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朝鮮戦争の終戦宣言まで進め 5月米朝首脳会談への展望

 南北会談によって軍事対立から対話交渉へと進んだ北朝鮮情勢は、4月末に南北首脳会談の実施、5月には史上初の米朝首脳会談が決まるなど、めまぐるしい動きを見せている。日本国内では、圧力強化を主張し続けてきた安倍政府が、国家運営とはまるで無関係の私情による公文書改ざん疑惑で「存立危機」に陥る一方、東アジア情勢はその外側で戦後史を画するダイナミックな変化に進みつつある。朝鮮半島の非核化と平和協定(在韓米軍の撤収)の締結か、もしくは交渉決裂と軍事圧力路線への回帰など、さまざまな憶測が錯綜しているが、これまでの推移と表面化した事実を踏まえて現状を分析した。

 

東アジアの軍事的緊張に終止符を 60年経た画期的段階


 今月5日、特使団による北朝鮮訪問で南北首脳会談を日程に乗せた韓国政府は、9日には訪米し、トランプ大統領との間で米朝首脳会談の約束をとりつけた。朝鮮戦争によって南北に分断して以来、朝鮮半島における対立軸となってきた米朝間の首脳会談は過去一度もない。実務者協議もないまま、いきなり首脳会談へと進む急展開となった。


 訪米後、特使団の鄭義溶(チョン・ウィヨン)国家安保室長は、「われわれとの会談で北朝鮮の指導者の金正恩氏は、非核化への強い決意を表明したとトランプ大統領に伝えた。金氏は北朝鮮が今後は核・ミサイル実験を控えると約束した」「(金氏は)大韓民国と米国による恒例の合同軍事演習は継続しなくてはならないと理解しており、トランプ大統領にできるだけ早く会いたいと前向きな意欲を示した。トランプ大統領はわれわれの情報伝達に感謝し、恒久的な非核化を達成するため金正恩氏と5月までに会うとのべた」とする声明を発表した。


 トランプ自身も同日、ツイッターで「金氏が核開発の凍結ではなく非核化に言及し、ミサイル発射も停止していることは大きな進展だ。会談が設定される!」と投稿し、前向きな姿勢であることを国内外にアピールした。「オバマ、ブッシュ、クリントンにもできなかったことをやってきた。われわれは、とてつもない大きな成功を手にするだろう」「彼ら(北朝鮮)は平和を欲している。その時期が来た」とも語っている。


 快諾したトランプの思惑や水面下での駆け引きがどうあれ、南北の当事者が主導して進めた「平和的解決」のアクションによって、60年以上にわたって核軍事力をバックに圧力路線をとり続けてきた米国が戦略の見直しを迫られていること、戦後の東アジアにおける火種となってきた朝鮮戦争の終結へと歩みを進めることになることは疑いない。


 「北朝鮮の態度軟化は圧力の成果」「今もあらゆる選択肢がテーブルの上にある」と軍事行動を否定しない姿勢を見せるトランプだが、平昌パラリンピック後に延期した米韓合同軍事演習では、当初予定していた空母2隻の派遣をとりやめるなど、あれほど過熱していた軍事恫喝路線は縮小に向かっている。


 さらに、韓国大統領府高官は14日、南北、米朝の首脳会談において、朝鮮戦争の終戦宣言、休戦協定にかわる平和協定の締結が議題にのぼる可能性があることを示唆した。

 

南北で数百万人の犠牲を出した朝鮮戦争

 1953年に結ばれた朝鮮戦争の休戦協定は、北朝鮮軍、中国軍、米軍(国連軍)の3者が署名したが、当事者であるはずの韓国は除外されていた。協定第60項では「すべての外国軍隊が朝鮮から撤退し、朝鮮問題の平和的解決その他の諸問題を交渉により解決するよう勧告する」としているが、米国は米韓相互防衛条約によって韓国に米軍の永久駐留を認めさせ、現在まで約3万人の兵力を配置し、実質はソ連、中国と対峙する前線基地とした。空文化した休戦協定のもとで、韓国は日本とともに米軍占領下に置かれ、米朝の対立が激化するたびに、朝鮮半島では双方がミサイルや核実験、軍事演習による挑発合戦をくり広げてきた。


 韓国の文在寅大統領が、就任直後の昨年7月におこなった『ベルリン宣言』では、「韓国のより主導的な役割を通じて、朝鮮半島の平和体制を構築する大胆な旅程を始める」「中断された朝鮮半島の平和プロセスを再び始めることができる基本的な条件が整った」ことを明らかにし、北朝鮮の崩壊もいかなる形態による吸収統一も追求せず、「双方が共存共栄しながら、民族の共同体を回復していく」道を進むことを強調した。そして、朝鮮半島の非核化を促すとともに、平和協定によって60年以上にわたる停戦状態を終わらせ、「恒久的な平和体制を構築」することを宣言した。


 それは、対米従属のもとで南北関係を極限にまで悪化させた朴槿恵を引きずり下ろした韓国の国民世論が突き動かしたものであると同時に、米国主導の「朝鮮戦争レジューム」が破たんしたことを示すものだった。


 朝鮮戦争の停戦から60年余がたつなかで、北朝鮮は交戦した国連軍参加国16カ国のうちすでに13カ国(米国、韓国、フランス以外)と国交を樹立しており、国交のないフランスも平壌に貿易事務所を開設するなど、世界的に見れば朝鮮戦争は過去のものとなっている。にもかかわらず米朝間では平和協定が結ばれず、戦争状態の継続を理由にして70年以上も米軍の占領下におかれてきたのが韓国や日本だった。朝鮮戦争の終結は、日本の将来を展望するうえでも画期的な意味合いをはらんでいる。

 

米国一極体制が弱体化 形骸化した対立構図

 

 米朝対話にまで進んだ東アジアをめぐる力関係は、米ソ2極構造崩壊から続く米国の一極体制が弱体化し、多極化のもとで新たな秩序を築く方向に向かざるを得ないことを示している。


 背景の一つには、力による恫喝路線を維持・継続できなくなった米国の事情がある。イラクやアフガニスタン、シリア、アフリカ諸国をはじめ、米国が介入した世界各地の戦場は泥沼化する一方で出口戦略は見出せず、各地の戦力を維持する経費が膨れあがって財政赤字は今後10年で770兆円にものぼる見通しとなった。


 北朝鮮との対話の糸口がないまま、オバマ前大統領は「アジア重視」に回帰する米軍再編を進めて圧力を強化したが功を奏さず、トランプは大統領選に登場したときから「在韓米軍の撤収」の持論を展開してきた。昨年8月には、トランプの最側近だったバノン元首席戦略官が北朝鮮の核開発放棄と引き換えに在韓米軍の撤退を提案し、軍人出身のマクマスター補佐官などと対立して政界を追われた。最近解任されたティラーソン国務長官も、北朝鮮との無条件対話を提唱した人物で、アメリカの経済界の一部の願望を反映したものといえる。


 今月2日にはジョセフ・ユン北朝鮮政策特別代表が辞任し、東アジア・太平洋政策を担う次官補も昨年12月に指名されたものの議会上院の承認が得られておらず、さらに強硬派のマクマスター補佐官も「解任リスト」にあがるなど、きわめて流動的でありながらも、米朝対話を前にして戦略も体制も定まらない米国の混乱状態があらわれている。


 なによりも、経済制裁の強化や軍事恫喝にもかかわらず、北朝鮮が核開発を進め、大陸間弾道ミサイルの技術を米国本土を射程に収めるまでに向上させたことは、軍事行動に踏み切れない米国の本音を示す証左となった。


 北朝鮮の側も「非核化」を前提に米朝対話に踏み込んだ背景には、冷戦構造の崩壊後、公然と支援を得られる後ろ盾を失い、国際的に孤立化した状況下では自国の体制を維持できない国内問題を抱えているからにほかならない。これら双方の条件のもとで、もっとも切実な状況下におかれた韓国が「同じ民族が血を流した歴史をくり返させぬ!」と宣言して外交力を発揮し、武力衝突の回避と対話への道筋を開いた。


 軍事路線を維持しながら核の放棄(屈服)を求める米国と、核放棄と引き換えに在韓米軍の撤退を求める北朝鮮が穏便に着地点を見出すか否かは不透明であるものの、朝鮮戦争の延長線上に築かれた対立構図がすっかり形骸化したなかで、双方が相互利益に立った解決の道筋を探る以外に選択肢は残されていないことが浮き彫りになっている。昨年まで世界に緊張を振りまきながら、「おいぼれ」「ロケットマン」と互いにののしりあった舌戦の水面下では、歴史的和解の糸口の探り合いが続いていたことがみてとれる。

 

東アジア情勢は次の段階へ 立ち遅れる日本政府

 

 米朝関係が急展開をみせるなかで、「ハシゴを外された」というより、はじめから蚊帳の外で拳を振り上げてきたのが安倍政府であったことが浮き彫りになっている。北朝鮮がアメリカに向けて飛ばした大気圏上のミサイルを「撃ち落とす!」と叫んで1500㌔しか飛ばないPAC3を配備してみたり、丁丁発止で軍事衝突の危機を煽るトランプから「ミサイル防衛のため」と称して高額兵器をためらいなく購入し、国連では米国を忖度して「対話より圧力」と声高に叫んできた。


 南北会談の実現後も「ほほえみ外交に欺されるな」「対話のための対話では意味がない」「韓国は軍事演習を延期すべきでない」と韓国にまで水をかけたが相手にされず、最後は「完全に一致」と強調してきた相手であるトランプ本人がその頭越しに米朝対話に踏み込んだ。1971年、当時のニクソン大統領が、日本を中国封じ込め政策の先頭に立たせながら、その頭越しに中国と電撃和解した米中国交回復を彷彿とさせる。


 「対話実現は圧力の成果」というものの、当初から日本が対話開始の条件に掲げていた「完全かつ不可逆、検証可能な方法による核・ミサイル計画の放棄」を北朝鮮が約束したわけではない。対話実現へのアクションは、日本政府が描いたプログラムの外側で動いていたことは明白で、なおも相手にされていないことを自覚しながら、トランプの言動に一喜一憂しつつ「圧力の強化」を連呼するほかない状況に置かれている。


 4月初旬の安倍首相の訪米を控えて、事前に河野外相が会談する予定だったティラーソン国務長官が直前になって解任されるなど、外務省も二転三転するトランプ政府の動向を捉えきれていない。それでもなお「米国と完全に一致」とくり返し忠誠を誓っている姿は、日本の外交力の立ち遅れをまざまざと見せつけている。


 韓国のようにみずからの手で扉をこじ開けるわけでもなく、拉致問題を含めた日朝問題の解決は政治スローガンにするだけで行動計画すらない。米朝和解後のアジアにおける立ち位置までもすべて米国の意向にゆだねるという隷属的な姿となっている。「圧力」を叫びすぎて、もはや安倍晋三のもとではアジア諸国との対話さえなりたたない関係を浮き彫りにしている。

 

朴槿恵弾劾のキャンドルデモ(2016年12月)。ソウルでは1年間で100万人が参加し、80年代の民主化運動以来、最大規模となった。

 米朝会談の行方がどうあれ、日韓を足場にして覇権を広げる米国のアジア戦略は見直しを迫られることは疑いなく、戦争による紛争激化ではなく、平和的な手段による解決を求めるアジアやアメリカ国内をはじめとする国際的な大衆世論との矛盾関係のなかで東アジア情勢は次の段階へと進んでいる。対米従属とアジア蔑視のスタンスはもはや通用せず、平和と互恵の原則に立った日韓、日朝の新たな関係を切り結ぶ努力の中でしか日本の展望は開けないところへきている。


 目下、日本国内では、首相夫婦の私情にまつわる公文書改ざん疑惑が再燃し、官僚や職員はその火消しのために昼も夜も駆り立てられ、国会は空転している。「国家の危機管理」「周辺国の脅威からの防衛」をいうまえに、安倍晋三のために閣僚も官僚も虚偽答弁や記録廃棄に精を出し、果ては改ざん文書で1年間も国会運営がされるなど、法治主義の原則すら地に落ちた統治の実態が暴露されている。これらは国の主権を米国にゆだねた従属政治の末期症状というほかない。


 一足先に国権の私物化で大統領を弾劾した韓国では、逮捕された朴槿恵前大統領に懲役30年が求刑された。朴弾劾の陰に隠れて保留状態にあった同じ保守ハンナラ党の李明博元大統領もとり調べの結果、約11億円の収賄疑惑が暴かれて逮捕が確定した。日米による植民地時代の夢にしがみつく為政者たちは、時代の波にあおられて歴史の表舞台から次次に退場を迫られている。


 韓国社会と同じく、日本社会も対米従属のもとで腐敗の極に達した戦後政治に決着をつけるところまできていることを教えている。

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