いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

文字サイズ
文字を通常サイズにする文字を大きいサイズにする

戦争止めるため学ぶ被爆地の経験 広島を訪れる外国人が急増 平和公園で「原爆と戦争展」 ガザの惨状重ね熱い論議に

屋外でおこなわれた「原爆と戦争展」を参観する人々(3月31日、広島市・平和公園)

 原爆展全国キャラバン隊は3月30、31日、広島平和公園で街頭「原爆と戦争展」をおこなった。パレスチナ自治区ガザでイスラエルによる民間人への無差別攻撃が今も続くなか、全世界の人々が即時停戦を求め、民間人の大虐殺を非難し行動を続けている。この情勢下で、海外から広島を訪れる人の数は増えており、人類史上もっとも残酷を極めた広島・長崎への原爆投下とその被害の実態について関心が高まっている。多くの人々が展示に足を止め、海外でほとんど伝えられることのない日本人の視点から見た戦争・被爆体験に衝撃を受けていた。また、参観者が意見や感想を記したアンケートには、過去の過ちが再びくり返されている現状を憂慮する意見が多く、圧倒的多数の人々の願いを無視して惨事を引き起こす一部の権力者たちに対して共通した憤りが渦巻いていた。

 

国籍や世代をこえて停戦を求める声多数

 

 「原爆と戦争展」は、本紙が取材・編集に携わった展示パネル『原爆と大戦の真実』(下関原爆展事務局編集)に英訳を付けたもの。広島や長崎で20年にわたり市民の手で展示会が続けられてきた。

 

 展示内容は、第1次世界大戦後のバブル景気がはじけて昭和恐慌に入り、「みんなが貧乏になって戦争へ」向かっていく時代背景から始まる。軍国主義が加速し、盧溝橋事件、満州事変をへて中国・アジア圏に侵略していくが、戦争長期化でしだいに戦況は悪化し、武器も食料もないまま兵士たちは戦地へと送り出され、その多くが飢えと病気で死んでいったことも体験者の証言を通して描写されている。過酷をきわめた戦地体験、全国各地でアメリカ軍による空襲がくり返され、毎晩のように都市が焼き払われ多くの民間人が犠牲になった空襲体験、その一方で東京大空襲をはじめ各地の空襲で皇居や財閥は無傷だったことなども体験者の証言や資料から明らかにしている。

 

 また、沖縄戦では現在のガザ戦争と同様、米軍の上陸で住民は南部へと押し込まれ、日本軍守備隊壊滅後も米軍は占領のために県民を無差別に虐殺したことも体験者の証言などをもとに詳しく示している。そして原爆投下の展示では、広島の原爆詩人・峠三吉の詩や子どもたちの原爆詩、広島・長崎の被爆写真をベースに、原子雲の下にいた人々の苦しみや悲しみ、怒りを伝える内容となっている。

 

 展示の後半では、日本を単独占領した米国の戦後支配が現在まで続く実情を示し、「原爆投下は戦争を早く終わらせるためだった」というアメリカ側の正当化論に対し、真っ向から「原爆は戦争終結のために必要なかった」と主張している。海外からの参観者はこの展示内容に強い関心を示し、食い入るように英訳を読み込む姿が目立った。

 

 多くの人が展示に足を止め、スタート地点には順番待ちの列ができた。なかには1時間以上かけて展示に見入る人もおり、とくに若い世代が強い関心を示した。被爆の実情を伝える生々しい写真と子どもたちの詩を目にし、涙を流す参観者も多く、一緒に参観した家族や友人たちと議論を交わしたり、後でじっくり読むためにすべてのパネルと英訳の写真を撮るなど、被爆地広島に学ぶ真剣な姿勢が目立った。

 

欧米、中東、アジア 「終戦には必要ない虐殺」

 

パネルの英訳を真剣に読む外国人参観者(3月31日、広島市)

 参観者たちは、アンケートに感想を記したり、スタッフに意見をのべた。かつての過ちを二度とくり返さないという反省を強く抱くとともに、ガザ戦争のように今もなお民間人の大虐殺がくり返されていることに強い憤りを抱いていた。

 

 20歳で結婚して渡米し、アメリカで暮らしているという女性は、「東京大空襲では民間人が25万人も殺傷されているにもかかわらず皇居や財閥は攻撃されなかった。それはすべてアメリカの戦後統治のために計算され、残されていたことを初めて知った。夫はイラクに派兵されていた退役軍人だ。マッカーサーは“軍国主義の日本を救ったすばらしい英雄”だと教えられ、尊敬の念を抱いている。だが、あの戦争はそんな都合の良いものではなかったということがよくわかった」と話した。

 

 また、全国空襲や原爆によって多くの民間人が殺されたことに触れ、「今ガザで民間人が大量虐殺されていることと何も変わらない。米国人の夫は、“悪いのはハマスだ”という。確かにハマスがイスラエルを急襲したのは悪いが、だからといって今イスラエルがやっていることはあきらかな民間人虐殺であり、戦争犯罪だ。“ハマスの悪”とは別次元の問題であり、許されるものではない。この戦争はアメリカが止めなければならないはずだが、アメリカ政府はイスラエルへの軍事支援をやめない。バイデン大統領は口ではイスラエルをなだめるようなことをいうが、大統領選挙の人気集めのためだろう。私はアメリカに住んでいるが、日本人の心を持ち続けているつもりだ。原爆を知る国の一人として、ガザで起きていることは絶対に許せない」と語った。

 

 だが、米国内ではイスラエルによる大虐殺を批判しにくい空気感もあるという。女性は「第2次大戦の“戦勝国アメリカ”として、敵国のナチスから迫害されひどい目にあったユダヤ人を守り、味方であり続けなければならないという暗黙の了解が戦後からずっと米国内にはあるのだと思う。そうした環境のなかでユダヤ人は政治やメディア、大企業で富と力を蓄え、米国内で影響力を強めてきた。今日私がここで話している内容も、自分が暮らしているコミュニティのなかではとても話せないくらいの圧力がある」と語していた。また、米国内では報道規制が日本よりも厳しく、ガザで民間人がどのような迫害を受けているかが主要メディアではまったく伝えられず、ガザ現地の映像もほとんど放映されないことにも疑問を呈していた。

 

 ドイツ人男性は、ガザへの侵攻を強めるイスラエルに対し、自国政府が支援を続けていることについて「(ナチスによるユダヤ迫害の歴史を持つ)ドイツ人として、イスラエルを支持しなければならないという気持ちはある。ただ、ドイツ国内では行き過ぎた侵攻を続けるイスラエル軍の行為をめぐって最近は多くの論争がある」と話していた。

 

 トルコから来た60代の男性は、みずからアンケート用紙に記した詩を時折声を詰まらせながら読み上げた。詩は、トルコの社会派詩人ナジム・ヒクメットが原爆投下から10年後に作った「死んだ女の子」の一節だ。「広島で私が死んで一10年が経った 私は今でも7歳 死んだ子は歳をとらないの 炎は初めに私の髪を そして瞳を燃やして 私は一握りの灰になった そして空へと飛び散ったの」――。


 男性はこの詩を暗記しているといい、「この詩のことはトルコではたくさんの人が知っているし、世界的にも知られた有名な詩だ。今日この展示の写真や子どもたちの詩を見ながら、若いときに初めてこの詩を読み衝撃を受けたことを思い出した。アメリカがおこなったことと同じことを今、イスラエルがおこなっている」と話した。

 

 ベトナムで生まれ、フランスで暮らす女性は、「アメリカの原爆投下は戦争を終わらせるためではなく、日本を占領するためだったという展示に私も同感だ。日本の民間人が大量に殺される必要はなかった。私の母国もベトナム戦争のときにアメリカによって罪のない多くの民間人が大量に殺された。今日はここに来ていないが、母国にいる私の家族にもこの展示を見てほしかった」と話していた。

 

次世代に継承を 家族3世代での参観も

 

 日本国内から広島を訪れる人も多数参観した。戦争体験者が高齢化し、直接被爆体験や戦争体験を聞く機会が年々少なくなっており、学校の授業でもかつての戦争について学ぶ機会が徐々に減っていくことに危機感を抱いている人も多く、親子連れでの真剣な参観が多かった。

 

 親子3世代で広島に来たという70代の男性は「私は戦後1年目に佐賀県鳥栖で産まれた。子どもの頃は、田んぼのあちこちに“爆弾堀り”と呼ばれる焼夷弾によるクレーターのようなものがたくさんあり、そこで水遊びをした記憶がある。孫が広島に行きたいというので来たが、学校の授業でほとんど原爆のことを教わらないらしく、体験者も少なくなるなかで“このまま風化してしまうのではないか”という危惧がある」と話していた。母親はアンケートに「親として戦争を知る良い機会になった。展示を見て戦争のひどさを学び、子どもたちも何か感じており、良い経験になった」と記していた。

 

 日本の大学でアジア史を教えているという女性教員は、授業などで関わる外国人学生の多くがアジア圏の出身で、かつての戦争で日本軍に侵略された歴史を持つ国々にルーツのある学生がほとんどだという。女性は「海外の学生に原爆の被害のことなどを教えると、“多くの日本人が被害にあったことはわかるが、日本が他国におこなったことも忘れてはならない”とか、“原爆を落とされたのには日本も原因がある”という学生もいる。そうした意見を持った海外の若者たちに、どうすれば原爆のことを受け止めてもらえるのだろうかという悩みがあった。この展示では、日本軍の侵略から原爆投下、そして戦後まで描いていて、より理解が深まるすばらしい内容だった。とても参考になった」と話していた。

 

「同じ過ちをくり返すな」――外国人アンケートより

 

 参観者は、アンケートに感想を記した。アンケートでは、この展示への感想や意見を求めるとともに、現在起きているウクライナ戦争やガザ戦争などへの考えを問うた。とくに20代の若者たちが長文で回答し、戦争反対と平和構築に向けた全世界共通の問題意識を記した。以下、外国人アンケートの一部を紹介する。

 

 ▼西洋人として、西洋のプロパガンダなしでかつての戦争を知ることは重要な経験だった。実際の民間人や兵士の証言や詩を引用することで、非常に共感できる内容になっていた。当時の政府だけでなく、現実の人々からの視点を理解することが必要だ。このような歴史が存在するにもかかわらず、人々がいまだに戦争をおこなっているということは恐ろしい。戦争には善人も悪人も存在せず、いるのは被害者だけだ。人々が戦争を始める唯一の理由は、欲と憎しみだけだが、自国での抑圧と戦うことは正義なのかもしれない。(イギリス・32歳男性・料理人)

 

 ▼この展示は、フランス人である私の視点からは知り得なかった情報を与えてくれた。戦後、アジア地域で何が起き、アメリカ基準で日本が利用されたという歴史について私たちは学校で学ばなかった。日本に投下された原爆は、第2次世界大戦を終わらせるためのもので、“ひどいものだった”ということしか聞いていなかったが、これほど恐ろしいものだとは想像していなかった。ガザ戦争については、メディアが私たちに十分な情報を与えていない。私たちは市民が生きているのかすらわからない。(フランス・25歳女性・医師)

 

 ▼日本人の視点を知ることはとても大切なことだ。東京大空襲のように原爆投下以前にアメリカが日本に対しておこなった攻撃については知らなかったのでとても驚いた。広島や長崎での原爆使用についてはもともと断固反対だったが、改めて大量破壊兵器を民間人に使用することは許されないという思いが確信に変わった。私たちの世界の指導者が人権侵害に対して口を閉ざしているだけでなく、これらの戦争において多くの人々の願いを無視して一部の戦争(イスラエル・ガザ戦争)に資金を提供していることはとても恐ろしく悲しいことだ。(イギリス・27歳男性・大学生)

 

 ▼とても胸が痛んだ。民間人の殺害や強制退去など、かつての戦争でおこなわれたことと、今ガザで起きていることは非常に似ている。展示の終わりにウクライナ戦争の停戦を求めるパネルがあったが、ガザでの戦争の停戦を求める展示がなかったのは残念だった。イスラエルは3万人もの民間人を殺害している。ガザでの戦争こそ一刻も早く停戦すべきだ。私はパレスチナを支持する。この戦争は、イスラエルとアメリカがガザの民間人の上でおこなっており、彼らは邪悪で大量虐殺を続けている。私たちが歴史から学ばなければ、再び歴史をくり返す運命にある。パレスチナに自由を!(アイルランド・28歳女性)

 

 ▼この戦争の本当の姿、そしてアメリカの戦争犯罪について示すことは非常に重要だ。私たちもフランスでこうした内容について学び、話し合うべきだ。アメリカによる占領は、第2次世界大戦以後、状態を変えながら現在に至るまで日本やドイツ、イタリアで実際に続いている。私たちは、戦争が間違っているということを常に忘れてはならない。私たちの世界は悲劇のくり返しだ。私たちは平和と繁栄の実現のために戦い続けなければならないが、テロは決して解決策ではない。(フランス・31歳男性・経営者)

 

 ▼原爆の爆発によって引き起こされた出来事についてよくできた解説だった。また、兵士や民間人の個人的な体験談、そして詳細な政治分析がとてもよかった。写真は目を背けたくなる。世界で起きているあらゆる対立や紛争は、アメリカのような超大国が代理戦争をやめ、世界的な大企業が自社の利益のための戦争をやめることですぐに解決できるはずだ。どのような理由があろうと、民間人が戦争に巻き込まれるべきではない。(ドイツ・30歳男性・ソフトウェアエンジニア)

 

 ▼恐ろしい印象的な展示だ。原爆を推進しているすべての政治家は強制的に訪問してこの展示を見るべきだ。人類は過去から学ばなければならない。私は母と一緒に展示を見たが、すべてのパネルを翻訳して伝えることができなかったのがとても残念だ。それほど有益な内容だった。まだ戦争が続いていることに本当にうんざりしている。もっとも知的な動物であるはずの私たち人間が、争いにおいてもっとも野蛮だ。私はいつか戦争や軍隊、紛争のない世界に住みたいと思っている。(トルコ・23歳女性・大学生)

 

 ▼非常に有益だ。時に私たちは歴史上の出来事を聞いたり読んだりするだけで、詳細は脇に置かれてしまう。この展示を読むと、戦争は何の役にも立たず、もっとも苦しんでいるのは紛争に関与しない民間人であるという、揺らぐことのない真理を確認することができる。ほとんどの戦争が無意味であり、戦争とはリーダーの対立のために知らず知らずに彼らの争いに巻き込まれ殺し合うものだ。(コスタリカ・37歳男性・エンジニア)

 

 ▼原爆ドームを訪れた後にこの展示を訪れたが、当時のことをさらに知るのにとても役立った。まるでパズルを完成させるラスト一ピースのようだった。今世界で起きている戦争によって民間人が犠牲になることは決して公平ではない。そして、政府が問題を解決するための必要なレベルに達していないことを証明している。今起きていることすべてが残酷で、人道に反している。(デンマーク・33歳女性・エンジニア)

 

 ▼この展示で、日本と広島、長崎の人々が耐えた苦しみについての個人の証言および概括的な報告に深く感動した。私は日本兵の証言に興味を持ち、彼らの体験がどれほど悲惨なものであったかを知った。歴史の情報が乏しい私にとって、人々の経験から戦争について学ぶことができてよかった。この展示で見た写真は、ソーシャルメディアで私が見たガザとウクライナの恐怖を思い出させた。私はウクライナとガザの解放だけでなく、世界中の平和を主張する。多くの人々が涙を流し、世界平和のために尽力しているにもかかわらず、このような残虐行為が今日まで続いていることは悲劇だ。(アメリカ・23歳女性・会社員)

 

 ▼私は小学校で日本の真珠湾攻撃や、広島・長崎での原爆投下によって何が起きたのか、歴史を学んだ。そして今日、私はその歴史を直接見るために広島に来た。私の母国インドネシアもかつて日本とオランダに植民地化され、私たちインドネシア人は永続的な苦しみを経験した。そして今、再び少数の人々の欲望のためにウクライナやガザでの戦争で不幸がくり返されている。過去は過去であり、私たちは今を生きている。同じ過ちをくり返してはならない。停戦を!(インドネシア・26歳男性)

 

アンケートに感想を記入する参観者(広島市・平和公園)

 

関連する記事

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。なお、コメントは承認制です。