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レムデシビルの有効性否定相次ぐ NIH(米国立衛生研究所)中間報告受け米国の専門家から

 新型コロナウイルス治療薬として、国産のアビガンの承認については厳格な慎重さが求められるなかで、厚労省がアメリカの医薬大手ギリアド社の要請を受けてレムデシビルを異様な早さで特例承認したことに疑問と批判の声が広がっている。医療現場からは「NIH(米国立衛生研究所)が発表したレムデシビルの中間評価は、患者に劇的な改善効果が見込める内容ではなかった」「副作用の評価も定まっておらず、使うことで患者に被害を与えるおそれもある」などの声が上がっている。本場のアメリカでは、科学者・医療専門家の間で、レムデシビルの有効性を正面から否定する発言があいついでいる。

 

 アメリカのウイルス研究と感染症対策の第一人者であるウイリアム・ハセルティン博士は、「レムデシビルは私が知る限り、まったく機能しないか、わずかな効果しかない」と発言している。ハセルティンは、ハーバード大学の公衆衛生学部で生化学薬理学とレトロウイルス学の部門を設立し、米国政府のHIV(エイズ)対策を主導したことで知られる。

 

 同博士は米経済誌『フォーブス』への寄稿で、「国立衛生研究所(NIH)によるレムデシビル試験の全データは、暫定的な結果がプレスリリースで共有されてから数週間後に、ようやくリリースされた。これらの初期の結果は、大量の誇大広告と世界的な薬物乱用を引き起こした。しかし、完全なデータは別のことを伝えている」とのべている。日本政府が承認した時点でのデータは、「誇大広告」にもとづくものであったという指摘でもある。

 

 ハセルティン博士は、その後に明らかにされたデータでは「COVID―19で入院し、酸素吸入療法を必要とする患者に対するレムデシビルの投与」という限られた条件のもとで、「レムデシビルを使用しているにもかかわらず死亡率が高い」ことが示されていると指摘。「抗ウイルス薬のみでの治療では不十分である可能性が高いことは明らかだ」と断言している。

 

 ワシントンで公衆衛生を監視する活動を続けるマイケル・カローム博士は大手メディアを通じて「大統領には、再選を救済するために企業や規制当局などに強い圧力をかける大統領がいる」「私の最大の心配は、このすべての誇大広告とホワイトハウスからの報道によって、あまりにも早く市場に投入し、多くの人々に害を及ぼすことだ」と語っている。

 

 カローム博士は、米国保健社会福祉省・人間研究保護局でアソシエイトディレクターを務めたことのある専門家である。同博士はこれまでも、巨大製薬会社の資金提供によって信頼できない臨床試験が進められてきたことを批判するとともに、「私たちは今、より安全で効果的である可能性があるのに、それを研究できなくしている可能性がある」と、レムデシビルに向けた「疑わしい熱意」を批判している。

 

 レムデシビルが異例の承認を受けたあと、バージニア州では抽選で州内の約1500人の重症患者を選び、ミネソタ州では患者のなから投与対象を選択する「トリアージ官」を指定するなどの措置がとられた。ギリアド社はレムデシビルの不足がセンセーショナルに煽られるなかで、価格を設定することができる。政府資金で少なくとも7900万㌦を投入して開発されたこの薬のコストは、10日間の投与で約10㌦にすぎない。しかし、市場価格はその数百倍になると予想されている。

 

ジェネリック3剤で回復 有効の報告も

 

 医療にくわしい女性ジャーナリストのシャロン・ラーナーは『ザ・インターセプト』(インターネット・メディア)に「誇大広告にかかわらず、ギリアドのレムデシビルはパンデミック終熄には役立たない」と題する記事を執筆した。ラーナーは、ギリアドの巧妙な展開により、投資家、政治家、そして国民の間で興奮が生まれたが、「コロナウイルスとの闘いにおいてより効果的であると思われるジェネリック医薬品の組み合わせがレーダーの下で飛び交っている」と書いている。

 

 事実、著名な医学論文誌『ランセット』(5月8日)でも、新型コロナウイルスの治療薬ではないインターフェロンベータ1b、ロピナビルリトナビル、リバビリンの3剤を組み合わせて服用した患者が7日間で回復し、レムデシビルよりも回復時間を大幅に短縮できたことが報告されている。

 

 しかし、レムデシビルの投与量を削減するために、3剤併用療法に切り替えるよう要求して患者が殺到する状況にはない。ラーナーはこれについて、「治療が主要なマーケティングキャンペーンの対象ではなかったという事実が原因の可能性がある。併用療法の3つの薬剤がそれぞれジェネリックであるか、特許を受けていないことは注目に値する。つまり、その使用から大幅に利益を得る製薬会社はないのだ」と指摘している。

 

政治的圧力で非科学的情報 漢方の証拠も黙殺

 

 医療関係者向けの英字誌『ニッケイ・アジアン・レビュー』(5月26日)は、アンディ・クランプ北里大学客員教授の「レムデシビルの承認ラッシュは公衆衛生の失敗を強める」と題する文章を掲載した。「レムデシビルがCOVID―19患者の治療に役立つかどうかは、推測の段階のままだ。科学的証拠は決定的なものではなく、望ましくないバイアスの影響を受けている可能性もある」と強調している。

 

 「問題はCOVID―19との闘いで成功する治療法を急いで見つけるために過去数週間にわたって、レムデシビルに関する非科学的で矛盾する情報が出されたことだ。調査結果を検証する統率グループを持たない小規模の臨床試験が多く実施されているが、圧力を受けている政治家は良い知らせにのみ焦点を当てている」と指摘している。

 

 また、「ファビピラビル(アビガン)、血漿療法および伝統的な漢方薬をすべてCOVID―19患者の治療に成功させることができるという中国からの証拠があるが、さまざまな理由でほとんどの西側諸国はこの証拠を受け入れない。代わりに、自国の何万人もの人々がすでに亡くなっているにもかかわらず、これらの選択肢が機能するかどうかを確認するために時間のかかる臨床試験を開始した」と批判している。

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