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広島「原爆と戦争展」が開幕 戦争知らぬ世代へ渾身の訴え

被爆者の体験を真剣に聞く親子連れ(7月30日)

 広島市中区袋町にある合人社ウェンディひと・まちプラザで7月30日、第16回広島「原爆と戦争展」が開幕した。開催前の約1カ月間、広島市内各地でポスター掲示やチラシ配布による宣伝をおこなってきた。全国各地、海外からの参観もあり、とくに事前に同展の開催を知っていた市内からの親子連れや被爆者が多数訪れた。また教育関係者の熱心な参観も目立ち、多くの参観者が会場に詰める広島の会の被爆者から積極的に被爆体験を学んだ。開催期間中は広島県内の大学から複数の学生スタッフが連日参加する予定で、被爆者から若い世代が体験を学び、継承していく熱い交流の場となっている。

 

 午前中におこなった開幕式では、開催期間中に被爆体験の証言をおこなう原爆展を成功させる広島の会の被爆者や、スタッフとして参加する学生らが意気込みを語った。はじめに原爆展を成功させる広島の会の高橋匡会長が挨拶に立ち、「年年参観者は増えてきている。近年国会では、安保法制など戦争へもっていく政策を強引に、考えられないような方法で議決している。防衛相の辞任が決まったが、この間の論議は戦争を経験した私たちから見ると、昔の大本営発表と同じような嘘と隠蔽の報道が現在も続いているとつくづく感じるものだった。“勝った勝った、日本勝った”という報道と何ら変わらない性質だ。これが恐い。報道に踊らされて子どもの頃からたたき込まれてきたものが、今またよみがえるのではないかと感じる。“嘘に踊らされてきた”という過去は現在においても私たちにとっては傷になっている。世界情勢を見ても戦争の危機が迫っている気がしてならない。原爆と戦争展のとりくみは、私たち戦争体験者がいなくなってからでもぜひ続けてもらいたい。私たちの声を聞いてくれる最後の世代である若い人たちが今日も会場に来てくれている。今後の行動に期待して、この運動が世界に誇れる運動になっていってほしいと思う」と語った。

 

 続いて、同展を共催する下関原爆被害者の会の大松妙子会長のメッセージが紹介された。「戦後“被爆者とは結婚するな”といわれ、子どもを守るために親たちは長い間口を閉ざし、原爆は長い間封印されてきた。しかし世界で唯一原爆を投げつけられた日本の被爆者が立ち上がり、真実を伝えていくことの大切さを学び、被爆体験を語り継ぐことを使命に活動を続けてきた。そして今、広島の地で全国・世界から来る人に支持、協力を得て大きな運動へと発展してきた。72年の平和を覆す今の国政には怒りの気持ちでいっぱいだ。“お国のため”との言葉を信じ、幾十万の命を失った若者たちの犠牲を顧みることなく、アメリカの支配のもと、世界で唯一の被爆国でありながら核兵器禁止条約への不参加、福島原発事故も終息しないなかで全国の原発再稼働、沖縄も岩国基地も日増しに拡張している。戦争の危機に、戦争、原爆を体験した者として許すことはできない。戦争を知らない今の政治家、未来を担う若者たちに幾十万の犠牲のもとに今の平和があることを伝えなければならない。平和、命の大切さを原爆と戦争展で伝え、体験者の使命として平和を覆す者とたたかいましょう」と訴えるもので、広島の会の被爆者が代読をおこなった。

 

 次に、広島の会の眞木淳治副会長が「この国はこれからどうなるのかと不安がいっぱいだ。こういう時期だからこそわれわれの活動の意義が問われると思っている。安保法制の強行採決に始まり、共謀罪など、国民の声を無視して国政をおこなっている。なかでも世界でただ一つの被爆国でありながら核兵器禁止条約に反対にまわったことは断じて許せない。アメリカの顔色をうかがって、国民のことを考えないやり方は許せない。閉会中審査もじっくり見ていたが、これをどうして信じろというのか。記憶にない、記録もない、出てきた書類は黒塗りで、国民は何を信じればいいのか。安倍総理は先日“こんな人たちに負けるわけにはいかない”と演説で発言したが、こんな政権にこそ負けるわけにはいかない。広島の会で決めている“被爆者、戦争体験者の思いを若い人たち、全国、世界に伝えていこう”という気持ちは歳をとっても、病気を患っても衰えることはない。病気にも負けるわけにはいかない。1年でも長く活動して、1人でも多くの人に戦争・被爆の実態をつぶさに伝え、2度とくり返さないために語っていきたい」と意気込みを語った。

 

 広島の会の宇都宮功氏は「あちこちで語り部をしていて、今年は今まで以上にみなさんの平和に関する認識が高まってきている。それだけにこのような会の活動はますます重要になる。体験者も高齢化して少なくなるなかで、若い世代への継承に力を入れ、伝承の意識を持ってほしいと強く感じている。今日も学生さんをはじめ若い人の参加があることは非常に心強い」と語った。

 

 同じく広島の会の日高敦子氏は「72年前の残酷悲惨な光景は言葉で語り尽くすことのできるものではなく、私のまぶたから消え去ることはない。街はきれいになってもいまだお骨さえみつからず、無念の死をとげた方方のことを思うと胸が痛む。生かされた私たち被爆者は核と核兵器の恐ろしさを世界の人人へ訴えなければならない。会の運動は草の根の働きだが、海外からの関心も多く集めるようになった。被爆者の訴えが大きな力となり核禁止条約は採択されたが、日本は不参加だった。多量の核保有国ほど核の真の恐ろしさを市民レベルで理解していない。原爆は一瞬の破壊力だけでなく、放射線被爆による障害は半永久的に続く。核の本当の恐ろしさを知っているわれわれ広島・長崎の被爆者が語り継ぎ、次世代へ継承して地球から核兵器がなくなるまで頑張りましょう」と呼びかけた。

 

 スタッフとして参加する大学生は「修道大学での原爆と戦争展を偶然参観し、パネルを見たときに衝撃を受けた。これを広島にいるからこそ多くの人に伝えたいと思い、スタッフとして参加することを決意した。英語を通じて海外の人、若者に伝えていきたい」と意気込みを語った。

 

 中国から留学している学生スタッフは「平和教育を研究テーマにしており、平和を守るためにどうすればいいか、子どもたちに戦争の悲惨さだけでなく、未来の平和を守るためにどのような教育をおこなっていけばいいかと考えている。原爆と戦争展の展示を見て非常に勉強になったと同時に、子どもたちにとっても非常に参考になる資料だと思い、自分もスタッフとして参加して学びたい」と語った。

 

涙浮かべ体験聞く姿も

 

 会場には、親子連れや教師、学生、被爆者などが訪れ、長時間かけてパネルを読み込む姿が目立った。また、「被爆体験を聞きたい」と訪れる参観者も多く、とくに親子連れの参観者はパネルを見ながら被爆者の説明を聞いたり、みずから体験の聞きとりを申し出るなど、会場のあちこちで被爆者を囲み体験を聞く参観者の輪ができた。

 

 沖縄県から1人で広島へ来て、偶然、配布されていたチラシを見て会場に来た女子高校生は、展示を見た後、被爆者の体験を目に涙を浮かべながら熱心に聞いた。「大学のオープンキャンパスのために広島へ来た。沖縄では沖縄戦の歴史や遺構などにも触れる機会があり、慰霊の日には平和学習もおこなってきた。長崎にも修学旅行で行ったことがあったが、広島にも必ず来てこの目で見ておきたいと思っていた。テレビやネットなどで知り得る情報もあるが、やはり自分で来て、直接被爆者の話を聞いて感情に触れることができたのでよかった」と感極まった様子で語った。

 

 8歳のときに横川で被爆した女性は、毎年この展示をおこなっていることは知っていたが、今年は自宅にポスターも貼っており、街でこの展示を知らせる宣伝カーを見かけて参観した。女性は腕や足の甲のケロイドを見せながら「真正面から熱線を受け、顔、胸、足、腕を火傷した。ブラウスは花の模様があったところだけ肌に跡が映っている。爆風で家へと続く道には家が崩れ落ちて歩けるような状態ではなく、防火用水には子どもを抱いた生きているかも分からない母親が座り込んでいた。子どもの頃にはひどく残ったケロイドに“みんな私と同じ経験をすればいいのに”と他の生徒を恨めしく思った時期もあった。父親は当時医者をしていて、被爆後に避難所になっていた学校での経験を手記にも残している。72年前というと今の子どもたちからすると昔昔の話かもしれないが、実際に当時の戦争を体験した世代がまだおり、語り継いでいる。自分もキリスト教の関連の集まりで語り部をしているが、全国の教会でも意識的に戦争について教育をおこなっているところもあり、広島を訪れて被爆体験を学び、平和について考えるとりくみも広まっている」と話した。

 

 神奈川県から小学生の娘を連れてきた母親は、会場で婦人被爆者から1時間以上かけて親子で体験を聞いた。「映像や写真では見ることがあったが、被爆者の生の話を聞いたのははじめてだった。知らないことの多さに驚いたし、被爆者の思いを聞くことができて本当によかった」と目を真っ赤に腫らしながら語った。「娘もいずれ修学旅行で広島に来る。でも、今しか聞けない話があると思って広島で原爆に関連する施設を回っていた。3・11の福島原発以後、放射能の被害は関東全域にも広がった。幼い子どもがいるので、我が家でも線量計を買って、家の放射線量を測る毎日だったが、急速に数値が伸びた時期もあった。広島に来て、原子力と戦争だけは絶対にやってはいけないものだと改めて実感した。とくにこの問題は、自分から求めて情報を集めなければ真実を得ることができない。戦争を知らない人が政治のトップに立ち、さまざまな動きをしているが、このような経験を国民1人1人がしっかり受け継いで、2度とくり返させないようにしなければいけない」とのべた。

 

 広島「原爆と戦争展」は、8月7日(午後5時)まで開催されている。

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