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在韓米軍は細菌実験施設を無条件撤去せよ 韓国・釜山で住民の抗議強まる

 在韓米軍が昨年12月20日、釜山港8埠頭の基地から生物化学兵器用の細菌の持ち込みを認め、同基地に設置された実験施設「生物化学防御プログラム(セントー)」の現地説明会をはじめたことと関連して、実験施設の撤去を求める住民運動が釜山現地で強まっている。

 

在韓米軍による細菌実験施設の説明会で「無条件撤去」を求めて抗議する釜山市民(昨年12月)

「防御のため」と主張する米軍 秘密裏に進行

 

 米軍が釜山港8埠頭在韓米海軍基地から兵器用の細菌(炭疽菌)を持ち込み、実験に使用する計画を立てていることが地元紙『釜山日報』(昨年10月28日付)の報道で暴露された。炭疽菌は、牛などの家畜や人間の呼吸器や皮膚から侵入し、皮膚、肺、腸などで浮腫、高熱、咳、呼吸困難、激しい下痢など重篤な症状をもたらす致死性の高い細菌であり、国連の生物兵器禁止条約で保有を禁止されている。現地報道によると、米軍は2016年から釜山基地で生物化学兵器防御を名目にした「ジュピタープロジェクト」を推進し、2017年に釜山への施設設置を決定した。


 そして今年1月、生産、貯蔵、移動が禁止されているほど毒性の高いボツリヌス菌とブドウ球菌トキソイド、植物性の猛毒リシンなどの細菌を、米輸送大手フェデックス(FedEx)を介して釜山、群山、平沢、烏山などの米軍基地に搬入していた。


 次いで在韓米軍は昨年12月20日、同基地内海上輸送司令部で実験施設「セントー(CENTAUR)」の安全性についての現地説明会を開き、「化学兵器の脅威を認識し、対応する能力を開発するためであり、生物化学兵器研究ではなく、それを防御するためのもの」であると主張した。現地の住民団体に対して「生物化学実験はおこなわない」との約束を交わしているにもかかわらず、秘密裏に実験を実行しようとしてきた米軍に対する住民の怒りが高まり、釜山埠頭基地の門前では多くの市民たちが「米軍は細菌施設を無条件で撤去せよ!」と抗議の声を上げた。


 同日、ソウル大学のウ・ヒジョン教授(獣医学)が、米軍が持ち込む生物兵器は核兵器に次ぐ危険性を持ち、米海軍司令部はその一部しか公開していないことを告発した。


 ウ教授は韓国のラジオ番組で「公式論文によれば、10㌔㌘程度の炭疽菌の脅威は、2・5㌧の原子核に匹敵する」と指摘し、「生物兵器として研究された歴史が半世紀をこえる、非常に毒性が強い菌」でありながら「米軍は弱いものだけを公開している」とのべた。


 また「防御システム」とする米軍の説明についても、「微生物やウイルスが感染対象を選ぶことはない。生物兵器は防御と攻撃を同時に起こすものであり、私たちはその犠牲になるだけだ。話にならない」と批判し、米軍が2017年に韓国内で、北朝鮮の小都市を想定した「仮想市街戦訓練」をしていた動画記録があることに言及。「防御用であるならば、なぜ北朝鮮の都市を想定した実戦訓練をする必要があるのか?」とのべた。


 さらに「韓国は世界25カ国に設置されている米国の生物兵器研究所の統括センターになっている。オバマ大統領の当選後から計画が開始され、“米国のための生物兵器に関する先端施設を整備せよ”との大統領令を下し、3年後の2013年に韓国に設置された」と指摘し、当時の朴槿恵(パク・クネ)政府が米軍にSOFA(地位協定)で特権を与えたため「ドイツでは公開される情報も韓国では徹底的に管理されている」「米軍に情報公開の義務がなく、国民はまったく内容を知ることができない」とのべた。


 そして「生物兵器は国際条約に違反するものだが、数千万㌦もの予算が配分されているため米政府も隠ぺいできず、一部の関連情報が流れた。施設建設の趣旨として“このような試料(細菌)を米国本土に持ち込まないため”とはっきり書いてある」と明かした。


 細菌施設のある釜山港八埠頭からは直線距離で3㌔㍍以内に、20校余りの小・中・高校と、アパート団地が30カ所余り、国連記念公園などの公共機関と公共施設がある。釜山では住民による対策委員会が設置され、米軍に細菌施設の無条件撤去を求める世論が高まっている。

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