの教育施設、礼拝所、住宅、工場、農業施設、道路、送電網、水道設備、下水・衛生設備など、民間の施設や設備も広い範囲にわたり破壊された。

 

 パレスチナ人権センター(PCHR)は、これらの軍事攻撃それぞれについて調査をおこなった。その結果、イスラエル軍が民間人と民間の建物や財産を意図的に攻撃し、広い範囲で戦争犯罪を犯したと結論づけた。

 

 この結論は、独立した国際調査機関によっても裏づけられている。その一つが、イスラエルによる2008年のガザ攻撃を受けて設置された国連人権理事会の事実調査団である。同調査団は次のように結論づけた。

 

 「食料供給施設、水道網や衛生施設、コンクリート工場、住宅の破壊は、イスラエル軍が採用した意図的な政策の結果であった。これらの施設が軍事的な脅威だったからでも、偶発的に破壊されたのでもない。民間人の日常生活と、人間としての尊厳を保った生活を、さらに困難にするためにおこなわれたものである」

 

明白な大量虐殺の意図 2023年10月7日以降

 

 2023年10月7日、イスラエルはガザ地区に対して、かつてない規模の軍事攻撃を開始した。その最初の時点から、ジェノサイドをおこなう意図は明らかだった。その意図は、互いに結びついた二つの点に表れていた。

 

 第一は、イスラエルの政治・軍事指導者が、メディアを通じた公の発言や政府の正式な決定によって、ジェノサイドの意図を公然と示したことである。

 

 第二は、ガザ地区のパレスチナ人に対して実際におこなわれた行為と、それがすぐにもたらした結果、さらに長期にわたって及ぼす影響である。そこには、大量殺害、広い範囲に及ぶ破壊、人々に深刻な身体的被害を与えること、生きるために必要な手段を意図的に破壊すること、そして国民的集団としてのパレスチナ人が生き続けることを不可能にするような生活条件をつくることが含まれている。

 

 この1000日間、イスラエル軍は、1発当り最大1㌧に達する爆弾を含む数千㌧の爆発物で、ガザ地区を絶え間なく爆撃してきた。都市や住宅地、病院、教育施設、その他の生活に欠かせない民間インフラが、組織的に攻撃された。

 

 都市や地域全体が瓦礫と化した。数千棟の住宅が、中に住民を残したまま破壊された。病院、医療センター、救急機関、民間防衛隊の施設が意図的に攻撃され、破壊された。大学や学校も壊滅的な被害を受けた。道路、送電網、水道網、下水道設備も組織的に破壊された。農場、工場、市場、漁港も同じように爆撃され、破壊された。

 

 ガザ地区全域で数百件の避難命令が出され、絶え間ない爆撃が続いた。その結果、200万人以上のパレスチナ人が自宅を追われ、強制移住させられた。家族は安全な場所を求めて、何度も避難することを強いられた。しかし、たどり着いたのは、生活に最低限必要な物資さえない、過密な避難所や仮設テントだった。

 

 安全な避難先として指定されていたはずの場所もくり返し攻撃された。避難した民間人は、そこで再び死と破壊にさらされた。

 

 イスラエル軍は、医療従事者や救急隊員、民間防衛隊も直接攻撃した。彼らは、破壊された住宅や民間施設の瓦礫の下から負傷者を助け出し、犠牲者の遺体を収容しようとしていた。

 

 イスラエル軍は、ガザ地区に厳しい封鎖を科し、飢餓を戦争の手段として意図的に利用してきた。それによって、食料、医薬品、その他の欠かせない人道支援物資がガザに入るのを妨げてきた。

 

 イスラエル軍はさらに、大規模な拘束作戦をおこなった。その中で、数千人のパレスチナ人の男性、女性、子どもが残虐な拷問や虐待を受けた。その結果、数十人の死亡も出ている。PCHRは、拘束中や取り調べ中に、強姦を含む性暴力を受けた男女の証言を記録している。その一方で、数千人のパレスチナ人が今も行方不明であり、無事なのか、どこにいるのかもわかっていない。PCHRは現在までに、540件をこえる強制失踪事件を確認している。

 

累々と積み上がる犠牲 圧倒的多数は民間人

 

イスラエルの攻撃を受けて壊滅した住宅地から二つの家族(子ども44人を含む112人)の遺体が収容され、集団葬儀がおこなわれた(8月4日、ガザ)

 ガザの公式統計によると、1000日間のジェノサイドによって、7万3000人をこえるパレスチナ人が殺害され、17万3000人以上が負傷した。殺害された人々の圧倒的多数は民間人である。その中には、2万1500人の子ども、1万2500人の女性が含まれ、両者をあわせると全死者の約55%を占める。

 

 犠牲者には、医師を含む1700人の医療従事者、約300人の民間防衛隊員や自治体職員、262人のジャーナリストも含まれている。その多くは、職務を遂行している最中に直接攻撃の標的にされた。

 

 軍事攻撃の初期段階から、イスラエル政府の公式な発言や決定は、現場でおこなわれている軍事作戦と一致していた。イスラエルの行為が、国民的集団としてのパレスチナ人にジェノサイドをおこなうことを目的とした政策の一環であることに疑いの余地はなかった。

 

 この政策は、パレスチナ人を殺害するだけのものではない。現在と将来にわたって、パレスチナ人が生きていくために必要な条件そのものを破壊しようとするものだった。

 

 PCHRは当初から、こうした深刻な動きを認識していた。そして他のパレスチナ人権団体とともに、ジェノサイドが起きる差し迫った危険があることをくり返し警告し、それを防ぐため、ただちに断固とした行動を取るよう国際社会に訴えた。

 

国際司法の命令を無視 イスラエル

 

 2023年12月29日、南アフリカ共和国は国際司法裁判所(ICJ)に訴訟を起こし、イスラエルがガザ地区のパレスチナ人に対してジェノサイド行為をおこなっていると訴えた。南アフリカはジェノサイド条約に基づき、パレスチナ人が取り返しのつかない被害を受けるのを防ぎ、イスラエルに条約上の義務を遵守させるため、暫定措置を命じるよう裁判所に求めた。

 

 2024年1月26日、ICJは、法的拘束力を持つ最初の命令を出した。裁判所は、南アフリカがジェノサイド条約に基づいて主張した権利、すなわちイスラエルがガザでの軍事作戦中にジェノサイド条約で禁止されている行為をおこなっていたと結論付けるに足る根拠があると認めた。また、最終的な判決が出るまでに、パレスチナ人の保護されるべき権利に取り返しのつかない被害が生じる、現実的で差し迫った危険があると判断した。

 

 裁判所はイスラエルに対し、ジェノサイド条約が禁じている行為を防ぐこと、パレスチナ人に基本的なサービスと人道支援が届くようにすること、ジェノサイドを直接的かつ公然と煽動する行為を防止し、処罰することなどを命じた。

 

 訴訟手続きが始まって以来、ICJは6回にわたって暫定措置を命じたが、イスラエルはそれらすべてを公然と無視し、実行していない。

 

 2024年11月21日、国際刑事裁判所(ICC)は、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相と、当時のヨアヴ・ガラント国防相に対する逮捕状を出した。容疑には、飢餓を戦争の手段として利用したことや、民間人への攻撃を意図的に指揮したことなどの戦争犯罪が含まれる。さらに、迫害やその他の非人道的行為という、人道に対する罪も含まれている。

 

 これらの決定は重大なものであり、大きな法的意味を持っている。それにもかかわらず、イスラエルは意に介さず、ガザ地区でジェノサイドを続けている。

 

医療も住居もない地獄 狭い地域に押込められ

 

イスラエルに封鎖され、飢餓に襲われたガザでは人々が食料を求めて移動を強いられている(6月)

 ジェノサイドが始まってから1000日目を迎えた今日、ガザの現実は言葉ではいい表すことができないほど悲惨だ。それは「生き地獄」以外の何ものでもない。ガザ地区の至るところに、破壊された光景が広がっている。

 

 イスラエル軍は、ガザ地区の約70%を事実上支配するまでになった。そして約230万人のパレスチナ人を100平方㌔㍍にも満たない狭い地域に押し込めた。その結果、人口密度は1平方㌔㍍当り約2万3000人という前例のない水準に達している。住民の圧倒的多数は現在、生きるために最低限必要なものさえない粗末な仮設テントで暮らしている。

 

 機能している病院や医療施設は、事実上ほとんど残っていない。大学や学校は破壊され、一つの世代全体が、みずからのアイデンティティと共有してきた集団的記憶を奪われつつある。

 

 医療体制が崩壊し、水道、電気、衛生設備など、生活に欠かせないインフラも破壊された。そのため病気が広がり続けている。

 

 イスラエルが、指定された埋立地にごみを運ぶことを認めないため、住宅地には山のようなごみがたまっている。それが公衆衛生上の危機をさらに悪化させている。

 

 一方、イスラエル軍が人道支援物資の搬入を妨害し、阻止しているため、人道危機は深刻化の一途をたどっている。搬入を妨げられている物資には、食料や医薬品だけでなく、病院の発電機、給水施設、パン工場、下水処理設備、その他の生活に欠かせない設備を動かすための燃料も含まれている。ガザへの搬入が認められているわずかな援助は、膨大な人道上の需要に対して、大海の一滴にすぎない。

 

米や西側諸国は当事者 停戦後も続く攻撃

 

 2025年10月10日に停戦が発表されてから、間もなく9カ月になる。しかし、イスラエルによるジェノサイドに意味のある変化は起きていない。実際には、停戦が効力を持ったことは一度もない。

 

 停戦の発表後も、イスラエル軍はガザ地区全域で空爆や発砲を続け、990人をこえるパレスチナ人を殺害し、3000人以上を負傷させた。

 

 停戦の発表をもたらしたトランプ和平計画と、その枠組みの下で設置された和平評議会は、ジェノサイドを常態化させ、永続化させる役割しか果たしていないことがますます明らかになっている。

 

 トランプ大統領は、この計画を通じて、決して実現できない和平を約束した。なぜなら、この計画は国際法と根本的に矛盾しているからである。国際法に基づかず、パレスチナ人民が持つ正当で奪うことのできない権利を尊重しない和平は、和平とは呼べない。

 

 それどころか、彼の計画は事実上、イスラエルの占領当局に殺害、破壊、強制移住の実施を継続する自由を与えた。医薬品や食料、復興に必要な建設資材をガザに入れることを保障せず、約20万人のパレスチナ人がガザ地区に戻ることも妨げた。

 

 その間も、人道危機は深まり続けている。強制移住と民族浄化の脅威は現実のものとして差し迫ったままである。

 

 ジェノサイド犯罪はガザ地区でおこなわれ、その様子は、世界中が見聞きする中で生中継されている。それは人類に恥辱をもたらす光景にほかならない。

 

 この犯罪は、米国と多くの西側諸国から全面的な支援を受けておこなわれている。これらの国々は、イスラエルに政治的な支援を与えるだけでなく、武器や軍事装備を提供し続けている。これらの国々は、直接支援することによって、あるいは共犯者となることによって、ジェノサイドという犯罪の主要な当事者となっている。

 

 国際社会では、イスラエルの責任は長年にわたって問われてこなかった。イスラエルは西側の同盟国に守られ、責任を問われない立場に置かれてきた。その免責特権が、イスラエルが国際法を公然と無視し続けることを助長してきた。

 

 ガザにおけるジェノサイド犯罪は、西側諸国が数十年にわたってイスラエルを支援し、その責任を問うことなく、不処罰を許してきたことの帰結であり、その頂点に位置するものである。

 

 国際社会が今こそみずからの責任を果たし、占領国によるこの公然かつ悪質な国際法違反に終止符を打つべき時である。

 

ICC関係者に対する新たな制裁を非難する(8月19日付)

 

 パレスチナ人権センター(PCHR)は、国際刑事裁判所(ICC)の赤根智子所長および検察局の上級公判担当検察官であるアブドゥライェ・セエ氏の2名の高官に対して米国政府が新たに科した制裁措置を最も強い言葉で非難する。

 

 これらの制裁は、「ローマ規程」に基づき職務を遂行するICCとその関係者に対する米国政府の攻撃がさらに激化したことを示すものである。これは「ICCを解体する」という米国政府が公言してきたキャンペーンの一環としておこなわれたものである。

 

 トランプ米大統領が最近のべたように、この措置は、パレスチナ人に対する犯罪をめぐる国際司法の裁きから、ネタニヤフ首相(ICCの被疑者)を含むイスラエル当局者を守ることを意図している。米国はこうした違法行為を続けることで、パレスチナにおける事態のみならず、ICC管轄下のあらゆる事態において、国際法上の最も重大な犯罪に対する責任追及という極めて重要な任務を遂行しようとする独立司法機関を妨害し、威嚇している。

 

 ICCと協力して活動したことを理由にPCHRおよび他の二つのパレスチナ人権団体にも制裁が科されている。にもかかわらず、PCHRは、ICCおよびその職員に対する揺るぎない連帯を改めて表明するとともに、ICCの独立性と公正性への支持を再確認する。

 

 また、PCHRは、「ローマ規程」締約国に対し、ICCを保護し、その独立性を守り、干渉や威嚇、脅迫を受けることなく、不処罰を終わらせるという任務を遂行できるよう、具体的かつ実効性のある措置を講じるよう改めて求める。

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